Angel dust 2





ひっそりと、ケルト神話の息づくようなどこか神秘的なイギリスのアイルランド。

頬を突き刺すような寒さに眉をひそめながら、アリオスはこの地にやって来た。
いや、逃げてきた、というべきなのだろうか。

その身体は急激な温度変化のために熱を持ち、ぐらつく頭を振りながら、木で出来た一見ログハウスのような小屋の前で立ち止まった。
背負っていたいくつかの積荷を肩から下ろして、小屋の中に入る。

「あ〜、おかえりなさい、アリオス〜」

そういってアリオスをにっこりと迎えたのは、彼の父親の考古学者、ルヴァだ。
アリオスの積荷を手にとって、暖炉の前へ来るように促す。

「あ〜、今日はどうでしたか〜?」

ほのぼのと話しながらも、積荷を置いた手と目はすぐに腕に挟んでいた読みかけの考古学書に向けられている。
アリオスは溜息をつきながら

「母さんは?」

と、言った。
ルヴァはおや、というように首を傾げて

「そういえば、今日はまだ見ていませんね〜・・・」

そういってまた視線を本に向けるルヴァに、アリオスは苛々したように立ち上がった。

「また買い物に出かけたのか・・・」

アリオスは、はっきりいって母親と父親が嫌いだった。
昔から、他の子供達の親を見て、どうしてこんなにもうちと違うのか悩んだものだ。
考古学者という聞こえはいいが、その為にいろいろと費用のかかる父親は、たいした稼ぎもえられない。
夢物語を追い続けて、いつもふらりと出かけて、金を使い込んで帰ってくる。
母親はそんな父親に呆れ、毎日のように借金をしながら買い物に出かける。
そして、借金取りが来たらまた、どこかへ逃げる。
いくら稼いでも、稼いでも、アリオスのうちが豊かになる事は無かった。

「・・・母さんがもし帰ってきたら、ここにいるよう言ってくれ」

そういってアリオスはまた、冷たい氷点下の中へ出かける。
皮製のジャンパーは所々に穴が空いていて、手袋もほぼ役に立たないほどに指先が切れている。
顔にマスクをかけながらドアを開けると、冷たい雪とも雨とも区別できないような塊が視界を遮る。

「くそっ・・・・」

この天気のなかどこまでいきやがった。
そう思って、目を凝らした瞬間、真っ白な白銀世界の中に、小さな塊を見たような気がした。
風に踊るように舞う金糸の糸と、雪にとける様な白い固まり。
それが人間だとわかるまで、アリオスはしばらく捕えられたように動けなかった。

「・・・っ、お、おい、あんた!」

ザッと雪をかき分けて足元まで埋まる雪の中で死んだように横たわる物体は、十代半ばほどの少女だった。
思わず目をみはるような黄金の髪に、透ける様な白い肌。
ぞっとするほどの美しさに、アリオスは我を忘れたようにその少女を雪の中から掘り起こした。

「・・・何だ、こいつ・・・・・」

掘り起こして抱きかかえると、とても軽く、本当に抱いているのかさ不安になるほどだ。
そして、雪に埋もれていた身体を引き上げると、ふわりとしたベージュのドレスが風に舞う。
細かい装飾に、色とりどりの宝石の数々が所狭しと縫い付けられてある。
ティアラには淡い金の宝石が埋め込まれている。
見た事も無いような宝石の数々にアリオスは思わず眩暈がした。

「何だ、こいつは・・・・コスプレか?」

震える声で言って見るが、視線はまだ少女の顔から離れない。
吸い寄せられるように重く閉じられた瞳を見つめていると、頭にふっとヴィジョンが浮かぶ。

「・・・・・・・・ま、さか・・・・・」

俺はこいつを見た事がある。
何故だかとてもそう強く思った。
この金の宝石も、細かい装飾品の数々も、確かに見覚えがあるのだ。

「・・・・・父さん、父さん!!」

父親を呼びながら、雪に足元をとられながら小屋へと少女を運ぶ。
起きる気配は無い。
不安になってアリオスは小屋にはいるなり暖炉のマキを燃やして、パチパチと音がなって、一気に温度が上昇する。

吐く息が白くなくなった頃、ルヴァは思い出したようにパタパタと小屋の奥へ入っていった。
そして、その手に一枚の立派な額に入った古ぼけた絵画を抱いてきた。

「あ〜、これを見てくれませんかねぇ、アリオス〜」

「・・・これは・・・リュミエール伯の・・・」

自分たちの祖先にあたるリュミエール伯と、その妹のアンジェリーク嬢。
そうだ、確かに見た事があるはずだ。

この黄金のような髪と象牙の肌が印象的で、幼い頃父に見せられたこの一枚の絵画に魅せられてその日の夜は眠れなかった。
絵画の中の優しい碧の瞳の少女に、心を奪われたように・・・・。

「・・・・どういう事だよ・・・」

ここに横たわる少女は、その絵画の中の少女そのもので、それどころか・・・。
雪に濡れたしっとりとした髪がうっすらと赤みのさした頬にすじをたどるように散らばり、桃色の唇には絵画にはあらわせきれなかった少女と女性の間の魅惑的な色気が染み出るように出ている。

ごくん。

喉の奥でつばを飲み込んだ瞬間、少女の長い睫がゆっくりと開かれた・・・。


01.07.07




風兎さぁぁぁん♪ と〜ってもと〜っても良い所で切ってしまって(* ̄∇ ̄*)
o(≧∇≦o)(o≧∇≦)o
o(>< )o o( ><)oジタバタ
(─┬─ o ─┬─)

(さて、これが意味する所は何でしょう?)


ああ、早く目覚めないかしら……金髪の眠り姫ってば♪

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