ゴーストスイーパー横島蛍 第12話
「・・・・・・・・・さよなら・・・・・・パパ・・・」
私は横島忠夫めがけて、右手を振り下ろしたの。
“やめて!!”
「!!!?」
横島忠夫に止めを刺そうとした瞬間、突然声が聞こえたような気がしたの。 誰? 不意に、私はその人への攻撃の手を止めてしまったの。
“ヨコシマを傷つけないで!!”
いったい誰なの!? 頭の中に聞こえてくる声。 耳を塞いでも聞こえてくるの。
「くっ!」
それでも私はもう一度右手を振り上げ、横島忠夫に攻撃しようとしたの。
“ダメよ! お願いやめて!!”
また、横島忠夫の前で右手は止まったわ。 だけど、私が止めたわけじゃない。 動かしたくても動かない。 まるで金縛りにあったみたい。 どういうこと? まるで私の腕じゃないみたい・・・・・・・・・
横島忠夫は何か不思議そうに私を見ているわ。 私自身、不思議でしょうがない。 何があったのかさっぱり解らないわ。 何とか攻撃を仕掛けようと思ったけど、腕だけじゃない、全身が言うことを聞かない・・・・・・・・・
ポツ、ポツ、ポツ、ポ・・・・・・ザー
雨が降ってきたわ。 急に強くなった雨に、私もその人も全身が濡れているの。 私の手は未だに動かない。 魔力を手に集めようとしても、それすら出来ずにいるの。
「・・・っく!?」
私は踵を返した。 横島忠夫に向かっていかなければ体は動くみたい。 そこから離れようとその人に背を向けて歩を進めたの。
「ほ・・・た、る?」
しゃべれる状態ではない横島忠夫が私の名前を呼んだ。 私は視線だけをその人に向けて、
「・・・私は・・・あなたを許さない」
その一言だけを伝えて、空を飛んで工場跡を後にしたの。
・・・・・・・・・・・・・・・<メドーサSIDE>
どうしたって言うんだ? 横島蛍の動きが止まった。 攻撃を受けたようではないし・・・・・・あと一押しだと言うのに。
「ッチ、まだ早かったのかねぇ・・・」
もっと精神に付加を与えておけばよかったかとも思ったが、
「まさか、ルシオラが目覚めたってのかい?」
そんな筈は無い。 それにはまだ早すぎるし、目覚めたならただ止まっているような事は無いはずだ。
何秒たったのか、不意に横島蛍が踵を返し、横島忠夫に
「・・・私は・・・あなたを許さない」
とだけ伝えて屋上に居たあたしを飛び越えるように空を飛んで行った。 あの様子ではルシオラが覚醒した訳ではなさそうだ。 それならまだ使える。 横島忠夫は今動けない。 止めを刺すならチャンスだけど、それでは面白みが無い。 計画が台無しになる。 ・・・・・・とすれば今は・・・
「まっ待ちなよ!」
横島蛍を追いかけ、更に精神に揺さぶりをかける。 確実に横島忠夫を殺させるために。 今日はしょうがない。 まぁ次があるだろう。
「横島! 今日のところは命を預けておくよ! 次に会った時はこれじゃすまないからね! 首を洗って楽しみにしておきな!」
捨て台詞を残し、あたしは横島蛍を追いかけるため空を飛び工場跡を後にした。
・・・・・・・・・・・・・・・<蛍SIDE>
雨はやんだ。 東京のビル街。 地平線に沈もうとする夕日。 私はこの夕日を見るのが子どもの頃からとても好きだった。 昼と夜の狭間にある夕日。 数瞬の間しか見られないこの夕日が儚げでとても綺麗に見えた。 だから好きだった。 よくあの人とも夕日を見に行ったっけ・・・・・・。 夕日を見ている間は言葉を交わす事も無くただ無言で眺めていた。 私はその時間がとても好きだった。 あの人が何を考えながら夕日を眺めていたのか、気になった事は何度もある。 だけど聞いた事はないの。 なぜ? 夕日を眺めているとあの人の事ばかり考えてしまう。 父の敵、本当の私の敵・・・・・・なのになぜ? 私は東京タワーの展望台の上に膝を抱えて座り込んだ。
「やぁ」
「・・・・・・・・・なに?」
後ろから掛けられた声に振り向かずに答えた私。
「後一歩と言うところだったのに何をためらったんだい?」
「・・・・・・・・・」
「・・・まぁいいさ。 今なら横島も弱ってるからね。 今のうちにあたしが止めを刺してきてもいいんだけどね」
「!!? ダメよ!!」
踵を返そうとしたメドーサを私は制止した。 こちらを向きなおしたメドーサは薄く笑っている。
「あの人は・・・横島忠夫は私が倒す。 そう誓ったんだから・・・父にも・・・私にも・・・」
「それなら任せるけどね。 横島なら明日にでもまた来るだろうさ。 それで仕留めるんだね。 もしもの時はあたしも出るからね」
「・・・・・・わかったわ」
メドーサは私に言葉を伝えその場から姿を消したの。 明日・・・あの工場跡にあの人が来る。 私を騙し続けてきたあの人が。 必ず倒さなきゃならない。 あの人は私の信頼を裏切っていたんだから。 だけど・・・
「あの声は何だったの・・・?」
あの戦いが終わってから声は聞こえない。 体も自由に動く。 だけど・・・・・・「ヨコシマと戦ってはダメ」、「ヨコシマを傷つけてはダメ」と心に語りかけてくるような気がする・・・誰なの? いったい誰? なぜ止めようとするの?
いつの間にか夕日は沈んでいた。 私は思想を巡らせたまま夜の闇の中に姿を消したの。
・・・・・・・・・・・・・・・<横島SIDE>
雨の中、俺は動く事も出来ずにいた。 蛍の攻撃で気を失ってしまったタマモに駆け寄る事も出来ず。 雨が強くなっていく。 魔力の波動を感じ、工場跡に雪之丞たちが駆けつけたのは蛍たちが去ってから15分ほどたってからだった。
強い魔力の波動を感じた雪之丞は妙神山に連絡を取り、小竜姫様とヒャクメを東京に呼んでいた。 雪之丞たちに運ばれ、俺たちは横島、伊達除霊事務所に移動していた。
「どうだ?」
「ダメなのね〜。 魔力を遮蔽しているのか、それとも強力な結界の中に居るのか・・・私の目を欺くなんて相当だけど、今どこに居るかはさっぱりなのね〜」
雪之丞の質問にため息交じりで答えるヒャクメに全員が落胆の顔を見せた。
「まさか魔界でも消息を絶っていたメドーサが現れるとはな・・・」
「姉さんはどうしてメドーサなんかと・・・」
蛍の麻酔の解毒とメドーサの情報取りのためにワルキューレとべスパにも小竜姫様から連絡が行っていたらしい。 俺たちが事務所に戻った頃にはすでに待機していた。
「俺のせいだ。 蛍にはアシュタロス戦のことはほとんど話してなかったんだ。 アシュタロスとルシオラの関係や、俺とルシオラの事・・・・・・唯一話したのが、この事件が元で俺が魔族になったって事だけだったんだ。 ルシオラの記憶が戻るまでは何も話さないって考えてた俺が悪いんだ」
「なるほど、メドーサはそれを逆手に取ったと言う事か」
「横島さんが悪いわけではありません。 誰もこのような事態を考えていなかったのですから・・・・・・」
「うむ、以前は魔族側でも元人間を魔神に迎える事に異議を唱える者も多かったが最近は少なくなってきていてな。 我々も気を抜きすぎていた。 こんな事なら横島家族に護衛をつけておくべきだった」
小竜姫様とワルキューレが俺に慰めの言葉をかけてくれた。 その気持ちが今はとてもうれしかった。
「2人とも・・・・・・ありがとう」
「っつう事は現状じゃ蛍の嬢ちゃんをどう取り戻すかって事と、蛇のオバちゃんを倒す事を考えるべきだな」
「そうだな。 だが横島の言葉も聴こうとしない現状では横島蛍の説得は難しいだろう」
「そうですね。 我々神族の説得も聞いてくれるかどうか・・・私たちはまったくと言っていいほど蛍さんとの関わりがありませんから。 以前お会いした時はまだ赤ん坊でしたし」
「そうね〜。 横島さんが魔神化してからは神族も魔族も人界とほとんど接点を持ってないのね〜。 横島さんやタマモちゃんはよく妙神山に遊びに来てくれるけど、蛍ちゃんは来た事無いのね〜」
雪之丞、ワルキューレ、小竜姫様、ヒャクメと蛍を取り戻す方法を考えてはいるが、なかなか答えが出てこなかった。 ちなみに俺やタマモが妙神山に行くときは必ずと言っていいほどヒャクメが居た。 妙神山在住勤務になったわけではないが、俺たちが行くのをどこからか嗅ぎ付けて、それに合わせて遊びに来ているらしい。
蛍は転生してから妙神山には連れて行ってはいない。 これもルシオラの記憶が戻ってから改めて行くつもりでいたからだ。 少なからず神族とも関わりを持たせておけばこの現状を起こさずに済んだのかもしれない。 これも俺の誤算だ。
「蛍の嬢ちゃん・・・ルシオラの記憶が戻るのを待ってるのはダメなのか?」
「無理ですね〜。 転生から現在までの蛍ちゃんの成長過程は横島さんに教えてもらったけど、このペースならルシオラさんの記憶が戻るのは1,2年後・・・たとえ逃げ切れても、その間に何度も襲ってくるでしょうから・・・それに・・・」
「それに?」
「・・・・・・それに、その状態でルシオラさんの記憶が戻ったら、蛍ちゃんの記憶も残るから、横島さんやタマモちゃんを襲った事に絶えられなくて精神崩壊を起こす可能性が在るのね〜。 おそらくはそれもメドーサの計画のひとつなんだと思うの」
「だめ! そんなのダメよ!!」
「タ、タマモ落ち着け!」
この場には小竜姫様、ヒャクメ、ワルキューレ、べスパ、雪之丞、タマモ、そして俺がいる。 タマモは解毒もしたし、傷も完治させてあるが、やはり元気がない。 俺もだが、蛍の事が気になって、かなり動転している。 精神的にかなり苦しい状態だった。
「なぁみんな、俺たち一度家に戻ってもいいかな?」
俺はタマモのほうに視線を流しながら聞いた。
「な、何言ってんだよ! お前ら命狙われてるんだぞ! 出歩いたら相手の思う壺じゃねぇかよ!?」
「・・・・・・いえ、大丈夫でしょう。 昼間あれだけの戦闘をしています。 メドーサも神、魔族が出てきた事は感付いている筈です。 今夜の内に奇襲をかけては来ないでしょう」
雪之丞は異を唱えたが、小竜姫様はタマモの状態に気付いてくれた。
「・・・そうだろうな。 だが分かっているとは思うが」
「あぁ、移動は文珠で転移するよ。 あと今夜は外出しねぇから」
「それならいいだろう」
「だけどよ、メドーサたちが奇襲して来ねぇとすると、これからどうするんだ?」
「時を見て襲っては来るでしょうが、こちらから探すのが良いでしょう。 メドーサは油断がなりません。 見つけ次第全員で包囲し倒すのが得策でしょう。 これからはなるべく全員で一緒に動きましょう。 まぁ効率が良いとはいえませんが、そこはヒャクメに頑張って貰いましょう」
「任せてなのね〜」
「では早速明日の朝から捜索を開始するとしよう」
今後の方針を決め、俺とタマモは家へと転移した。
つづく
あとがき
ずいぶんと間が開いてしまいました。 鱧天です。 HP引越しの勢いでGS蛍を最終話までドンドン書いていこうと考えていたんですが、リアルがかなり忙しく、執筆できずにいました・・・orz
久しぶりに時間が空いて書いては見たものの、なんか内容がゴチャゴチャに・・・後半何を書きたいのか分かり辛くなってます。
さて対蛍戦も一回目が終了。 まもなく第2回目がスタートです。神族、魔族も出てきて物語りも終盤を迎えようとしています。 横島は蛍を取り戻せるのか!? GS蛍 第13話こうご期待ください
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