立ち込める下水の汚臭。
倒れたゴミバケツから溢れ出た残飯。
響きわたるパトカーのサイレン。
きらびやかな街の裏側を凝縮したかのような、どこにでもある路地裏。
……だった。
ついさっきまでは。
路地裏の空気がすーっと冷たくなった。残飯をあさっていた野良猫が、ギャッと叫んで闇の中に消えた。カラスの大群はそわそわしながらも、ついばめるだけついばもうと踏みとどまった。
だが、それもほんの束の間、ギャアギャアという悲鳴を上げ、バサバサッとけたたましい羽音を立てながらカラスは慌てて逃げていった。数え切れないほどの黒い羽根が路地裏に舞い上がった。そして、カラスが漆黒の夜空に消えた瞬間、その黒いカーテンの真ん中からギョロッとした黄色いふたつの目があらわれた……。