争 奪 その3

 

 作 こたつ

   

7.決着

 

「くぅ〜〜何で今日はこんなについてるん?」

最高にラッキーな自分に酔っていたはずのセルフィであったが、あれから二度目のアルケノダイオスとの遭遇に合ってしまい、疲れ切った体を引きずりふらふらとリノアの所へと歩いて行った。

「いつもならカンタンに逃げられんのに、何で見逃してくれへんの〜〜」

これ以上魔法を消費しては、ジャンクションにも影響がでてくる。常に最適なジャンクションをしなくては、ろくな戦闘力にならず、この身が危ない。

だが、幸いな事に見回しても激しい戦闘でボロボロになった訓練生しか見あたらない。わずかに残った候補生もSeeDティルミットを確認するや、「降参です」と勝手に脱落していってくれる。

「ふふふ。大物はつぶし合いやし、これはイタダキかもしれへんな」

 

彼女は油断をしていた。

SeeDとしてあるまじき失態。後で反省する時は歯がみするほど悔しかった。

その隙を突いて、何者かの放った魔法がセルフィを襲いかかる。

 

「クエイクっ」

足下は崩れ、対処する間もなく

 

埋まった・・・・。

 

呆然とするセルフィだったが、すぐに正気を取り戻した。

「何やコレ〜〜〜〜っ!!あとちょっとやったのに」

「油断大敵、先手必勝です」

草むらから、静かに出てきた姿を見て、セルフィは唖然とする。

「三つ編みちゃんっ?」

 

サーシャは考えた。

これは持久戦だと。これだけ興奮状態にある生徒たちを相手にするよりは極力戦いを避けることが望ましい。体力は温存し、実力が桁違いなSeeDには疲れた所の隙をついて攻めること。それが、サーシャの戦術の全てだった。

静かに微笑み、埋まって癇癪を起こしているセルフィを助ける。

秘密の入り口まで、あと少しの場所だった。

最後の決戦は、あっけなく図書委員の勝利によって幕を閉じたのである。

 

 

 

「はい〜、三つ編みちゃん。おめでとう。これが例の本だよ」

「ああっ、ありがとう」

サーシャの顔は喜びで上気していた。こんなに嬉しいと感じるのは生まれて初めてかもしれない。

ガーデンの女子の中で、一番になったことではない。これはただの作戦勝ちだ。皆は自滅したにすぎない。

それより、ずっと知りたかった「魔女の書」。

魔女ではない自分だが、それを見る幸運が与えられたのだ。

内容によっては、自分が書いているレポートに素晴らしい花を添えてくれることだろう。

導入部分を少し変更しなければいけないとか、色々な段取りを考えていたら、リノアの表情に気づくのが遅れた。

 

「あのね、三つ編みちゃん。これね、内容が内容なの。だから、今ここで読んですぐ返して欲しいんだ」

すまなさそうに、眉をひそめてリノアは言った。

「あと、他の人に言っちゃダメ。秘密にして欲しいの。いいかな」

「わかったわ・・・・」

レポートに反映は無理そうだ。少しの落胆はあったが、彼女は頷く。

そして、ゴクリと唾を飲み込み、ページをめくった・・・・。

 

 

 

8.最強の女

 

その頃、食堂ではピンクな空気のまま、男子生徒が席を占領していた。

と、そこへ戦闘が終わったらしい女生徒たちがぞろぞろと列をなして食堂へやってきた。男子たちは皆にこやかな顔で彼女たちを迎えた。が、しかし

 

「ちょっとアンタらっ。いつまでしゃべってんねん!ウチら朝食抜きやねんでっ」

「本当よっ!あなたたち、授業が休みだからって、だらけているっていうのはSeeD候補生としてどうなのかしら?」

「わかったら、早く席をあけるんだ」

最強の女SeeDたちに睨まれ、「すいません」と力無く席を立つ男子たち。

 

手っ取り早いストレス発散は、食べるに限る。

疲れ切った女子が、一斉に席に着き、皆競うようにヤケ喰いを始めた。

 

そこへ帰還したばかりのSeeDレオンハートとその恋人が、仲睦まじく並んで歩いて来た。

リノアは、皆を見て

「よっ、みんな。惜しかったねえ〜お疲れ様」

と明るく笑って手を挙げた。

引きつった笑みを浮かべ、女生徒たちは力無く手を挙げて応えるしかなかった。

 

リノアは今からお茶でもするのか、紅茶とケーキを載せて彼氏と並んで席に着く。

そこにいる者たちは、平静を装いつつ食べるふりをして、二人の観察をする。

彼の留守中の話を嬉しそうに話しながら、生クリームがたっぷりのったケーキを口に運んでいる。穏やかな表情で彼女を見つめるスコール。

微笑ましいくらいの光景であった。

何か言いたげに二人を見ていた者たちも、空腹には勝てずのろのろと食事すべく手を動かした。

そんな時だ。

コーヒーを飲んでいたスコールの左手が伸び、リノアの口元を軽くぬぐった。

「・・・付いてるぞ」

どうやら、ケーキを食べるときにクリームが付いてしまったらしい。

さっと顔を赤くしたリノアは、その手を掴むと

「やだっ」

という言葉を発したその口に、

 

そっと指を含んで、クリームを舐めた。

 

「「!!!!」」

 

ガチャンとフォークを落とす音、ガタンと席を立つ音、飲んでいた物を吹き出す音

それらが一度に食堂内に響いた。席を空けて立っていた男子たちは顔を真っ赤にして固まっている。

まるで恐ろしいものでも見るように驚愕した顔の女生徒たち。

 

「もうっ、恥ずかしいな。ありがと、スコール」

「・・・バカ」

 

恥ずかしいのはこっちだ。大丈夫なの?リノア。そんな可愛い事しちゃったらアンタ、今日一日離してもらえなくなるで。っていうかリノア最強だぜ。僕もやってもらいたい、って司令官目が獣になっているし。

 

皆の心の声はリノアには届かなかった。

 

 

 

 

その頃、一人残されてたサーシャは、真っ赤な顔で佇んでいた。

まさか、魔女の書にこんな秘密が書かれていたなんて。

読書家の彼女が本に目を通すのにさして時間はかからなかった。

確かに、これは人に簡単に話してよい類の内容ではない。それに魔術に関するレポートなんかに書くには明らかに異分子である。

だって、その内容は・・・・

 

「ママ先生も学園長との時にこうしたのかしら?」

 

想像するだけで恥ずかしい。自分の仮説は、さほど遠くなかったけれど、自分にはまだまだ必要ないものだとため息を吐いた。

サーシャは彼氏の待つ食堂へと、苦笑いしながらゆっくり歩いていった。

 

 

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あとがき

で、結局魔女の書って何よ?って興味を持ってもらえるとうれしい。

この話は、書いていてとても楽しかったです。三つ編みちゃんの名前は米国のスケート選手からいただきました。公園、ごめんね。

キスティスとシュウの対決部分が一番のお気に入りです。

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編も書きました。ちょっと大人風味かもしれませぬ。(加減がわからない)でもギャグです。

苦手な人は回避です。こっそり置いてマス。

 

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