Oh mon Dieu !!

Oh mon dieu


が本来滞在する予定であった23階のスイートルームは、甘ったるい匂いが充満していた。 机には、ゴディバのチョコレートとマキシムのケーキがずらっと並べられ、 目の前にはブルーマウンテン100パーセントのコーヒーが置かれている。


「夜神君のお父さんが心臓発作で倒れました。」


引きずり込むように連れてきておいて、第一声がこれであった。 は、想定外の一言に、コーヒーを噴いた。 すぐにキルシュから、細かい刺繍の施された高そうなハンカチを受け取り汚れを拭くが、 クリーニングに出しても落ちそうにないシミとなった。 キラ事件が明るみになって4ヶ月、世間ではもはや警察もキラも無能だと諦念にも似た雰囲気が伺える中、 夜神の父親はLと組み、岐路操作に強硬的な姿勢を見せていた。 狙われても何ら不思議はない。 しかし、ここで明らかになった最重要項目は、 父の死ではなく、 夜神月がキラではないということである。

夜神月は、なるほどキラになる素質を十分に兼ね揃えた御仁である。 彼の思想、経験、生い立ちを持ってすれば、彼以外の該当者がいらりょうかって程しっくりくるのだ。 そして、その夜神月がキラであれば、自分の父親はまず殺さない。 なぜなら、日本警察がキラについて何の情報も持っていないことや、取るに足らない存在だということを息子である彼は知っているからだ。 切羽詰ってもいない状況で、実の父親を無意味に殺すような人間ではない。 夜神の父親に何の面識もないは、正直、彼の死には興味がなく、夜神月の無実確定に胸をなでおろし 安堵の溜息を漏らした。 しかし、こちらの様子を冷静に観察している竜崎の視線に気付き、背筋を伸ばす。

カップに残ったコーヒーを、一気に飲みこみ、竜崎を睨んだ。 砂糖を入れ忘れたコーヒーが、酷くにがく感じた。



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「それで?」

「一応、夜神君のお友達には、お知らせしておいた方が良いかなと思いましたが、 ・・・必要なかったようですね。」

「世界では三秒に一人、人間が死んでいるの。 それに対して、一々悲しまないよ。」

「死んでいませんよ。」

「え」

「夜神総一郎は死んでいない。彼は生きています。 貴方は死んでいると聞いて安心しましたね。 それは、夜神君がキラであると仮定した際、夜神総一郎は殺されないと確信していたからではないですか? よって、夜神総一郎がキラによって殺されたことにより、夜神の無実が証明され、貴方は安堵を覚えた。」

は、竜崎の右後ろに待機しているキルシュにむかって「私の考えていたこと顔に出てた?」と、 何度も聞きたくなったが、それを言うと、全てを肯定することになるので、軽く唇を噛むのにとどめていた。


さん、私は夜神月がキラだと睨んでいます。そこで、貴方に捜査に協力して欲しいと思っています。」

「協力なんて絶対、嫌。 私のギャンブラー信条は、金はかけても命は賭けるな、なの。」

「夜神君がキラであることを否定しませんでしたね。」

「・・・アンタと話したくない。」


この部屋にいたら、自分の心情を全て悟られてしまうのではないかと不安に駆られたは、 キルシュに「帰りたい」という無言のメッセージを送るが、 彼はニコニコと目を弧に終始描くだけで、遂に役に立つことはなかった。


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この尋問、拷問のようなことが、一晩続き、 から一切の夜神月についての情報をもぎ取り終わると、 朝一では部屋から追い出された。
怒り心頭に達す。恨み骨髄に徹す。
春風が空を桜色に染める季節、窓からやさしい光が差し込む、ホテル最上階の通路で は命をかけた復讐を誓うのであった。



「キラを捕まえて、あのギョロ目パンダをぎゃふんと言わせてやる!!」