平成サラリーマン川柳傑作選(1)〜(6)
[会社生活]「やれ打つな頭はそんなに出ていない」「宴会場無礼講でも席決まり」「肩書きがなくてアイディア横取られ」「上役のジョーク分からずでも笑う」「夢にまで出てきて叱る我が上司」「静けさや皆に聞こえる責めの声」「尻尾振るポチに自分の姿見る」「エレベーター上司が乗るとお葬式」「上役の振ったパイでは上がられず」「あの課長穴があったら落したい」「運動会抜くなその子は課長の子」「騎馬戦で蹴落とせ蹴飛ばせ部長の子」「結論をみんな知ってる会議前」「役員会お言葉ですがの声が出ず」「役員会肩書きなければ老人会」「立場上なる悪役の馬鹿らしさ」「通勤にあったらいいな寝台車」「期待する朝は台風横にそれ」「女文字開いて見れば請求書」
[出世]「世渡りの下手な人ほどあたたかい」「ライバルの出世は妻に伏せておく」「まかせろと言った上司は左遷され」「OA化結局なじめずOB化」「社宅では夫の地位が妻の地位」「社宅では夫婦げんかも手話でする」「社宅での妻の出世はマイホーム」「一戸建て手が出る土地は熊も出る」「管理職頭に重石尻に針」「鬼などと言うなわしとて宮仕え」「栄転と言われ妻子と引き裂かれ」「単身が解けて我が家の居候」「とび出すな会社は君をひきとめず」「窓際はお茶も最後に配られる」「航空券窓際ですかにムッとくる」「窓際を嘆いていたら窓の外」
[女性社員]「面接官飲ませてあげたいほれ薬」「お茶くみとコピーのために狭き門」「さあ五時だ誰が最初に席を立つ」「お先にと笑顔ふりまくタイミング」「お茶お華稽古のあとはビアホール」「平等法女もストレスためて飲み」「嫁(とつ)がない女我が社の生き字引」「セクハラを逆手に取って玉の輿」「新婚に女課長の目がささる」「ミスのミスミセスのミスとなぜ違う」「玉の輿乗ったつもりが欠陥車」
[家庭]「この鎖たしか昔の赤い糸」「耐えてきたそういう妻に耐えてきた」「愛してると言ったら妻が吹き出した」「妻と子が連立政権僕野党」「妻よりも優しく起こす駅員さん」「ゴミ袋下げてパジャマに見送られ」「『ゴハンよ』と呼ばれて行けばタマだった」「今夜また冷たくさめたメシと妻」「静けさは蝉の声より妻の留守」「父帰る一番喜ぶ犬のポチ」「父帰宅一人一人と居間を去り」「大丈夫がんばってねと保険かけ」「愚痴言える家のママより店のママ」「世紀末!娘の勇姿見たディスコ」「一浪をイチローと書くどら息子」「階段を三段上って子を叱る」「グレてやるそれなら父さんボケてやる」「名刺持つ妻で土日は電話番」「バブル消え会社も消えて妻も消え」
[定年]「午前様この仕返しは定年後」「定年後私は何をする人ぞ」「定年でやっと家族の仲間入り」「定年後亭主達者でお留守番」「老兵は死なず我が家の粗大ゴミ」
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もっともこれがサラリーマン生活の全体ではないだろう。順調な出世、円満な家庭などは、川柳に親しまない。(『法学セミナー』1997年10月号)