『さくらのコート』・一次創作小説・長編・そんな僕らの青春(?)生活


  

 

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Episode1 日常と非日常

 ___Story1 新クラス考察

  第一話 クラス替えと腐れ縁

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クラス替え。

 

この結果しだいでこの一年が決まる、重要な行事だ。

そんな日の朝にに僕は歩いている。まだ春先の三月上旬の朝は、暖いようで冷たい。ザーッというという独特の音が聞こえると共に、真上をモノレールが通過していった。

 

 

「よっ」

 

「ん?」

 

僕は立ち止まって後ろを振り向いた。後ろには芝田由史(シバタヨシヒト)がいた。

 

身長168cmといういたって普通な外見を持つ芝田。もちろん歳は僕と同じ十四。二年の半ばで初めて同じ班になっていらい残りの半年がずっと同じ班だったっていういわゆる腐れ縁を持つヤツだ。

 

「なんだ芝田か。」

 

「なんだってなんだよ」

 

「ま、気にするな。」

 

そう言って僕は再び歩く。芝田も横に来て歩く。駅から学校まではモノレールも通っているが、節約のため歩く生徒が多い。僕らもそんな生徒の一人で、立川駅から高松駅近くの県立東都学園まで歩く。

 

時間はまだ7:21。学園までは15分もあれば到着するから、7:40分には着くだろう。周りに生徒の姿は見えない。理由は単純。時間が早いからだ。

 

で、何故こんな早く学校に向かっているのかというと、クラス替えのの発表があるからだ。

 

今日は3月7日___ 始業式だ。

 

 

 

 

 

で、なんですか、

 

腐れ縁とは怖いものだ。

 

 

「腐れ縁って怖えな」

 

「まさに同じ事を思ってたよ」

 

昇降口の入口に立て掛けてある新クラスの張り紙。

 

三年一組。そう書いてある下にある表の中に僕の名前はあった。ついでに芝田のも。

 

「ま、これからもよろしく。」

 

「ああ」

 

とりあえず改めて挨拶をしといた。単純だけど、芝田にはこれで十分だろう。

 

僕と芝田はまだ人影の少ない昇降口に入り、自分達の新しい教室に向った。

 

 

 

この辺りは数年前、僕がまだ小学校1年の頃はなにもない空き地が広がっていた。それが、ここ数年で大規模な開発が行われて、この地区を『立川東都』と総称するようになった。

 

そんな中に一昨年開校されたこの学校、県立東都学園は武蔵モノレール高松駅からすぐ近くにある新しい中学校だ。僕は一昨年に入学したいわゆる一期生。今年で三年生になる。一期生ということもあり変わらぬ最高学年が続くが、新しい生徒も入ってくるので少し楽しみにしている。去年よりはにぎやかになるはずだ。

 

・・・なんか自分じいさんみたいな思考になってることに気付き、改めて教室を見渡してみる。

 

時間はもう八時を過ぎている。指定された僕の席は廊下から二列目の前から6番目。一番後ろだ。教室内を見渡せるので暇を潰せる。

席の並び順は名前順と言われるいわゆるあいうえお順。一番後ろだったのは偶然だ。

 

教室には三割くらいの人がいた。正確には九割くらいが登校しているのだが、廊下で元同じクラスだった人と話している人が多いせいで廊下が賑やかなのに対して教室は寂しく感じる。

 

ちなみになぜ僕は教室にいるかというと、廊下がうるさすぎて僕の友達がみな教室にいるからだ。

 

「おーい、久野?」

 

「・・・ん?」

 

また思考モードに入っていたせいで、誰が近付いていたかが気がつかなかった。

 

「久野ー、また考え事でもしてたのか?」

 

とさっきから話し掛けてきているのは渡部優野だ。

一年の頃同じクラスで、のちに通ってた小学校が意外と近いってことがわかって結構仲がよい友達だ。すんごい天然なバカだけど、そこは気にしなくてもいい。

 

「何か用?」

 

考え事をしていることを当てられた僕は、なんとなく不貞腐れながら言った。

 

「いや、だからもう始業式が始まるから急いだほうがいいってさっきから言ってるじゃん。何回言ってると・・・」

 

僕は最後まで聞かないうちに席を立つ。いわれてみれば騒がしかった廊下が静かになっている。教室には僕と渡部しかいなかった。

 

「っておい!先に行くなよ!」

 

僕は渡部を置いて体育館に向かった。

 

教室の階が変わったことを忘れていて同じ階にある体育館に向かうのに、階段を降りてしまったのはここだけの話だ。教室が変わった時によくあることだな。うん。

 

 

 

『___で、我が学園は未来の社会に貢献できるような生徒を育てるために・・・』

 

まだ涼しい体育館。そんな中で、はっきり言って長くてかったるい校長先生の話が続く。狭い体育館に全校生徒が集っているので暑いような気がするが、まだ春らしい涼しさもあるような気もしてよく分からない気温だ。

 

「ったく、ながすぎるよな・・・」

 

と言ってきたのは背の順で僕の前に並んでいる芝田だ。

 

「いくらなんでも形式的な話すぎて退屈でしかたないんだけど」

 

この学校の校長は生徒間であまり評判はよくない。僕からしてみれば、校長というよりもどっかの会社の社長のように感じる。

 

「同意見ってことにしておくよ。大きな声では言わないけどな」

 

「こら、そこうるさいよ」

 

去年僕のクラスの担任だった生活指導部の柿沼先生がいつのまにか後ろにいた。僕と芝田はすいません、といって前をむいた。

とはいえ、校長の話を聞く気にはなれない。

 

暇な時間があと数十分続くのであった。

 

 

 

『・・ということで、今年度の学校生活を楽しむように。以上をもちまして、校長の話とさせていただきます。』

 

気を付けっ、れーいという脇にいた生活指導の先生の言葉で礼をする。

 

『えー。続きまして今年度の各クラス担当の先生を発表します。』

 

ここで、立ち寝していた周りの生徒が起き、体育館が騒がしくなった。

 

 

生徒にとってクラスメイトのほかに、どの先生が担任になるかによってその一年が決まるともいえる。どんなにクラスメイトが良くたって、例えば厳しい生活指導の先生に当たれば最悪の一年になることは目に見えているからだ。

 

 

『はい、静粛に。静粛にね。』

 

きちんとそれを読み取った副校長が言った。

ちなみに校長先生と違って副校長先生は生徒受けが良い。理由は別らないのだが、こちらの方が雰囲気があるのだ。

 

『まずはこの場にいる人とはあまり関係はありませんが、一年生の担任と副担任を発表します。』

 

えぇーっという声が一部から聞こえたものの、副校長は見事にスルーしてステージにでた先生を紹介していく。

 

僕とは関係ないけど以前教わったことのある先生などもいて、楽しみながら一年、二年の先生が発表されていった。

 

『はい、それでは三年生の担任、副担任を発表します。まちがえても静粛に、奇声などを発しないようにお願いしますね。』

 

奇声を発するのところで所々から笑いが起った。

 

『それでは、まずは三年一組の担任です。』

 

ここで三年の笑いが止まり、それにつられて下級生(二年しかいないけど)も静かになる。

一組といえば僕のクラス。僕達は黙って発表を待つ。

 

っていうか、さりげに言うのを溜めているし・・・

 

『三年一組担任、近新久美先生先生です。』

 

体育館がしーんとなった。

 

Q.何故か?

A.聞いたことのない先生だったから。

 

うん、リアクションに困る。

 

ステージに若い女の先生が上った。見たことのない先生だ。

 

『続いて三年二組。担任は穂井田彩香先生です。時間がないので急いでいきます・・・』

 

 

後の先生紹介で判ったこと、+知っていること。

 

一組担任 近新先生  

 完全な新任教師。英語教師。

二組担任 穂井田先生

 元二年三組担任。体育教師。

三組担任 芦田先生

 元二年二組担任。数学教師。前生活指導課主任。

四組担任 松前先生

 非常勤教師から昇格した技術教師。

 

以上。

 

 

 

 

 

「きりーつ、気を付けーっ、れーい。ちゃくせーき」

 

元四組の学級委員だった斎藤篤哉が号令をかけた。半分以上を校長の話が締めた始業式も終わり、今は教室に戻ってホームルームの時間だ。

 

「えっーと、初めまして。今年教員試験をうけてこの学校に着任した東都大学出身の近新といいます。」

 

ここで教室内が騒ついた。東都大学といえば、この東都県で一番有名な国立大学だ。

 

「教科は英語ですが、さきほど言ったように海外に行ったことはまだ無いです。初めて教師になったので判らないことも多いと思いますが、この学校は三年目のみなさんの力を借りて楽しいクラスにしていければと思います。これから一年間宜しくお願いします。」

 

パチパチパチ・・・という拍手が何処かから聞こえ、それはすぐに教室内に広がった。近新先生はどうしたらいいか少し迷っていいるように見えた。

 

「先生!質問!」

 

僕の隣の列の前から五番目に座っている、つまりは僕の隣の女子が言った。見たことはあるけど知らない人だったのでファイルから新クラスの名簿を出して調べてみた。名前順に座っているので名簿でしらべることができる。

 

十九番はっと、胤島里香っていう人だ。

 

「彼氏はいますか?」

 

「・・・」

 

定番ともいえる質問だけど、近新先生は返答に困っているようだ。いや、こんな質問されたら誰だって困るだろうけど。

 

「時間が無いので質問とかは後。あとで放課後とかにいくらでも聞くから。」

 

「じゃあ放課後でいいですね。わかりました。」

 

先生は追求が止ってホッとしているが、生徒のほとんどがこの言葉に心の中で合掌していた。

 

なぜか?放課後に質問攻めという名の、生徒による拘束が待っているからだ。ちなみになぜ知っているかというと去年教育実習の大学生が来たときにもこの質問攻めがあった、と聞いたからだ。僕は違うクラスだったが、それでも知ってるくらいだからかなり有名だ。

 

そんなことがあったとは知らない先生は次やることの説明に入る。

 

「えっと、それではまず班ごとにあいさつと係を決めてもらいます。知っている人がいても改めてってことでね。時間は一時間目が終わるまでね。」

 

「「「ハーイ」」」

 

「はいぃぃっ!!!」

 

先生の指示にみな答えた。無駄に大きな返事があったような気がしたが気のせいだろう。多分。

 

僕は机を給食体系(4人または5人で机を向かい合う給食時に使う並べかた)に動かす。僕は廊下から3列目の前から5番目。ということで四班だ。

 

しかし、自己紹介と言われても困る。知っている人といったら一人しかいない。というか名前を知っている人に絞っても同様だ。つまりは一人しか知らないのだが。ちなみにその一人とはクラスが二年間同じでまた同じだったので三年目だ。

 

さて、そんな状況で自己紹介を終らせられるのか?

 

 

・・・自分でいうのもなんだが、かなーり心配だ。

 

 

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