いつの日も、いつまでも・・・
コンラートが、珍しく自分から進んで机で書類決済を頑張っている。
結婚する前も、結婚してからも、彼はあまりデスクワークが好きではないようで、
桜に急かされ、仕方なくやっていた書類決済。
今日は、朝から溜まっていた、桜がすでに確認済みの書類の山を消化し続けていた。
桜は、せっかく集中して仕事をしてくれているコンラートを邪魔しないように、
執務室の端で自分の仕事をしながら、時折彼のお茶を代えてあげていた。
今も、ちらりと見ると、すっかりと紅茶が冷め切ってしまっているのに気付いた。
暖かい紅茶に、柑橘の汁を絞って、砂糖は入れない。
これが、コンラートの好みの紅茶。
それをそっと彼の机の、書類から離れた場所に置くと、ふとコンラートが顔を上げた。
「ああ、ありがとう、サクラ」
「ううん・・・。随分と頑張っているのね」
桜は首を振り、そして感心したように言った。
今日、コンラートと話したのは、僅か。
ずっと、ペンを走らせる音しか聞いていないような気がする。
普段、いくら言っても執務中にでも、桜に触れたがるコンラート。
なのに、今日は一度も・・・。
コンラートは軽く伸びをして、淹れたての紅茶に手を伸ばした。
「あまり仕事を溜め込んで、サクラに怒られたくないから。それに、今度の休みは、出掛けたいんだ」
「どこに?」
驚いた桜に、コンラートはくすりと笑って、彼が贈った桜の左手にはめられた指輪に触れた。
「結婚記念日。近場でいいから、昼間はきみの好きな海を見に行って、夜は美味しいものでも食べに行こう」
すっかり忘れていた。
もう、結婚してどれくらい経つのだろう。それくらいの年月を、二人でいたから。
残念ながら、まだ子供は出来ないけれど。こうして二人きりの生活も悪くないと、思い始めていた桜。
思わぬ夫の申し出に、驚きもしたし、嬉しかった。
「そのために、頑張ってくれているの?」
「そうだよ。さあ、あと少し。頑張ろうかな」
コンラートは微笑して、書類との格闘を再開した。
邪魔しないように、少し離れた場所でその姿を見守っていた桜は、とても嬉しかった。
いつまでも、彼女のことを一番に思ってくれている。
そのために、好まない仕事を進んで・・・。
でも、何となく・・・。
桜が座っているところからは、コンラートの横顔が見える。
端正な顔は、いつになく真剣で。少し長くなった茶色い前髪で、薄茶の瞳は見え隠れしている。
いつも桜を見つめてくれる瞳は、今は書類をざっと見渡しているためか、上下に動いていた。
その中に光る銀の煌きが、ここからだと分からない。
カーキ色の軍服を着ていて、長い足は無造作に組まれている。
ペンを動かす、長い指。
そのどれもが、桜は目が離せなくなっていて・・・。
どうしたんだろう、私・・・。
自分の一瞬抱いた感情に、桜はとまどってしまった。
いつも、仕事をしてもらいたいと思っていたのに。
執務中には、触らないでって言い続けていたのに。
なのに、どうして・・・私を見て欲しいと思ってしまうんだろう。
私に触れてほしいって・・・。
湧き上がった感情は、なかなか消えてくれない。
だが、口には決して出さず、桜はコンラートの仕事が終わるまで、邪魔をしないように自らの仕事を続けていた。
「ふう・・・終わった」
ペンを置いて、天を仰いだコンラートから、書類を受け取った桜。
その全てを確認し終え、笑みを浮かべて夫を労った。
「お疲れ様、コンラート。凄いわ、よく頑張ってくれたわね」
「ああ、やれば出来るもんだな」
そう苦笑して、コンラートは立ち上がって、ギュンター行きとグウェン行きに書類を仕分けしている桜の背後に立った。
そして、その身体を、ぎゅっと抱き締めた。
驚いて強張らせる身体を、更に強く抱き締めて・・・黒髪に顔を埋めた。
「サクラ・・・触れたかった。早く、きみをこうして抱き締めたかった・・・」
「コンラート・・・?」
「今日は、これが終わるまではサクラに触れるのを我慢しようと覚悟を決めたんだ。だけど・・・長かった・・・」
辛そうな、切なそうな声に、桜はきゅっと眉を寄せて、そして身体を反転させた。
正面から、コンラートの身体に腕を廻して、身体を寄せた。
「私もよ・・・あなたに触れて欲しかった」
恥ずかしいけれど、言おう。
全てを包み込むような愛情に、慣れてしまった馬鹿な私。
もう、あなたのような優しさがないと、耐えられないの・・・。
「コンラート・・・抱いて・・・」
そう囁くように呟いて、顔を上げれば・・・見慣れたコンラートの、銀を散らした瞳が驚き、揺れて・・・
そして感情が変わっていく。
熱く。欲情に。
「サクラ・・・」
苦しそうに呟くや、コンラートの唇が桜のものと重なり合った。
いつもは、優しい、触れるだけのキスから始まるのに。
激しく、桜の唇を貪るように激しく感情をぶつけてくる。
何度も角度を変えて、透明な糸を二人の唇の間で紡ぎあげて。舌を蹂躙させて、桜の咥内を犯し続ける。
唇を舐め上げ、躊躇う桜の舌を吸い上げて。
手は、彼女を逃さないとばかりに、黒髪を掻き抱いて、時折息が荒くなる桜から顔を離しては、また深く口付けを。
「はぁ・・・あ・・・」
コンラートの口から、僅かに開放される瞬間にだけ響く、桜の切ない吐息。
それがまた、彼を掻きたててしまうのに、桜は気付かない。
すっかりと書類が無くなった机に桜を追い詰め、そしてその上に押し倒した。
桜を見下ろす形になったコンラートの目の前には、あまりの激しい口付けに、蕩けている黒瞳が。
「サクラ・・・愛してる・・・」
桜の頬を撫で、その首筋に顔を埋めていった。
白い首筋を、舌を足して上下する。
耳の裏を舐め、そして飽き足らずに耳にも口付けを落とす。
「ふぁ・・・あっ、あっ・・・」
小さな堪えるような桜の声。
もっと、聞きたい・・・。
手が、桜の胸をスーツの上からまさぐっていった。
大きく、強く揉みしだき、釦を素早く外していく。
すぐに現れた、薄い水色の下着に包まれた、豊満な胸。
そのところどころに、彼自身がつけた赤い跡がまだ、残っている。
昨日も、一昨日も。
こうして桜の身体を思うままに愛しているのに。
「足りない・・・いくらでも、サクラを抱きたいんだ・・・」
ぽつりと呟いて、コンラートの顔がその胸に埋められた。
暖かく、柔らかな桜の胸は、コンラートを包み込んで・・・そして掻きたてる。
下着をたくし上げて、もみ上げながらその先で震える桃色の突起を、躊躇うことなく口に含んだ。
舌先で撫で回し、吸い上げ、転がして。
「あぁ・・・はぁ、や・・・・」
音を立てて吸い上げて、もう一方の手は性急にも、桜のスカートの中へ滑り込ませた。
もう、そこは熱く湿っていた。
彼に触れられるのを、待っているかのように。
コンラートは嬉しそうに瞳を上げた。
「濡れてる・・・少し早いけど、ここにキスしてもいい?」
「・・・聞かないで・・・好きにして・・・?」
桜のその言葉に、コンラートはもう理性が全て吹き飛んでしまった。
桜の彼に向けた眼差しも、熱くて蕩けそうで・・・欲情に濡れていたから。
コンラートは弾かれたように身体を離して、そして桜を半身起こし、机にぎりぎりの場所に座らせた。
その前に跪き、スカートと下着を素早く脱がせて、白い足をそっと開かせた。
両手を机に突いたまま、上半身を起こした桜の頬は赤く染まり、目の前では自分の足の間にある、茶色い頭部がある。
じっと、恥ずかしい場所を見つめている、桜の愛する夫の姿が。
見られてる。それだけで、湧き上がる熱い蜜を感じる。
「・・・凄い、どんどん溢れてくる」
溜息交じりの声とともに、息が掛かる。
その息が、段々近づいてきて・・・
ちゅっと音を立てて、桜の一番敏感な蕾にキスをして、その後は、桜の腰を捕らえて、顔を押し付けた。
サクラが望むように。サクラが喜ぶように・・・
「あん!あああ、コンラー・・・ト・・・・」
切なそうな声を上げて、桜が段々のけぞっていく。
その身体を片手で支えて、コンラートの唇が蕾を啄ばみ、舌で舐め転がして、吸い上げて。
舌先で薄皮を捲り上げ、露になった真っ赤な真珠を、そっと舐め上げれば、更に桜の声が高くなる。
「ひゃっ・・・あ・・・だめ、だめ、そこ・・・やぁ・・・!」
「・・・サクラ、目を閉じないで・・・見て?ほら、こんなにここ、喜んでる・・・」
「あぅ、あん・・・あっ!あああ!」
眼を僅かに下ろした桜の前で、コンラートは指を蜜が溢れる壷に差し入れた。
2本・・・3本・・・
わざと彼女に見えるように、大きく指を動かしていく。
「ほら・・・吸い付いている、俺の指に」
「あ、あ、あ・・・あん、ああ・・・」
「・・・ここ、いい?」
本当は、分かってる。
桜は、入り口のすぐ上が弱い。そこを押して刺激して、更に震える蕾を再び力強く吸い上げた。
「はっああ、あ・・・・も、もう・・・あん、あああ・・!」
もう、我慢しないで・・・いっていいよ、サクラ・・・
そう心で呟いて、コンラートの唇が桜の蕾を吸い続け、舌を動かして指を激しく壷の中を刺激し続ければ・・・。
桜の壷が蠢いて、指を捕らえて収縮を繰り返して。
そして桜が大きく仰け反って、小刻みに痙攣を始めた。
手が、彼を求めてる。
コンラートは指を差し入れて動かしたまま、その親指で唇を離した代わりに、蕾を擦り上げながら、
身体を起こした。
求められるままに、桜に身を寄せれば、彼女の白い手が首に巻きついて、真っ赤な顔で震えている。
「コン・・・ラ・・・ト・・・」
達する瞬間、彼の首筋に顔を埋めて、彼の名を呼んで。
コンラートは柔らかく微笑んで、ただ桜を刺激し続けた。
最後の痙攣が、収まるその時まで・・・。
びくびくと震えていた身体が、やがてぐったりと力なく彼にもたれ掛かってくる。
指を抜いた瞬間、桜の身体が再び震えて。
嫌・・・離さないで・・・。
どうして、こんなにこの人に触れられたいんだろう・・・。
コンラートは、桜のうつろな表情を覗き込んで、そしてその頬に唇を落とした。
「気持ちよかった?サクラ。凄く可愛かった」
「やん・・・コンラート・・・お願い・・・」
「・・・え?」
優しく微笑むコンラートの眼差しに、まだ抜けない欲情の色を込めた黒瞳を向けた桜。
その瞳の色は、彼が初めて見るような・・・扇情的な眼差し。
「サクラ・・・部屋に戻ってから、たくさんきみを愛そうと思ってたのに・・・」
「我慢できないの・・・今すぐ、欲しいの・・・」
そんな眼差しで、そんなことを言われて。
耐えられるはずがない。
コンラートは苦しそうな表情を浮かべて、荒々しく自らの上着を脱ぎ捨てた。
露になった、逞しい胸元へ、桜の白い手が伸びる。
そっと撫でさすられて・・・コンラートはすでに大きく、膨張して弾けそうなくらい熱くなっている自らを、
戒めから解き放った。
「サクラ、机に手をついて、あちらを向いて・・・」
桜の身体を背後から抱き、その滑らかな白い背中に唇を落として。
一気に突き上げた。
「はぁあぁん!!」
顔を仰け反らせて、突如与えられた壮絶な快感に震える桜。
その顔をこちらに向かせて、唇の端と端でキスを繰り返しながら、音を立てて律動し続ける。
桜の中が、コンラートを捕らえて、抜きさる動きには、まるで彼を引き止めるかのように蠢いて。
きついその中は、いつまでも彼を捉えて離さないかのようで。
「サクラ、サクラ・・・ああ・・・」
桜の尻に、叩きつけるかのように己を打ち付けて。
「コン、コンラート・・・あぁ・・また・・・私・・・」
「サクラ、こっち・・・」
桜の身体を再び向きを変えさせて、正面から彼女を抱き締めた。
首筋にしがみ付くその頬に唇を落として、桜の片足を持ち上げて、更に擦り上げていく。
「あ、あ、ああ・・・・!」
「ああ、サクラ・・・」
「来ちゃう、また・・・あん、こ、擦れて・・・」
桜の蕾が、コンラートに擦られて、赤く大きく震えていて・・・。
その声に耐え切れず、コンラートは力強く桜の身を抱き締めた。
首筋に唇を這わせて、桜の震えを全て受け止めて・・・。
そして弾かれる感覚と共に、白濁したものを、桜の打ち震える身体に注ぎ込んだ。
「あ、あ、あぁん・・・・・」
「サクラ・・・サクラ・・・・・」
同時に二人達して、そしてしがみ付く様に、抱き締めあって。
しばらく、そのままで二人だけの時間をただ、感じあった。
「可愛かった・・・どうしていつまでも、きみはそんなに可愛いままなの・・・?」
部屋に戻ってきた二人はベッドに横たわり、コンラートの手がずっと桜の髪を撫で続けていた。
少し疲れたような桜は、頬を赤く染めて、僅かに顔を背けた。
自分が起こしたあの不思議な欲情。そして発してしまった、数々の言葉が恥ずかしくて。
まっすぐに、コンラートを見ることが出来ない。
「サクラ・・・?」
コンラートは身体を少し浮かせて、桜を覗き込んだ。
「いや・・・。見ないで・・・」
「どうして?俺は嬉しかったよ。ほら、そんなに顔を赤くして・・・。また、俺を掻きたててしまう・・・」
桜の手を取り、コンラートは自分の再び大きく硬くなってきた分身に誘導した。
「あ・・・また・・・?」
「そう。また。今日は俺も、きみもずっと我慢してたから。だから、たくさん・・・ね?」
桜がコンラートに触れられなくて、切なかったのに、彼は気付いていた。
それでも、彼女のために。今日は、ただ仕事をこなし続けて・・・
「ありがとう、コンラート。愛してるわ、ずっと・・・」
「俺も、愛してる。サクラしか、いらない・・・」
そして二人は再び抱き合い、熱く蕩けるような口付けを交わして・・・
結婚して、随分経つのに。
変わらない、この想い。
それどころか、互いを愛おしく思う気持ちは、毎日強く、大きくなって。
それは、子供が生まれても。
幾年の時が過ぎても、永遠に愛を育み続けた・・・。