作 こたつ

 

1.愛撫

 

夢を見たの

そう遠くない未来、わたしと彼は離ればなれになるという。

 

 

少し目立ってきたお腹を、後ろから優しい手つきでそっと触れられる。

まるでそこだけが別の生き物になったような不思議な場所。

少しの怖れと、愛おしさを伴い、その手は優しく触れる。

 

「もう触れてもらえなくなっちゃったかと思っていたよ」

「・・・」

後ろにいる彼の表情はわからない。

心地よい手の動きに、しばしその身を預け、彼の言葉を辛抱強く待つ。

彼には幼い頃から親はいなかった。あまつさえ、姉と頼りにしていた人とも突然離されてきたという。

そういった傷ついた心を隠すように、無関心という蓋で覆ってきた。

生きていくために。

その瞳の奥の、本当の色に気づく者はいなかった。彼女と出会うまでは。

そんな頑なな心はいつしか、色々な出来事を共に乗り越え、手を取り合って歩く内に、やっと・・・。

彼女という伴侶を得て、人と関われる様に変化してきた。

 

「んっ・・・・」

長い黒髪からのぞく白いうなじに、彼の唇が這い、思わず熱い吐息を漏らす。腹部を優しくなでていた大きな手は、いつしか彼女の二つの膨らみに達して、先ほどとはうって変わって激しく動く。

「本当に大丈夫なのか?」

「・・・ん。お医者様も安定期に入ったからって」

 大丈夫ですよ。赤ちゃんも大事だけど、ご主人もそうでしょう。

 くれぐれも赤ちゃんをびっくりさせない程度でね。

そう言って、年配の女医はやさしく微笑んだ。

「スコールがいやじゃなかったら、来て欲しい」

 

 

 

2.繋がり

 

夢を見たの

 

突然捻れた空間。飲み込まれる彼。

かの魔女戦争の時に否応なく巻き込まれた、あの時のように。逆らえない運命に絡め取られるように。

彼はわたしに手を伸ばす。離れてはいけないと思い必死で伸ばす白い腕。

でも。

わたしは掴めなかった、彼の腕を。

わたしは叫ぶ。「         」

ああ、また見てしまった。この夢を。

 

 

「なんか久しぶりだね」

つきあい始めた頃の性急さはもうそこにはなく、あるのはゆるやかな動きと愛情のみ。

彼が、10年以上封印してきたもの。

あまりの心地よさに、意識が遠くに飛びそうになる。

「リノ・・・痛かったら言えよ」そうした気遣いが、彼女の心を温かくする。

 

拒絶されるかもしれないと思った。

確かにある意味異常事態だ。今の彼女の体は彼の知っているそれではない。

器としての体。最早、それは彼一人のものではないのだ。

それでも、彼は繋がりたかった。

彼女もまた、それを強く望んだ。

長く艶やかな黒い髪。時折顔だけ振り返り、口づけをねだるそのふっくらとした唇。

何も変わっていない。

だが、繋がっている部分の奥には、まだ見ぬ自分たちの愛の結晶がたゆたっている。

またひとつ守る物ができた。そんな自信が湧いてくる。

 

そろそろ、彼女の息づかいが荒くなってきた。そういう、彼自身も。

出来る限り強くしないよう、残っていたありったけの理性をかき集めて、自身の動きを制限する。

彼の名前を呼ぶ彼女の声に応えるように、彼の指を白い指に絡ませて、彼は緊張し、そして脱力した。

至福の瞬間。

 

 

 

3.愛を捧ぐ

 

また夢を見たの

捻れた空間。飲み込まれる彼。

彼はわたしに手を伸ばす。必死で伸ばす白い腕。

でも、わたしは掴めなかった、彼の腕を。

掴まなかった、そのきずなを。

 

だって・・・

 

わたしの後ろにいる、ちいさな子供。この子はきっと、わたしたちの・・・・。

この子に彼の孤独を味あわせてはならない。

 

行って。きっとあなたは運命に逆らえない。

行って。それでも、きっとあなたは帰ってくる。わたしの所へ。

手紙を書くよ。だから、帰っておいで。わたしと、この子の所へ。わたしたちはもう・・・

 

泣きながら叫ぶ。

「待っているから」

 

 

 

「どうした?」

「・・・・」

かの力を受け継いでから、夢をよく見るようになった。敢えて言うなら未来の。

夢の内容を、口に出そうとするが、言葉が出ない。

そう遠くない未来、自分と彼は離ればなれになるという。

きっとそれは、実際に起こるのであろう。

そしてそれは、きっと逃れられないのであろう、と。

ならば、今のうちから覚悟しておこう。

夢の中で見た子供に注ぐ愛情を、今は全て彼に捧げよう。

 

「気持ちよかったな」

後ろ手に、彼の頬をなでる。苦笑する彼。ゆっくりと体を返して、二人向き合う。

少しできた空間。今はそれを見ないふりして、出来る限り顔を寄せ合う。

「ね、またして。お願い」

「バカ。無理しなくていい」

「バカだもん。よろしくお願いしますね〜」

 

出会った頃は、見ることが出来なかった笑顔。

ああ、幸せだ。これ以上何を望む?

彼は絶対に帰ってくる。だって、わたしたちは家族だから。ここが帰る家だから。

何も怖くない。

リノアは、にっこりと太陽のような笑顔を見せ、笑い出した彼の唇をふさぐ。

優しく、優しく、愛おしむように。

 

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あとがき(言い訳)

 

・・・万が一若い子が見てしまったら、すまんと謝るしかないな。

何となく、ここに来て下さる方は大人の女性が多いような気がしたので、のせました。

実はこれが初めて書いたもの

処女作デース!!いきなりこんなの、トシはとりたくないもんだ

 

 

賢明な方はお気づきかもしれないが、歪んだ空間に飲み込まれた彼の行き先は・・・

まあ、アレですよ。○ッキーが王様で出てくるゲームのトラバースタウン。

「レオンと呼べ」

なんでリノア出てないのかという欲求不満を解消するため無理矢理こじつけてしもた。