『暗闇を抜けて』
長く雨が続いて暗く淀んだ空からは暫く太陽を拝めないでいる。それでも更に暗い夜に男は細い路地で目を見開き立ち尽くしていた。その顔は見る見るうちに白くなっていく。
僅かに水音がして男の首筋に突き刺さった白い牙からは血が啜られていた。啜っているのは人の形をした人ではないもの。
不意に水音が途切れる。
そのまま男は地面に突っ伏し、命を落とした。
そう命を落とした筈だった。
しかし男の目が覚める。暗い、暗い、夜闇よりも更に暗いところで。外から響く音に其処から出ようと手を伸ばすと幾人かの喪服の葬列が此方を見下ろしては青ざめている。
長雨に日が差し込んできた。
今にも埋めようという棺桶の中、男は半身を起こしたままその光に身を焼き、後にはサラサラとした灰が残った。
end.
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