第2部:資本の流通過程
第2篇:資本の回転

第12章
労働期間

異なる生産部面のあいだで、また、同じ生産部面の内部でも供給しなければならない生産物の規模に応じて、生産行為の持続時間の相違が生じる。日々の労働過程の持続時間は同じ10時間だとして、たとえば、綿糸の供給は日ごと週ごとに行なわれ、一両の機関車の製造には3カ月、一隻の装甲艦の建造には1年または数年の期間が必要となる。穀物生産には約1年、有角家畜の生産には数年を要し、造林の期間は12年から100年にまでわたる、等々。

ここでたとえば、機械紡績工場と機関車製造工場とが同じ大きさの資本を使用し、不変資本と可変資本とへの分割が同じであり、固定資本と流動資本とが同じ比率であり、労働日が同じ大きさであり、必要労働と剰余労働とへの分割も同じであるとする。これらの前提のもとでも、生産行為の持続時間の相違によって、資本の回転速度の相違が生じる。たとえば紡績工場主の場合は1週間で、投下された流動資本と固定資本の摩滅分とが補填され、資本の回転を完了する。機関車製造業者の場合は、3カ月の間週ごとに労賃と原料とに資本を投下し続け、3カ月後になって、ようやく投下された流動資本の総量と固定資本の摩滅分が補填され、回転を完了する。すると、機関車製造業者は、紡績工場主よりおよそ12倍の流動資本を動かすことができなければならない、ということになる。

労働日とは、労働者が自分の労働力を日ごとに支出する労働時間の長さである。それにたいして、ある事業部門で一つの完成生産物を供給するために必要な、互いにつながり合う労働日の数を、マルクスは労働期間と名づけた。

一労働期間内のそれぞれの労働日における生産物は、部分生産物――未完成な形態をとることになる。したがって、たとえば、労働期間の長い生産物と労働期間の短い生産物とでは、恐慌の結果起こるような社会的生産過程の中断と攪乱が与える影響は異なる。生産サイクルが短い場合は、新規の生産が中断することですむが、生産サイクルが長期にわたる場合は、労働が中断されるだけでなく、ひとつながりの生産行為自体が中断され、生産物は未完成な形態で放置されることになり、生産の続行が遅れれば遅れるほど、すでにその生産に消費された生産諸手段と労働はむだになってしまう。

固定資本は、もっぱら、一労働期間よりもかなり長い期間にわたって生産過程に前貸しされている。これら労働諸手段の価値が生産物の販売によって還流してくる期間は、労働諸手段自身が機能しうる期間より短く、同じ労働諸手段が幾回もの労働期間にわたって生産過程で機能し続ける。

これにたいして流動資本は事情が異なる。労働期間が長ければ長いほど、資本家は流動資本をそれだけのあいだ恒常的に追加支出しつづけなければならず、支出された原料・補助材料や労働力の価値(と剰余価値)は労働過程においてつねに部分生産物に移転される。流動資本は、一労働期間の継続中は生産部面に拘束されたままであり、新たに追加されてゆく流動資本のその総量は、労働期間の長さにつれて増大していく。

かなり長期にわたる大きな資本投下を必要とする事業について。資本主義的生産の未発展な段階においては、たとえば、道路や運河などは、それらの事業が資本主義的に経営されず、共同体や国家など社会的費用で行なわれる場合がある。これにたいして、資本主義的生産が発展した段階には、一方では個人への資本の集積化がすすみ、他方では株式会社や信用制度が発展し、大規模な事業の遂行に対応できるだけの資本主義的経営システムが準備される。たとえば、家屋建築は、以前のように個々人の注文で建築するやり方は例外でしかなくなり、建築請負業者は、もはや顧客のためでなく、市場めあてに住宅群や市街区を建設するようになる。

協業、分業、機械設備の使用など、個々の労働日の生産物を増大させる諸事情は、同時に労働期間を短縮する。労働期間の短縮は、より短いあいだに前貸しされる資本の増大と結びついている。したがって、信用制度の発展が資本の集積化をすすめる程度に応じても、また、労働期間の短縮がすすむ。

労働期間が自然条件によって規定されている農業などの生産部門では、資本の集積化と前貸資本の増大などでは、労働期間は短縮されない。たとえば、穀物の収穫は1年に1回転しか行なわれえず、家畜の育成も2歳羊や3歳羊、4歳牛や5歳牛はそれぞれ特有の回転数をもっており、それらを速めることはむずかしい。もし速めるとすれば、たとえば、家畜が経済的標準年齢に達しないうちに売られたり屠殺されたりすることによって行なわれるが、それは、農業部門に大きな損害を与えることになり、食肉価格の高騰を引き起こす。

労働期間を短縮する方法は、産業部門ごとに異なり、労働期間の長さを均等化するものではない。資本主義的生産の発展による技術革新や協業および分業の発展によって、各産業部門の労働期間は絶対的には短縮されうるが、それらの発展・改良による生産物の増大の大きさの程度が、一方の産業部門の方がはるかに大きければ、他方の産業部門の労働期間の長さは相対的には長くなる。

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