Oh mon Dieu !!

Oh mon dieu



目の前に手錠で繋がれた青年が二人、その横で香水をプンプンさせた少女が一人。 何の説明のないまま、竜崎にお茶に誘われた。 お茶に誘うのに説明も理由も必要ないと思われるが、 は元来自分の興味のない事には、とことん付き合いが悪いため、 理由もなく他人と時間を共有することがなかった。 しかしながら、情報収集にも個人では限界があり、書類に目を通す日々に飽き飽きしていたころの誘いだったのもあり、 二つ返事で了承したのだった。


「ミサさんが三人ではデートと言わないと、駄々をこねたので」


手錠をつけたギョロ目パンダが飄々と言う


「三人だと、なんか、ただ友達と遊んでいるみたいだけど、ダブルデートならちゃんと恋人に見えるでしょ? でも、竜崎さんって、彼女いたんだ。ミサ、ビックリー」

p 「もビックリー」

弥海砂の口調を真似して、腰をくねらせて見るが、眉間の皺や引きつった口は元に直せそうも無い。 目は瞳孔を開き、竜崎を睨み殺す勢いだ。 の記憶が間違っていなければ、あの尋門事件以降、竜崎とは一度もあってはいない、キラ事件の証拠集めに躍起になって 日々を送っていた。 更にいえば、竜崎の彼女になった覚えは全くと言うほど、なかった。


、趣味変わったな」


夜神は口をあんぐりとあけて、を見ている。 それに対して、はミサを一瞥し、目を細め、夜神を見つめた。


「お互い様じゃない?」


確かに可愛いけど、こんな頭の軽そうな女と付き合うなど夜神らしくない。 というか、あり得ない。 確かに可愛いけど(二回目)。


「ミサちゃんだっけ?いつからの仲なの?」


ミサは目を煌かせながら、嬉々としてその馴れ初めを話してくれた。 相槌を適当に打ちながら、必要な情報だけを脳内にインプットする。 第二のキラとキラが接触したと思われる時期から二人の交際は始まっていた。 偶然にしては、不審な点が多い。 何よりも、人の趣味嗜好と言うものはこう半年やそこらで変わる物ではない。 ミサのような子と月が付き合うのは、どう考えても不自然だった。


「いつの間にこんな可愛い子見つけちゃって、あー、残念だな。 私も夜神の事好きだったのになぁ。」


棒読みだけれど、ミサって子の性格を把握するには十分の効力を持っていた。


「ええ!!ミサの月なんだから、絶対渡さない!!」


ミサの目には狂気と声には怒気が含まれていた。 なるほど、夜神に心酔しているわけだ。 それに対して、ミサに抱きつかれながら、夜神は呆れるような、面倒臭そうな、それでいて困ったような、複雑な表情を浮かべている。 両思いには全く見えない。 の知る限り、夜神月はツンデレではなかったはずだ。 冗談だよと、いうと、ミサは心底安心した様子で、こちらに穏やかな瞳を向ける。 表情をコロコロ変える彼女は魅力的で、 でも一途な彼女は心に狂気を含んでいて、 それは敵に回ったとき、脅威になるだろうと予測できた。

キラ信者がキラを崇めるように、 彼女もまた夜神を崇めるのであろう。

この二人はキラと第二のキラの関係に似ていると感じる点がいくつかある。 コレまでの動向を見てみると、 キラと第二のキラの心情や関係が明確に分かる。 第二のキラはキラよりも頭が悪いが、キラよりも何であるかは分からないが見えない絶対的な力を有している。

第二のキラが一方的にキラに接触したがっていた。 キラはそれを嫌々ながらも受け入れざる終えなかった。 この関係は、ピタリ夜神とミサに当てはまる。 はふと、竜崎に目を向ける。 先程から、 は観察されていたのだろう、バッチリと目が合った。


さんは月君のことが好きだったんですか?それは意外です。 貴方は私の側だと思っていたのですが。」


竜崎はの思考など読んでいるだろうに、砂糖とミルクをどっぷり入れた紅茶を飲みながら、飄々と言う。


「それは、どういう意味で?」


言葉が足りない竜崎に、言葉を促しても、明確に答える気はないらしいのか。


「貴方が思っている通り意味で」


分からなければ、一生分からなくてもいいという様な目をこちらに向けた。 プライドの高いはこれを屈辱的に感じたが、 彼の足りない言葉を補う能力はこちらに十分あったのに、 あえて促した自分の行為自体も幼稚であったと思い。 ショートケーキのイチゴを口に含み、罵る言葉と共に胃に入れ消化した。


さんと竜崎さんって心と心が通じ合ってる感じで、素敵よね。」


なんだか、隣で、的外れなことを言っている女がいるが この際無視である。

最近、キラはミツバの誰かではないかと、もっぱら、夜神月よりもそちらに注目していたのだが、やはり、夜神は限りなく黒に近いということが 今日のダブルデートで知りえた情報だった。

最悪の条件であったが、最高の情報を得ることができた。 しかしながら、竜崎の彼女であることを否定していなかったことをは のち、後悔することになる。