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『こいきな男ら掲示板(居酒屋こいき)』
に投稿・記載されたお話

御木宏美先生ご自身の作品
その4

(2000年10月〜2000年7月)
2000年10月11日 「久しぶりィ♪」
〜原稿執筆のスケジュール事情で、お話の投稿をお休みしていました〜

 それは11日の夜の食卓でのこと。
「ママ、シンくん、あしたばんごはんいらないの」
 進哉が可愛いお目々をキラキラさせながら宣言した。
「え? どうして?」
 進は驚く。保育園でお泊まり会があるとは聞いてない。だいいち明日は京平の誕生日だ。
 だが、進哉に続いて、
「進、オレもいらない」
 まず瑞波が、さらには、
「オレもいらない」
「オレも」
 京介と奎悟までが夕食不要宣言をした。
 進は目を丸くした。
「どうしたの、みんな!?」
「ん〜とね、シンくん、あしたはあきらせんせいのトコにおとまりするの」
「佐伯先生の所に!?」
 進哉の答えに進は驚いて声をあげた。
「オレは新田がフランス料理食べに連れて行ってくれるって」
 瑞波が言った。
「オレたちはお父さんとドームに行ってくるから」
「巨人の最終戦、見に行くんだ(ちなみに今年のペナントレースは終りました)」
 奎悟と京介も理由を述べる。
 進は奎悟の言葉にあがった悟の顔を見た。悟は微笑った。
「たまには二人っきりの誕生日もいいかと思ってな」
 進は目を見開いた。
「伊達・・・」
「うお〜っ!」
 隣で京平が雄叫びを上げた。
「おまえら愛してるぜっ!」
「その代わり、プレゼントはナシだかンな、オヤジ」
 京介が水を注した。
「いらねえ、いらねえっ! 進と二人っきりで過ごせたら、オレはもうなにもいらねえっ!」
 涙を流して喜びながら、歓喜のあまり、隣の進哉の顔を引き寄せて、その柔らかい顔にチュッパッ、チュッパッとキスをする。
「いや〜ん!」
 から揚げを食べた油ギトギトの唇を押し付けられた進哉は泣き声をあげた。
「パパ、ばっちい!」
 シャツでごしごしと顔を拭かれても、今の京平には些細なことだ。続いて、お兄ちゃんたちにもキスをしようとして、さすがにこれは全員に拒否された。それでも席を立ってしつこく追い掛け回す。
「来るなよっ!」
「遠慮するな! オレのささやかな感謝の気持ちだっ!」
「その気持ちだけで充分だよっ!」
 食卓の周りをドタバタと駆け回る三人を横目に見ながら、進は、気を使わせちゃってゴメンね、と親友に詫びた。けれどもそういう頬は嬉しそうに染まっている。
 悟は苦笑した。
「言い出しっぺは瑞紀なんだけどな」
「瑞紀が?」
 進は少し驚いて、騒ぎのなか、一人我関せずと味噌汁を啜っている男の顔を見た。
「瑞紀・・・」
 瑞紀はハンと笑った。
 と、そこに、
「姫さ〜んっ!」
 京平が涙と鼻水を垂れ流しながら駆け寄ってきた。
「愛してるぜぇっ!」
 ブチュ。
 妙な音をたてながら、京平は熱烈なキスをした。
「・・・・・・・・・」
 顔が離れたあと、静かに睨み上げた瑞紀と京平の間には見事な鼻水の橋ができていた。


 翌日、果たして進と京平が二人っきりになれたかは、定かではない。



2000年11月12日 「久し振りに♪」


「くしゅん」

 暗闇のなかで小さなくしゃみがした。
「進哉?」
 奎悟が横になったまま囁く。
「おにいちゃ〜ん」
 隣のベッドからかわいい半べそ声が聞こえた。
「どうした? 寒いのか?」
 他の兄弟たちを起こしてはと思い、長男気質のお兄ちゃんはひそひそ声で尋ねる。けれども、
「うん。さむい〜」
 甘えたの末っ子は普段と変わらぬ声で訴えた。
「進哉、もう少し静かに」
 お兄ちゃんは焦った。そのとき、
「いいよ、奎悟。オレも起きてる」
 二段ベッドの上で京介が答えた。
「オレも〜」
 続いて進哉の上段に寝ている瑞波が不機嫌な声。奎悟はなんだとため息をついた。結局、四人とも起きていたのだ。
「なんかすっげえ寒くなってきたな」
 京介が呟いた。奎悟と瑞波はうんと頷いた。
 京介の言うとおり、気温が急激に下がってきた。四人とも蒲団をかけているのだが、綿入りのそれを通り抜けて寒さが背中からぞくぞくと這い上がってくる。
 進哉がまたくしゃみをした。
「シン!」
 奎悟が声を上げた。
「おにいちゃん、さむいよォ」
 まだ四つの進哉は我慢なんかできない。ベッドを揺らして訴える。
 京介が上から奎悟を見下ろしてきた。双眸がどうすると問い掛ける。
「お父さんたち、まだ仕事してるよな……」
 奎悟は気弱に答えた。今夜は忙しいと言っていた。
「でも、このままだったら、シン、風邪ひいちまうぜ」
 進に言いにいくか、と奎悟は目で尋ねた。
 そのとき。
 ドサッ。
 突然、向かいのベッドの上段から蒲団が放り出され、音をたてて床に落ちた。そのあとを瑞波がはしごを伝って降りていく。
「瑞波?」
「もう一枚蒲団かけりゃいいんだろ」
 そう言うと、瑞波は床に落とした蒲団を進哉の上にかけ、その隣に潜り込んだ。
「シン、今夜はオレと一緒に寝ようぜ」
「ぬくい〜!」
 それは蒲団か、瑞波か。あるいはその両方なのか。定かではないが、進哉は歓声を上げた。
「シンくん、もうだいじょうぶ。ねんねできる!」
 京介と奎悟は顔を見合わせた。
「そのテがあったか……」
 京介がボソリと呟いた。
 しかし。
 進哉の隣には瑞波がさっさと入ってしまった。ということは……。
「……く、来るか?」
 少し躊躇いながら奎悟が色黒の悪ガキ少年に向かって蒲団の端を少し持ち上げる。
「……お、おう」
 こちらも戸惑いながら、京介はすでに小学校高学年に間違われる大きな少年に向かって返事をした。


 さて、子供部屋でそんなやりとりがあったとは露知らぬ父ちゃん組。
「うそ!?」
 リビングに上がった進は思わず声を上げた。寒い。まだ十一月だというのに、火の気のないそこは真冬並みに冷えている。事務所は暖房をつけていたので、急激な寒波に気付かなかったのだ。
「子供たち、大丈夫か?」
「あー!」
 悟の言葉に、進は慌てて子供部屋に走った。まだ毛布を出していない。さぞかし寒がっていることだろう。もしかしたら風邪をひかせてしまったかも。ああ、もうちょっと注意してやればよかった。
 悔やみながら駆け込んだ進は、手近な京介のベッドを覗き込んだ。が、
「あれ?」
 いない。慌てて隣の瑞波を見る。が、ここもカラ。
「え、ウソ!? なんで!?」
 進がパニックを起こしていると、
「進」
 あとから入ってきた悟が二段ベッドの下段を指差した。
 そこでは。
「あ……」
 進は小さく声を上げた。
 そこでは、まあるくなった進哉が瑞波に守られるように、顔と身体を仲良く寄せ合って眠っていた。見ると、進哉のピカチュウの上掛けの上に、瑞波の蒲団がもう一枚かけてある。
「進、こっちもだ」
 奎悟のベッドを覗いた悟が言った。振り返ると、やはりそれぞれの蒲団を重ねて、しかしこちらは互いに背を向けて眠っている。
「……やられた」
 進は苦笑した。
「まだまだ手がかかると思っていたが、オレたちの気付かないうちに、こいつらも少しずつ大人になっているんだな」
 悟が微笑いながら言う。進はうんと頷いた。あと三、四年もすれば上の三人は第二次反抗期に突入して、それこそ親の存在など無視しだすだろう。かつて、自分たちがそうだったように。
 我が子の成長を嬉しく思いながらも、ちょっぴり複雑な気持ちで眺めていると、物音で目が覚めたのか、奎悟が薄っすらと目蓋をあげた。
「ん……、進……?」
 進は他の子たちを起こさないように、シ、と唇に親指を当てた。そして、かがみ込んで顔を寄せると、
「狭いだろ? 蒲団持ってこようか?」
 奎悟は背後の京介に目を向けた。
「……」
 首が左右に振られた。
「今夜はこのまま京介と寝る」
 進は微笑んだ。
「わかった。じゃ、おやすみ。いい夢を」
 そっと頬にキスをする。
「うん。おやすみなさい」
 嬉しそうに微笑んで、奎悟は夢のなかに戻っていった。

 静かな部屋に子供たちのゆったりとした寝息が繰り返される。しばらくそれを聞いていた進と悟は、顔を見合わせて微笑むと、物音をたてないようにそっとドアを閉めた。



2000年12月18日 「無題」

「進哉、もう寝る時間だよ」
 南向きのドアを開けながら進が声をかけた。
 十二月の身を切るような夜風が温かいリビングに吹き込む。
「寒ーっ!」
 寝転がってテレビを見ていたお兄ちゃんたちが肩を抱いた。進は笑いながら、
「早くサンタさんにお祈りして。お兄ちゃんたちもね」
 言われた三人は誰からともなくレゴブロックで遊んでいる進哉を見、それから顔を見合わせ、しょうがないなと頷きあって立ち上がった。
 そう、もうすぐクリスマス。進哉はまだサンタクロースの存在を信じている。
 お兄ちゃんたちはそんな夢はとっくに卒業してしまったけれど、幼い弟の夢を壊さないように、この楽しいウソに付き合っている。もっとも三人の目的はほかにあったのだけれど。
 後ろで悟と京平がテレビを見ている振りをして、耳を澄ましている。
「サンタさん、サンタさん、今年は自転車を持ってきてください。変速つきのマウンテンバイクです」
 凍えそうな夜空向かってまずは京介が言った。
 京平の眉がピクリと上がる。
「僕は自分専用のパソコンが欲しいです」
 今度は奎悟。
 悟の眉根がぐぐっと寄った。
 そして最後に瑞波。
「ラスベガスに行きてえ」
 自分のオヤジに連れて行ってもらえっ!
 京平と悟は心の中で毒づいた。
 父親たちの反応を知ってか知らずか、お祈りを終えた子供たちはニヤリと笑いながら進に向かってよろしくとVサイン。
 進は苦笑した。年々高価になる子供たちの要求。昔はおもちゃとか可愛らしいものだったのに。それだけ成長したということか。向こうでも悟と京平が渋面を作っている。期待するなよという意味も込めて、進は小憎らしい子供たちの髪をくしゃくしゃとかき回した。
 三人は笑いながら温かい部屋のなかに戻っていった。
 彼らはもう知っている。イブの晩、プレゼントを持ってきてくれるサンタクロースが誰なのか。それでも末っ子の夢を壊さないように、今でも付き合っている。
 クリスマス前、夜空に向かってサンタクロースに欲しいプレゼントをお願いするこの行事は、上の三人がまだ幼い時に始めた。それが毎年の習慣になって今でも続いている。
「進哉は?」
 進はまだお祈りをしていない末っ子に声をかけた。
 だが。昨日まで、真っ先に飛んできたのに、どういうわけか今夜は背を向けてまだブロックで遊んでいる。
「進哉?」
 進は首を傾げた。
「どうしたんだ? 早くおいで。サンタさんに」
 お祈りをと言おうとしたその時だった。
「サンタさんなんかいないもん」
 小さな声が答えた。
「進哉?」
「パパもママもおにいちゃんもうそつきだ。サンタさんなんかホントはいないもん。サンタさんはパパとママだってしょうたくんがいってたもん。りかちゃんもいってたもん」
「進哉……」
 進は目を見開いた。
 知らん振りを装っていた悟と京平も振り返って床に座った幼子を見つめている。
 大人たちは顔を見合わせた。
 どうする、と互いの目が言い合う。
 去年も進哉は同じことを言った。けれども、進がサンタさんはいると言うと、素直にそれを信じた。騙すつもりはなかった。ただ一年でも長く夢を見させてやりたかったのだ。
 だが、進哉も今年六歳。保育園の年長さんだ。
 そろそろ限界かと進は心の中で呟いた。お兄ちゃんたちが現実を知ったのはいくつの時だったろう。
 悟と京平は進を見ている。進哉の教育方針を決定する責任は父親である進にある。
 進は心を決めた。
 その時。
「サンタクロースはいるよ」
 不意に京介が言った。奎悟と瑞波も頷いた。
「サンタさんはいる」
「シン、ウソじゃないぜ」
 真剣な表情だった。
「おまえら……」
 京平がなにを言い出すんだと呆気にとられた顔で三人に声をかけた。進と悟も同様だった。
 進哉は疑わしそうな目付きで三人を見ている。それに微笑み返し、京介と奎悟と瑞波は父親たちのほうを振り返った。
「お父さん、六年前、オレたちが何をお願いしたか覚えてる?」
「六年前?」
 京平と悟は顔を見合わせた。思い出せるかと互いに目で問う。そしてどちらも首を横に振った。進も首を傾げている。
 子供たちが笑った。
「思い出せないだろ」
 大人たちはバツが悪そうな表情をした。
「いいぜ。オレたちも何をもらったか覚えてないもん。な?」
 三人で頷き合う。
「でもさ」
 子供たちは軽く微笑った。
「あの時、オレたちが本当にお願いしたは別のものだったんだよ」
「別のもの?」
 進が訊いた。三人は頷いた。
「そう。オレたち、あの時、三人でお願いしたんだ」
「弟が欲しいって」
「そしたら進哉がやってきた」
「あ……」
 大人たちは目を見開いた。
 父親たちの驚いた顔を尻目に、京介と奎悟と瑞波は進哉に顔を向けた。
「だからな、シン、サンタさんは絶対いる。お兄ちゃんたちが保証してやる」
「そりゃ、目には見えないけどさ。でも、サンタさんはいつでもシンのことを見てるよ」
「だから安心していーぜ」
「京介、奎悟、瑞波……」
 進は茫然と呟いた。


 その夜、進哉は絵本の代わりに進から一つの話を聞いた。
 サンタクロースはいつでも、どこにでも、いるのだと。
 人が誰かを思う優しい気持ちがサンタクロースなのだと。


 もうすぐクリスマス。
 今年はなにをお願いしましょうか?




2000年12月24日 「原案は鍋磨き(笑)」


12月24日。毎年この日は翌日の仕事の準備で大忙しなのに、今年は曜日の関係で少し余裕ができた。
 久し振りに夕食でも作ろうかと、進は京平を伴って、大丸ピーコックまで買い物にやってきた。
 進の手料理が食べれるとあって、京平はにやけ顔でカートを押している。考えようによっては、これもデートと言えなくもない。
『あなた、今夜なににするぅ?』
 頭の中はすでに煩悩全開。
 一人百面相をする怪しげな男は放っておいて、進はさっさと必要な物をカートの中に入れていく。
 店を半周回った。大丸ピーコック南青山店(というのか?)は、表通りに面した入口を入ってすぐの所が果物売り場になっている。
「京?」
 ふとカートがついてこないことに気付いて振り返ると、京平は果物の陳列ケースの前で足を止め一点をじっと見つめている。進はその視線を追ってそちらに目を向けた。
「キーウィ?」
 京平が見ていたのは籐のかごに美しく盛られたキーウィだった。ばら売りで一個98円。買えば、と進は一つ手にとった。
 だが、京平は首を横に振った。
「違う。これ」
 男らしい骨ばった指が別のを差した。進は何気なくそちらに目をやった。次の瞬間、彼は目を見開いた。
 京平が指差したのはキーウィの隣に一つだけあった、果物にしてはかなり大きな球体。そしてその値段は・・・
「6000円!?」
 見間違えではないかと思った。けれども何度見ても6のあとに0が三つ・・・。
「これ、ドリアンだろ? 一度食ってみたいんだよなァ」
 京平がその球体を見つめながら独り言のように呟いた。
「こいつ、三ヶ月ぐらい前からずーっとここにあるんだ。通るたんびに眺めてるんだけどよ」
「ちょっ、ちょっと京・・・!」
 進は焦った。そんな進に京平はすがるような目を向けた。
「なぁ、進、買ってみようぜ」
「ダメ!」
 進は即答した。
「なんで?」
「そんな果物一個に6000円なんてとんでもない!」
「けどドリアンだぜぇ? ドリアンって果物の王様なんだぜぇ?」
「王様でもなんでもダメなものはダメ! それにずっとあるんだったら腐ってるかもしれないだろ!」
「ンなもの売るかよ。なあ、一回だけ。クリスマスなんだしィ。みんなで食おうぜ。な? な?」
「ダメっ!」
「進ぅ」
「そんなに買いたければ自分で買えば?」
 冷たく言い捨てると、進はさっさと酒売り場に向かった。
「あ、進っ!」

 けれども京平はどうしても諦めきれなかった。
 最初に見つけたのはまだ日中の陽射しが強かったころ。やはり進と買い物に行ったときだった。キーウィやリンゴは何十個と盛られているのに、それは一つだけポツンと陳列の棚に置いてあった。
 以来、気になって通るたびに眺めているのだが、ほかの果物と違ってそれはいつも陳列ケースに一つだけで、値段も同じ。はたして売れているのか。どうも京平には、ずっと同じ物が放置されているように思えてならない。
 そのうちピーコックに行くと、食料品売り場に用事がなくても様子をうかがうようになり、彼は王様にドリーと名前をつけ、話しかけるようになった。
『よ、ドリー、元気か?』
『よしよし、今日もいたな。おまえ、早くいい人に買ってもらえるといいな』
 だが、一向にドリーは売れた気配を見せない。そうこうするうち、冬がきて、店頭にお歳暮用の珍しい南国のフルーツが並ぶようになり、ますますドリーは見向きもされなくなった。
 そこで京平は決意した。ドリーを救えるのは自分しかいない。

「ダンナ、ダンナ」
 買い物から戻った京平は、進に見つからないように足音を忍ばせて悟の部屋に入っていった。
「なんだ?」
 ベッドに寝転がって雑誌を読んでいた悟は不審げに目を上げた。
「ちょっと相談があるんだけどよ」
 珍しいこともあるもんだなと思いながら悟は本を置いて起き上がった。
「なんだ?」
「いや、おまえ、ドリアンって食ってみたくねえ?」
「はあ?」
 真剣な悩み事だと思っていた悟は眉根を寄せた。
「いや、そこのピーコックにドリアンが売ってるんだけどよ。進に買ってくれって頼んだら断られちまって。今、同士を探してるんだ。消費税入れて6300円。一人3150円でどうよ?」
「なんでそれをオレに言って来るんだ。そんなに食いたきゃ自分で買えばいいだろう」
 心配して損したと悟はベッドに横になった。
「あ、ちょっと、ダンナっ」
「自分で買え」
 そっけなく言って悟は再び雑誌を取り上げた。
「あ、そう」
 京平はあっさりと頷いた。
「残念だったなァ。ドリアンって精力増強剤なんだぜ。一切れ食べればバイアグラ並みにビンビンだったよ。最近、オレ、仕事が忙しくてあっちもお疲れでよォ。ここらで一発精力つけて、今夜は進と思ったんだが。ダンナもそうじゃねえのォ? 姫のヤツはここんところ毎晩遊び歩いてるけどさ。あいつ、ホント、元気だねぇ。あ、だからダンナじゃ満足できなくて、女のトコ通ってるのかもなァ」
「・・・・・」
 邪魔したなと立ち去りかけた京平のセーターの裾がクイと引かれた。
「3150円でいいのか?」

「ホントに買ってきたの!?」
 進は思わず声を上げた。呆れて物が言えないとはこのことだった。
 そんな進の反応は気にせず、京平と悟はニヤニヤと笑いながら、
「切るぞ?」
 京平が声をかける。悟は重々しく頷いた。
 包丁が入れられた。その瞬間、
「うっ!」
 三人は思わず口と鼻を手で覆った。進の足元で寝そべっていたハウザーも飛び上がってあとずさる。
 そこに瑞紀が帰って来た。
「うわっ!? なんだ、このゲロみたいな匂いはっ!?」
「京と伊達がドリアン買ってきたんだよっ!」
 進があまりの臭気に涙目になりながら答えた。
「ドリアン〜っ!?」
 瑞紀はそちらに目を向けた。見ると、京平と悟は包丁を持ったまま激しく咳き込んでいる。
 瑞紀は急いで上着のポケットから携帯電話を取り出した。
「麻美! やっぱり今夜泊まるから、今すぐ迎えに来てくれ!」
 今、わかれたばかりの麻美に電話する。同じように進もリビングの電話に手を伸ばした。
「リーナ? 今からそっちに行ってもいいかな!? 徹さんと冴子さんが留守? あ、じゃあ泊まるよ!」
「お、おい、進!」
「瑞紀!」
 京平と悟が呼び止めるのに、進と瑞紀は
「こんな臭い部屋いられるか!」
「明日、ゴミの日だからね! ちゃんと出しといてね!」
 そういい残して螺旋階段を駆け下りた。急いでハウザーがあとを追う。
 えもいわれぬ臭気が漂う部屋には京平と悟だけが残された。

 その夜、この二人がどうなったかは、筆者も知らない。



2000年12月26日 「めりーくりすます」
〜進哉くんの日記〜

12がつ25ひ   まなべしんや

きょうは ママも パパも だでぃも まみーもおしごとなので
おにいちゃんと きょうちゃんと ちーちゃんと ひろみママのおみせの おにかいに おとまりです。
したら ちゃこおねえちゃんや みなみなおねえちゃんや ぺがこおねえちゃんが おりょうりを つくってくれました。
あ、はうざーもいっしょです。
はるまろおねえちゃんが はうざーとあそんでます。
ひろみママのおみせには おねえちゃんが いっぱい います。
あ、おにいちゃんも います。
ともともおにいちゃんと えいちぶちようは いちばんおくのおせきで むかいあって じっとしてます。
おねえちゃんたちが チュウしろと さわいでます。
でも おにいちゃん はずかしいんだって。
なんで?
パパと ママは よくチュウしてるよ。
それに あのね これはないしょだけど だでぃと まみーも ときどきチュウしてるの。
シンくん みたの。
だでぃは まみーに チュウされると うれしいんだって。
パパも ママに チュウするのがすきって いってるよ。
なのに おにいちゃんは はずかしいの?
なんで?
あ また あたらしいおねえちゃんたちが きた。
うわー ゆきが いっぱい!
おそと ゆき ふってるの?
おねえちゃんの おうちは ふってたの?
いいね。 シンくんとこ ふんないの。
こんど おねえちゃんちに つれていってね。
ぺがこおねえちゃんは いつもいじめてるパパがいないから じぶんで うぉ〜 っていいながら テーブルを ふいてます。
あ ひろみママが よんでる。
え もう ねんねするの?
シンくん もうすこし おねえちゃんと いたい。
あ ちゃこおねえちゃんと ししょーが えほんよんでくれるって。
それだったら シンくん ねんねしても いいよ。
おにいちゃんたちが あぶないって わらってる。
なんで?

きょうは ママも パパも だでぃも まみーも おしごとだけど シンくん いっぱい おねえちゃんが
いるから ぜんぜんさみしくないです。
ママ シンくん いいこにしてるよ。
ほんとだよ。
シンくん おねえちゃんたちが だいすきです。
あ ともともおにいちゃんも えいちぶちようも だいすきです。
だから またピカチウ かってね。
おやすみなさい。

めりーくりすます。 

  -------------------------------

↑導火線娘め・・・(^_^メ)

しんやくん、ピカチュウかってあげるから、
ボクとえいちぶちょうのことは、にっきにかいちゃダメだよ。
おとなのせかいのおはなしなんだからね・・・(^_^;)

byお使い



2000年12月31日 「一年間お疲れ様でした!」
〜進哉くんの日記〜

12がつ30ひ     まなべ しんや

きょうは ママと パパと だでぃと まみーと おにいちゃんと きょうちゃんと ちぃちゃんと
いむサンのおじさんの ところに おもちつきに いきました。
 (子供たちに餅つきを体験させてやろうと招待してくれました  進:筆)
おおきなトラックが いっぱいとまっている おにわで おもちつきを しました。
シンくん きねと うす はじめてみたよ。
しらない おじちゃんや おにいちゃんも いっぱい いました。
いむサンのおじちゃんの おしごとばでは いつも さいごの おしごとのひに みんなで
 おもちつきを するそうです。
ぺったんぺったんした おもちを みて パパが ママのおしりみたいって いいました。
それで まっかになったママに なぐられて いました。
なんで?
さいしょに おにいちゃんと だでぃが いっしょに つきました。
それから パパと きょうちゃんが つきました。
ちぃちゃんは まみーが めんどうくさいっていったので だでぃと つきました。
それから きょうちゃんと おにいちゃんで つきました。
シンくんも やりたいって いったら おもいから ひとりでは むりだって。
それで シンくんは ママと つきました。
ちょっと おもかったけど でも たのしかったです。
それから いむサンおじさんの いえの おばさんに おしえてもらって 
おもちを まるめました。
なかに アンコも いれました。
シンくんが にぎにぎしていたら パパがきて うんこみたいだって。
あうー。
それで また ママに なぐられていました。
ママ あんまり パパを ペチしちゃ だめだよ。
さいごに できあがった おもちを みんなで たべました。
いむサンおじさんの おばさんが きいろいこなを つけてくれました。
あまくて おいしかったです。
おにいちゃんと きょうちゃんは おしょうゆと のりを つけていました。
シンくん ちょっとたべさせて もらったけど シンくんは きいろいこなの ほうがすき。
それから おおきくて まるい おもちを くれました。
もってかえって おうちにかざるんだって ママが いいました。
みんな おおきいのを もってかえりました。
いちばん おおきいのは いむサンのおじさんが おしごとばに かざりました。
あのね これは かがみもちって いうんだって。
きょうは とっても たのしかったです。

えっと ママが ことしいちねん ありがとうって いいなさいって いいました。
ことしいちねん ありがとう。
らいねんも よろしくおねがいします。
みんな おとしだま ちょうだいね。
 (こういうことは書かなくていいの! 進:筆)
あうー。

じゃあね みんな よいおとしを。


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ふんっふんっゾウさん♪裏こいき製作委員会
(C)御木宏美/(株)心交社