魔王伝記 Vol.1 狼王フェンリル
    第四章 2086周期 Aー1日 ゴードン その1




 「さぁ!いっくよ〜みんな☆!

 アメリの身体から発する光が強くなっていく。次の瞬間光が分散され俺たち全員に降りかかる。この光はアメリの回復能力の応用で俺たちに力を与えてくれる。つまり身体能力が一時的にアップするのだ。

 『…コノ光ハ…』

 「でぃやぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!」

 俺がフェンリルに斬りかかる。奴は爪で受け止めようとしたが…

 バキン!

 フェンリルの爪が折れた。それほどまでに身体能力がアップしている。

 『!!!?……ソウカサッキノ光ハ……………マズハ貴様カラ消スベキダナ……』

 さっきまでただ立ち尽くして攻防を続けていたフェンリルが動き始めた。狙いは勿論アメリだ。動きが速すぎて俺もトーマスの錬成術さえも奴を捉(とらえ)えきれない。

 『死ネーーー!!!……』

 フェンリルの爪がアメリを襲う。速い…防ぎきれないと思った瞬間…

 ガシィ

 『!!?……ナ、何ダト!…』

 仲間の怪力バカが素手で奴の爪を掴み攻撃を防いだ。

 「フ、フ、フ……この俺様と力勝負をしようってか?…アメリちゃんの愛を受けたこの俺様と!」

 こいつの言う愛とはさっきアメリが出した光のシャワーのことである。というか愛ではないだろう…。

 『…ワシガ力デ押シ負ケル……』

 怪力バカがフェンリルを押し返す。

 「ガハハハハハ!俺様のアメリちゃんを傷付けようとする輩は叩き潰してやるわー!…俺様のアメリちゃんに対する恋の炎は誰にも消せんのじゃー!

 濃ゆい…濃ゆいぞおっさん!そう思ったのは俺だけではないだろう。“あの時”もこんな感じだった。


 
 ………………


 2085周期 L―24日

 俺たちはガンジー村に着いた。トーマスを仲間にしてからフェンリルの情報を得るために様々な町や村をまわったが有力な情報を得られないまま2周期が経とうとしていた。

 「やっと着いたね〜☆ね〜アル(怒)」

 アメリは怒っていた。

 「…あ、あぁ……長かったな……」

 俺はアメリから顔を背けたまま言った。

 「……迷った………からな…」

 トーマスが俺の繊細な心にトドメの一撃をいれた。そうまた迷ったのだ。

 「もう!アルは方向音痴なんだから私たちが言うように川沿い歩けば良かったんだよう!!それが「こっちの方が近道だ!」とか言って森の道なき道を歩くから迷って予定よりも5日もオーバーしたじゃない!」

 俺の繊細な心にグサグサと鋭い槍が刺さる。もっともな意見なので言い返すどころか頭も上がらない。

 「……腹がへったな……」

 「そうよねぇ誰かさんのせいで3日間何も食べてませんから!」

 心が痛い……そう迷ったせいで食料が底をつき、近くに川もないのでこの3日間何も食していない。アメリの機嫌が悪いのはそのせいだ。飯屋で何か奢(おご)ったりすればたちまち機嫌が直る……筈だ。

 俺たちは飯の食える所を村中歩いて探した。見つけたのは酒場だけだったが多少食べ物があるだろうということでその酒場に入った。俺たちは出された料理を一心不乱に食べた。3日分ということで料理の量も半端ではない、周りの他の客達は唖然としていた。

 「ぷっは〜☆美味しかった〜アルご馳走様☆」

 「………ごち……」

 「うぅ…お粗末でした(涙)」

 結局俺の財布が空になるまで飲み食いされた。どんなに泣いても財布の中は一銭も残ってはいない。

 「いや〜☆こんなに美味しい物久しぶりに食べたよ☆アルも私もトムさんも料理下手っぴだからいっつも焼くだけでしょ?味覚に乏しくなっちゃって☆旅は辛いね〜……ん?」

 「?…どうしたアメリ?」

 「ん〜?何かさっきから誰かに見られてるな〜って……」

 「さっきみたいに鬼のような食い方すれば誰でも見ると思うぞ。」

 「……右に同じ……」

 「あ、あのね〜私はまじめに…」

 そんな会話をしていた俺たちの後から人の気配が近づいてきた。

 「…おい…嬢ちゃん…」

 その声に反応して3人同時に振り向いた。その視線の先には4つ先のテーブルで飲んだくれていた身長2メートル強のゴリラに似た大男だった。俺たちは咄嗟に「ゴリラ」という言葉を飲み込んだ。

 「…な、なにか?…」

 「……惚れたぜ…」

 「「「………は?……」」」

 俺たちは顔を見合わせてから3人同時に聞き返した。

 「俺様はゴードン・R・スミス。嬢ちゃん…あんたの無邪気に食べる姿に惚れたぜ!しかもこんなに可愛いとは……俺様の漢心に火がついたぜ!!!

 濃ゆい…濃ゆすぎるこのおっさんと俺は思ったイヤ俺だけではないだろうポージングをしながらあんな恥ずかしい台詞を大声で…誰でも濃ゆいと思うだろう。

 「あ・あの〜?……」

 アメリが口を挟もうとした瞬間。

 「嬢ちゃん…俺様と付き合ってくれぃ…イヤ夫婦になってくれ!」

 一瞬酒場の中が静まった。何を言われたのかが咄嗟の内には理解できなかった。俺たちはもう一度顔を見合わせ言葉の意味を考えた。

 「「「…………えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」

 プロポーズだった。確かにアメリはもうすでに18才なので結婚してもおかしくないが見た目はどう見ても15才程度。そんな娘にプロポーズをしたのだゴードンはロリコンだったのだ。

 「え?あ、あの…その、えっと……ご、ごめんなさい!…」

 ガーン

 ゴードンのバックにこんな文字が浮かんだように見えた。さらに背景は黒くなり、ゴードン自身は真っ白になっていた。仕方ないだろうどんな娘だって初対面のおっさんにプロポーズされれば絶対断るものだ。

 「あ、あのゴリラさん…」

 間違えた。ゴードンというつもりがつい容姿で思いついた名前がでてしまった。

 「俺様はゴリラじゃねー!!ゴードンだ!!“ゴ”しか合ってねーじゃねーか!!“ゴ”しか!!」

 必殺!卓袱台返し!!この言葉のごとく俺たちのテーブルはひっくり返されてしまった。荒れ狂うゴリラ…じゃないゴードンは被害を広げていく。それを制止したのはトーマスだった。ただ足をかけ転ばせただけだったがゴードンを正気に戻すにはこれで充分だった。

 「………あんた……何者?……」

 「ほう、こいつは……気に入ったぜ!…俺様は大盗賊団総頭ゴードン・R・スミス!…“元”だけどな」

 さっきと同じく喋っているときはポージングをする。癖なのだろう。ただ少し違っているのは鼻血が出ていることぐらいだ。

 「元?」

 俺が聞き返した。その言葉を聞くやいなやひっくり返したテーブルを直し始め、キレイに並べた後に俺たちと同じテーブルに着いた。以外にマメな奴だった。

 「おおよ!4周期前にフェンリルが現れたせいで盗賊団は壊滅、何とか生き延びた俺様はこんな辺鄙な村で酒を浴びてたってわけよ。」

 「へぇ〜、まぁ盗賊団が無くなったのはよかったよな。」

 「……同感……」

 「盗賊って怖いもんね〜☆」

 「お、お前らな〜こっちは死活問題だぜ〜」

 少しばかりの笑いが酒場を明るくした。



続く




感想など頂けたら嬉しいです。 感想は下の感想フォームか感想掲示板までよろしくお願いします。

お名前
 (※必須)

メール
 (※任意)

タイトル
 (※必須)

感想
 (※必須)



<BACK    NEXT>