魔王伝記 Vol.1 狼王フェンリル
第二章 2083周期 J―3日 アメリ その2
「うん☆!!」
アメリは満面の笑みを浮かべた。いつ見てもこいつの笑顔はどんな人の心をも癒す力を持っているのでは?と思うほどに俺も心を穏やかにする。
「ねっ!役に立つでしょ私?だ〜か〜ら〜仲間にして☆」
「それとこれとは話が別だ。」
俺たちは、魚を火で焙り焼きして食べた。最近涼しくなってきたせいか、魚の脂ののりが良くとても美味かった。
魚を骨まで平らげて俺は川原に向かい歩き始めた。依然としてアメリは俺の後を付いてきていたが、とりあえず気にしないで行くことにした。
翌日、2083周期 J―3日
俺たちが川沿いを下流に向かい歩いていると、ハンガリーの町が俺の目に入ってきた。遠目でよく分からないが、何か様子がおかしい。叫び声のような音が多数聞こえてきたのだ。俺たちは足早にハンガリーの町へと足を運ばせた。
「アメリは付いてくんな!」
「イヤだよ!アルの役に立ちたいモン☆」
言っても聞かないことは分かっていた。でも……もし………もう“あんな気持ち”はたくさんだと思った。
「ちっ!勝手にしろ!」
俺たちはハンガリーの町に着いた。嫌な予感は良く当たる、そんな言葉を実感した。町はワーウルフ達に襲われていたのだ。大勢の人々が逃げ戸惑うのを楽しみながら一人、また一人と次々に殺し喰っていく。また、ただただ虐殺を楽しむ奴もいる。俺の村と同じ光景だった。
「うおおぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺は叫びながら剣を抜きワーウルフ達の中に入っていった。一匹、更にもう一匹、既に何匹斬ったかも分からない。きっとその時の俺は鬼のような形相になっていただろう。憎しみ、怒り、哀しみ、これらの気持ちが俺の身体を動かしていた。
ワーウルフの数が1/3位になったとき奴らは町から引き上げていった。それを見て俺は油断しきっていた。そう俺の背後に忍び寄る影にさえも気付かないほどに。
「アル!危ない!!うしろ!!」
「え?」
後を振り向いたとき見えたモノは大型のワーウルフ、フェンリルが魔界から連れてきたワーウルフ40匹の内の1匹だった。こいつらは呪いによってワーウルフにされた人間と違って知能があり力も半端ではない。
『ヤリスギ…小僧…殺ス…』
爪が俺を狙っている。気を抜いていた俺は完全に無防備だった。爪が俺に向かって突っ込んでくる。“死ぬ”そう感じた次の瞬間俺とワーウルフの間に何かが割り込んだ。
……猫の獣人の脚力は人間の数倍、100メートル2秒で走れる。そう間に入ったのはアメリだった。爪がアメリの身体に突き刺さり真っ赤な鮮血が俺の顔にかかる。何が起きたのか?俺は自分の目を疑った。自分を庇(かば)いワーウルフの爪にかかったアメリの身体が俺の目の前に倒れ込む。
「うわああああああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
大粒の涙が俺の目からこぼれ落ちる。それは、自分を逃がすために死んだ母と同じように見えた。
「…だ…大丈・夫……だった?……アル…」
俺に抱えられたアメリの言葉は途切れ途切れだった。
『…邪魔サレタ…次…仕留メル…オマエ…死ヌ…』
ワーウルフが俺を殺すため、振りかぶった。が。
「ウルセー!!!!!!」
俺が握った剣が光り出し、一振りでワーウルフを一刀両断した。凄い力だった。だが俺にとってはそんなことよりアメリの事で精一杯だった。
「何でだ!!?…どうして…ヴヴ…だから仲間なんて要らないんだ!!っっ守りきれないなら最初からいなければいい!!…俺のために死ぬ奴をもう見たくないんだ!!」
そう俺は家族も仲間と呼んだ奴らも守りきる事ができなかった。“その時の気持ち”は二度と味わいたくないと思っていたんだ。
「貴方は…優・しいね…アル……他人の・た…に…ハァ…泣いたり、怒・たり…できる…ウウ…」
アメリはかなり辛そうだった…
「もう喋るな!!…早く医者に!」
周りを見たがこの町には既に人間の姿はなかった。ほとんどが殺され、生き残った人たちは町を離れていた。
「…アル……貴方に…とって・の仲間…って何…?」
「え?そ、それは…」
「…守る・べき…者?……そう・思って…いるなら…それは違うよ…ハァ…守る…だけじゃ・ない…守って…守られて・こそ…仲間…なんだよ…」
俺の目から大粒の涙がボロボロと落ちる。
「あぁ、その通りだアメリ…」
だんだんアメリの息使いが荒くなってくる。
「…一人・じゃ無理な…ことも…力を・合わせれば…きるよ……一人で・なにもかも…背負い込まないで…仲間に…立場なんて…ないよ…みんな・同等…なんだよ…仲間を・信じて…」
「あぁ、あぁ、分かったよアメリ…分かったから頼む、もう喋るな…」
アメリの目は既に光を失っているようだ。かなり虚ろになっている。
「最後…に・1つ…だけ……私たち…“仲間”・だよね?…」
「あぁ、勿論だ!オマエは俺の“仲間”だ!!」
アメリは満足そうな笑みを浮かべた。そしてそのまま息を引き取った。
「!!!?………アメリーー!!!」
まるで寝ているかのような死に顔だ。俺はこの町にアメリの墓を造り町を出た。ちゃっかり食料を頂いたが、まぁ良いだろう。大した問題にはならない筈だ。打倒フェンリルを胸に掲げ再び歩き出した。
フェンリルの情報を得るために次の町までの道なき道を歩いていた。森に入り3日過ぎた頃寂しいという気持ちが俺を襲っていた。半周期の間、俺の後を付いて来ていたアメリはもういないからだ。あの頃はいつも後から
「アル〜〜!」
そうこんな感じで呼び止められたものだ。?ん…?…幻聴まで聞こえてくる始末だ。
「アル〜〜!!」
「え?幻聴じゃ…?」
木々を枝から枝へ素早い動きで俺の方に近づいてくる。俺の真上まで来ると高く飛び上がり俺の目の前に着地した。たしかにアメリだった。
「アル〜!人を勝手に殺すな〜!」
「え?だっておまえ刺されて…腕の中で…」
「はぁ〜?アレはただ眠っただけだよ!それにアレくらいの傷寝てればすぐ治るよ!」
「だって…オマエがあんな…」
「まったく〜!ご丁寧にお墓まで造っちゃってさ、私のかわいい顔が土でドロドロだよ〜!!」
…自分で言うか?と俺は思った。しかし人の話を聞かず自分の話に夢中になる。確かにこいつはアメリだった。
「アメリ!!!」
「ほえ?」
「オマエって奴は…オマエは俺の仲間だろ!!?仲間に心配かけるようなことすんな!」
…俺はいつの間にかアメリに対し背中を向けていた。言葉が恥ずかしかったのか、それとも頬を流れる涙を見せたくなかったのか…よく分からないが心が喜びに満ちていることだけは分かっていた。
「ウン☆」
アメリに背中から飛びつかれた。横目で見たアメリの顔は今までにないほど喜びに満ちた顔だった。このときから、フェンリルの情報集めの旅には“仲間”集めの項目が追加された。
………………
現在
「そうだ、信じ合える仲間だ…貴様には到底分かるまい。仲間がいることの素晴らしさを!!」
俺の剣が光を増していく。大きな力がわき上がってくる。
続く
あとがき
魔王伝記 Vol.1 狼王フェンリル 第二章 2083周期 J−3日 アメリ はいかがでしたか?
主人公アルベールが仲間とは何かと言うことに気付くお話しでした。教育実習中ということで実際時間が無くてグチャグチャな作品になってしまいました。(涙)何してるんだろう・・・・・・・・・気付いたことがありましたらどんどん掲示板に書き込んでくだされば嬉しいです。やっぱり作者を育てるのは読者の皆様ですのでよろしくお願いします。
今後の内容はそれぞれの仲間とのエピソードを書いていくという感じです。
どうぞご期待下さい。
感想など頂けたら嬉しいです。 感想は下の感想フォームか感想掲示板までよろしくお願いします。
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