魔王伝記 Vol.1 狼王フェンリル
    第四章 2086周期 Aー1日 ゴードン その2




 7日後、特にこれと言った情報を得られなかった俺たちはガンジー村をあとにした。余分に一人多くなっているような気がしていたが触れるのが怖かった。

 ザッザッザ
  ズン・ズン・ズン

 「……………」

 ザッザッザ
  ズン・ズン・ズン

 「……………」

 ザッザッザ
  ズン・ズン・ズン

 …さすがにもう耐えられなくなっていた俺は思いきって触れてみることにした。

 「ゴリさんアンタなんで付いてくんだよ!?」

 ゴリとはゴードンのことだ。あの日呼びづらいからと言ってアメリが考えたあだ名が“ゴリ”だった。

 「俺様はアメリちゃんの護衛だ!」

 「…………仲間になりたいのか?」

 「違う!!!俺様はア・メ・リ・ちゃ・ん・の 護衛だ!!」

 どこまでもアメリに拘る人だ。

 「……もう勝手にしてくれ…」

 「おう!!アメリちゃんの安全は俺様が守るぜ〜!!!」

 どんなときでもポージングは忘れない。見ているだけで暑苦しくなってくる。俺たちは見て見ぬ振りをしながら赤の他人を装った。…実際赤の他人なのだが…。


 翌日2086周期 A―1日

 今回は迷わないようにと河岸を歩いていた俺たちは毎周期恒例になってしまったアメリの誕生日パーティーを行う事になった。…というかまたアメリにせがまれたのだ。2周期前と同じように…

 「誕生日〜☆」

 「ダメだ!!」

 アメリの言葉に対し俺は即答した。

 「俺たちは打倒フェンリルの旅をしてるんだぞ!1日も早くフェンリルを倒すためには1日も無駄に出来ないんだ!!」

 …俺が言っても説得力がマルでない。

 「………同感だな………迷わない道を来た………早く行こう………」

 何か棘があるように聞こえるがトムの言うとおりだと思った。

 「ヤダよ〜(涙)誕生日〜!!!」

 「なんだい、今日はアメリちゃんの誕生日だったのかよ?」

 「…うん……」

 ゴードンがしゃしゃり出て来た。

 「祝ってやろーぜ!小僧!」

 人を小僧呼ばわりしやがる。本当にアメリ以外に興味が無い奴だ。

 「小僧じゃない!アルベールだ!!何回言えば分かるんだ!!?それにダメと言ったらダメだ!」

 「ヤダ!ヤダ!ヤダ!ヤダ!ヤダ!ヤダ〜!!花も恥じらう可憐な乙女の19才の誕生日なんだよ〜!??祝ってよ〜!祝って!祝って!祝って!祝って!祝って!祝って〜!!前周期からアルが祝ってくれるの楽しみにしてたんだよう〜!!ねぇ〜祝って〜!!」

 アメリの駄々っ子攻撃が始まった。人の肩を鷲掴み、大きく揺さぶりながらごねる。しかしこれの何処が“可憐な乙女”なのだろう?だいたい何故この攻撃を受けるのはいつも俺なのだろう?俺が何をしたと言うのだ。そんな中一人落ち込む姿があった。ゴードンだ。

 「…じゅ、19才…もっと若いと思っていたのに…俺の恋が…」

 何を言うおっさん!そんな若い子捕まえてプロポーズしたんか?とツッコミたかったがツッコミの出来る状態ではなかった。…ロリコンの心理は分からない。

 …結局アメリには負けた。俺たちはアメリの誕生日を祝うことになった。河で魚を獲り、持っていた食料で華やかに飾った。とても以外だったのはゴードンがプロ並みに料理上手だったことだ。

 俺たちは食って、飲んで、騒いだ。そうそう、今周期の俺は“ケンタッキーおじさん”の衣装でアメリを笑わせた。なんでも異世界で大評判らしい。お約束だが「何でそんな物持っているの?」というツッコミは無しだ。

 「……よいしょっと☆」

 腹がいっぱいで騒ぎまくった俺たちが休んでいると急にアメリが立ち上がった。

 「?……どうしたアメリ?」

 俺が聞くとアメリが答えた。

 「うん?水浴び☆向こうの岩陰で水浴びてくるよ。…………覗いちゃダメよ〜?ア〜君☆」

 「だ、誰が覗くかー!!!それにその呼び方やめろ!」

 「あははははははははは☆」

 アメリは笑いながら河下の方へ歩いていった。

 「……たく!アイツ俺をなんだと思ってやがんだ!?」

 少々荒い口振りで俺が呟いているとトムが言った。

 「…………鈍感…………」

 「はぁ?なんだよそれ?」

 「………おい小僧…」

 トムに聞き返そうとしたときゴードンが割り込んできた。

 「だから俺は小僧じゃない!アルベールだって……」

 ゴードンが今までにないほど真剣な顔をしている。

 「おまえ………アメリちゃんのことどう想ってんだ?」

 「は?」

 真剣な顔してこんなことを聞いてきた。

 「………そろそろ…ハッキリさせたほうがいい……」

 「はあぁ??」

 トムまでもがこんなことを言ってくる。

 「ど、どうってアメリは仲間だろ?」

 「そうじゃなくてだなぁ、俺様が言いたいのはだなぁ……」

 俺はゴードンが喋べるのを手を出し制止した。

 「………………あんたらが言いたいことは……分かるよ。…俺がアメリのことを好きなのか…嫌いなのかってことだろ?………俺は多分好き……なんだと思う。」

 俺の必死の告白だった。この想いを人に語ったもは初めてだ。

 「……やはりな……」

 「それならアメリちゃんを悲しませんじゃね〜!!どう見たってアメリちゃんはお前に惚れてるぜ!?だからよ〜……」

 「ダメだ!!」

 俺はゴードンの言葉を遮った。

 「だとしても…ダメだ!奴を…フェンリルを倒すまでは何も出来ない!!」

 「………それは同感だ………」

 「お、お前ら何でそんなにフェンリルに拘るんだ!?どうせ無駄死にみたいなものだぞ!!それより細々と暮らす方が良いじゃねぇか!!」

 「………………」

 「…俺の村は…奴に皆殺しにされた…俺の目の前で…」

 俺の手は強く握りすぎたために血が滲み出していた。

 「それに俺は一回死んだんだ…フェンリルの手で…」

 「な、なに〜!!?」

 ゴードンは驚き後に仰け反った。

 「!!!?…………初耳たぞ……」

 トーマスも驚いた様子だった。

 「…あぁ、その時助けてくれたのがアメリなんだ………一度は諦めようと思ったときに打倒フェンリルの後押しをしてくれたのもアメリだ。……俺はその期待に応えなくちゃならない!その時に全ては…自分のことはフェンリルを倒した後にと決めたんだ!!」

 「「………………」」

 俺の話の後幾ばくか無音の時間があった。

 「……よっし!決めた!!小僧…イヤ、アルベールよ俺様を仲間にしてくれ!!」

 「「………は!?………」」

 「お前の心意気、信念の深さが気に入った!!おめぇの行き着く先を俺にも見させてくれ!!…頼む!」

 「き、急に言われても…なぁトム?」

 「…………あぁそうだな…………」

 「どうしたの〜☆」

 その時アメリが水浴びから帰ってきた。

 「あぁ…ゴリさんが仲間になりたいってさぁ…」

 「えぇぇ?う〜ん…いいんじゃない?ゴリさんいい人みたいだしさ☆」

 「なっな!そうだろ?さっすがアメリちゃん!よく分かってらっしゃる!!んん〜濡れ髪もすっごくキュ〜トだぜ!!アメリちゃん!」

 …結局そこかと思った。

 「う〜ん…まぁいいか。んじゃ宜しくゴリさん!!」

 「おお!!まかしとけ!!」

 こうしてゴードンが仲間になった。しかし水浴びから帰ってきたアメリが少し泣いていたように見えたのは気のせいだったのだろうか。まさかさっきの話しを聞かれていたとは想いもしなかった。


 
 ………………


 現在

 「おおっっっし!こっからが本番じゃ!!」

 「「「「…おおぉ!!!」」」」

 『…貴様ラ…我ヲ…ナメルナーー!!!!

 フェンリルの身体が強く光り始めた。何か今までにない強い力を感じた。



続く




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