Oh mon Dieu !!

Oh mon dieu!!


腕時計の時間が正しければ、試験開始時間から60秒が経過していた。 左隣の男は試験開始直後にまるで反射神経のテストでも受けに来たかのようにテスト用紙を 勢い良く裏返していたのに対して、右隣の男は鉛筆を握る気配すらない

(?最近の流行「記念受験」というやつ? それにしても問題を解く振りくらいはするべきじゃない? 気になってしょうがない。集中力が足りないと言われればそこまでだけど)


「そこ・・・受験番号162番、ちゃんと座りなさい」


の受験番号は163番だった。 どうやら例の右隣が試験管から注意を受けたらしい。 顔を上げればカンニングだと疑われる恐れがあるので好奇心を抑えながら机に向かっていただが、 試験管の声を合図に反射的に顔をそちらへ向け

「うぁっ」


本日二回目となる奇声を上げた。 其れもその筈、面接が無いにしろセンターに、何度も着まわしたような白のTシャツにこれまた何ヶ月も洗ってなさそうな人工的にではなく年月を経て擦れてしまったジーパンを着ている男が椅子の上に体育座りでいたら 驚くに決まっている。

匂わないのが不思議なくらいだと思い、は視線を男の頭部に移した。 黒い髪は男性特有の硬さが有り頑丈な印象を受けるのに対して、男の顔はの顔より白く病的で 更にはギョロ目の下にクッキリと隈が作られており、長期間に渡る目の酷使が伺える。 しかしながら、眼球自体は死んでいるようでもなく、光をさしているように見えた。 はその男の視線を追って、三列前の席に目をやった。

「び、美女と野獣・・・」 驚いたことに三列先の男もの右隣のギョロ目を見ていたのだ。 しかし、この三列前の男、の右隣とは比べ物にならないくらいの上物だった。

夜神 月(やがみ らいと)

「眉目秀麗、才色兼備の皆の王子」 という異名を付けられたと同じ塾に通う男であった。

二人は少しの間見つめあうように互いを認識し、やがてどちらからとも無くテスト用紙に視線を移していた。 の時計の時間が正しければ試験開始から300秒が過ぎようとしていた。