バーツラフ・シュミル『中国の環境危機』(丹藤佳紀・高井潔司訳)(Vaclav Smil, China's Environmental Crisis, 1993)

   まず「中国に人口が多いのはきわめて結構である。この上人口が何倍にふえても対策は完全にある。その対策とは生産にほかならない」と言った毛沢東がいる。この思想に従って、1949年5億余りであった人口は、みるみるうちに急増し、半世紀後の現在は13億に届こうとしている。

   慌てて「生理の有無をチェックし、部厚な冬服に隠された計画外妊娠を監視し、定期的に避妊器具を使用する近隣の家庭リストを掲示し、毎年妊娠許可証を発行する」一人っ子政策の時代が来るが(二人目の妊娠が発覚すると、糾弾して堕胎させることもある)、女児嬰児殺、性比の激変などさまざまな副作用を伴い、人口増は鈍化したが、なお停止してはいない。

   人が生きるには水が必要だが、黄河流域は慢性的水不足(この夏128日断流が続いた―訳注)、北京が将来首都として存続できるかを憂慮する市民もいる。地下水汲み上げによる地盤沈下は、北部主要都市すべてに深刻は状況を作り出した。流れる水は、郷鎮産業の電気メッキ工場などの産業廃棄物で汚染され、「黄海が死海になる」と恐れられている。

  雨が降れば洪水である。森林濫伐、断流による河底への沈殿物堆積などにより、「空前の大洪水」が頻発する。1993年刊の本書も諸事例に言及しているが、1993、94、そして95年と、百万単位の罹災者を出す災害が続いている。

   耕地面積は減少の一途で、一方に都市化・工業化の波、他方に化学肥料による土地劣化と、森林濫伐による砂漠化がある。政府の植林政策は、follow up不足で、若木の定着率が低く、余り成功していない。森林被覆率も急激に低下している。もちろん自体は「木を切るな」というお説教で是正できるような生易しいものではない。「一人当たり商品木材消費量はたttの0.15平方メートル」、米国の40分の1で、人々は燃料を必死になって探している。

   燃料資源として山西省などに大炭田があるが、環境悪化の元凶は石炭である。10億トンもの石炭が大部分洗炭しないまま燃焼され、基本的エネルギーの4分の3を供給しており、九宇宙の浮遊粉塵の濃度が、(北米の諸都市で冬でも20~100ppmであるのに)、北方都市で500~1000ppm、場所によっては2000ppmにもなる。

   ――本書は可能な限り統計を基礎として論じられ、「統計学者とは統計の疑い方の教師である」という意味でも、すぐれた統計学的作品である。また農業問題に関心を集中し、有機肥料への復帰、農地減少防止策など、危機を救うための積極的諸提案を提出している。

   本書はまた、『詩経』『老子』『史記』など古典の引用をちりばめた作品で、単なるカタストロフィー予言ではなく、積極的的提案の背後に著者の中国への愛情が感じられる。中国人の平均寿命が先進国並みであるこのなど、中国人の環境改善能力にも視野が及んでいる。(『法学セミナー』1996年11月号)