第2部:資本の流通過程
第2篇:資本の回転
第8章:固定資本と流動資本

第2節
固定資本の、構成諸部分・補填・修理・蓄積



固定資本の構成諸部分は、それぞれ寿命が異なるため、その回転時間もそれぞれちがう。

たとえば鉄道では、レール、枕木、土構造物、駅の建物、橋梁、トンネル、機関車、客貨車は、機能期間および再生産時間を異にしており、したがってまた、それらに前貸しされた資本も回転時間を異にする。建物、プラットホーム、貯水槽、陸橋、トンネル、切り取り、盛土など、要するに、イギリスの鉄道業で“施工物(ワークス・オブ・アート)”と呼ばれるものは、すべて長い年月のあいだなんらの更新も必要としない。損耗品の主要なものは、軌道と車両である。[169]

これら固定資本の摩滅は、まず使用によって引き起こされる。さらに、自然力の作用によって生じる。最後に、「社会基準上の摩滅」が大工業においてはとくにその役割を演じる。

社会基準上の摩滅

「社会基準上の摩滅」とはなにか。労働手段は、産業の進歩によってつねに変革され、ことに決定的な技術革新にさいしては、古い労働手段はそれが物理的に使い物にならなくなる以前に、“社会基準的”に使い物にならなくなり、新たなものと取り替えられざるをえなくなる。このような予定前の早期更新を強制するのは、資本間の競争であり、社会的規模で強要するのは、とくに「恐慌」である。このような、「社会基準上の摩滅」という一種の強制がはたらかなければ、資本は、その大量の固定資本をできるだけ平均的耐用期限ぎりぎりまで使用し続けようとする。このことは、新規の機械などの一般的採用の障害となる。

固定資本の補填・修理、更新・維持

「社会基準上の摩滅」を別とすれば、固定資本の摩滅はその消耗によって、使用価値を失う平均度に応じて、徐々に生産物に引き渡す価値部分であり、更新され、補填されなければならない。

まず、固定資本の一部には、周期的部分的更新が不可能な種類のものがある。この固定資本は全部が前貸しされ、一定の平均寿命の経過後に全部が補填される。たとえば、馬など生きた労働諸手段の場合、平均寿命は自然に規定されている。

他の構成諸部分は、周期的部分的な更新ができる。この場合の補填は、事業経営の漸次的拡張とは区別されなければならない。

固定資本の価値の一部分は、平均的摩滅に応じて生産物とともに流通し、貨幣に転化され、その固定資本が現物形態で再生産されるまでのあいだ、補填のための準備金を形成する。この貨幣準備金は、事業拡張や、機械の改良などに役立つことができる。この事業拡張は、その事業内容や、機械設備の構造に応じて、漸次的に行われる。こうして、期間の長短の違いはあれ、拡大再生産が行われる。

資本主義的生産の下では、この事業の漸次的拡張が、非効率的に行われ、生産諸力の大きな浪費を生じる傾向にある。なぜなら、個々の資本家の諸事情や資力などに依存して、社会的にはまったく無計画に行われるからである。

固定資本は、労働過程で機能していなければ傷むので、それに応じた維持費を必要とするが、労働過程そのものが、固定資本を維持する。労働は、労働諸材料の価値を生産物に移転することによって、この価値を維持し、他方では、労働諸手段を使用することによって、その使用価値を維持する。

固定資本はときどき清掃されなければならず、そのために積極的な労働支出を必要とする。この労働支出は、固定資本に含まれている労働の補填ではなく、その正常な機能の発揮のための恒常的な追加労働である。この労働に投下される資本は流動資本に属し、年間の平均計算によって価値生産物に配分されるべき部分に属する。

しかし、一方、本来の工業の現場では、この清掃労働はもっぱら休憩時間中に無償で行われ、生産物の価格の計算には入れられない。消費者は無償で受け取り、資本家は機械の維持費をただで手に入れる。

修繕労働は資本および労働の支出を必要とするが、この支出は、最初の前貸資本には含まれない、追加的価値構成部分である。

また、この修繕労働はその性質上偶然的なものであるが、固定資本の生涯のさまざまな時期――幼年期と中年期をすぎてからの時期――に不均等に配分されている。

ある機械が、たとえどれほど完全な構造をもって生産過程にはいり込んでも、実際に使用してみると欠陥が現われ、あとからの労働によって是正しなければならない。他方、機械が中年期を過ぎれば過ぎるほど、したがって、通常の摩滅が累積し、機械を構成している素材が消耗し老衰すればするほど、機械が平均寿命の終わるまで働けるようにしておくために必要な修理労働は、ますます多くなり、ますます重要となる。[175]

固定資本の摩滅による価値移転は、その平均寿命にもとづいて計算されているが、この平均寿命は、清掃や偶然的な修繕など保全に必要な追加資本が絶えず前貸しされるものとして計算される。

この追加資本によってつけ加えられる価値は、それらが追加支出されるのと同時には諸商品の価格にははいり込まない。規定するのは平均である。一定の事業部門に投下された固定資本の平均寿命中における、清掃および修繕労働の平均的支出が、平均寿命の期間に配分され、それに照応する可除部分が生産物の価格につけ加えられる。

機械設備のどんな故障でもそのつどすぐに修理することは最高に重要なことであるから、比較的大きなどの工場にも、本来の工場労働者に加えて、技師、指物工、機械工、整備工など一団の人員がいる。彼らの賃銀は可変資本の部分をなし、彼らの労働の価値は、生産物に配分される。他方、生産諸手段のために必要な諸支出は、実際には不規則な時期に前貸しされ、したがってまた不規則な時期に生産物または固定資本にはいり込むのであるが、右の平均計算に従って規定され、この計算に従って絶えず生産物の価値部分をなす。本来の修理に投下されるこのような資本は、幾多の点で、流動資本にも固定資本にも分類できないが経常支出に属するものとしてむしろ前者に数えられる、独自な種類の資本を形成する。[176]

資本の会計処理方法によれば、これらの修理費は、多くの事業部門では、固定資本の現実の摩滅と合算されるのが慣例である。

前貸固定資本を1万ポンド・スターリング、その寿命を15年とすれば、年々の摩滅は666と2/3ポンド・スターリングである。しかし摩滅は10年だけについて計算される。すなわち、生産される諸商品の価格に、年々666と2/3ポンド・スターリングではなく1000ポンド・スターリングが、固定資本の消耗分としてつけ加えられる。すなわち333と1/3ポンド・スターリングは修理労働などのために取っておかれる……。すなわち、固定資本を15年長もちさせるために、平均してこれだけの金額が修理に支出されているわけである。[177]

家屋などの賃貸契約においては、これらは所有者にとっては固定資本であり、自然力による摩滅や正常な使用による摩滅は所有者負担になり、利用期間中必要になる臨時の修理は賃借人の負担とされる。さらに、修理のなかでも、現物形態での部分的更新となるような「根本的修理」については、所有者の負担とされる。

火災や洪水などの被害にたいする保険は、摩滅の補填や維持、修理の労働とは異なる。これらは、剰余価値からの支出、控除をなす。

社会全体の立場から考察すれば、偶然や自然力によって引き起こされる異常な破壊の修復を目的とする生産諸手段を備えておくためには、恒常的な過剰生産、すなわち現存する富の単純な補填および再生産に必要であるよりも大きな規模での生産が……行なわれなければならない。[178]

実際には、貨幣準備金として存在しているのは、補填に必要な資本のごくわずかな部分であり、この資本の重要な部分は、固定資本を生産する生産諸部門での正常な規模増大に対応できるように準備されている。

摩滅や修理は、社会的に不均等に生じるが、それら補填費用や修繕費用によって決められる商品の価格追加は、社会的平均によって決められるため、同一生産部門においてさえも利得に大きな不等が生じる。「このことは、同一事業部門内で労働力の搾取度は同等であるのに、それぞれ異なる資本家たちの利得を不等にする他のいっさいの事情と同様に、剰余価値の真の本性への洞察を困難にさせるのに寄与している」([178])。

修理と補填、維持費と更新費との境界は流動的である。たとえば、鉄道の初期における追加労働は「修理〔と称すべき〕ではなく、鉄道敷設の本質的な部分とみなさなければなら」ない。また、「農業では、……固定資本の補填と維持との分離は、実際には不可能であ」る。「鉄道の車両の場合には修理と補填とはまったく分離できない」([179])。「ある場合には、摩滅、したがってまたその補填が、実際上あるかないかの大きさになるのであり、その結果、修理費だけが計上される」。「このことは永年耐久性をもつすべての工事……にあてはまる」([181])。

固定資本の蓄積

固定資本の摩滅を補填するために還流する貨幣は、一定の期限に達してその現物形態に再転化するための準備金、償却基金を形成する。この償却基金は、かなり大きな規模で蓄蔵貨幣として積み立てられており、固定資本を購入するさい、一度に流通に投入される。固定資本が購入された後は、同じ過程が繰り返される。この貨幣は、ふたたび社会のなかで流通手段および蓄蔵貨幣として配分される。「この蓄蔵貨幣は交互に、流通手段として機能したり、次にはまた蓄蔵貨幣として流通貨幣総量から分離されたりする」([182])。この蓄蔵貨幣は、信用制度が発展するにつれて、遊休状態にある他の貨幣とともに、ますます、銀行に集中するようになる。銀行は、その貨幣を産業資本家や商業資本家に貸し出す。こうして、償却基金が資本として機能する。

信用制度が大工業と資本主義的生産との発展に必然的に並行して発展するにつれて、この貨幣は、蓄蔵貨幣としてではなく資本として機能するが、しかしその所有者の手中でではなく、その運用をまかされた他の資本家たちの手中で、機能する。[182]



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