『月下』

 ぽてっと大きく黄色い月が出て明るい夜に、背の高い家の屋根に男が一人。少し苦しみながら姿を変えていく。耳が尖り、爪が伸びて大きな尻尾が生えてゆく。
 その変化が終わり、落ち着くと大きめだった筈の服が少し窮屈で脱ぎ捨てるとその場に座り遠くに聞こえる同属の遠吠えを聞いた。
 あまり同属が好きになれない。
 以前会った同属に珍しがられた毛並みのサラサラで、しっとりした尻尾を左横に渦を作ると小さな身体の白猫が現れ、その中心で丸くなる。
 いつからだったが満月の夜にこうしているといつも現れる。
 「君が猫又だったら良いのに」
 呟いて、一つしかない白猫の尻尾を爪の背で撫でた。

end.

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