ゴーストスイーパー横島蛍 第8話
「はぁはぁ・・・ここだ」
太陽がかなりオレンジ色に変わった頃、私は郊外の廃屋に着いた。 息を切らすほど走ってきた。 聞こうかどうか今まで悩んでいたとは思えないほど、無我夢中だったみたい。
ギィ
少し重たくなった玄関の戸を開けて私は中へと入っていったの。 中はまるで洋館のように大きなホールになっていたの。 少しボロボロだけど、窓全部がカーテンで閉じられて、家の中は薄暗くなっていたの。
「・・・誰もいない??」
ホールの真ん中あたりまで歩いてきたけど、人がいるような気配はない。 どういうこと?
「やっと来たかい」
私の背後から急に声が聞こえたの。 私は驚いて振り向くとそこには
「あなたいつの間に・・・」
昨日の魔力を遮断するコートを着た蛇のような目をした魔族がいたの。
「もしかしたら来ないのかと思ったよ」
口元を歪ませた嫌な笑いをしながら私にそう言ったわ。 確かに最初は来るのを躊躇っていたわ。 でも私は知りたい。 パパとの関係。 本当の私。 ううん、違う。 今の私、今のパパとの関係が本当だと、そう確かめるために私はここに来た。
「確かに私は来たわ。 でも勘違いしないで! 私はあなたの言葉を信じたわけじゃない! 間違いだと言う事を確かめに来ただけよ!」
「はん! まぁいいさ、間違いかどうかはすぐ分かるよ。 さて、本題に入ろうか。 あんたはアシュタロス戦役って知ってるかい?」
その魔族は鼻で私の言葉を笑った後、私の周りをゆっくり回りながら話し始めたの。
「え、えぇ。 私が生まれる2年くらい前にあったアシュタロスって言う魔族との戦争でしょ? その戦いが元でパパが魔族になったって聞いたわ」
「じゃぁ、人間が魔族になる方法って知ってるかい?」
「え?」
その魔族は私の周りを回っていた足を止め、私の目の前に立って聞いてきたの。
「あたしが知る限りだと3つあってね、一つは魔界に行って魔族によって魔族にしてもらうこと。 二つ目は、魔族と契約して、その力を使った術を暴走させて、力に食われる事。 そしてもう一つが、魔族の霊基構造を体内に吸収して、徐々に魔族化すること。 さて、あんたの親父はどれだと思う?」
「そ、それは・・・」
私は知らない・・・どうやって魔族になったかなんて・・・
「さて、話を戻そうか。 これを読んでみな」
そう言って投げ渡された冊子。 表に丸秘の判子が大きく押されている。
「これは??」
「GS協会が保管している、アシュタロス戦役の秘文さ」
「な、どうやってこんなもの・・・」
「ちょっとした事さ。 それより読んでみな」
そう言われて、私は表紙をめくり、読み始めたの。 中には・・・
アシュタロス陣営“魔神アシュタロス、配下3人の魔族を従える。 また、高速演算鬼土愚羅を作成、配下としている。 大型移動要塞兵鬼逆転号を所有。”
戦闘について“当時、“魂の結晶”探索中のアシュタロス陣営にスパイとして横島忠夫を投入。 美神美智恵指導の下、逆転号を半壊させる事に成功。 以降、一時期消息不明となる。”
「こ、これって・・・スパイ??」
「その続きが重要だよ」
“魂の結晶が霊体内にあるとされる美神令子暗殺指令が発動。 しかし横島忠夫帰還後、文珠使いである横島忠夫と美神令子の文珠による同期合体において、爆発的な霊力の向上があるとされ、対アシュタロスの有力な人材として暗殺指令取り消し。 直後、アシュタロス陣営が南極にいる事が判明。 核ミサイルを所持しているとされ、阻止すべく、南極へと向かう。
ミサイル発射阻止に成功。 配下2人の魔族を捕虜とする。 一時はアシュタロス殲滅に成功かと思われたが、東京にてコスモプロセッサを始動。 しかし、横島忠夫により魂の結晶の破壊に成功。 コスモプロセッサを破壊。 直後アシュタロス、究極の魔体を使用。 東京に向かうも、同期合体をした美神令子、横島忠夫により殲滅。 消滅を確認。”
その後のアシュタロス陣営について“魔神アシュタロス・・・消滅。 配下魔族、ルシオラ・・・消滅、同魔族べスパ・・・魔界正規軍入隊、同魔族パピリオ・・・妙神山にて保護観察中、高速演算鬼土愚羅・・・神族、魔族により処理。”
「・・・これがいったいどうしたって言うの!?」
「そこに書いてある魔神アシュタロスの配下の魔族3人は魔神アシュタロスが作った魔族の3姉妹さ。 長女のルシオラ、次女のべスパ、三女のパピリオ。 そして長女のルシオラ、それがあんたさ」
「え?」
な、何を言ってるの? この人? 私が魔神アシュタロスに作られた魔族? どういう事?
「あんたはアシュ様の配下だった。 そしてそれにはルシオラは消滅したと書かれている。 だけど実際はそうじゃない。 さっきあたしが言った魔族になる方法を覚えてるかい? 最後に言った魔族の霊基構造を吸収する方法を横島はルシオラ、あんたでやったのさ!」
「そ、そんな・・・」
私は少し後ろによろめいたの。
そんな筈はない。 パパがそんな事するなんて・・・いったい何のために・・・違う、私はルシオラだって認めたわけじゃない! 絶対違う!
「う、嘘よ・・・」
「証拠があるのかい?」
「それこそ・・・私がルシオラって言う証拠なんか・・・」
「この3人の魔族は」
「え?」
「昆虫を媒体とした魔族だった。 パピリオは蝶、べスパは蜂、そしてルシオラは幻影や魔力を麻酔として使える蛍の魔族だったのさ」
「ほ、蛍??」
「そうさ、あんたの能力そのままだろ? そしてこれを見な」
そう言われて手渡された一枚の写真。
「わ、私?」
「そう、いや、正確に言えばあんたになる前のルシオラの写真さ。 あんたの姉妹が撮ったね。 これで少しは納得したかい? あんたはルシオラでアシュ様に作られた蛍の化身。 いくら能力が似てようと、妖孤の娘じゃなく、横島とも血なんか繋がっちゃいないのさ!」
「そ、そんな・・・」
私は写真を握り締めたまま膝から崩れ落ちたの。
「そして、ここからが面白い話。 魔神を消滅させる方法って知ってるかい?」
「え?」
「魔神はそう簡単には消滅できないんだよ。 神魔のバランスが崩れてしまうからね。 でもアシュ様は人間たちから危険な存在とされて消滅させる事にしたんだ。 ふざけた話じゃないか! 危険な存在? 当たり前さ! 魔族なんだ! 人間から見て魔族が危険な存在じゃなければなんだって言うんだい? 大体、魔族がいるから神族がいる。 それでバランスが取れているんだ。 じゃぁどうするのか? まったくふざけた事を考えたものだよ。 人間から魔神を作る事にしたのさ。 そして名乗りを上げたのが横島忠夫って訳さ。 まぁ人間や神族にとっては願ったり叶ったりさ。 アシュタロス戦役の英雄が魔神になってくれるってんだからね。 だけど、横島にしてみたらただ、その地位が欲しかっただけなんだよ。 今はまだ大人しくしてるみたいだけど魔力を蓄えたら何を始めるか・・・アシュ様と同じような事をしてくれるのかね? だけどあたしはあの男が許せないんだ! 地位欲しさに人間の考えた作戦を裏手にとって、そしてあんたを利用し、吸収して魔神になったあいつが!」
「・・・私を・・・利用? 魔族になる・・・為にってこと??」
「そうさ。 横島はスパイとして潜入したときルシオラであるあんたに惚れていた。 だけどあんたは「うん」とは言わなかった。 ルシオラは姉妹の中でも特に人間を嫌悪していたからね。 そこで横島はあんたの寝込みを襲ったのさ。 あんたたちはアシュ様によって10コマンドメントコードが魂にインプットされてた。 その中に人間と寝た場合、魂が消滅するってコマンドも入ってた。 横島はそれを知っていて襲ったのさ。 そして消滅し始めたあんたの霊基構造を文珠で集めて、自分の中に吸収したんだ。 さぞや悔しかっただろうね。 嫌悪していた人間に襲われ、あまつさえその人間に吸収されるなんてさ」
「ち、違う・・・パパがそんなこと・・・」
「あんた今、横島が好きなんだろ?」
「え? そ、そうよ! 私はパパが大好きだもの! そのパパがそんな事するはずがないじゃない!!」
「それは本当にあんたの気持ちかい?」
「な、なにを言ってるの?」
「横島忠夫は文珠使いさ。 その気になれば、人の心をコントロールする事なんて朝飯前だろ? あんたのその気持ちが、横島忠夫に植え付けられたモノじゃないのかい?」
私は何も言い返せなかった。
私の気持ちは私のもの。 誰に与えられたものじゃない・・・そう思いたい。 だけど・・・この人の言葉・・・信じたくない! でも・・・私はパパの力を知ってる。 その気になればこの人が言っている事すべてが出来てしまう・・・信じたくないよ・・・教えて、パパ・・・
「あいつは、幼いあんたを飼いならして、自分に従う女にしたかったのさ」
違う。
「だからあんたを吸収したんだ」
違う違う。
「魔神になってあんたを自分のものにするために」
違う違う違う!
「長い間嘘をつき、騙し続け、そしてあいつが望むように育ててきたのさ! 真実を隠してね! 人間のときにそこまで計算していたんだよ、あの横島はね! はっ! 魔族より魔族らしい人間だよ! 横島は! ただし最悪な魔族だがね」
「やめて!! もう・・・聞きたくない」
私は叫んだ後、耳をふさいでしゃがみこんだの。 そしてなぜか私の目からは、涙が零れていたの。
こんな話聞きたくなかった。 こんな所に来るんじゃなかった。 こんな事、嘘に決まってる。 パパがそんな事・・・いつも優しいパパが・・・今まで信じてきたパパが・・・私を裏切っているなんて・・・考えたくない!
「横島は、あんたを吸収して爆発的に霊力が上がったんだ。 それはもう下級の魔族なら倒せるほどにね」
その人はまた私の周りを歩きながら話し始めたわ。 耳をふさいでいても聞こえてしまう。 もう聞きたくないのに・・・
「そして、その力を使ってアシュ様を倒したんだ。 横島はあんたの力を使って! あんたの父であるアシュ様を消したのさ!!」
「いやああぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!」
ドゴン!!
私は体中に霊力をまとわせて、廃屋から抜け出した。
違う! 違う! 違う! パパが私を利用して、私の本当の父を殺したなんて! 私は蛍よ! 横島蛍なんだもの! ルシオラじゃないわ! 絶対違う!
私はそのまま空を飛んで家に向かったの。
ママなら知ってるはず! ママなら私がルシオラじゃないって証明してくれる!!
「ふん、逃しちゃったねぇ・・・まぁいいさ。 かなり精神にダメージは与えられたからね。 あと一息さ。 ・・・でもまさかここまで力を出せるなんてね・・・これは早くしないと使い物にならないかもね」
つづく
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