魔王伝記 Vol.1 狼王フェンリル
    第五章 2086周期 J―20日 ユーリ その2




 ユーリは俺たち一人一人に部屋を貸してくれた。そして今夜はこのまま休むことにした。ベッドに入り眠りに就いた俺は悪夢を見た。2082周期 B―21日フェンリルによってトール村が襲われた時の夢を。


 ………………

 「アル!ダニー!逃げろ!!」

 父さんの叫ぶ声

 「お、お前達だけでも逃げて!!」

 母さんの叫ぶ声

 回りを見渡すとフェンリルを先頭に40体のワーウルフが村人を襲っている。村人は次々と倒れていく。鮮血が飛び散る中俺は走っていた。ダニーの…弟の手を引きながら。

 「兄さん!僕はヤダよ逃げるなんて!」

 「バカヤロウ!逃げなきゃ殺されるんだぞ!!」

 「だからって父さんや母さんを置いていけない!兄さんの意気地なし!!

 そういうとダニーは俺の手を振り払い父さんと母さんの元に走っていった。しかしその先では父と母がフェンリルの爪にかかっていた。

 「うわわわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ダニーは剣を抜きフェンリルに向かっていった。

 「やめろー!ダニー!!」

 そしてダニーまでもがフェンリルの爪の餌食となった。

 「ダニー!!!!!!!」



 ………………


 「うう……ダニー…」

 「…アル…」

 「うわあああぁぁぁぁあああぁぁぁ!!!ダニーーー!!!」

 俺は飛び起きた。体中が汗で濡れていた。

 「アル!大丈夫!?」

 「はぁ…はぁ……あ、アメリ……」

 そこにはアメリが心配そうに俺の顔を見ていた。

 「一体どうしたの?凄い汗だよ!!」

 「…夢を見た……悪夢だ……」

 「夢?」

 「……俺はあの時……あの時どうしてダニーの手を離したんだ……無理にでも連れて逃げてればダニーは…ダニーは!!」

 「……大丈夫。私たちはここにいるよ。貴方の側から離れはしないよ。だから安心して、今まで救えなかった命の分貴方と私たちで生きていくの。それが今生きてる私たちの大事な努め。だからそんなに悲しまないで。」

 アメリの言葉1つ1つが俺の心を癒していく。俺はいつもアメリに助けられる。

 「……アメリ……」

 「ん?なあに?」

 「お前どうしてここに?お前の部屋は確か一階じゃ…?」

 そうここはデイリー邸二階の客間の一室でアメリの部屋は一階でユーリの部屋の隣だった。

 「え?あのその…えっと……あ、そうそうアルが魘されてる見たいだったから気になって…(汗)」

 「……そうか…ありがとうアメリ。」

 そう言うと俺はアメリに身を任せ眠った。その日はもう悪夢を見なかった。……部屋のドアの隙間に光る目があった。その正体はユーリだったが俺には知るよしもなかった。

 「……折角アル様と………先を越された……」

 翌日2086周期 J―20日

 朝起きるとアメリと同じベッドで寝ていたことに驚いたが昨晩のことを思い出しすべてに合点がいった。あの時のアメリはまるで聖母のようだった。

 「おいアメリ。朝だ起きろ。」

 「うにゃ?ふわ〜い。」

 起きあがったアメリを見て俺は驚いた。なぜならアメリは全裸だった。

 「お、おっおっおっおまえ何で裸なんだよー!!!」

 「え?いや〜ん☆アルのエッチ〜☆」

 「そうじゃないだろ!!!服着ろ!服!!」

 まったく朝っぱらから俺をからかってそんなに楽しいのだろうか?楽しいのだろう。どう見ても楽しんでいる。

 「私寝るときは絶対裸なんだ〜☆」

 アメリは服を着ながら話す。

 「あ〜そうかい。」

 俺はカラ返事で返した。その時の俺は耳まで真っ赤になっていたらしい(後日談)

 「アルって以外にウブなんだ〜☆」

 着替え終わったアメリが俺に絡んでくる。

 「うるせー!!だぁっとれ!!!」

 下に降りた俺たちはユーリが準備してくれた朝食を食べた。味はともかく腹にはたまる。食べ終わるとユーリが話し始めた。

 「……アル様……私を仲間に…して頂けませんか?……父、母の仇討ちのために!……これでも……棒術の師範認定を……承けています…」

 「え?」

 アメリが身体全体で反対する。しかし彼女の目は本気だった。俺はその熱意に打たれた。

 「…分かった。ユーリ仲間になってくれ!」

 「…あ…有り難う御座います……不束者ですが……宜しく…お願いします……」

 三つ指でこんなことを言ってきた。俺にどうしろというのだ。

 「……妹を……宜しくな……」

 トーマスまでもがこんなことを言っている。失敗したかもと俺は思った。


 
 ………………


 現在

 「さぁ来いフェンリル!!最後の勝負だ!!」

 『…ヨクモ…我ヲ怒ラセタナ…』

 フェンリルは立ち上がり俺たちの方に突っ込んでくる。



続く




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