Oh mon Dieu !!
Oh Mon Dieu
タクシーを拾ってホテルに戻ると先程流河が乗っていたモノと同じ型のリムジンがあった。
まさかとは思ったものの、好奇心の塊はナンバーを確認せずにはいられなかった。
「ビンゴだ。」
ホテルには最上階である23階とその一つ下に、スウィートルームがあり、その階全体が貸切となっている。
そして、が見晴らしの良い、空に一番近い最上階のスイートルームに予約を入れ、先客の存在を知らされたのが1ヶ月前。
「お得意様」を断っても良いくらいの上客らしかった。
とりあえず、多摩川に近ければ良いかと思い直し、22階にそれ以上の文句を言わずに住み始めた。
日本で運転手付きリムジンを乗り回す男がスイートルームを使用しない筈が無いわけで
はこめかみに血管を浮かべて、沸々と煮えたぎる怒りを表現していた。
「どこまでも、不愉快な野郎だな!!おい」
どこまでも性格の悪いだが、他人への非難を不用意に口に出すのは稀であった。
しかし、夜神とは約束を取り付けたものの、今日一日流河のせいで予定を狂わされたのが気に食わなかった。
自分のペースを乱されるのは誰しもが不快を持つもので、しかも流河は故意にそれをしていた。
そこが、不愉快な野郎と汚く罵られる由縁なのであろう
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は習慣のように帽子を深く被ってホテルに入ると、スイートルーム使用者用の特別なエレベーターに乗り
指紋認証コードを読み取る黒いガラスの上に親指を置いた。
22階のボタンが点滅し、ドアが閉まる。
部屋に入ると、スーツを脱ぎ、高校のときのジャージを着る。
それから電話を取りルームサービスを頼んだ。
「ウィンナコーヒーと、鴨のオレンジソースのソテー、デザートに林檎をお願い。」
「はい、かしこまりました。少々お時間がかかりますが、よろしいでしょうか?」
「ええ」
は受話器を置くと、「料理」がくるのをベッドの上でホテルに置いてある聖書を読みながら待った。
時計の長針が二周したところで、ノックが聞こえてきた。
「どうぞ。」
「申し訳ありません。」
「気にしてないよ。オーナー」
今日は祝日でが電話を入れたのが8時、一番の客入れ時である。
目の前の男が、その場を離れることが容易でないことは明白である。
「それより、あの暗号が受付の方に理解してもらえてなかったら、どうしようって不安がってたところ」
「当ホテルのルームサービス担当者は一人しかおりません。そのような間違いは・・・」
「冗談よ」
「はぁ」
「単刀直入に言うね。23階にいる人物は何者?」
「申し訳御座いません。いくら様でも,その御質問に答えるわけには行きません
当ホテルの信用問題にもなってきます。」
「いくら?」
「お金の問題以前のお話で御座います。今回は、一切をお教えすることができないのです。」
「私を誰だと思ってんの?」
「 様、当ホテルをいつも贔屓にしてくださるお客様で御座います。」
「違う。私は 、只の大学生。
で、この質問は純粋な好奇心から来ているもので
情報の悪用も利用もしないし、そんな能力も無い、只の一般庶民。」
「では、その好奇心を少し抑えていただけると大変ありがたいのですが」
「嫌よ。無理よ。私、我侭で自己中で我慢のできない人間なの」
「はぁ、しかしながら竜崎様は特別なお客様で御座いまして当ホテルの信用のみでなく国家の・・・」
「りゅう・・・ざき?竜崎?23階の人は流河早樹じゃないの?」
「・・・?ああ、なるほど、勘違いをしていらっしゃるようで、当ホテルは例え今を騒がすアイドルであろうと
お得意様である様を優先いたします。
23階の人間は流河早樹では御座いませんよ。一体どこから、
そんな噂をお聞きになったのですか。」
でもスイートルーム用の車庫に入れられていた車は確かに新入生代表を務めた流河のもので、まさか
偽名・・・?
何故?
まさか、本物のキラ?
それで、夜神君に近づいて捜査の情報を聞き出そうとしてるんじゃ・・・
一瞬頭をよぎったものに背筋が凍るのを感じた。
の表情を落胆と受け取ったオーナーは彼女に同情し、何を血迷ったのか、23階の男の情報を漏らした。
「様を信用して、この話は内密にお願いしたいのですが、上の階の宿代は国家予算から降りていまして、
政治家でも、どこかの業界のトップと言うわけでもないらしいですよ、先日スーツ姿の男が6人入りまして
何をしているのか全く検討が着きませんが・・・」
このオーナーが例えを信用しようとその逆は無いだろうと彼女が思ったのは言うまでもない。