ゴーストスイーパー横島蛍 第7話


 「ただいま〜」

 今日帰りに会ったあの人。 その人の言葉に私はいろんなことを考えちゃった・・・ どういうことなんだろう・・・? ちょっとため息交じりで私は家に帰ってきたの。

 「あっ、おかえり蛍」

 ママが台所から顔を覗かせてお帰りの挨拶をするの。 いつもと変わらないママがそこにいるの。

 「? どうしたの蛍? なんか元気ないじゃない?」

 「え?」

 ちょっと顔を見ただけですぐに私が元気ないの分かっちゃうなんてすごい。 思い切ってママに聞いてみようかな?


 「どう見ても純魔族のあんたが魔族と妖怪の相の子? いくら横島忠夫が魔神だとしても妖怪との間で純魔族が生まれるわけがないじゃないのさ! あんたこの16年間まったく疑わずに生きてきたって言うのかい?」


 今日の帰りでの出来事、道端であったあの人の言葉・・・本当なの? 私はパパとママの子どもじゃないの? それなら私はどうやって生まれてきたの? 私とパパの関係って? パパとママが結婚していないことに何か関係があるの? 知りたい・・・ううん、知りたくない・・・怖い・・・知ってしまったら何もかもが崩れてしまいそうで・・・だけど・・・

 「・・・ううん、なんでもないよ・・・ただちょっと疲れちゃったかな? ・・・ごめんママ、今日はもう寝るね」

 「え!? ちょ、ちょっと蛍?」

 ママの声を背に私はそのまま部屋に戻ったの。 ベッドの上に寝転がって眼を閉じて何も考えずに寝てしまおうかと思ったのに、今日あの人に言われたことといろんな考えが私の頭の中をグルグルしてるの。
 私とパパの関係・・・魔神であるパパ、魔族の私。 普通ならあってもおかしくない関係なのに・・・本当の私? なにそれ? 今の私は本当の私じゃないの? じゃぁ私は何? 16年間生きてきた私は? たくさんあるパパとの思い出、いろんなことをしたママとの思い出、たくさん遊んだ友達とも思い出・・・小さいときはいやな思い出もあるけど、いろんなことがあって今の私があるのに・・・わけわかんないよ・・・誰か教えてよ・・・?? 知りたいの私は? ううん知りたくない・・・本当に?

 「ただいま」

 あっパパだ。

 「あっお帰りヨコシマ」

 「あれ? 蛍は?」

 「なんか元気ないのよね・・・どうしちゃったのかしら? ヨコシマ学校で蛍になんかしたの?」

 「何でだよ」

 「だってそれぐらいしか思いつかないし」

 「おい・・・学校ではいつも通りだったけどな〜」

 パパに聞くのが一番早いのは分かってるけど・・・私とパパの関係。 でも今はパパと会いたくない。 凄くギクシャクしそう、それに・・・まっすぐパパの顔見れないよ。 ホントにどうすればいいの?

 結局一睡も出来ないまま朝になっちゃった。 夜何度かドアの前までパパが声を掛けに来たけど私はそのまま寝た振りをしたの。 いろいろ考え込んで迎えた朝はいつもは優しい光に見えるカーテンの間からの日差しが淋しげで、明るい鳥たちの歌は悲しい歌に聞こえたの。

 「・・・パパとママ・・・なんか会いたくないな」

 いつもならまだ起きていない時間。 パパとママもまだ寝てる。 私は制服に着替えて部屋から出たの。 洗面所で顔を洗って置手紙をダイニングの机の上において私は家を出た。

 “学校に行ってきます   蛍”

 


 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<ヨコシマSIDE>

 ガチャ

 「ふぁ〜っと、さてご飯の支度しなくちゃ・・・??・・・!!?」

 タマモがキッチンへと出て朝食の支度を始める音に俺の頭が覚醒し始める。

 ドタドタドタ!

 「ヨ、ヨコシマ!」

 タマモが凄い勢いで廊下を走り、部屋の中に進入してくる。 俺の頭の覚醒は加速し、俺は上体を起こしてタマモに視線を向けた。 白いフリフリエプロンが可愛らしい。 よく似合ってるな、うん。 だがタマモの顔はなにか心配そうな表情だ。

 「う〜ん・・・どした?」

 「蛍が・・・」

 「!!? 蛍がどうしたんだ!?」

 俺はベッドから飛び降り、タマモに駆け寄った。 そしてタマモの手に握られた一枚のメモ紙・・・

 「こんな朝早くに? 昨日は帰ってすぐ寝ちまうし・・・蛍のやつ一体どうしたんだ?」

 「・・・避けてる・・・・・・のかな?」

 「なにを?」

 「何って・・・私たちを」

 避ける? 俺たちを? あの蛍が?? 昨日まで一緒にたくさん笑い合ってた俺たちを? 一体どうしたってんだよ!

 「ねぇ、ヨコシマもしかして・・・そろそろ何じゃない?」

 「!? いや、まだ早すぎる。 アイツが覚醒するとすれば、せめて同じくらいの魔力になる必要があるはずだ。 まだ回復しきっちゃいないよ・・・」

 アイツの復活。 それは確かに俺が望んでいることだ。 でもまだ覚醒するには早い。 そりゃ魔力自体は徐々に上がってきてるけど、アイツまでにはなっていないし・・・ホントにどうしちまったんだよ! 蛍!!

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<蛍SIDE>

 雲ひとつない空、花の香り、鳥の声、そして私の歩くこの道と私自身を照らす太陽の光。 昨日はとても清清しい気持ちになれた学校への道なのに、今日は光で映された私の影がとても黒くて、大きくて・・・私を暗い気持ちに誘っていくの。 こんなんじゃダメなのに。

 「あっ! もう学校着いちゃった! はは、今日はいちばんのりかな」

 自分の暗い気持ち無くしたくて明るく声出してみようと思ったけど段々と声が低くなって最後のほうは私の中で反響するだけ、外には出ないくらい小さな声になっちゃった・・・
 学校には着いたけど、まだ校門も開いてない。 誰かが来るまで待つしかないかな? 私は門の前にしゃがみこんだの。 ・・・今はパパやママに会いたくない。 だけど一人でいるのも嫌だな・・・いろんな考えが出てきて、何でも嫌な考えになっちゃう。 パパやママとは赤の他人で私は私じゃない。 じゃぁ誰? 私は何?

 「・・・嫌だな・・・一人は・・・うぅ・・ううぅうぅ」

 私の目から涙が出てきたの。 止まらない。

 「蛍ちゃん?」

 「え?」

 涙目の私は声のするほうに顔を向けたの。 その声の主は・・・

 「・・・おキヌさん?」

 「ど、どうしたの!?」

 「え? あ、い、いえなんでもないんです」

 おキヌさんは私の涙に驚いたみたい。 でも突然おキヌさんと出会った私の涙はいつの間にか止まっていたの。

 「・・・おキヌさんこそどうしたんですか? こんなに早く・・・それにその大荷物」

 よく見るとおキヌさんはキャリーバッグを引いてたの。 その上にはボストンバッグまで。

 「あぁ、これね。 今実家から帰ったとこなのよ。 夜行で来たからこんな早くなっちゃったけど・・・ねぇ蛍ちゃん」

 「はい?」

 「ちょっとお茶しない?」

 え? そりゃ学校始まるまでにはまだ・・・

 「時間はあるけど・・・」

 「じゃぁ行こう♪ そこに24時間の喫茶店あるのよ」

 おキヌさんは私の手を引いて歩き出したの。 ・・・正直助かった気分だった。 一人でいることが嫌だったし、怖かったから。
 喫茶店に入って窓際の席に座ったの。 注文をして、それが運ばれてきて・・・おキヌさんは今紅茶を飲んでる。 私の前にはアールグレイの紅茶とホットサンドが置かれてるの。 頼んだのは紅茶だけだったのに・・・

 「今日は私のおごりよ。 こんなに朝早いんですもの朝ごはん食べてないでしょ?」

 「は、はい」

 そういえば昨日のお昼からさき何も食べてないんだったわ。 確かにお腹が空いてるような気もするけど、今は食べたくないな・・・だけど

 「・・・いただきます」

 

 

 「ねぇ蛍ちゃん」

 「はい」

 ちょうど食べ終わって紅茶を飲んでいるとき、おキヌさんが話しかけてきたの。

 「何があったかは知らないけど、深くは聞かないわ。 でももし、話せることなら、私でもいいなら話してちょうだい。 私蛍ちゃんの力になりたいの」

 凄くうれしかった。 おキヌさんの言葉。 おキヌさんに聞いてみようかな? パパとママのこと、私のこと・・・・・・・・・聞けないよ。 おキヌさんは私が赤ん坊のときから私を知ってるパパとママの友だちでとても近い。 パパやママにとても近い。 近すぎて聞けない。
 私はそのまま俯いちゃって何も言えなかった。

 「そっか」

 おキヌさんはため息をついて紅茶のカップを持ち上げて口へと運んだの。 そのおキヌさんの手に・・・

 「?? ・・・おキヌさんその指」

 「あぁこれ? 私ね、結婚するの」

 おキヌさんの左手の薬指にはダイヤの付いた指輪がはめて合ったの。

 「相手は地元で高校に通ってたときの同級生なの。 ちょっとカッコいいのよ♪ あっ、でもこれは横島さんやタマモちゃんには内緒よ。 後でたくさん驚かせるんだから!」

 「・・・・・・あの、おキヌさん、ちょっと聞いてもいいですか?」

 「ん? なに?」

 「・・・結婚って・・・幸せですか?」

 「・・・・・・う〜ん、難しい質問ね。 幸せになれるかどうかは結婚してみなきゃ分からないし・・・でもね、今私はとっても幸せよ。 だって好きな人と一緒になれるんですもの」

 おキヌさんはにっこり笑ってそう言ったの。 結局は幸せって事だよね。 やっぱりそうなんだ。 結婚は幸せなことなんだ。 じゃぁ何でパパとママは?
 私たちはおキヌさんの「あら? そろそろ学校始まっちゃうわね」と言う言葉に店を出たの。

 「あの・・・今日はご馳走様でした」

 「いいのよ」

 「それから、おめでとうございます」

 「ありがとう。 ・・・・・・蛍ちゃん、元気出してがんばってね!」

 おキヌさんはにっこりと微笑みながら私を元気付けようとしてくれたの。 そして私たちはその店の前で別れて、私は学校に向かったの。

 前に聴いたことがある。 パパは待ってる人がいるって、その人はママより大切? 私が・・・子どもがいるのに結婚しない理由って? 一緒に住んでるのに・・・私にはパパもママも愛し合ってるように感じるのに・・・それは嘘なの?? ねぇパパ?

 「ほたる〜〜!! おっはよ〜〜!」

 校門の前まで行くと私を見つけてヒノメお姉ちゃんが後ろから駆け寄ってきたの。 今私はとっても暗い気持ちになってる・・・でもこのままだったらヒノメお姉ちゃんにも他の人たちにも嫌な思いさせちゃうよね・・・明るくしなきゃ

 「あっ! ヒノメお姉ちゃんおはよー!」

 笑顔で、元気な声で。 がんばれたと思う。

 「今日は早いじゃない。 いっつも遅刻ギリギリなのに・・・??」

 「たまにはね♪ ん?」

 ヒノメお姉ちゃんが私の顔をジーっとみてるの。

 「蛍・・・あんたどうしたの? そんな元気なくって無理してるあんた始めて見るわよ」

 「!!!?」

 そんなすぐ分かっちゃうのかな? 無理してるって・・・いつもと変わらないようにしたはずなのにな・・・そりゃそっかな? ずっと従兄弟みたいに育ってきたし、いっつもヒノメお姉ちゃんと一緒にいたから何でも分かっちゃうんだよね。 私が悩んでること、ヒノメお姉ちゃんなら分かってくれるかな? パパとママのこと・・・

 「・・・ねぇヒノメお姉ちゃん」

 「なに? 相談なら何でも聞くわよ!」

 ・・・ありがとう。 とっても嬉しいよ。

 「結婚って・・・幸せなことなんだよね?」

 「そうねぇ、きっと幸せなのよ。 家のお姉ちゃんもお義兄さんもなんだかんだ言って幸せそうだし・・・って何その悩み? どうしたのよ?」

 ヒノメお姉ちゃんは質問には答えてくれたけど悩みのことはあんまり分からないみたい・・・そうよね、はっきり聞かなきゃだよね。

 「うん・・・家のパパとママ・・・・・・なんで結婚して・・・ないのかな?って」

 私馬鹿だ!! こんなことヒノメお姉ちゃんに聞いたって分かるはずないじゃない!! パパたちの事だもん! パパたちにしか分からないよ・・・

 「そんなの当たり前じゃない」

 「え??」

 予想外の答え・・・当たり前? なんで?

 「あんたのお母さんってタマモさんでしょ? タマモさんは金毛白面九尾の狐。 つまりは妖怪。 あの二人がいくら愛し合ってても人間と妖怪じゃ結婚できないわ。 戸籍がないんですもの」

 あ!! そ、そうよね・・・そうだった。

 「結婚なんて私たち人間が勝手に決めた事だもの。 私も含めて人間側は結婚したいと考えている人多いけど、妖怪側はどうだか分からないわ。 でも一緒にいたいと思ってるからここに蛍がいるし、二人は一緒に住んでるんでしょ?」

 「そっか、そうだよね! ありがとう!! ヒノメお姉ちゃん!!」

 「やっと、いつもの蛍だね」

 そっか、悩む事なかった。 パパとママは結婚って言う形がなくても幸せなんだ。 心と心に絆があるんだ。 だから私が・・・私? 私がいる・・・? 私とパパの関係は? あの人が言ってた。 私とパパに何かがあるって・・・何があるの?

 「・・・・・・蛍・・・」

 また悩み始めた私にヒノメお姉ちゃんが心配そうな顔をしたのは分かってる。 だけどこれはヒノメお姉ちゃんにも聞けない。 私以外がみんな知ってるなら、この悩みはもっと早く来たはずだもの。 でも今まで関わってきた人で知ってそうな人はいない。 ・・・どうしようかな? あの人に聞きにいく? だけど・・・
 私は俯いたまま学校に入っていったの。 教室に入って、何とか明るく振舞って・・・でもマコちゃんやユウちゃんには心配された。 だけど、私は「なんでもないの」って言ったの。 ごめんねマコちゃん、ユウちゃん。 でもこれは相談できないよ。
 学校にいる間もいろんなことを考えた。 でも全然答えが出ない・・・授業中何度も先生に怒られたけど、まったく授業には集中できないの。 あっという間に放課後になっちゃった。 太陽は西に傾いて来てる。 そろそろオレンジ色になってくる頃・・・つまり夕方。
 あの人は夕方にって言ってた・・・

 「・・・決めた・・・・・・聞きに行こう!」

 私はボソッと独り言のように呟いて学校を後にしたの。 私に足は郊外にある廃屋へと向かっていたの。

つづく





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