目覚めの刻限 5





白霧の湖のほとりには、沢山果樹の木が植えてあった。
リンゴ、杏、みかん、桃、柿、小さいものでもブルーベリーやマスカット、さくらんぼなど、木々にはいつもたわわに実がなっていて、ディアーナとシオンの食事は全て、果物で賄われていた。
「いいか姫さん、何もしてねえのに皆から愛されるなんて戯言、信じるんじゃねぇぞ」
「はいですわシオン。今度は何が食べたいんですの?」
「違う、俺が言いたいのはだなぁ」
「なら、今日はもう宜しいの? 少食ですわね」
ディアーナは、少し意地悪く微笑んだ。するとシオンは、不貞腐れたように眉間に皺をよせた。
「………リンゴ、熟れてる奴な……」
「うふふ。わかりましたわ」
ディアーナがシオンの尻尾に乗ると、彼はリンゴの木の幹に彼女を運んだ。彼女は腰を降ろし、手当たり次第に赤くなった実をもいでは、口を開けて待っているシオンめがけて、ぽいぽい放り投げる。
正直、ディアーナにとって、彼のお腹がくちるまで実をもぐのは、大変な仕事だった。
彼は一回の食事で、最低リンゴ二百個分も食べるのだから。
けれど、ディアーナは、この仕事が大好きだった。
シオンは体が大きいから、もし自分一人で直接木の実を採ろうとすれば、木を丸ごとかじらねばならなくなる。葉っぱごと果実を食べれば味が不味くなるし、ディアーナも、シオンが美味しいと喜んで食べてくれることが嬉しかったのだ。
(シオンのおっしゃりたいことは、解ってますわ)
きっと彼は、ディアーナが聖女として生まれた時用に、正しい心構えを説きたかったのだろう。
聖女だから愛されるんじゃない。竜が傍にいるから慕われるんじゃない。
皆を愛しているから愛される。皆を守るから崇め奉られる。
(私、精一杯頑張りますわ)
現世に生まれることができたら、少しでも皆に幸せになって欲しい。マリーレイン以上にクラインの国民の為に働いて、皆を喜ばせて、自分も幸せになれればなお嬉しい。
シオンにくどいほど言われずとも、ディアーナ自身もそう思っていた。
……そういう聖女になりたかった。

「ひいっく………えっえっ………」
泣いてる場合じゃないのに、涙がどうしても止まらない。
愛したかったし愛されたかった。なのに、もう自分には、そんな努力をする時間がない。
一人の命で、皆が、国が助かるのだ。今更、自分の人生が欲しかったなどと言えるわけがない。
「……私は、クラインの皆を守りたい……シオン、私はどうしたら宜しいのです?……」
「決まっておろう!! お前はこの国の王女だ!! 王女らしく、立派に国の役にたて!!」
「カイナス!! 貴方になど、言われたくないですわ!!」
国に混乱を招いた卑怯者に、王族の心構えを説かれる筋合いなどない。
セイリオスやレオニス、アルムレディンらの目が、悲壮を漂わせ、痛ましい者を見る目に変わっていた。まるで、無実だとわかっていながらも、首を切られる子供を見送るような目だ。
「そんな顔はなさらないでくださいまし」
ディアーナは、無理やり笑みを作って目を擦った。
「私が嫁ぐことで、少しでも時間稼ぎになれば……宜しいのです。だってアルムレディン、貴方はいつか、ダリスの国を、その手で取り戻してくださるのでしょ? 私、協力致しますわ……そしたら……クラインだって……」
「……ディアーナ姫……俺が、もう少ししっかりしていれば……あんな奴に、国を乗っ取られたばかりに……」
アルムレディンは言葉につまり、顔を背けてしまった。
レオニスも、セイリオスも、もはやディアーナに、かける言葉も見つからないようだ。
「姫さんの考えは纏まったようだな」
「はいですわ。シオン」
シオンは冷ややかに自分を見、次にぐるりと周囲を見まわした。
「さてと、本来なら国の一大事を決めるのは国王だ。だがあいつはさっきおっ死んじまったし、セイルには王家の血は混じってねぇ。となると、不本意だが、お前が今現在、クライン王家の代表っつーことになる」
シオンは、ぐいっとカイナスの襟首をその腕で手繰り寄せ、吊るし上げた。
「最後に聞く。クラインにディアーナは必要ないのか?」
「いらん!!」
即答だった。
「そうか、ありがとうよ!!」
シオンは、用が済むと直ぐにカイナスを払いのけた。よほど力が強かったのか、カイナスの体は勢いがつき、部屋の隅まで派手に転がっていった。
がんっと、彼の頭が壁にぶちあたり、ずるっと床にのびる。
けれど、カイナスが伸びてしまっても、がんがんと壁を叩く音は鳴り続けた。
「何の音ですの?」
さっき、セイリオスにキールと呼ばれた魔導士らしき青年が、俯きながら水晶球を掲げた。
ダリス兵が、大木槌を振り上げて、城の大門を力づくでこじ開けようとした光景が映し出されている。
ダリス軍はもう、こんな間近にいる。
ディアーナは、時間の刻限が来てしまったことを悟った。
「シオン………わたく……し、白霧の湖で、待っておりますわね………」
ディアーナは、両手を握り締め、彼の前に進み出た。
涙が溢れそうで、顔が上げられない。
「さあ……はや……むぐ!!」
シオンが、その大きな掌で、ディアーナの口を塞ぎ、彼女の細い腰を掴んで引き寄せた。
「!!」
「馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、ここまで馬鹿とは思わなかった。情けねぇ……俺が手塩にかけてこの程度か? こんな馬鹿に育てた覚えはねぇ!!」
(シオン?)
ディアーナは彼を見上げた。
シオンは皮肉に口を歪めて笑っていた。
「考えろ。一度紡いだ取り決めは、絶対に取り消しが利かないんだぞ。いい加減、身に染みて解っている筈だ。
もう一度お前に問う。
お前は今後、どうしたい?
お前は一体何をしたいんだ?」
(……シオン……)

≪水浴びがしたいですわ≫
≪当然、クーデターを止めますわ≫
…………本当に、突き落としてくれたっけ………
≪俺を産んだら、あんたは俺の母親ってことだよな。いいさ。守ってやるよ。子が親を守るのは当然だろ!!≫
…………そんな不用意な一言の為に、呪縛され、望まない人生を歩んできた彼と、巻き沿いを食った自分…………

今、シオンの体には、凄烈な光が溢れそうになり、今にも爆発しそうな気配を漂わせていた。
ずっと、彼の傍で接していたから解る。
シオンには、今までこんな力はなかった。
何故急に? 彼が故意に隠していたとはとても思えない。
シオンは、ディアーナの唇から指を外した。
「願えよ。姫さんはどうしたいんだ? 願えよ」
守護獣は、守りたいと思った人間の、願い通りにしか動けない。
すっきりとした安堵。シオンの喜びが、直に心に染み渡ってくる。
(……ああシオン……そうだったんですのね……)
ディアーナの唇に、笑みが零れた。
「長い……長い呪縛でしたわね……」
ディアーナの言葉に、彼もにんまりと笑った。
シオンにとって、最後の呪縛……それは、王家の血……。
国王が居なくなっても、ディアーナが王家の一員である以上、彼女の属する国に対し、彼女の守り手であるシオンには、例え不本意でも守る義務が生じる。
けれど、新王に一番血が近かった者は、今、『いらん!!』と言って、ディアーナの存在を否定した。
ディアーナは要らない。
ディアーナは、王家の姫ではない。
ディアーナは王家に必要ではない。
ならば、シオンも要らない。
シオンは、ずっとこの機会を狙っていたのだ。
王家の呪縛から、本当に自由になる為に、言葉巧みに操って、欲しい解呪の言霊を引き出した。
もう、彼の誓約は、ディアーナだけ。
今の事態に守護を願うも、自分達だけばっくれるのも、彼女の自由……それを踏まえてどうするのかと、彼は尋ねてくるのだ。
答えはもう、解りきってるだろうに。本当に人が悪い。
「ねえ、シオン……私のこと、好きですの?……」
「聞くな馬鹿!!」
彼はぺしっとディアーナの頭を叩き、照れてそっぽを向いた。
「……でなきゃ、育てるかよ……」
吐き捨てるようなくぐもった低い呟きに、ディアーナは声を上げて笑った。
笑いすぎて涙が後から後から零れてきた。
彼がディアーナ自身を重荷に感じ、排除しようとしなかったことが嬉しくて。それどころかこれからも、ずっと傍に居てくれるつもりなのが嬉しくて……。
ディアーナはシオンの背に両腕を回して抱きしめた。
「私ね、ずっとシオンと一緒にいたいですわ。私の命ある限りずっと……ずっと……。ね、傍に居てくださいな」
「……あのなあ、姫さん。愛の告白なら、状況を見てからにしろよ……」
シオンの指が、ディアーナの顎をひっつかみ、キールの持つ水晶玉に向けられた。
大門を閉める鉄の鍵が、歪み変形し、今にもこじ開けられそうになっていた。
「やばいですわ!! 止めに行きますわよ!!」
「おう!!」
ディアーナの体が、ふわっと宙に浮いた。彼女の視界が閃光に染まる。
まるで、光り輝く白霧の中にいるよう……。その中で、シオンの体に、いくつもの光の放物線が、穏やかな孤を描いてまとわりつく。
彼の体はぐんぐんと大きくなっていく。同時に放出される力の波動も、どんどん圧迫していった。
ディアーナの視界は揺らいだ。
≪この姫は全く…………後悔するんじゃねーぞ……≫
ディアーナは、遠くなりそうな意識の中、照れくさそうにそう呟く、シオンの声を聞いたような気がした。



「もう一回押せ!!」
ダリス王の檄と同時に、丸太をくくりつけた荷車が走り出す。兵士らの助走に勢いがつき、鉄の大門を力一杯叩きつける。
(カイナスの奴め!! 何故開けぬ? 約束が違うではないか!!)
街に入る城門も鍵がかけられていた。
将来、自分が得る国と思いはしたが、こんな小国風情にてこずらされたため、ダリス王はかなり苛立っていた。腹いせに街に火をつけてやったのに、まだ無駄な抵抗をするとは!!
(いっそ、あやつも今日殺して、そのままマリーレインを娶るか)
十七の小娘だが、かなりの器量良しと聞く。気に食わなければ側女にすればいい。要はこの国が手に入ればいいのだから。
≪下司め。お前、本当に身勝手な男だな!!≫
「何だと無礼者!!」
ダリス王は剣を腰から引きぬきながら背後を振りかえった。
「今言ったのはお前か!!」
側付きの小姓に剣を向けるが、少年は蒼白になって、ふるふると首を横に振っている。
≪ばーか、ここだぜ!!≫
瞬間、ダリス軍の頭上に、いくつもの雷鳴が鳴り響いた。
王が空を見上げると、銀青色の閃光を放って、竜の巨体が浮かんでいた。
それは闇夜にあり、月の青白い光を連想させるような輝きだった。
その青い竜の額には、珍しいピンク色の髪をたなびかせた、あどけない少女が乗っていた。
彼女が街の方を指差すと、途端、竜の体から湿っぽい霧が沸き起こり、見る見る間に大量の雨をもたらす雨雲となった。
街を今にも飲み込み、焼き尽くそうとしていた火の粉は、振り出した雨によって、つぎつぎと鎮火していく。
(そんな、馬鹿な!!)
瀕死の竜が、天候をも左右できるなど思っても見なかった。
王の動揺は、そのままダリス軍に連鎖を引き起こした。浮き足立つ軍隊に向かい、竜の茶色の目が睨めつける。
≪貴様らには恥っつーもんがねぇのかよ? 病苦を助けて貰った恩人の国を、よくもまあ土足で踏み込めたもんだよな。
貴様ら、唯で帰れるなんて、思うんじゃねーぞ!!≫
青竜は咆哮した。
その息吹が情け容赦なく大地を叩き割る。
城門も鉄製の扉も城壁も、一瞬で粉々に吹っ飛んだが、ダリスの兵らも巻き沿いだった。
そんな、なぎ倒され、大地にはいつくばりうごめく兵らの群れに、次から次へと雷が振り落ちる。
ダリス王は恐慌した。
「待て!!」
≪待てるか、あほ!!≫
竜の尻尾が振られる度、あちらこちらで竜巻が生まれる。歩兵だけでなく、騎士も馬ですら空に飛び、あちらこちらへなぎ払われる。
「弓隊、槍隊!! 行け!!」
瓦解しかけた軍に、将軍らの叱咤が飛ぶ。
弾かれたように彼ら雑兵は、手に握った武器を、何も考えずに竜めがけて投げつける。
そんなめくら滅法な攻撃が、一体何の役に立つ?
僅かに、矢が、竜の腹に届いたものもあったが、固い鱗は全く鏃を受け付けない。
彼らにはもう何一つ成す術はなかった。
これは一方的な蹂躙だった。ダリスが行おうとした行動が、そっくり跳ね返されたように!!
≪この国から出ていけ!! 今すぐ!!≫
青竜はもう一度咆哮した。
彼の細長い尻尾の末端が、大地に打ち下ろされた。
「ぐあああっ!!」
砕かれた大地から、固い岩が生まれ、それらが転がり、ダリス王のいる本陣一群を押しつぶす。
「陛下!!」
「将軍!!」
旗頭を傷つけられたら、戦は終わりだ。
ましてや竜は無傷。彼が本気になれば、こんな軍の一つや二つ、簡単に殲滅できるのだと十分に力を見せつけられたのだ。
「撤退だ!! 撤退する!!」
ダリス軍は、身を翻して逃げ去った。
青竜は追わなかった。

こうして、戦の危機は回避された。





2週間後。


神殿の大広間には、この国の貴族の他、文官、魔導士、近衛騎士やアルムレディンを始めとする、各国から招かれた使者達が一堂に介していた。
彼らが見守る中、ディアーナは、自分の目の前で跪き、頭を垂れた兄に、両手で豪奢な宝石尽くしの王冠を被せた。
「セイリオス・アル・サークリッド。貴方をこの国の国王と認めますわ。これにより、今日よりセイリオス一世を名乗り、この国の発展に、全力を尽くしてください」
「承りました」
セイルの朗々とした認証の声が神殿内に浸透した。
「おめでとうございます!!」
「新王万歳!!」
一斉に歓呼の声が沸き起こる。
王の杓杖を持ち、手を優雅に振りながら観衆に答える兄の姿を見て、ディアーナは大役を勤め上げたことに、安堵の息を吐いた。
「な〜にを緊張してたんだ? 姫さんは」
傍らのシオンが、にやにや笑いながら耳打ちをする。ディアーナは頬を膨らませた。
「もう、シオンったら……当たり前ですわ。私、こんな沢山の人の前でしゃべったことなんて、ありませんもの」
「こーら、ここでふぐになるな。皆見てんだぞ」
へむっと彼がディアーナのほっぺを引っ張る。
「もう、その方が酷い顔ですわ!!」
拳を振り上げると、シオンは「はははは!!」と、豪快に笑い、難なくディアーナの攻撃を避けた。
「おいおい、そなた達は……各国の客人の前だと言うのに、何を戯れているのだ?」
新王が、呆れ顔でこんっこんっと、杓杖で軽く二人の頭に一発ずつ叩く。ディアーナは嬉しかった。彼の小突きは、とても親しみに満ちて、心を暖かくする家族のじゃれあいに思えたのだ。
「よう、セイル兄ちゃん。カッコ良かったぜ」
「これからよろしくですわ。お兄様」
少しも悪びれない二人に、セイルは仕方なさそうに苦笑した。
「全く、お前達は」
最初、クライン王国の王冠は、セイルとディアーナが互いに押しつけあい、臣下を巻き込んだ言い争いになっていた。
ディアーナは自分が王位につくなんて、「シオンをこの国に縛り付けることになるから嫌ですわ!!」と、頑なに固辞したし、セイルは「私に王家の血が一滴もないことは、国中の者全てが知っている。そんな私に、貴族がついてくるか!! 内乱は二度とごめんだ!!」と言い張り、二人の話し合いは全くの平行線状態だった。
その争いに、終止符を打ったのは、シオンの一言だった。
「姫さんに無理強いすると、俺が連れて逃げちまうぞ」
聖女を他の国に取られるなど、言語道断。
よって、セイリオスが、正当な王位継承者のディアーナ姫の認可を得て、クライン王国の王位を継ぐことになったのだ。
「ま、いいか」
やがてセイルも、人の悪い笑みを浮かべた。
「こちらこそ、これからもよろしく頼む。大司祭シオン・カイナス殿」
「ゲロ」
シオンは途端、顔を嫌そうに歪めた。
「セイル……頼むからそれ、改名しねーか……」
「悪いがこの由緒ある名前は王弟の世襲制でな」
セイリオスは改めて、ディアーナと、また彼女のせいで一緒に国の守護にさせられたシオンに、しっかりと名づけたのだ。
「これぐらいしても、バチは当たらないだろ? なんせ君は、散々私達を騙し、やきもきさせた挙句、ディアーナまで泣かせたのだからね」
「あんたがこんなシスコンなんて、ちっとも知らなかったぜ」
「うふふ、お兄様、大好きですわ!!」
ディアーナは、ぴょんとセイルに抱きついた。
その勢いで、ドレスの裾がはらりとはだけ、彼女の形良い踝を露にする。中に着込んでいた旅着のズボンが、一瞬だけ人目に晒された。
「…………」
「…………」
ディアーナは、恐る恐る上目遣いに見上げた。
セイルの口元が、ひくひくと引きつっている。
「……ディアーナ、何処へ行く気だ?……」
「あううう」
ジロリと見据えられ、ディアーナは首を縮こませた。
「〜〜〜〜〜〜〜え―――っと、ですわぁ〜〜〜〜〜〜ちょっと、お見送りに……その……ダリスまで………」
「シオン?」
セイルのくぐもった声……シオンはかりかりと頭をかき、首を竦ませた。
「俺の信条は「やられたら十倍返し」がモットーなんでな。ダリスのニセ王を袋にしたいし、それに、姫さんの頼みじゃ断れないし……」
「ふざけるな!! そんな危険なところ、ディアーナをやれるか!!」
「あ…あ……アルムレディン!! まいりますわよ!!」
ディアーナは、アルムレディンの手を掴み、一気に広間の出口に向かって駆け出した。
「そんじゃな、セイル!!」
シオンは、ふわりと宙に浮き、閃光を放った。
一瞬の間で、青竜の巨体が具現化する。
シオンは、低く頭を屈め、ディアーナの体を救い上げた。
「レオニス!!」
「は、わが身に代えましてもお守りします!!」
彼は直ぐにシオンに駆けより、もたついているディアーナより先に、彼の額に辿りつき、彼女に向かって手を差し伸べている始末だった。
「違う!! ディアーナを止めろ!!……キール!!」
「はい、全力を尽くしてお守りしましょう!!」
彼までも、うきうきと竜の頭に飛び乗った。
「いっくぜ〜♪」
「こら!! お前達ずるいぞ!! 私も竜にのりたい!!」
セイルの怒声をバックに、竜は窮屈な神殿から飛び出した。
外で屯っていた民衆が、青竜の飛ぶ姿を見て、歓声とともに手を振ってくれる。
(きっと、今は珍しくても、これからこの国ではありふれた光景になるのですわね)
竜は、風をきってどんどん飛翔する。
心地よい風を全身に感じながら、ディアーナは、みるみる小さくなっていく王城や神殿、そしてクライン王国を一望した。

小さな小さな国。
でも、自分の大切な世界。

いつ、自分がこの国の王女を辞めるのかも解らない。
将来、どんな人と恋いをするか、どこの世界に行くかも解らない。
だけど、シオンだけは、一生自分の側にいてくれる。
ディアーナは、声を上げて笑った。
≪どうした? 姫さん≫
「わたくし、幸せですわ」


夢から目覚めて、多くの人に囲まれ、愛し、愛されて……。
こうして、ディアーナの人生は今始まった。


01.03.24                                 Fin                                  





楽しかったぁ♪
久々に睡眠時間をがりがり削って書きました。

ディアーナって、やっぱり可愛い!!
シオンを(勿体無くも)キープしておきながら、誰を選んでも自由!! というエンディングに変えてみましたが、いかがでしょうか?


めぐ様のお気に召せば幸いです。


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