森 の中
作 こたつ
そこは、森であった。
うかつに足を踏み入れることは出来ぬ。
しかし、きちんと道しるべを辿ったならば、容易く入ることができるだろう。
似たような木の中から、見つけ出すのだ。1本、1本慎重に。
入る事ができたなら、可能なはずだ。
捜し物は、きっと滲み出るほどのオーラが出ているから。
1.開けた空間
傭兵学校だというのに、侵入者を拒まぬ開けた空間。
カードを読み込ませないと入れない箇所はあるものの、監視カメラの隙を突けば、突破出来ぬほどでもない。
建物は明かりをふんだんに取り入れる構造で、張り巡らされた水路、緑豊かな庭園、まるで楽園のホテルのようだ。
果たして、こんな環境で、世界でも最強の傭兵SeeDが育つのだろうか。
学園の従業員の制服を着て、しばしフロアの吹き抜けを見上げる。
こんな所で、ぬくぬくと暮らしているのか。
明るく降り注ぐ日差しの中で、表情を強張らせる。
道行く学生達の表情は明るく平和に満ちているようだ。唯一つ、鞘に納められた武器の存在を除いては。
制服を着た学生が行き交う。本当にここは学生の森のようだ。
その中で、学園内で働く人間もいる。
従業員の制服を身に纏った人物を咎める者は誰もいない。
帽子を深く被り、与えられた仕事をこなすため、その場を立ち去った。
「何やってるん?」
突然背後から声を掛けられ、迂闊にも悲鳴を上げそうになった。
振り向けば、かわいらしい裾の短いワンピースを着た女の子が、ブーツの踵を気にしながら自分をちらりと見ていた。
驚いた。
何の気配もしなかったから。
しかし、当のご本人は、どこかの方言混じりの言葉で話す、のんびりした雰囲気の女の子だった。
「食堂をお掃除するように言われたものですから」
と当たり障りのない答えをして、その場を立ち去ろうとしたが、
「見たことない顔やねんけど」
と、明るいグリーンの瞳に見つめられ、身動きが取れなくなった。
「新入りなんです」何とかかわすが、彼女の質問は続く。
いつから、名前は、年齢は、どこから来たの?
まるで尋問されているようで、腹に一物ある身としては、居心地が悪かった。
すると、そこへ制服を身に纏った女の人が助け船を出してくれた。
「何をやっている。仕事の邪魔をしてはいけないぞ」
この制服は知っている。正SeeDだけが着用を許可されているものだ。
ピンと伸びた姿勢、女性でありながら毅然とした態度、自分を見る目が厳しい。
まさにSeeDとはかくあるべき見本のようであった。
尋問から逃れられる安堵と、プロ中のプロに正体がばれぬようにする緊張で、困った表情をしていたのだろうか。女SeeDは、すまなかったと言い、女の子を連れて行ってしまった。
わずかな時間だったろう。
しかし、握りしめた手には冷たい汗が吹き出していて、思わず足が震えるのを押さえるのに必死になった。
仲間から連絡が入る。
文書は危険だ。通信も。残されたわずかな手段、従業員の寮からだけ見える場所からの光の信号で。
自分たちだけが使う、光の記号。まず解読は不可能であろう。その存在に気づくことさえも。
内容は、こうだった。
「魔女は見つかったか」
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