作 こたつ

〜窮地 

それは、死闘だった。

パーティを2つに分け、最強の武器を作るため材料を調達する。最後の決戦を控えていて極限の緊張の狭間にできた油断。

地獄に近い島。

何という名前だろうか。

そこにいるモンスターは最強で並のSeeDでは歯が立たず、文字通り地獄行きになってしまうであろう。

経験こそ少ないが、めきめきと頭角を現したこのメンバーたちも、度重なる戦闘、疲れてきた体と精神でボロボロになった。

パーティはスコール・ゼル・リノア。彼らはレベルも高く、出会うモンスターも桁外れであった。

 

対峙するは、背に翼を持つ真っ赤な竜だ。

名前は・・・・思い出すのが困難なほど、深手を負ったメンバー達。

二手に分かれたキスティス・アーヴァイン・セルフィたちに知らせようにも手段がない。

乗ってきたラグナロクは遙か彼方にその機体を覗かせているが、とてもそこまでは逃げ切れまい。

中でも一番の深手を負ったゼルは、隙をつかれて放たれたブレスで息もできないほどだった。

(まずいな、ケアルかけないとゼルは・・・)

リーダーのスコールは回復魔法を唱えるべく、意識を集中したいが

猛々しく叫ぶ竜にそんな隙は見せられない。

ちらと、リノアを目で追う。

彼女もゼルに放たれたブレスに巻き込まれ、尻餅をついてぐったりしている。

やはり、ここは連続剣しかないと、リーダーは腹をくくり意識を集中する。

しかしながら、その特殊技を放つことなく、スコールは後方へはじき飛ばされる。

 

赤き竜は怒っていた。ゼル渾身のデュエルで傷を負ったから。

仕留めるなら、一度にやらねば。

巨大な敵は、見た目の大きさからは想像がつかない程の素早い攻撃を繰り出す。

背中の羽で体が浮いたと思ったら、素早く体をねじりその巨大な尾でスコールの体を地面に叩き付けた。

「ぐぅっ」

堪らず呻き、地面に突っ伏す。口中に広がる鉄のような味。

まだ竜は怒りを収めない。自分の前に立ちはだかった3人を許すつもりは毛頭ないようだ。

と、その時、

 

「いやああっ」

天を切り裂くような少女の悲鳴が響き渡る。その瞳は倒れたスコールを凝視していた。口から流れる赤い血。

スコールは軋む体をガンブレードで支え、ふと廻りを見渡した。

空気が圧縮されるような、そんな感覚を覚える。圧縮されたそれは、ある一点に向かって集まってゆく。その先にいるのは。

 

 

〜光臨

「リノアっ」

彼は叫ぶ。彼女は表情のない目でふらふらと立ち上がる。

同時に空から落ちて来る光。

光に包まれたと思ったら、リノアの体は何かスイッチが入ったように両手を伸ばして仰け反る。

背中に現れた翼のようなもの。

ふわふわと浮遊し始める体。

散った黒髪が静かに静かに彼女の顔に落ちてくる。

虚ろだったその瞳は、慈愛すら感じさせるような暖かな色になった。

あまりの美しさに、スコールは状況も忘れ、見惚れてしまっていた。

 

と、その時、リノアの細い指先から魔法が放たれた。

スコールは、はっと我に返り、目を細めて赤い竜を凝視する。

ファイア系の魔法であろう。しかし、威力が違う。見たこともないその力にスコールは言葉をなくす。

竜の体を包み込む真っ赤な炎。

しかし、竜は倒れるどころか、赤い口を大きく開けてまた雄叫びをあげてくる。

(だめだっ、ファイアでは吸収されてしまう)

そう思っても声が出ない。どうしたら・・。

だが、心配は無用であった。

最大にして最強の力を受け継いだ魔女リノア。

瀕死の状態から解き放たれたその力は、すさまじいものであった。

間髪入れず放たれた魔法は、アルテマ。

スコールは爆風から守るため、咄嗟に倒れているゼルに覆い被さる。だが、風すら彼らには届かなかった。

攻撃した手とは、反対の手が二人に向いていた。同時に放たれた補助魔法。プロテスでもない、シェルでもないもの。リノアがこちらを向いて微笑む。まるで天使のような顔で。

心地よいものに包まれ、しばしスコールの思考は止まる。

それも一瞬のことで、戦闘のプロとして幼き頃から教育されたSeeDとしての感覚が、たちまち彼を戦闘態勢へと向かわせる。

(状況は?)

 

だが、そこに先ほど戦ったどう猛なモンスターの姿はなかった。

いや、かつてそれであった黒い影。それだけが、彼のすべてだった。

えぐり取られた地面、そこは草木もすべて消滅していた。

そこまで確認して、ようやく彼はリノアの事に思い至る。

 

 

〜帰還

彼女を見やると、背中の翼のようなものが消滅しようとしていた。

咄嗟にスコールはリノアの元へ走り、墜ちてくるその体を受け止める。

柔らかいその肢体、甘い香り。

すべてが彼女そのものだった。

リノアは彼の腕の中で崩れ落ち、薄れ逝く意識を必死で持ち直そうとしていた。

「スコール。わたし」

初めて見せてしまった魔女としての自分、それに怯えるように彼女の目には涙が一杯溜まっていた。

落ち着かせるように、スコールはその細い体を抱きしめる。

(こんな華奢な体でよく)

片手で背中を撫でて、残った手で髪を梳いてやる。必死でしがみついてくるリノアにスコールの心臓は早鐘のように打ち始めた。

 

少し落ち着いたのか、緩んできた彼女の腕を取り、顔をのぞき、そして囁く。

「お帰りリノア。助かった」

「怖くないの?わたしのこと」

「どうして?俺は騎士だ。魔女の、いやお前のな。」

「本当に?」

泣き出す彼女を見たら、たまらなく切なくなり、彼は自分でも思わぬ行動を起こした。

震える顎を捉え、自分の唇で彼女のそれをやさしく塞ぐ。

彼女の表情が柔らかく溶けるのを見て、彼もその甘い感触に酔いしれた。

 

 

「あの〜お取り込み中すいませんけど」

いつの間にかゼルが体を起こして、苦笑いしてこちらを見ている。

二人は、はっとして体を離した。今一体何をしていた?

呆然とする二人をよそに、ゼルは先ほどとは打って変わった元気さで「よいしょっ」と立ち上がる。

「?あれ、リノア顔に血がついているぞ。大丈夫か?ケガしてんじゃねえか?」

「え?」

どこも痛くないのに。困惑するリノアは、自分の顔をなでぬぐった手に血が付いているのを見つけて驚く。そして、ちらと先ほどのキスのお相手を見て顔を更に赤く染めた。

「これはスコールの・・・・って、もうコレで拭いてっ!」

そう言って、ハンカチで彼の口元を拭う。ようやく事態を察知したスコールは「悪かった」とちいさな声でつぶやいた。

 

瀕死の体はすでに癒されていた。

驚いた事に、攻撃と補助の魔法を同時に放つだけでなく回復魔法までやってのけた魔女リノア。

一体どれだけの力なのだろうか。一瞬湧き上がった畏怖にも似た気持ち。だがこの力が無かったら間違いなく全滅であっただろう、志半ばで。

 

「リノア、見たぜ。すっげえカッコよかったよ」

「ほんと〜。ゼルだってカッコよかったよ」

「それで。エネルギー結晶体はどこだ」

「・・・あれ?ないねえ〜」

そんな二人の軽いやり取りに少し救われる。

(何があっても、どんな事が起こっても俺はリノアの騎士だ。)

ただ、目を閉じると浮かぶ、あの時のリノアの姿。

この世のものとは思えないほど、神々しい光を放った美しい彼女。

改めて、スコールは魔女リノアへの誓いを立てた。          

 

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(よまなくてもよい)あとがき

ゲーム中に不満でした。いつの間にヴァリーなる技?ができているの、と。気づいたのがラストボス戦。あのギザギザの絵(泣)で、我らがリノアが天使のように変身しているではありませぬか?って、コラ!ムービーでやってくれよ、そういうのは。

だ・か・ら補完しました。(自己満足)

まあ予算の都合とか大人の事情があったのやもしれぬ。それは許しましょう。だがな!

魔法を乱発するリノア、ちょちょっと待ってくれ。てか、効いてないヨ、デスペルとかマジやめてっ!クエイクとか、そこ空間だから地震だめだって〜もう号泣でした。残り二人でなんとかクリアしたけどね。まだアンジェロラッシュの方が・・・ぶつぶつ

作中に出てくるドラゴンの名前、賢明な皆様ならご存じですよネ。私、ルなんとかドラゴンとしか思い出せませぬ。何度もやられたのにね。はいはい、G.FのせいG.Fのせい。