銀の迷宮 3
まるで……傷口を絶え間なく、踏まれているようだと思った。
森を彷徨う間、ルヴァの背中に走る痛みは、断続的に続いていた。
このまま心臓が止まるまで、痛み続けるのだと思っていた。
たった一人で、この見知らぬ銀の森で朽ちるのだと思い込んでいた。
知人もなく、自分と同じように森を彷徨っている者達は、友になるどころか襲ってくる輩ばかり。だからルヴァは誰にも看取られることなく、墓もなく、祈りも貰えず死ぬのだと、そう思っていた。
………だが……今は一人じゃない………
☆☆☆
「ルッヴァ〜♪ 日が暮れるよ〜♪♪」
アンジェは沈み行くお日様に向かって、元気良くバイバイと手を振った。
日が落ちると、森の木々は一斉に葉を銀色に変え、刃の輝きに満ちた鋭く固い光りを放ちだす。ガラスのように固い葉が、風が吹くたびに打ち鳴らされ、楽しげなベルに似た微かな音色を醸し出すのだ。
アンジェは大好きな時間が来たのが嬉しくて、葉音と一緒にクルクル踊り、スキップしながらルヴァの大きな背中に抱きついた。
「あつっ……うう!!……」
……あまり鳴かない………
アンジェはじとめでルヴァを見上げた。
「……つまんない……」
「って……ああ、もうアンジェは〜……」
出会った当初、この優しくてスキンシップの苦手な青年は、特に背中がくすぐったいらしく、アンジェが抱きつくたびに『あぅっ!! あ!! あ〜ぁぁぁ!! ああああああ!!』と顔を真っ赤にしてぷるぷると震え、慌てたものだ。だが四日もやり続ければ慣れがくるのか、今では目を細めてぽしぽしとアンジェの頭を撫でてくれるだけである。
「アンジェは本当に抱きつくのが好きですね♪」
「うん♪ 広くて大きいものに抱きつくと、ホッとするの♪」
「それから、夜が好き」
「そう♪ 暗いと隠れる場所も一杯あるし、何よりもほら!! 銀色の世界って綺麗じゃない♪ うふふ♪」
アンジェ自身、小さい頃から館の中でただ一人兄達を待つよりも、夜の優しい闇と森の木々の暖かな息吹に触れていた方が好きだった。大木の枝は優しい生きたベッドだし、果実のなる実はアンジェの天然のおやつだ。大樹は何百年も生きれば精霊になるものもいる。そんな者達に、昔話を強請るのも好きだった。
「何度見ても不思議な光景ですね。この銀の燐光も、魔法の成せる技なんですか?」
「ううん。アンジェって子供の時はね、真っ暗な夜が怖かったの。明かりがないとすっごく恐ろしくて怯えまくるから……七つの誕生日の時、兄さま達が土人形達を扱き使って一本一本植樹してくれたの♪」
「え!! これだけの数を……ですか?」
ルヴァが驚くのも無理は無い。光る木は、森中を銀色に染め変える程植わっている。そして木々も何十年もたっていそうな大樹まであるからだ。
「勿論、成長させたのは兄さま達の魔法」
「流石『オスカー』と『オリヴィエ』……ですね」
ルヴァはほうっと感嘆のため息をついた。
「伝説の魔道師の御技を、この目で見ることができる日が来るなんて思いませんでしたよ」
「へえ。兄さま達ってそんなに有名なの?」
自分が天使天使と騒がれるのは嫌なくせに、兄達が高名だと嬉しいものだから不思議である。
「『超女たらしの魔道師』と『ど派手な女装の魔道師』の冒険憚は吟遊詩人達がサーガにしているぐらいですからね。酒場以外にも辺境の農村とかでも好まれて歌われてますし。もしかすると今の国王陛下のお名前よりも有名かもしれません」
「…………」
『女装』はともかく、『女たらし』とは。
アンジェには『たらし』の意味がわからなかったが、どうやらあまり良い評判ではないらしい。
がっくりと項垂れかけたアンジェの背から、ルヴァがくすくすと笑う。
「そして、盗賊団五百人を根城にしていた山ごと一瞬で燃やし尽くしたり、とある国の傲慢な王様を毛むくじゃらの雪男に変えてしまったり、強欲な奴隷商人が貯蓄した財宝を、風で吹き飛ばして貧民街に金銀の雨を降らせたり……など、豪快で破天荒。そんな気まぐれさも人気の秘密でしょうねぇ」
「もう。ルヴァの意地悪」
アンジェは歩きながら道の傍らに生えていたエニシダを一枝引っ張って手放した。
「あうっ!!」
枝は鞭のようにしなり、バチーンとルヴァの顔面を直撃し、カラカラと重なり合う葉の音が軽快にたてた。
「うわ〜い♪ 命中♪」
銀の葉っぱはかなり痛い。ルヴァも顔を覆って蹲ってしまった。それを見たアンジェは、けらけら笑いながら軽やかに駆け出して逃げた。
「アンジェ!! 酷いじゃないですか〜!!」
「うふふふふふふ〜♪ ルヴァ〜!! そろそろ夕飯にしよ〜よぉ♪」
アンジェは、自分の背でも届くりんごの木に駆け寄ると、手を伸ばして実をもぎ取った。そしてもぎ立ての銀色の実を、ゆっくりと背後から歩いてくる青年に大きく弧を描いて投げる。
アンジェがもいだ場所には、すぐに新たな実が生り、見る見るうちに大きくなる。そして再びアンジェがもいでも、日付が変わらない限り、木になる銀の実の数は減らないのだ。
銀の実は、一日一つずつ消えていく。そして、今このりんごの木には三つの実がついている。
「これが全部消える頃に、お出かけしている兄さま達が戻るのよ」
ルヴァは感慨深げに淡く光る実を指で撫でた。
「楽しい趣向ですね」
「でしょ。オスカー兄のアイデアなの」
アンジェはりんごを両手で持ち、大きく一口齧った。銀の皮は、飴を絡めたような固さと甘味があり、りんごの酸味と混じりあい口の中に広がる。
噛む感触もぱりぱりっとした歯ごたえがありとても美味しい。アンジェはあっという間に一つを食べ終わり、もう一個お代わりとして再びもいだ。
ルヴァは、アンジェ程食が進まなかった。甘いものは別に苦手ではないと言っていたが、果物が何日も続けば飽きてしまうのは仕方が無い。
「…………」
アンジェは食べようと開けていた口を閉じ、りんごを一端左手だけで持つと、空いた右手の人差し指で、宙に小さく円を書いた。アンジェの指が通った後には、赤色の光りで痕が残る。二重の円と☆。その魔方陣の中央に、アンジェは手を突っ込んだ。
「はい。ルヴァ♪ あげる♪」
「え?」
アンジェが魔方陣から引っ張り出したのは、小さな皮袋だった。
旅人が携帯用に持つ非常食袋だ。中には干した肉とぶどう酒、そして固いライ麦パンが入っている。
「ど……どうやって!! あの!!」
「ん? これは『ひもじい時に結ぶ印』なの。どうやったかなんて知らない。アンジェは教えられた通りしかできないもん。でもルヴァ……果物とは違うの食べたかったんでしょ?」
この森には獣が一切いない。でも、この森にいないのであって、ルヴァ達のように外から呼び寄せればいくらでも獲れるのである。アンジェはもともとお肉はそんなに好きではないけれど、オスカーとオリヴィエは良く食べる。2人は暇を見つけては熊や鹿など大きな獣を森に誘い込み、屠り、塩漬け肉やベーコン、腸詰等……保存食を沢山つくり、どっかの空間を蔵代わりに使って保存している。
アンジェは再び銀のりんごを両手に持ち、大きくかぶり付いた。
衰えることの知らないスピードで、また一個食べ尽くしてしまう。そしてアンジェはもう一個りんごをもぎ取った。
ルヴァはしばらく見ていたが、やがて本当に嬉しそうに微笑んで「いただきます」と小さく呟いた。それから彼は、ライ麦パンに干し肉を挟み齧りついた。何も言わず、熱心に。
「ふぅ――――――!!」
と、お腹が満ち足りるまで口を動かし続けた。
「森の外れには、後何日かかるんでしょうかねぇ?」
食後にゆっくりと歩を進めていると、ルヴァがほつりと呟いた。
「後三日で、貴方の兄君達が戻るのですよね。それまでに大樹の扉に辿り着けるでしょうか?」
「……うん。大丈夫よ……多分……」
人と火の気配がある所を避け、木々の間を縫って歩く。
実はアンジェはルヴァが方向音痴であることをいいことに、わざと大回りしてゆっくり来たのだ。なんせアンジェにとって、ルヴァは兄以外の人と初めて一緒に旅をする仲間である。彼を扉から帰してしまえば、きっともう永遠に会うことがない。
心はとっても浮き足立っているが、やがて来る筈の別れを想像するとかなり切ない。
アンジェは湧き起こってきた暗い気持ちを振り払うように、にこにこ笑ってルヴァの背に抱きついた。
「ひゃううう!!」
身を固くし、ぷるぷる震えるルヴァの背に、アンジェは更に頬をすりすり♪ っとすりつける。
「ねえルヴァ、お話して♪」「う……あああ〜……」
抱きつかれ、照れて真っ青になっていたルヴァは、ふるふると首を横に振ると、右手でやんわりとアンジェを引き剥がした。
「まったく……アンジェは。大人をからかうもんじゃありませんよ」
ルヴァは大きな手の平で、ぽしぽしとアンジェの頭を撫でてくれる。
「えへへへ」
アンジェはほっこりルヴァの右腕に抱きついた。
「ねえ、ルヴァの国の神官って、皆ルヴァみたいな騎士なの?」
「……ええ。もう十年も隣の国と戦争してますからねぇ……」
ルヴァは寂しそうに微笑んだ。
「勿論、戦闘に向かない適正はありますが、大概は掛け持ちしてますよ」
「じゃあ、ルヴァもやっぱり、戦場へ行ったことって……あるの?」
「はい」
辛そうに、でも穏やかにルヴァは微笑んだ。
「神の僕としては不本意ですが、女性や子供が他国の兵に蹂躙されるのを見るぐらいなら、私は戦えます。もう二度と、自国が侵略されて滅びるのは御免です」
「………?………」
二度と……自国が滅びる??
アンジェは怪訝げにルヴァの顔を見上げた。
「……もしかして、ルヴァの国……滅びちゃったの……?」
「ええ。私がアンジェよりもほんの少し大きかった時にね。私が今いる国は、その時に同盟を結んでいてくれた国です」
ルヴァは泣きそうな顔で穏やかに微笑んだ。
「復讐とかじゃないんです。正義を貫くだの、人道を正すだの、そんな大義名分なんて一つもないんです。ただ、私は今いる『私の居場所』を失いたくない。ふふ。私は実は凄い自分勝手な人なんですよ」
アンジェの胸がぎゅっと締め付けられた。
彼の穏やかな微笑みが辛い。身を捩り嘆き暴れる代わりに彼は微笑むのだ。それはきっと、彼が自由に泣けない環境にいたということに他ならない。
アンジェは唇をきゅっと引き結んで、必死に笑みを作った。
「なら……ルヴァ? 早く皆の所に帰ってあげないとね♪」
笑みを作っても、口調まではポーカー・フェイスは作れなかった。アンジェの声は悲しげに曇った。
ルヴァは再びアンジェの頭をぽしぽしっと撫でてくれた。
「ええ。貴方が安全に扉に封印を施すのを見届けてから……私は元の世界に帰りますよ」
ルヴァは優しい。本当に優しい。
アンジェのせいでこの森に迷い込んだのに、彼は一度もアンジェを責めなかった。気遣ってくれた。
居たたまれなくて、申し訳なくて、アンジェの胸がちくちくと痛む。
「………本当に……どうしてルヴァみたいな人が………」
呟いた瞬間、油断して目にじわっと涙が溜まった。
アンジェは慌ててくしくしっと目を擦る。
「アンジェ? 目にゴミでも入ったんですか?」
「……うん……」
そう一言で誤魔化して、アンジェはますます強くルヴァの腕にしがみついた。
本当に、どうしてルヴァみたいな『いい人』が、この森に彷徨いこんだのだろう?
この森は大魔道師セイランの作った世界だ。
作り手の好みを激しく尊重して、空間はセイランの嫌う無駄に強欲な人間しか呼ばない筈だった。有り余るほどの権力、金、その他の欲望等……セイランが美しくも艶然と微笑み、望みを叶えてやると約束を仕掛けて、それらと傭兵の契約を交わし、捨て駒として前線に送ってしまうのだ。そして酷いことに勿論死者となるものとの約束は果たされない。
セイランは気が遠くなるほど敵が多い。が、それと同じぐらい綺麗で桁違いの魔力を有する彼を欲しがる人も多い。
前はちょこちょここの森に、自分の城全体を出現させ、アンジェと遊んでくれたりもしたが、今はちょっと手こずる魔道師との戦争が忙しいらしい。おかげで傭兵の契約を結んだオスカーもオリヴィエも、休みが殆どない状態で呼び出され続けている。
悔しいことを思い出したら、アンジェの胸はますますむかついてきた。
ルヴァの腕を更にぎゅっと握り締め、「早く行こ!!」と、足を速めたアンジェは、自分の折りたたまれた翼が背の低い木の枝に引っかかった。
「え……きゃあ!!」
「あ!! アンジェ!!」
仰け反り、アンジェはルヴァを慌てて手放し、一人で派手に転がった。
「いたたたたたた!!」
小さな翼はクッションにもならず、アンジェは大地に後頭部を思いっきり打ちつけた。
痛む頭を抱え、目に滲んだ涙を擦ると、ルヴァが慌ててアンジェの背に手を差し込み、抱き起こしてくれる。
「もう貴方は……どうしてわざわざ私の腕を離すのです!!」
「だって!! ルヴァが巻き沿いになっちゃうじゃない!!」
気をつかったのに怒られるのでは割りがあわない。
「んもう!! これが邪魔なのよ!!」
アンジェは不貞腐れて自分の翼を引っかくように叩いた。しかし、白くて全く汚れのつかない翼は、逆にアンジェの手を痛くしただけだ。
着ている服ほどに重さも感じない美しい役立たずは、アンジェの願いも空しく、どんなに願っても消えてくれなかった。何度兄の剣をこっそり持ち出して切り落とそうとしたか。力任せに引き千切ろうとして、何度挫折したか。もう数えたくなくなるのも当然だろう。
不覚にも、またじわりと目に涙が溜まる。
悔し泣きしかけたアンジェを、ルヴァは宥めるように背中を撫でてくれた。
「アンジェ……ねぇ、私はこう思うのですよ。貴方はきっと、神様の祝福を沢山頂いて生まれてきたのです」
「冗談!! こんなものくれた人、もし見つけたらただじゃおかないもん。とっ掴まえてぶん殴ってやるんだから!!」
狙われ、浚われ、逃げ回りつづけた幼年期。兄達の苦労を思うと更にむかつく。
「兄様達がセイランと契約交わしちゃったのだって、アンジェを護る為よ。オス兄もヴィエ兄も傭兵になって、戦場で憎くもない相手と戦って……扱き使われて!! なのにアンジェ一人がこの森で護られてぬくぬく過ごして………もう最低よ!! こんなに悔しいことないもん!!」
一番腹立つのは中途半端な自分自身だ。
もし、自分が本当に『天使』だったら、聖なる力とやらで、兄達に世の人達が言う『物凄い幸福』を渡すことができただろう。
それか、こんな役立たずな翼さえ生えてこなければ、今だって三人で世界中を旅して回れたのだ。自由に……誰にも束縛されることなく……好きな場所へ行けた筈!!
「ふ……くぅぅぅ……えっく……」
堪えても、理性を裏切り嗚咽が零れる。泣き顔を見られたくなくて目を瞑って俯いていると、パタパタと雫が零れて大地に落ちる音が聞こえてくる。
悔しかった。
直ぐに泣けてしまう幼い自分が嫌だった。
もっと強くありたかった。兄達に護られなくても大丈夫な程、しっかりとした大人になりたかった。
それが駄目なら、翼がいらない。
そして兄達といつも一緒にいたい。
オスカーとオリヴィエと、三人で幸せに暮らせるのならば、もう他には何もいらなかったのに!!
ポンッと、ルヴァの大きな手がアンジェの頭を抱き寄せた。
彼女の小さな体は、すっぽりとルヴァの腕の中に収まった。
暖かな温もり……胸に顔を押し当てれば、彼の鼓動が耳に届く。
戸惑うアンジェの頭を、ルヴァは彼女が落ち着くまで、ぽしぽしと撫でつづけてくれた。
「ねぇ、アンジェ。私は思うんですけれども……きっと、オスカーもオリヴィエも、傭兵生活を苦労とは思ってないんじゃないですか……?」
彼の無責任な言葉に、アンジェは頬を膨らませた。
「オス兄にもヴィエ兄にも会ったことないのに!! どうしてルヴァに判るのよ!!」
刺々しく叫んだというのに、ルヴァは相も変わらずに優しく微笑んでいる。
「ですが、私はアンジェに会ってますよ。この年で、貴方のように人を気遣える優しい少女に育てた方達ならば、自然その人柄とて偲ばれます。
貴方がお二人の兄君の心配をするように、お二人にとっても……ねぇ。きっと、貴方の安全が何よりの幸福だったのでしょう………。
お二人はきっと幸せですよ。だって貴方に愛されているじゃないですか。自分達が護りたいと思った人に愛されている。これほど幸せなことはありません。
ねぇアンジェ……今、貴方自身が幸せであるように………」
「……幸せ?……」
「ええ。今貴方は幸せなのでしょう? 愛している人達がいて、その人達にも愛されている。幸せじゃない筈がありませんよ」
知らず、アンジェの目に再び涙が溢れてくる。
固くひび割れた大地に水が染み込むように、ルヴァの言葉はアンジェの心に染み込んだ。
今まで、アンジェは兄達が不幸だと言い続けていた。
そして兄達の不幸は、自分が原因なのだと。
それが心苦しくて悲しくて辛くて………。
そんな辛さばかりに目を向けていて………兄達に愛され、自分が幸せだということを忘れていた。
「……ありがとう……ルヴァ……」
この瞬間、アンジェは彼……ルヴァの事が大好きになった。
しゃくりあげ、ぽろぽろと泣きじゃくりながら、アンジェはルヴァに抱きついた。
「ごめんなさいルヴァ!! 怒ってごめんなさい!! ごめんね……」
「泣かなくっていいんですよ。アンジェ……ふふふ。アンジェは本当に謝ってばかりなんですねぇ………」
ルヴァは柔和に微笑んだまま、アンジェが泣き止むまで頭を撫でつづけていてくれた。
生まれて初めての『人間の友達』だった。
たとえ、後僅かな時間しか傍にいられないとしてもだ。
過ぎ行く時間を惜しむように、アンジェはルヴァにへばりつき、話し、笑い、怒って、また笑った。それぞれの物珍しい話も沢山したし、夜明けまで仮眠を取るときも、ルヴァに寄り添ってぐっすりと眠った。
そんな贅沢な時間は瞬く間に過ぎた。
扉に近づけば近づくほど、扉を潜って来た者が密に屯っている。それはそのまま、アンジェを欲しがる不埒な者の数になった。
ルヴァは銀の葉陰から、悪意に満ちた視線がちらちらと自分達を見ていることに気がついていた。
多勢に無勢。総出で襲い掛かられれば、まず自分の命はないだろう。
だが……どうせ自分には背の傷がある。
このまま何もしなくても、残り数日で息絶える身なのだから。
ルヴァは腰に吊った円月刀の柄を右手でしっかりと掴んだ。
そしてもう片方の左手で、ぎゅっと力強くアンジェの手を握り締める。
「……ん? どうしたのルヴァ? 急に黙っちゃって……」
アンジェは不思議そうに自分を見上げてきた。
自分の、最期の旅の連れ合いは天使様だ。もし、神に仕える神官として、自分の願いが叶えられるのなら………。
―――――願わくば、彼女を扉に送り届けてから息絶えたい―――――
02.02.08
乱闘ルヴァ様……次回に持ち越しです。あううううう!!
早く書きたいのに〜…あの美しい絵に萌え萌えしまくっているのにぃぃぃ!!
ああ。でも何処まで蜜柑さまの絵にミカルの筆が追いつくか。
ちょっと、怖いかもしんない(てへ♪)
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