平田信登場
1995年10月頃。 平田は、関東通信株式会社の、入社試験を受けて、合格していた。 本社は新宿区。 本人が電話帳事業部を、希望して、同事業部に、入ってくる。 同社で一番、不人気の部署を、希望するとは、変わっている。 その様な噂話が、社内で囁かれていた。 その男の名前は、高橋と言う。 (私の予想では、指名手配される前に、試験を受けて、合格していて、入社後に手配された。 その為に、逃げるに、逃げられない、そういった状況だったのでは、と思っている。) この男は背が高い。 この会社には、Sという背の高い男がいる。 身長は185センチ。 スポーツマンで、筋肉質。 贅肉が無く、スタイルが良い所から、この男に、ついた、あだ名が「筑波のマリリン・モンロー」。 高橋は、マリリンと同じ位、背が高い。 1996年1月、東京の仕事が始まった。 新年の会合にも、東京の仕事にも、高橋は顔を出さなかった。 その間に、へんな噂話を聞いた。 それは、高橋が警察署に行くのを、異常に嫌がると、言う事だった。 やけに気に成る男だ。 そして、私に有った事など、一度も無いのに、私の悪口ばかり、言っているらしい。 妙だと思っていた。 4月に成り、茨城の仕事が始まり、土浦のデポに行く。 ここで始めて、高橋を紹介される。 噂通りに、背の高い男だ。 顔は指名手配中の、平田信に良く似ている。 しかし似ているだけで、別人かも知れない。 なんとか調べる方法は無いのか? その様に考えていた。 そして、ある暑い日、所長のI氏が、新入社員の高橋の為に、飲み会を開いた。高橋は、酒が飲めないという理由で、出席するのを、嫌がったそうだ。 しかし、出席せざるを、えなかった。 本人が、歓迎会に出席しなければ、歓迎会にならないから。 その会で、高橋が、美味しそうに、缶ビールを1本、一気に飲み干した。 そしたら所長のI氏が「なんだよ、飲めるじゃないか。」と言った。 そして「もう一本どうだ。」と言ったら、「いただきます」と言って、もう一本飲んだ。 会の途中で、甲府の事務所内で、内部の人間の犯行としか思えない、事務所荒らしが、有った事が、話題になる。 その時に私が、「誰の犯行か分かる。」と言うと、隣に座っていた男が、小さな声で、「あの男だな」と言った。 そして私に向かって[当ててみようか。]と言った。 そして「犯人は」と言った所で、私が「ハズレ」と答えたら、「まだ言ってない」と言ってきた。 「それでは言ってみなさい。」と私が言うと、ある男の名前を言った。 犯人は男では無いので、当然ハズレだ。その一連の話を、高橋は、唇を震わせながら、聞いていた。 相当驚いたようだ。 歓迎会は、1時間ほどで、終った。 同僚が、ビニールにゴミを集め始めた。 しかし高橋は、2本のビール缶を、ゴミに出さずに、自分の車に、持っていった。 一本だけなら、飲みかけという事も有るが、2本だから一本は、必ず空だ。 指紋を取られるのを、警戒している、そう思った。 どう考えても、高橋は、平田信だ。 しかし気がつかないフリを、していた方が良い。 そう判断して、惚ける事にする。 ある日高橋が、「コーヒーを飲まない」と言って、缶コーヒーをくれた。 大勢見ている前で、毒入りコーヒーなど、飲ませるはずが無い。 そう思い一気に飲んだ。
高橋はその時、嬉しそうな顔をしていた。 自分は、まだバレテいないと、思ったのと、どこかで、毒入りコーヒーを、私に飲ませる気だな、そう思った。 青酸化合物は、コーヒーや、チョコレートと、同じ味がするから。