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『さくらのコート』・一次創作小説・長編・そんな僕らの青春(?)生活・第二話 |
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[前回のあらすじ]
僕は県立東都学園三年一組の久野知樹。腐れ縁な友達・芝田と共に登校。やっぱり腐れ縁が続いた『クラス替え』と長ったらしい校長先生の話がある『始業式』という面倒臭い行事が終わり、教室で新しい先生・近新先生の紹介が終った後、新しい班ごとの自己紹介(兼係決め)の時間となった。この班で今月末に行われる行事・都内探訪学習という校外学習に行くわけだが、班員五人の内三人は知らない人。人見知りな僕にとって彼らと上手く接することが出来るかが当分のカギだ。さて、この後どうなるのか?
??「・・・なんか話が大きくなってるし。しかも知樹の何処が人見知り・・・」
知樹「うるさい。というか未登場キャラ出て来るな!」
??「・・・(それでは本編へどうぞ。)」
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Episode1 日常と非日常 ___Story1 新クラス考察 第二話 新しい班と乙女の暴走 __________
給食体系に机を動かした僕は椅子に座る。給食体系なので普段の授業体系で隣だった人は前に、普段前にいる人は隣にいる事になる。
「じゃ、自己紹介ってことであたしからでいい?」
僕の前にいる女子がいった。拒否する理由も無いので僕を含む他の班員は頷く。
「あたしは胤島里香(タネシマリカ)。瑞穂の箱根ヵ崎ってとこに住んでます。 部活は文芸部です。好きな食べ物はりんごと豆腐、嫌いな食べ物はようかんと寒天です。数学が得意で数検2級もってます。ただ英語は大の苦手で英検5級に三回落ちてます。元二年三組で学級委員をやっていましたが、今年はならないようになんとしてでも推薦を受けないようにしたいと思ってます。みんなと楽しく一年間を過ごしていきたいと思います。宜しくおねがいします。」
パチパチパチ・・・と班内で拍手が起こった。空気を読んで、僕も一応手を叩く。
それじゃあ時計回りで、と言ったので胤島の左隣の男子の番だ。 ちなみに僕は同年代の友達は男女関係なくみな名字呼び捨てで呼んでいる。よっぽど親しい小学校の幼馴染とクラス内に完全に浸透しているあだ名がある人を除いては。
「俺は武谷元明(タケヤモトアキ)。そこのマンションに住んでいます。」
そう言って教室から窓の外に向って指をさした。南向きの窓からはたくさんのマンションとオフィスビルが見える。祈咲が向けた指の方向にあるマンションは本当に学校の目の前、正確には二階立ての南塔と道路をはさんだ隣、距離にすると十メートル位の距離にあった。
「近いんだな」
思わず声にだして言ってしまった。単純に考えて通学時間は一分未満ということだ。僕の・・・60分の1ってことか?
「まあそれはよく言われるな。」
僕の方を見ながら武谷は言った。
「んでもって運動は結構出来るほうだと思います。特技は水泳、あと腕相撲です。握力は結構高いほうだと思います。基本的に陽気とか社交性があるとかよく言われます。部活は文芸部で出席率はいいほうだと思います。今年一年間楽しく過ごしていきたいと思うのでこれから宜しくお願いします。」
それじゃあ次は兼里さんです、としめくくった。席の関係上いわゆる『お誕生日席』と呼ばれる席に座っている人に回した。
「私は兼里穂香(カネザトホノカ)です。多摩丘陵市の多摩境に住んでいます。部活は文芸部に入っていて英語と理科が得意科目です。宜しくお願いします。」
ペコりと座ったまま頭を下げる。
「って、ちょっと、短過ぎるでしょ?」
胤島が言った。いや、突っ込むといった方が正しいかもしれない。
「だってこれ以外に言う事が思い付かないし・・・」
「いろいろあるでしょ。趣味が読書だとか、面倒臭がりだとか、昔剣道をやってたとか他にも」
「ちょ、ちょっと言い過ぎ!」
「まーいいじゃん。うん。」
胤島と兼里が言い合った。そんな様子を見て僕と武谷は苦笑いを浮べてしまった。なんだかちょっとだけ班内の空気が軽くなったような気がした。
にしても、文芸部が多い班だな。という僕なんか帰宅部だけど。
「で、次は・・・」
武谷は僕の隣(普段は前)に座っている、さっきから一言も言葉を発していない祈咲の方を向いた。
「・・・(無言)」
軽くなった空気が再び重くなる。まあ祈咲の性格上しょうがないけど、さすがにこのまま無言で通させるわけにもいかないので言う。
「祈咲、とりあえず名前と住んでる所だけ言えば?」
「・・・(コクリ)」
祈咲は頷いた。
「祈咲五百です。住んでる所は立川です。喋ることは滅多に無いです。一年間宜しくおねがいします。」
そう言って祈咲はこっちを向いた。まあ祈咲にしてはよく言えたなと思っていたら、祈咲がこちらを見ていることに気が付いた。
なにかなーなどと思っていると、祈咲だけでなく武谷や胤島、兼里もこっちを見ていたことに気付く。 そこでやっと、自己紹介が僕の番ということを思い出した。
「あ、ごめん。」
一言謝り、自己紹介を始める。
「越後出身の久野知樹です。小学校に入る前に高尾町のほうに引越してきました。部活はいわゆる帰宅部です。運動はあまりしていません。」
「・・・うそつけ」
祈咲がぼそっと吐いた。うん、聞かなかったことにしよう。
「趣味は自転車に乗ることです。一年間楽しく過せればと思います。宜しくお願いします。」
ペコリと礼をする。
「・・・」
班内に沈黙が漂った。最も、他の班が騒かったりするので静かになった訳ではない。
「えーっと、それじゃ先生に言われたことから決める?」
しかたがないので僕が班員を見渡して言う。四人が頷く。
「まずは班長から。班長やりたい人は・・・」
誰も手を上げる気配は無い。 と、思ったら胤島が手を上げて言った。
「私は学級委員やるから降りるね!」
「なら上げるなよ。」
そう突っ込んだのは武谷。言うとうりだ。
「じゃあ俺・・・」
その流れで武谷は手を上げる。班長をやってくれるのだろうか?
「・・・もいろいろと忙しいからやめとく。」
「おいっ!」
思わず僕は声に出して言ってしまう。 まあ、もうしょうがないとして他の人は?
「じゃあ兼里さんやってもらってもいい?」
「え・・・私?」
「うん。よければだけど・・・」
あくまで控え目に頼んでみる。無理矢理やらせるのはよくないし。
「まあできればやりたくな・・」
「そうだよ穂香。やってみれば?」
「いーじゃん。ちょうどやりたい人もいないんだしさ。」
兼里の言葉を遮って胤島、続いて武谷が言った。
「え?・・・でも・・」
「『ケンサト』さーん、ちょっと来てもらっていい?」
教室前方から先生の言葉が飛んできた。兼里は立ち上がって言った。
「『カネザト』です。いま行きまーす」
そして席を外す。なんか逃げられたような気もしなくもないが、しょうがない。
「それじゃ、しょうがないからそちらのお二人さんのどちらかってことで・・・」
っておい。
「兼里さんが帰って来るのを待てばいいじゃんか。」
「だって先生におつかい頼まれたみたいだから当分戻って来なそうだし。」
確かに兼里は先生から書類らしきものを受け取って教室を出て行った。「ちょっと職員室にいる本庄先生に渡してきてもらっていい?」という兼里に言った先生の言葉が胤島にも聞こえていたみたいだ。 それってかなり聴覚がいいってことか?自分で言うのもなんだけど、僕は聴力には自信がある。暇な昼休みなどに寝たふりをしながら周りの人の話を聞く、なんて暇つぶしもしょっちゅうやる。 そんな僕でもかすかに聞き取れたくらいだ。それなのに胤島は人に言える確証を持つレベルまでしっかりと聞こえていたってことか?
いままでの経験上、だいたいこんな性格の人で耳がいい人って・・・
「異常なほど情報通で厄介だったりするんだよな・・・」
すんごく小さな声で言った。 胤島がちらっとこちらを向いたのはきっと気のせいだろう。
「で、どうするの?」
「じゃあ祈咲たの・・」
最後まで言う前に祈咲は首を振る。そして、僕の方を指差した。こらこら、人を指差してはいかんぞ。
などと突っ込んでくれる人は残念ながらいなかった。
「じゃあ久野で決定ね。」
「さんせーい!」
「だからおかしいでしょ。ていうか僕いいなんて一言も言ってないぞ!」
「まあ気にしない気にしない。祈咲もそれでいいよね?」
武谷が祈咲にきいた。祈咲は大きく頷いた。
「・・・もういいよ。やりゃあいいんだろやれば。」
この状態までくると断るのは無理だろう。と思った僕は素直に頷いた。
「・・・それは素直じゃなくてヤケって言うんでしょ。」
「考えを読むな考えを。」
「あっ、班長どうなった?」
祈咲のカン(?)が当ったところで兼里が戻ってきた。
「久野がやってくれるって。」
「実際には半強制的にやらされた、だけど。」
そう言うと兼里は苦笑いを浮べていた。きっといつもこんな感じなんだろうな。 兼里が席に戻ったところで、先生が言った。
「それじゃあね、そろそろ班長くらい決ったよね?」
ハーイ、という声が飛んだ。ここは小学校の教室か、と思ったけどなにも言わないでおく。
「じゃあ班長はちょっと前にきてください。他の人はまあ雑談でもしてて。慣れるって意味で。」
「だってさ。じゃあ頼むよ。」
「言われなくても大丈夫だから。」
武谷に言われて僕は教卓の方に向かった。
「それでは、とりあえず班長にはこの冊子を配るね」
近新先生は僕ら班長六人にA4サイズの冊子を渡した。パラパラと捲りながら数えると、ざっと10ページほどあった。
「まあ見れば別ると思うけど、今度の都内散策学習のしおりの原案ね。明後日の放課後に班長会ああるみたいだから、その時まで目を通しておいて日けんとかがあったらその時に言ってね。なにか質問とかってある?」
「先生」
その言葉に三班班長の葛西が手を上げる。
「明後日って土曜日だけど、学校ってあるの?」
完全なタメ口で言った。間違っても今日初対面の先生に対して、である。しかし先生も全く気にしていなさそうに言った。事実、気にしていないのだろう。
「・・・来週の月曜日、だね。土曜とかもいろいろな準備で学校に詰てたから曜日感覚が・・・他にはある?」
誰も手を上げない。
「それじゃあ解散。あと5分で座席を給食体系から授業体系に戻すからね。」
そして教卓の周りに集まっていた集団が散らばっていった。
「おっ。お疲れさん。どうだった?」
戻って席に座ると武谷が声をかけてきた。
「なんか・・・めんどそう。明後日さっそく放課後に班長会やるっていうし。」
「御苦労様。こっちはとりあえず係は決めといたぞ。」
「あ、ありがと。」
よかった。仕事が一つ減った。
「で、誕生日とかはいつなの?」
「・・・えっと・・・」
「じゃあ元何クラス?」
「・・・二年の・・・」
「好きな有名人とかっている?」
「・・・早い・・・」
「で、あそこでは何があったんだ?」
「いつもの質問攻めじゃねーのか?」
何故か胤島が祈咲に向かって『質問』という言葉で攻められていた。しかも祈咲はそれぞれの問いに答えられてないし。
「まあ、いつものことだよなぁ?」
「確かに。なかなか答えてくれないから逆に燃えてる胤島がいるよ。」
武谷の言葉に兼里が頷く。
「それはなんだ、難しいからこそやり甲斐があるってやつか?」
「そうそう。そんな感じ。」
「・・・なんのやり甲斐だよ。」
「それがアイツの性格だからな。」
「どんなだよ」
「それを言うな。俺にだって別らないことがある。」
「でも久野も気をつけたほうがいいと思うよ。おそらくきっと・・・」
兼里の言葉を数秒で理解した僕は、逃げ出そうと席を立ち上がった。その時に椅子のガタンという音がしたのがいけなかった。
「あっ!久野いたんだ。」
「あ、まあ・・・」
「祈咲がなかなか喋ってくれないからさ。こうなったら意地でも喋らせてやるわ!」
「はぁ・・・がんばってください・・・」
祈咲の顔が青ざめたのは気の所為だろうか。
「でもちょうどいいや。久野って誕生日いつなの?」
「って切り替え早っ!」
「こんくらい出来無いと女はやっていけないわよ。」
そうなのか!?と思ったが、それを口にする暇は無かった。
「で?いつなの?」
「は?えっと・・・」
「元何組?」
「ちょ、早いって。二年二く・・」
「血液型は?」
「いや、だから・・・もう面倒臭い!」
しかもさっきの自己紹介で言っただろうが。と言う気力は残念ながら無かった。
「良かったな。祈咲」
「・・・」
二人(正確にはあの状態の胤島)から一定の距離を置いている武谷が言い、祈咲は無言で頷いた。
「私も入学してすぐにアレくらったからね・・・小学校が同じ訳でもなかったし、席が隣だっただけなのに。」
兼里が懐かしそうに言う。
「うん。あの時はクラスみんなが唖然としてたもんな。みんな知り合いがいない中でいきなり胤島が兼里に喋りかけたからな。しかもあんな感じで。」
「・・・」
それっていろいろとおかしくないか?と思ったと、僕は後に祈咲から聞いた。
人と人の出会いなんてこんなものである。
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