魔王伝記 Vol.1 狼王フェンリル
エピローグ その後の俺たち
フェンリルが消えたことによりアメリの胸に刺さった爪も消えた。さらに空を覆っていた雷雲も消え去り太陽の光が俺たちを照らしていた。アメリの胸には爪の痕さえなく息もしている、しかし目覚めなかった。奴の言った“永遠”とは爪が消えた後も続くというのだろうか。
「アメリ…おまえこのまま眠ったままなのかよ……」
俺がそう言うとアメリの身体が光り始めた。よく見るとユーリの身体も光っている。フェンリルの魔力によって猫と融合していた身体が“分離”を始めたのだ。光が消えたアメリとユーリは見事人間と猫に“分離”していた。
2人とも外見は獣人の頃とさして代わり映えがしない。違うところといえば耳が人間のモノとなり尻尾がなくなったくらいだ。猫の方はユーリと融合していたのは黒猫の仔猫、アメリと融合していたのは虎猫の仔猫だった。二匹とも俺に懐いてきた。
「…ミー……ミー…」
「ミーミーミー・ミーミー☆」
2匹とも2人にそっくりだった。長い間融合していたせいで性格が似てしまったのかも知れない。
「はは…2匹ともこいつらにそっくりだな……!!!!?…待てよこの仔猫が無事ってことは……まさか!!!」
俺は重大なことに気が付いた。仔猫が無事ということはアメリ自体も無事ということかも知れないと思ったのだ。俺はアメリの方を見た。
「……うう…………こ、ここは………………あれ?……身体が動く…」
アメリが目覚めた。自分で起きあがり何故か身体が動くことに驚いていた。
「「アメリ!!」」
「アメリちゃん!!」
「アメリさん!!」
俺たちは一斉にアメリの名前を呼んだ。
「み、みんな!……ゴリさん!…トムさん!…ユーリちゃん!………そして……アルー☆!!!」
アメリはみんなの名前を呼ぶと最後に俺に飛びついてきた。
「アメリ…本当に、本当に良かった…」
「私ずっと聞こえてたの。みんなが戦ってる声…でも全然身体動かなかった。目も見えなくて真っ暗で胸だけが締め付けられるようにとても苦しかった。私怖かった…でも私、私帰って来れたんだね☆!!」
「あぁそうだ…」
俺たちは全員涙を流した。これは悲しい涙ではなかった。仲間が無事に戻ってきた喜びの涙だった。
こうして俺たち5人と2匹は湖の孤島を後にした。実はここで一悶着あった、仔猫の名前のことだ。アメリとユーリの2人は虎猫の仔猫にはアメリ、黒猫の仔猫にはユーリの名前を与え自分たちは元の名前メアリー・ジェファーソンとユリア・デイリーに戻すということだった。
「呼びにくいんだが……」
という声もあったが2人によって全面的に却下された。
「………これから……どうするんだ…?」
トーマスが俺に聞いてきた。
「これからかぁ……そうだなとりあえずトールに戻るよ。フェンリルを倒したことをダニー達に報告しなくちゃいけないしな。…ゴリさんはどうすんだい?」
「そうだな〜おめぇの行き着く先ってのが見たくて付いてきたが何となく見えちまったしなぁ盗賊家業でも再開すっか!…おぉそうだ、アルベールよぉ一緒に盗賊やらんか?おめぇの腕なら文句なしだぜ!!なっ!」
「…遠慮しときます。……ゴリさん盗賊の勧誘なんてすんなよ〜。」
「そうか?すまんな〜。ははははははは。ところでトーマス達はどうすんだよ!?」
ゴードンがトーマスに話を戻した。
「……俺たちは………アルに付いていくよ……退屈…したくないしな………どうせ旅……続けるんだろ……?」
「……何処までも…お供します………アル様……」
「……ミー……ミー……」
結局トーマスは俺の考えていることはなんでもお見通しだった。俺はこれから世界各地を見て回ろうと考えていたのだ。「方向音痴はそんなことするな!」と言われそうだが俺の心はもう決まったいた。
「なんでぇそうなのかよぉ!?じゃぁ俺様も付いてくぜ!まだまだ先が見えなくなっちまったからな!!」
結局今までと何も変わらない。ただ目的地のない旅になるだけだった。後はアメリ…いやメアリーだけだった。
「アメリ!!」
「ほえ?」
「お前は俺に付いてこい!いっつも危ない目にあいやがる!そんな奴は俺から離れるな!!」
普通の言葉で言うのは恥ずかしかった。そのため背中越しの命令口調になってしまった。
「そっかぁ私は連れてってもらえないんだ〜。」
「え?何言って…」
「だってアメリちゃんはこの仔だもん☆「ニャ〜☆」私はメアリーだよ!私にも付いてきて欲しい?」
「え?あ、あぁ…」
「そ・れ・じゃ・ぁ、「付いてきてください」は☆?」
「あ、あぁ付いてきてください…………………ん?」
何か違和感のようなモノを感じた。
「いいでしょういいでしょう☆特別に私も付いていってあげましょう☆!」
メアリーは胸を張って答えた。……そうだ俺が付いてこいと言った筈がいつの間にか立場が逆になっていたのだ。
「ア〜メ〜リ〜!!また俺をからかって遊びやがって!!今日という今日はぜってぇ許さん!!」
俺とメアリーの鬼ごっこが始まった。鬼ごっこの間笑い声が止むことはなかった。
「あいつらの行き着く先が楽しみだぜ。」
「………青春…だな………」
「……打倒…メアリー・ジェファーソン………」
「「…………………(汗)」」
こうして俺たちは1つのトンネルを抜け出すことができた。今は光る草原を歩いている気分だ。しかし人生はトンネルだらけだ、次のトンネルに入るのは何時のことだろうか?俺は“仲間”を手に入れることができた。どんなに長いトンネルでもこいつらとなら歩いていける気がする。
終わり
あとがき
魔王伝記 Vol.1 狼王フェンリルはいかがでしたでしょうか?
この作品は鱧天が書く初めてのオリジナルストーリー小説でした。現在の時間軸を進めながら過去の時間軸を同時進行していく、つまりは現在の行動と結びつく過去の話を盛り込んでいくというモノで今回はアルベール(主人公)の思い出話でした。
この話を考えついたのはスクウェアソフトのFINAL FANTASY X をやっているときで話の進め方が気に入ったので使わせて頂きました。
今回一番困ったことはキャラ設定でした。特に、ゴードン・R・スミスでした。とりあえずゴツくて、熱血で、むさ苦しいキャラが良かったんですが、それだけじゃ何か物足りなかったのでロリコンにしてみました(笑)
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