森 の中
作 こたつ
4.終結
同じ頃、スコールとゼル・アーヴァインは、ガルバディアの反魔女組織を壊滅状態にさせていた。
セルフィが、カイアに初めて声を掛けた時から3日後のことであった。
刺客の身元を洗い出し、ガーデンへ送られる不審な光の信号を読みとり、全ての情報を解析して組織の本拠地を割り出し、そして。
ガーデンが総力を挙げた結果、ガルバディア軍が居所すら掴めなかった組織を、たった3日で制圧した。
組織の首謀者をガ軍に引き渡し、スコール達実行部隊は、その日の夜には帰還した。
こうして、魔女の暗殺は未遂のまま、あっけなく収束した。
「なあ、どうして偽名使わなかったん」
保健室のベッドに寝かされたカイアに、無邪気に問いかける。
セルフィは、カイアの名前・出身地・年齢を聞いた所、名前だけは本名であったことに疑問を持った。
撃たれた後、現れた黒髪の少女が手をかざし何事か呟くと、あれだけ苦しかった呼吸が楽になり、癒された事を感じた。こんな魔法の力もあるのか、と衝撃を受けた。
彼女から癒しの施しを受けたのは2回目だった。1回目は、テラスで肩の古傷を。
自分は、魔女というものを何も知らなかった。知ろうともしなかった。
ただの思いこみで、自分はとんでもない過ちを犯してしまった。
まだ痛む傷口に手をやり、顔を歪めた。
「父親が残してくれた名前だからね」
そう言うと、セルフィが、嬉しそうにそっかと呟き、
「まあ親父さんがアンタの暴走を止めたってコトなんやろな」と結論付けた。
父を殺されてから、ずっと肩肘張って生きてきたのが、スーッと楽になった気がした。
ドアをノックする音がして、セルフィが立ち上がり、部屋に客人を招き入れる。
そこに居たのは、黒髪の少女リノアと、初めて見る背の高い男であった。
にこやかな彼女と、鋭い眼光でカイアを睨みつける彼。額の傷が彼の人相を最悪にしている。
思わず心の中で(こわい)と叫ばずにはいられなかった。
一通り、ケガの具合を心配する受け答えをした後、カイアはずっと疑問に思っていた事を問うた。
「どうしてアタシがガルバディア出身とわかったの」
一瞬きょとんとしたリノアだったが、質問の意味を汲み取り、髪と目を指さし
「ほら、同じ色」と言って、にっこり笑った。
無邪気な笑顔。つられてカイアも笑顔で応える。
ガルバディアの女は、黒い髪と目、そして白い肌だ。まあ、お前は俺に似て器量はアレだな。
悪い悪い、と笑いながら生前の父が言っていた事を思い出した。
手遅れにならなくてよかった、心からそう思った。
それにしても。
先ほどから、不機嫌を露わにした傍らの彼が、何か言いたいのを我慢している様が気になって仕方なかったので、勇気を振り絞り聞いてみた。
「あの、何か」
男は、腕を組んだまま、ふうとため息を一つ吐いて、
「命拾いしたな」
押し殺した声で呟く。同時に吹き出すセルフィ。
こんなに恐ろしい思いをしているというのに、笑い転げる彼女を見て呆気にとられた。
その間に、苦々しい顔をした彼は、リノアの手を取り「ケガがよくなったら尋問だ」と言い捨て、去っていった。
5.守りたいもの
保健室を去ったスコールは彼女の手を引き、歩いていく。
自分が留守の間の報告には、リノアと侵入者の会話を盗聴し、文字に起こしたものがあった。
ほとんどリノアの言葉だったのだが、その中に気になるものがあった。
「あの頃に戻れたらって、時々思うよ」
同じ出身者という事で、本音が零れたのだろう。彼女の手を、強く握る。
確かに現状はリノアにとってあまり幸せではないのかもしれない。
だが、ここから出て彼女が前の生活にもどれるか否かと問われれば、否と答えねばならない。
もう少し外の世界の嵐が止むまで、ここで羽を休めていて欲しい。彼女は自分が守る。
それに。
それに、彼自身、もう彼女無しでは生きてはいけぬ。
もう少し自分が大人になるまで、待っていて欲しい。
ここから出る時は二人一緒だ。
人気のない廊下で立ち止まり、リノアを抱き寄せる。
この3日間、今腕の中にいる彼女を守るため不眠不休で走り回り、戦った。
他の二人が何か泣き言を言っていたような気がしたが、よく覚えていない。
全ては彼女のために。
リノアの手が、そっと彼の頬を撫でる。
「スコールも癒してあげようか」
悪戯っぽい表情に少しだけ笑みがこぼれる。
「頼む」
終
拍手小話「おかえり」→
(よまなくてもいい)あとがき
カッコイイSeeD、候補生を書こうと思い立って、始めた所、自分にはうまく書けぬということに途中で気づき、アプローチを変えてみた。
さて、リノアはこの後どうやって彼を癒してあげるのでしょうか。
そんで、続きをちょこっと書こうとしたら、長くなってしまったのでサイドストーリーとして独立させます。
それにしても、「ここから出る時は二人一緒だ」ってプロポーズじゃないか?