苛立ち 〜帰還
作 こたつ
エスタエアステーションにて
「痛いっ、スコール、手が痛いよ」
はっと我に返り、彼女の腕を掴んだ手の力を緩める。
「悪かった。・・・・ところで、お前何企んでいたんだ」
少し赤くなった腕をさすりながら、リノアは暢気な声で答える。
「ん〜?企むって何を?」
大方、自分の知らぬ間に密会した(密会いうなよ)ラグナに泣きつかれたのだろう。
食事と称して役者を揃え、お涙頂戴の親子の名乗りでもあげるつもりだったのか。
冗談じゃない。
ああ、俺は気づいていたさ。アイツは分かり易すぎるんだ。毎回毎回俺を見る目。鬱陶しい。
リノア!お前もお前だ。いつからラグナと会っていたんだ。どうして俺に言わない。
「アイツと一緒になって何を企んでいたんだ、と聞いたんだ」
湧き上がる怒りを抑える事なく発した声は、低く響く。彼のこの声に萎縮しない者はいないであろう。
だが、彼女の反応はまさに彼の想定外であった。
「ねえ、さっきのヤキモチだったの?」
突然、転換された話題に、彼の思考能力は一時停止を余儀なくされる。その隙をついて畳み掛けるように、彼女は続ける。
「ねっ、ラグナに妬いちゃったの?もう・・・バカ」
ほんのり赤くなった顔で、彼を上目遣いで睨むリノア。もう一度、バカと呟き、嬉しそうに彼の腕に自分の腕を絡ませ、にっこり笑う。
「もうスコール以外の人にこんなコトしないよ」
やられた。
またしても。
いつだって彼は、彼女の手のひらの上で踊らされるのだ。
脱力し、思わずスコールは目を閉じて天を仰いだ。
終
(よまなくてもいい)あとがき
リノアとラグナの会話を書いてみたかった。レインとスコールには悪いけど、共通の愛する人がいるという、淡い恋にも似た二人がうまく書けたかどうか。
きっとこの二人は仲良しだと思う。
スコールとラグナの絡みを入れると、なぜかギャグになる。本編でもラグナのキャラクターは強烈でした。
実は、「苛立ち」を書き始めていたら、途中話が分裂して、というか別のお話が生まれてしまったのです。それが「ねこ」です。面白い経験でした。