アナザーで会いましょう
7.錬金術?
シェル地区は、寂れているが歓楽街だ。
日暮時はいわば仕事始めのカウントダウン、夜に備え活気付き始めた往来は、人の通りもまばらである。
ハイネは、そんな最中にレーザー銃のトリガーを数回弾いた。
消音機能のついたコズミック・イラの時代の銃は、この世界のように鉛玉を発射する際にたてる轟音はなく、揉め事を嫌う通行人の殆どが気づかなかっただろう。
勿論、ハイネは男を殺すつもりも、他人の肉体をレーザーで焼くつもりもなかった。ただ、黒装束の男が持っていた銃を溶かし、使い物にならなくしただけ。
「お嬢ちゃん、君は先にあの酒場まで逃げるんだ!!」
金髪の少女が、思わぬ援軍に目を見開いている。だが、彼女は撃たれた少女を見捨てられる人間ではなかったようだ。蹲った黒髪の少女の背に、覆いかぶさりつつ首を振る。
そんな気持ちは尊いが、今の状況ではハイネの重荷に決定だ。
「流れ弾に当たるなよ!!」
舌打ちしたハイネは、自分に掴みかかってきた男の懐に飛び込むと、容赦なく銃身で鳩尾を殴りつけた。
体つきの大きな男だったが、急所を攻撃され腹を抱えて身を折る。そんな低くなった頭を、思い切り回し蹴れば、弾むように転がった。
倒れた味方の巨躯を踏み越え、新たな男がハイネめがけて拳を振り上げる。
相手の、弧を切る腕と蹴りを易々と身を屈めてかわし、彼は起き上がりざま、左手で男の拳を封じ、右手で喉仏に手刀を食らわせた。
「……げぼっ……」
咽(むせ)て前のめりに屈み込む男の背を、思いっきり蹴り飛ばせば、スライディングするように顔面から滑っていく。
こんな舗装もされていない道では、人相が変わったかもしれない。
だが、少女相手に乱暴するような奴には、良い薬だ。
「加勢する」
ハイネの背後に、いつの間にかレイも来ていた。ミゲルと二人がかりで格闘技を仕込んだのだが、彼はキラ以外の人間はどうでもいいという心情を持つだけあり、少ない動きで静かに、でも容赦なく相手を叩きのめしていく。
「殺すなよ」
生真面目なレイは、上官命令は忠実にこなす。ハイネも後方を預けられれば、自然と余裕も生まれた。
(何人だ?)
ザッと目を走らせれば、総勢8人が確認できた。
全員身なりは薄汚れた黒服で、泥酔したような、すえた匂いが鼻にきつく、一様にドロンと濁った目も気になる。
それぞれ機敏に動いているが、なんとなく攻撃のテンポにズレを感じる。
まるで、何者かに操られているようで、一欠けらの意志も感じない。
(もしかして薬物中毒か? だったら、こいつらに命令しているヤツがいる筈なんだけど)
とりあえず、8人の中にリーダーは見当たらない。
そのうち4人が一斉に、引き抜いた小銃を向ける。
ハイネは身近な男の手首を蹴って奪い、即座にみせしめで撃った。
彼のたった放った1発の鉛弾で、銃を持っていた残り3人が、同時に膝を折り倒れ伏す。
射撃は得意だし、こんな距離もない混戦で、威力のある旧式銃ならば、角度を計算すれば1発でも三人の肉体を貫き殺すことは可能だ。
今の破裂音で、夢遊病患者のようだった男達の目に、ようやく光が戻ったようだ。
5人は、胡散臭げにハイネを見た後、地べたで蠢いている傷を負った仲間を見つけて青ざめた。
硝煙の匂いが鼻腔を擽る中、ハイネは小銃を構えながら、口元に笑みを刷いた。
「死にたきゃ来な。次は心臓を狙うぜ」
たかだかナチュラル相手なら、この倍の人数がいたってハイネは一人で片付ける自信がある。しかも今はレイという応援もいる。
狼狽し始めた男達に向かい、ハイネは近場にいた男の眉間に銃口を押し当てた。
「その娘達を置いて去れ。今なら見逃してやる」
トリガーを引いたら最後、一瞬で命を奪えるポジションを確保しつつ、にこやかな軽い口調で話しかけられれば、一層不気味に映るだろう。
男達の殺気を凌駕する恐怖心が、場の空気を変えた。
潮時だ。
日没の微妙な色合いになった赤紫色の空に、甲高い指笛が鳴る。
ハイネが音の方向に振り返って見上げれば、煉瓦づくりの箱型な3階建ての建築物の屋上で、小柄な黒髪の少年が、じっとこちらを見おろしていた。
年はレイと同じぐらいで、彼の蒼い目にははっきりとした意志があり、全身も毒々しい雰囲気を醸し出している。
少年は口に突っ込んだ指を、再度吹いた。その音色に男達の目が再び濁った色に戻り、倒れた仲間を肩に担ぎ、のろのろと逃げていく。
「追わなくていいのか?」
「ほっとけ」
色々と突っ込みたい所が満載だったが、不気味な面倒事よりも、撃たれた少女の保護が重要だ。
「失礼」
「きゃっ!!」
ハイネは、動けずに蹲っていた黒髪の少女を抱き上げた。
ローズと呼ばれていた少女は、右足首を銃で撃ち抜かれた筈。なのに蒼い目で驚いた表情のまま固まる彼女に、ハイネも不思議さにこくりと首を傾げた。
そんな互いに不本意な睨めっこをする最中、ローズを守るつもりか、もう一人の金髪の少女が、ハイネの腕にしがみつく。
「助けてくれたことは感謝いたします。でも駄目なのよ。貴方はローズを何処に連れて行く気?」
黒髪の娘も美人だが、金の髪の少女は、更に目を引く愛らしさだった。色鮮やかな翡翠色の目が、真っ直ぐにハイネを射る。腕を掴んだ手はガクガクと震えていて、またもや何処かに浚われれるのかという、猜疑が伺えた。それでも彼女は気丈に、テコでも動くものかと意志を見せる。
ハイネは柔らかく笑みを作り、落ち着かせるよう、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「俺はハイネ。そこの酒場に泊まっている旅行客だ。下心はないし、このお嬢さんの足を手当てするだけだ。君もおいで」
目線を合わせて必要なことだけを告げる。怖い思いをした少女に、くだくだ沢山の言葉を投げかけても、心に受け取る余裕はない。
数秒後、彼女は理解したのだろう。こくこくと頷き、改めてハイネの服の裾をきゅっと掴んだ。
☆彡
酒場の外の往来では、今頃のろくさと軍の車がやってきて、事情聴取にのりだしている。多分ガイが話していた、左遷された軍人達の集う派出所の人間だろう。
壊れたドアから青色の軍服がちらちら行き交うのが見えるが、やる気の無い人間に何ができるかと、ハイネは一切無視していた。
酒場の内部も、実は酷い有様だった。
乱闘で9つあった丸テーブルも、それに見合う数があった筈の椅子も、全て木っ端微塵となっている。
作り付けのカウンターに、ローズの小柄な体を横たえれば、金髪の少女もひっそりと、ビール樽の影に隠れてふるふると震えている。
二人とも明らかに訳ありっぽい。
軍人に捕まれば、こっちも戸籍がヤバイので、気持的には同じだ。
「じゃ、俺の出番だな。奴等のあしらいは任せておけ」
何故かガイが率先して、対応を申し出てくれる。どのみち頼む予定だったが、胡散臭さに自然眉間に皺も寄る。
「どういう風の吹き回しだ?」
「そりゃお前、俺は貰うもん貰ったからには、義理はきっちり果たすぞ。お嬢さん達はここで安心してろや」
にやっと、人好きのする笑みを浮かべる。
金色の髪の少女は素直な性格なのだろう。
右目にざっくりと刻まれた刃傷と、左腕の機械鎧には驚いたものの、翡翠色の大きな目をくりくりさせ、にっこり嬉しげにこくこくと頷いた。
(……おいおいお嬢ちゃん、このおっさんさぁ、さっきあんた達を売春宿に売る気満々だったんだけど……)
ガイ達を今度こそ追い出した後、レイがすかさず、壊れて外れそうになっていた扉を起こし、無理やり鍵をかける。
「グレゴリー、レイに道具渡して。二人でついでに蝶番(扉と壁を繋ぐ金具)直しておけ。その後は店の片づけだ。マーゴットさんは綺麗なタオルと薬を用意して」
もう、この店のボスはハイネである。レイはともかく、二人は逆らわずに、首をこくこくと縦に振る。
ハイネは少女の右足を手に取った。
撃たれた箇所は足首だ。太ももを半ばまで隠す皮のロングブーツには、くっきりと銃弾が穿った丸い穴があるというのに、奇妙なことに血が1滴も流れていない。
脱がすと、彼女の足は膝から下がなかった。
代わりに冷たく銀色に輝く、ガイの腕と同じような細身の機械鎧が姿を現す。
「えーっとハイネ、ガーゼとはさみとアルコールだね……」
「……ありがとマーゴットさん、いらなくなったみたい……」
ボケたまま、背後でごそごそと救急箱を漁る彼女を労って止め、どうしたものかと頭を痛める。破損した箇所は足首の間接部分だ。身体に怪我はないのは良かったが、これでは立っても体重を支えることはできまい。
「この場合ってさ、医者になる訳? それとも専門の修理工場とか捜した方がいいのか?」
「お気遣い感謝します。修理は道具さえあれば自分でできますので、もし差し支えなければ、不要になった鉄とか銅などの金属類をお譲りいただけませんか?」
ローズが初めて口を開いたが、穏やかでしっとりとした艶のある声だ。理知的で物静かな性質らしい。
だが廃材で、どうやってこの義足を修理するつもりなのだろう?
「お嬢ちゃんはオートメール(機械鎧)技師か?」
「いいえ。でも知識は一通りあります。わたくし自身の身体ですもの」
グレゴリーが、厨房を漁って持ってきたのは、底が抜けた鉄鍋だった。
(冗談だろおっさん?)
ハイネの驚きを余所に、いつの間にか黒髪の少女は、自分が腰を下ろしていたカウンターに、籠から一つ拝借したイチゴを使い、なにやら怪しげな図形を描いた。
そして、己の足と鍋をその中心にのせ、器用に両手を図形につける。
途端、ゆるゆると描いた線に白光が灯り、鍋の取っ手部分が見る間に消滅した。
光が消えれば、銃で撃ち抜かれた破損箇所が塞がっている。
「動けそう?」
「ええ、大丈夫よアンジェ」
ローズは、カウンターから足を降ろして立ち上がると、つま先でとんとん叩いて状態を確かめた。
本当に直してしまったらしい。
ハイネは我が目を疑った。
「何今の?…光って、直って……、一体!!」
「錬金術よ。ご存知ありませんか?」
「はぁ?」
珍しくローズが描いた図形を、興味深くしげしげと見ているレイの所へ、アンジェと呼ばれたもう1人の少女はぽてぽてと歩み寄り、彼の右手を引っつかんだ。
目ざとくも、殴りすぎて腫れてしまった拳を見つけたらしい。
「痛そう。手当てしなきゃ」
だが、彼女はおもむろに手を翳した。
彼女の手の平から、彼女の髪の色と同じ、眩く輝く光が零れ落ちる。
「へ?」
ハイネは目を疑った。
膨れ上がっていた筈のレイの拳は、みるみるうちに白く元通りになっていた。
レイもしげしげと、自分の右手の甲を指でなぞる。
「手品みたいだな。貴方は何でも治せるのか?」
「損なった手足とかを戻すのは駄目だけど、怪我を癒すのは得意よ」
「いいな、便利だ」
「でしょでしょ♪」
羨ましがる問題か?
美少年と美少女が並んで立つ姿は絵になるが、何故レイは不思議に思わないのだろう?
天然ボケな少年の行く末を心配し、頭を抱えたハイネはふと、焦げ臭い匂いに眉を顰めた。
「おわっ…、まずい!!」
ガイ達の襲撃からずっと、鍋に火をかけたまま忘れていた。
この騒動の間に、作りかけていたスープがめでたく消し炭になり昇天していた。
くーくるくるくるきゅー……
アンジェの腹が鳴る。
「………」
てれてれしながら俯く。そのはにかんだ表情が、キラみたいで和む。
「良かったら、メシ食うか?」
アンジェはぶんぶん首を縦に振っている。だが、その後頭部を、ローズが平手でぺしりとひっぱたく。
「申し訳ございませんが、わたくし達は今無一文なので」
「ついでだから気にするな。4人分作るのも、6人分も一緒だろ♪」
実際、ハイネは火を使う調理場なんて初めてだったが、食材があればなんとでもなる。
「じゃ、私、手伝います♪」
「よし、来い」
アンジェが元気良く手を上げるので、ハイネも気持ちよく厨房に手招きした。
「二人とも名前は? 俺はハイネ・ヴェステンフルスだ。あっちは弟のレイ。髭面がグレゴリーでこの店のオーナー、そっちはマーゴットさんっていって、お隣の果物売りだ」
今日1日で何度名前を名乗っただろう? まぁ、会う奴皆初対面だと割り切れば、うざさも気になるまい。
「私はアンジェリーク・リモージュです。皆はアンジェって呼びます」
ほえほえした雰囲気が醸し出す温かさと、ゆるくウェーブが掛かった金色の髪といい、『天使』の名が確かに相応しい。
何でも素直にぺロッと白状しそうなタイプだから、きっと、今告げた名も本名なのだろう。
「………わたくしはローズ……、ローズ・ブラウンです……」
黒髪の少女は躊躇いがちだった。明らかに名乗りなれておらずに偽名っぽい。
「うわ〜、美味しそう♪ ねえねえハイネ、これジャムにするの?」
アンジェが目をキラキラさせ、大量のイチゴ籠を指差す。
「ああ、食いながらでいいから、へた取り頼む」
「きゃうう♪」
早速アンジェは一つ口に放り込み、もぐもぐ動かしながら作業に取り掛かる。
この子は相当腹ペコ決定。なら、ローズとて同じだろう。
ハイネは脳内で作る予定だったメニューを変更した。
パンは大量にあるし、時間短縮して、簡単に作れる具沢山なチーズオムレツをメインにしてスープでいいだろう。
ベーコンを勝手に拝借し、他の野菜同様に細かく刻み、バターで炒め、その後水を足して塩コショウで味を調えみじん切りしたパセリを散らす。
スープを煮ている間に、タマゴを山のようにボールに割りいれてかき回す。
切り刻んだトマトを鍋に入れ、火で炙り、ショウガと脂身と塩と香辛料でソースも作る。
「お、いいもの発見♪」
目聡くガラクタの山から、古びたコーヒーのサイフォンと、豆をひくミルを引っ張り出す。棚から未開封の豆も見つけ、コーヒー用のお湯を沸かしつつ、横のコンロで熱したフライパンにバターと溶いたタマゴを流しいれた。
「アンジェ、ローズと姉妹か?」
「ううん。偶然同じ人達に攫われたから、二人で逃げてきたの」
「どうしてあんなのに捕まった?…って、愚問だな。誰だって怪しい奴に拉致られたくねーし。帰る当てはあるのか?」
「うう……、実は今のところ無いの……」
アンジェは饒舌だった。隠し事も得意でない、素直な性格なのだろう。
彼女はもごもごと忙しく咀嚼しながら、皿にイチゴを一粒のせた。
一向に数が増えないところを見ると、ヘタを取るより、口に放り込む回数の方が多いかもしれない。
「ローズは、親が決めた結婚が嫌で、式の日に脱走してきたんですって。私は、身内が勝手に私の恋人を何処かに捨てちゃったんで、探しに来たんです」
「ほぉ、その心意気は偉いと思うけど、見つかりそうなのか?」
アンジェは、再びふるふる首を横に振った。
「この街に来た形跡は残っていたけど、彼がいた筈の建物は、綺麗に更地になってて、その後はぷっつり」
それが昼間、奇妙な魔導士に消されたヴェルナー氏の建物なこととは、当然ハイネは知るよしもなかった。手繰ればキラと遭遇できたかもしれない情報をあっさりスルーし、彼は普通に話を続ける。
「恋人の名前は、なんて言うんだ?」
「セイランです。セイラン・ヴォイド・フォレストって言います。職業は芸術家です」
「曖昧だな。画家? 音楽家? それとも彫刻家?」
「感性の赴くまま手当たり次第です。絵も音楽も彫刻も詩作も、建築でも内装とかも手がけることもあるし……。私にはセイランの作品の良し悪しは判らないですけど、彼は才能豊かなんです♪」
恋人を褒めてるのだか貶してるのだか判らないが、話をする彼女は嬉しそうだ。だが、ハイネはがっくりと肩を落とした。
(駄目だこりゃ。男に金は無い)
芸術家なんていう職業で、食っていけるのは一握りだ。
絵画一つでも奥が深いのに、多彩なジャンルに手を出すなど、食うために困って生活苦だからに決まってる。
親にしてみりゃ、こんなあきらかに溺愛されて育った娘を、その日暮らしの男に嫁がせるなんてお断りだろうに。
アンジェがどんな家柄の娘かは知らないが、もし権力のある家ならば、最悪もう殺されているかもしれない。
可哀想だが、この娘は早々に自宅からの捜索隊に見つかり、連れ戻されるのがオチだろう。
「じゃ、わたくしはこちらを手伝いますね」
厨房に転がっていた小麦粉を使い、ローズはいつの間にか、書きやすい数本のチョークを作り上げていた。
早速、グレゴリーとレイが瓦礫を除けた床をモップで拭い、改めて幾何学的な図形を組み合わせて描いた。
そこに足の折れた椅子を1脚置き、ぱむっと両手を図に押し当てる。
白光がともり、それが立ち消えた後、折れた脚は元通りに修復されていた。
ハイネは改めて目を見張った。
「……これが錬金術か……」
顔はポーカーフェイスを作っていたが、内心は逆だった。
『錬金術』が生活に浸透した時代など、西暦からコズミック・イラまでの期間1度たりともない。
ここは文字も言葉もプラントと共通だったから、自分達はせいぜい過去か火星あたりに飛ばされたのだろうとタカを括っていたが、どうやらそんな生易しいものではなかったようだ。
(ここは、異世界で決まりか。ちっ、帰れるのかよ俺達……?)
ガモフに戻るまでは、ハイネがレイの保護者だ。自分が動揺すれば、彼だって不安になる。
(情報が足りねー。慎重にならねーと、取り返しがつかねーかも)
レトロな世界だとタカを括っていたから、拳と拳銃とナイフだけで十分暮らしていけると甘く見ていたのだ。『錬金術』がこんなにも便利ならきっと、人を殺傷する技術に組み込まれている可能性が高い。
未知の兵器と対戦するのは脅威だ。自分がいくらコーディネーターといっても、ナチュラルよりちょっとだけデキがいいだけで、化け物ではない。しかも錬金術は、見てくれ16〜17の少女達が使えているのだ。
メビウスが核を積み、プラントに向かって来るのとわけが違う。
目で、敵だと確認できないからこそ恐怖だ。
(作戦変更。守り固めつつ、効果的にキラ捜しする方法を探そう)
今後の方針を決めつつ、フライパンを振り上げ、一つ目の巨大オムレツをひっくり返す。
その時、ハイネ目の端で、じぃ〜とローズを見ていたレイが、とことこと動いた。
「俺もやってみたいのだが、いいか?」
レイは懐から、肌身離さず持ち歩いていたハイネのデジカメを取り出した。
キラのこと以外、とんと興味を持たない彼が珍しいと思ったら、どうやら大切な画像を取り戻したかったからだったのだろう。
彼は、ローズが書いた変な図形の中央に機械を置くと、見よう見まねで両手をぱむっと床についた。
(無理だろ、そりゃ)
だが、決め付けたハイネの目の前で、幾何学模様の線に白光が灯った。
そして、間欠泉から飛沫が吹き上げるように、勢いよく光が床から天井に突き上がる。
「…わぁ!!……」
「レイ!!」
ハイネはカウンターを飛び越え、まっしぐらに駆け寄った。
立ちすくんでいたローズは、驚愕に強張りながらも、小さな身体でハイネに飛び掛る。
「駄目!! 錬成反応が起こっている時に、無闇やたらと陣の中に踏み込んではなりません!!」
「レイ、無事か!! 返事しやがれこらっ!!」
光の勢いに煽られ、レイは尻餅をついたまま固まっていた。
ゆるゆると反応が終わり、光が収まるまで数秒、待ち構えていたハイネは、錬成陣に踏み込んでレイの肩を揺さぶった。
「レイ、どこか痛くしてないか? 目は見えているか?」
この子は痛覚が鈍いし、感情を表に出すのも苦手だ。周囲が気遣ってやらねばならない。
だが、そんなハイネを無視したまま、レイは緊張した面持ちでデジカメを両手に持った。
こくりと息を呑み、ぱちりと電源をつけてみる。
赤いランプが緑へと変わった瞬間、小さな画面にビーバー姿なキラが、寝ぼけつつもふにゃ〜と目を擦っている写真が、ちゃんと浮きあがった。彼の一番お気に入りが再び戻ってきた嬉しさに、無表情だったレイが蕩けるような笑みを浮かべる。
画像を覗き込んだアンジェも、「可愛い〜♪」と歓声を上げている。いつの間にハイネに追いついてきたのか、随分と好奇心旺盛な娘だ。
割れたデジカメも綺麗に直り、普通なら喜ばしい限りだが、ハイネはそれどころではない。
「レイ、お前今何をやった?」
「直って欲しいと願っただけだ」
「それだけ?」
「ああ」
「ほー。そうかそうか」
ハイネも試しに床の上に割れたグラスを置き、とんとついてみるが光らない。
「…………おい………」
「あ、私も挑戦〜♪」
ぽてぽてとやってきたアンジェが、ハイネを押しのけてえいっと両手をついてみた。
呼吸するぐらい自然に淡い白光が灯り、透明なグラスはヒビ一つ無く、すぐに元通りとなる。
「えへへへへ〜♪」
「なんで? なんでだよぉぉ???」
「錬金術は、生まれついての能力の適正があるの。学問に例えるのなら、誰にだって得意な教科と苦手な教科があるでしょ? 『物質再生』の公式が理解できていても、ハイネの持って生まれたその体に、この図式を使える能力が備わってなければ発動はしない。つまり貴方は、錬金術を表現するのが苦手な体なの」
ローズの説明に一応納得はできるが、ハイネには、赤ザフト…つまりエリートのプライドがある。
4人中3人ができて、自分だけできないというのは結構癪に障るが、生まれつきといわれれば仕方あるまい。
「はぁ〜、まぁメシにしよう。三人でそのテーブル2つと椅子6つ、急いで直してくれ。グレゴリーとマーゴットさんは、並べるの手伝って」
手際よく10分足らずで作ってしまった割に、夕食はオムレツ、スープ、サラダにコーヒーに、軽く炙って暖めたパンとチーズと、取り合えず6人のお腹をたっぷり満たす分量はある。
盛り付けも彩りを考えて、切ったイチゴを花の形に添える。
「貴方、器用ね」
「おう、今日日、家事ぐらいできなきゃ、いい男とはいえねーからな」
テーブルセッティングも実はこだわりたい派だ。可愛い女の子を招待するのなら、パン籠とかキャンドルとか、小物で楽しませたい気持ちがある。
子供が好きそうな、スライスしたチーズとトマトソースをたっぷりとかけ、レイに大きなスプーンを添えて皿を手渡せば、14歳の食べ盛りの子だ。無表情ながらもはぐはぐと頬張りだす。
「あんな騒ぎの後だっつーのに、この子は全く動じないねぇ」
「ああ、食える時に食っとかないと、いざって時に力出ないっしょ? 大体この世の中、何が起こるかわかんないし」
アマルフィ隊の数少ない隊の規則の一つだ。
人に吹聴することではないので言わないが、事実今自分達は別世界に吹っ飛ばされた。
それに軍人は体が資本だ。いざというとき、体が動かなければ戦えない。
そして、見知らぬ世界では、戦えないことは、イコール死へと繋がる。
パンをつまみ、スープをすすり、各自勝手に食べ始める。
程ほどにお腹が満ちた頃、ハイネはおもむろに話題を振った。
「ローズ、アンジェ。二人とも、今後行く当てはあるのか?」
二人のスプーンを持つ動きが、ぴたっと同時に止まった。当たり前だ。
アンジェも随分ヤバイが、ローズは家に戻れば、嫌いな所に嫁がされるのが確定している。
ハイネはぽりぽりと頭をかいた。
(まぁ、俺が拾っちまったから仕方ないか。こいつら外に出したら最後、またどっかにかどわかされていきそうで怖いし)
「なぁ、二人とも行くあてないなら、ここでしばらく働いてけよ」
「はぁ?」「え?」
「嫌さ、明日からここの酒場、経営を立て直しするんだけど、人手があると助かるな〜なんて♪ 色売る店じゃねーから安心しな。俺が求めるのは純粋なスタッフだ。勿論、自分の用事が最優先でいいぜ。実家の追っ手が来たら逃げてもいいし、恋人が見つかったら、そっち行ってもいい。悪い話じゃないだろ?」
「おい、勝手に…」
ハイネはポケットから、二人分の1ヶ月の家賃を取り出し、グレゴリーに手渡して口を封じた。
「部屋は住み込みOKだ。二階が後3部屋開いてるから、好きに錬成して住み着いてくれ、どう?」
気兼ねしないように言葉で示す。
だが、目を剥いたのはグレゴリーだ。
「おい、お前本気で酒場をやるのか?」
「おうよ。あんただって今後、詐欺でひやひや暮らすより、まっとうに働いて、皆の胃袋幸せにしてやった方が、気持ちいいだろ?」
「こんな界隈で、普通に店が流行ると思うのか?」
「ああ、俺に任せておけ」
自分の本業はホテルのオーナーだ。マリア・ブランシュホテルでは、客に出す飲食類は、ハイネがGOサインを出さない限り、ルームサービスのメニューに載ることはなかった。
舌は肥えてるし、バーも飲食店もカフェも接客業もお手の物だ。
戸籍のない人間がてっとり早く金を稼ぐ方法に、繁華街の夜の住人はもってこいの職業だ。
幸い酒に強いし、腕っ節にも自信がある。いつ元の世界に戻れるかわからないのなら、固定収入は必要だ。
また、夜の商売は表に出ないような情報が入りやすい。最悪、正攻法で店が繁盛しなければ、この美貌とザフト1女タラシの異名にかけて、ホストクラブに転身して稼げばいい。
腹を括れば態度もデカイ。
「グレゴリー、儲けは五分五分」
「ふざけるな、何処でも三対七が相場だ」
店は確かに彼の持ち物だが、今後身を粉にして働くのも、店の舵取りも責任も、全てハイネの身にかかっている。
「俺はそんなに安くない。その代わり売り上げ2倍は稼がせてやるぜ」
「大言壮語を吐く奴だな」
「生憎俺の信条は有言実行だ。おっさん、試しに投資したと思って一ヶ月俺に店を任せてみな。そこで一端この契約は破棄だ」
バクチで1ヶ月店を貸すぐらいなら、悪い話ではないだろう。
グレゴリーは、太い腕を組んで唸ったが、駄目でもともとという諦めと、もしかしたら儲かるかもという欲がちらついたようだ。
「四対六」
「ウザい。顔が変わるまで殴るぞ」
「……判った……」
「よし、なら速攻で契約書にサインしな♪ マーゴットさん、紙〜!!」
「契約書? なんだそりゃ」
グレゴリーの問いを無視し、さっきレイのルビーを譲渡した時に、受け取った書類の控えを手本に、ハイネは同じ書式で紙にしたためる。
「ほれ、きっちりここに名前書きな。ちなみにこの取り決めを破れば、あんたは公的に罰せられる。ガイが押し付けてるようなミカジメ料のノルマは、この街から逃げちまえばチャラになるが、国の法律は違うぜ。理解できたか?」
きちんとした学を持つ人間と知り、おやじは思いっきり鼻白む。
が、ハイネの腕っ節の強さも実証済みだ。結局は逆らえずにしぶしぶと名前を書いた。
「じゃ、俺達は今日から1ヶ月間仲間だ。食い終わったら皆に役割分担を振る。バッチリ息を合わしていこうじゃないの、な♪」
ハイネのテンションが高い長い一日は、とっぷりと夜が更けてもまだまだ終わらなかった。
☆彡
何事も、新しい事業を始める時は、楽しいものだ。
「おっはよ〜♪ なぁガイ、どっかにまともでいい酒の卸売業者いない? 値が張ってもいいから、上質な酒を仕入れれる所を紹介して欲しいんだけど? ただし小量な」
昨日盛大に暴れた後だというのに、ハイネは早朝一番に、グレゴリーと一緒にガイの事務所に走った。
「お前、ホントいい度胸だぜ。あんまり嘗めた態度取りやがると、締めるぞ」
「まあまあ、俺達もう友人だろ♪」
「誰がだ」
「俺とガイ」
普通、嫌な思いをした所など敬遠するものだ。特に乱闘騒ぎを起こしたり、ガトリング銃を向けてくる男など、普通の神経しか持ち合わせてない人間なら、二度と近寄りもしない筈。
だが、ハイネはそんな些事は気にしない男だった。もともと人好きする性格だし、目的があるのに、過去の遺恨にぐだぐだ拘り、時間を無駄に費やすのはチャンスまでどぶに捨ててしまうことを、商売柄知っていた。
「グレゴリーの店さ、この機会に徹底的に手を入れて、でかく稼ごうと思うんだ。ガイの収入は、ウチの売り上げから1割だろ。儲かればあんただって嬉しいよな? なっ♪」
男は一瞬呆れ顔を作ったが、直ぐに面白そうに表情を綻ばせた。
「お前、本気であのぼろい店を切り盛りするのか?」
「ああ、食い扶持が増えて、人手も確保できたからな。俺達だって妹捜すにも軍資金がいるし。とにかく1ヶ月腰を据えて頑張るさ」
「ならいい親父がいるぜ。古今東西の地酒まで、金さえ払えば仕入れてくる」
「よし、頼む」
ガイは直ぐに用紙を一枚引っ張り出し、紹介状を書き始めた。
「改装するなら、うちの若いもんを日雇いで貸すぜ」
「いらねーよ。あんた暴利吹っ掛けるし」
「当たり前だ。うちはそれでメシ食ってんだ。で、改装オープンは何時だ? 閑古鳥じゃ寂しいだろうから、花ぐらい持って行ってやる」
「サンキュ♪ 今夜から開くから、是非ハートを堕としたい姐さんと来な。あんたに恥はかかせねーよ」
ハイネがワンコのように手を出して待っていると、ガイがぽんっと紹介状と手描きの地図をのせてくれた。
「よっしゃ、行くぞグレゴリー!!」
夕方までの時間は短い。卸業者への推薦状を片手に、ハイネはオーナーをお供にてけてけと走っていく。
「フットワーク、軽い男だぜ」
ガイは苦笑を浮かべていたが、今まで単調だった日常に、一つ楽しみが生まれた気配をしみじみと感じていた。
ハイネは自らが宣告した通り、楽しく店の再生に踏み切った。
朝一番に、まず店の模様替えをした。
男一人できりもりする店など、古びてて汚いし、ここ数ヶ月はまともに店を開いていた形跡も無い。
だから古カーテンと捨てるつもりで纏めていた毛布を使い、錬成した壁紙作り、全員で白地に緑を基調とした店に変えた。テーブルと床もヤスリで削って研磨をかけた上、きっちりワックスで艶を出し、市場で買ってきた小奇麗な花で飾りつけもした。
「客なんつーものは、若い女が連れてくるんだ」
これがハイネの信条だ。
綺麗な女性が競って来たがる店には、釣られて男も出入りする。
この界隈で健全で楽しく遊べる店ならば、繁華街なら客足は途切れることはない。
小物も勿論手を抜きたくない。
綺麗なカップを改めて揃える必要はなかった。何故ならありがたいことに、ローズが片っ端から錬成できたのだ。
彼女は鉱物系の錬成に長けていて、一番錬金術の応用が利いた。また伝統的でシックなデザインを好む傾向があったので、店のインテリアはその路線で固定した。
アンジェとレイにも、ローズに練成陣を教わりつつ、それぞれファンシーで個性的な小物を作らせてみた。特にネコとかウサギとかハムスターとか、小動物が絡んだグッズが抜群に上手いので、二人には金属屑を大量に手渡し、大衆受けするネコをモチーフにしたアクセサリーを任せた。
材料が廃材だから、元手なんてかからない。それに装飾品は結構な売り上げが見込める。これも有効な副業商品だ。
「ホント錬金術さまさまだぜ。労働力3倍どころじゃねーな♪」
「つくづくポジティブな男ね」
寡黙なローズですら呆れている。
店の酒の種類も総入れ替えに踏み切った。
前はビールとバーボンぐらいしかなかったのに、デザートとフルーツのメニューを充実させ、ハイネ自らがシェーカーを振るい、カクテルを取り入れることにしたのだ。
シャカシャカとシェーカーを振りつつ、ハイネは片っ端からカウンターに、今夜出すカクテルの試作品を並べてみた。
国も文化も違うし、グレゴリーの酒蔵にビールとワインしかなかったからもしやと思ったが、このアメストリア公国には、酒や果物やジュースを混ぜ合わせて作る『カクテル』という飲み物はなかった。
特にこのイーストシティは、つい7年前まで内乱の最前線だったせいか、随分と軍人が台頭している。
治安が悪い国では、夜に身の危険を顧みず、街で遊ぶ女性は商売する女と決まっていた。だが、都市部は治安が日に日に向上し、今では普通に夜のデートを楽しむ女性も増えているらしい。
ならば、そんな普通の女の子が、好んで来たくなるような酒場を開けば?
「女の子受けしそうなものは、アクセサリーに小物、チョコレート、砂糖菓子、アイスクリーム、フルーツ、それとちょっぴり危険にお洒落なお酒♪」
「まあ、味は悪くないわ」
ローズもいいところのお嬢らしく、断然舌が肥えている。
カクテルの利点はまだある。それは、上質な酒を数種類仕入れておけば、その日に仕入れた旬のフルーツを組み合わせて多彩なものを作ることができる。在庫を溜めずに済む分、帳簿も楽だ。
季節も春だし、華やぐ花やカットしたフルーツも、全てがグラスを鮮やかに盛り付ける素材だ。
見た目も美しく、味も良く、ワインみたいに高額を取られる事も無く、ビール並の値段でお洒落な酒が楽しめるとあれば?
ハイネは、店が当たることを確信した。
「おい、レイ、できたか?」
「ああ、ようやく完成した」
本日のカクテルは15種類。そのネーミングは、5種類ずつアンジェ、レイ、ローズに任せてみた。
レイの情緒教育の一環として、感性の赴くままに名づけさせてみたのだが、想像力がいまいち欠落している彼には少々難しい課題だったようだ。
グラスの氷など、とっくに溶けて温くなった酒を目の前に、最後まで悩んでいた彼は、30分後の今、ようやくほっこりと満足げに微笑んだのだ。
「よし、んじゃ壁に貼り付けてこい」
「了解した」
彼はハイネに促されるまま、壁一面に大きく場所どられたメニューボードに、最後の5ピースを当てはめた。
カルーア・ミルクっぽいチョコレート酒には【ビーバーの夢】
赤石榴を使ったルビーっぽいカクテルには【燃えよ、バーニング・ミゲル】
オレンジジュースに強い酒をたらしこんだスクリュードライバーもどきには【ビバ・オレンジ隊】
ココナッツミルクをふんだんに使った甘くて白いものには【マイスゥィートエンジェル・キラ】
………四枚目を貼り付けた段階で、とうとうハイネの堪忍袋がブチ切れた。
「こらぁ、なんだそれは!!」
レイは不思議そうにこっくりと首を傾げている。
「何がいけなかったか?」
「当たり前だ。女の子が好きそうな名前を想像してつけろって俺は言っただろ。お前の好みをつけてどうする、全部却下だ外せ!!」
ハイネが額に青筋たてて怒鳴ったが、散々悩んだレイも、自分がつけた名前に愛着が湧いたのだろう。珍しくうじうじとボードを弄くって、一向に下ろすそぶりを見せない。
「大体、てめぇどの面下げて『マイ・スゥイートエンジェル』だ!!」
「ギルは俺に頼みごとがあるとき、そう呼ぶが? 愛しい人をさす言葉だと聞いたが、何か間違っているのか?」
「えへへへへ。間違ってないわよね〜♪」
「そうよね。何処の家庭もそれぞれルールがあるし」
人事だと思い、アンジェが盛大にけらけらと、ローズは笑いをかみ殺して震えている。
そんなアットホームな雰囲気のまま、グレゴリー・パブは6人で新装開店オープンをした。
この国は内乱の痛手で治安が乱れていた。
そしてシェル地区は更に如何わしげな繁華街だ。事件は日常茶飯事で、自分の身は自分で守らなきゃならない。
そんな地区にあって、まっとうなこの店は、直ぐに小さなオアシスとなった。
安価格で上質な酒と食事、そして珍しいスィート。かと思えば、ハイネと甘く会話を楽しみ、癒されたいその筋のお姉さまもやってくる。
強面の人達も、かわるがわるやってくる店で、悪さできる人間は少ない。
例えいたとしても、ハイネとレイで、腕づくでも店や客に害をなす人間は排除できる。
おまけに、彼は結構兄貴肌だ。困って救いを求めて逃げてきた子も、男女分け隔てなく助けたりもする。
一週間目には、麻薬中毒の少年を、そのまま店に迎え入れ、ウェイターにした。
翌週には、同じような理由のメンバーが更に3人増えた。店もマーゴットが所有していた家を改装して広げ、厨房の人手も増やすことにした。
どんな経歴を持つものでも、腕が良ければハイネは雇うし、もし問題を起こしたとしても、店のものなら庇う。
そんな一つ一つの評判と信用が、次々と人の輪を広げた結果、ハイネが店を手がけるようになって僅か1ヶ月、グレゴリー・パブはいつの間にか、3軒隣まで敷地を買収し、オープンカフェテラスまで行う、従業員30名の立派な店に成長していた。
この急成長が、結局次の事件の引き金となったのだ。
またもや運命が変わろうとは。
その時、ハイネは思っても見なかった。
06.11.01
長いぃぃぃぃぃ!!
ハイネはやり手です。
隣にいた気さくな兄ちゃんが、数ヵ月後には手の届かない人になっちゃった〜♪を、飄々とやりそう。
近場でこういうお買い得な男を見つけたら、決して逃してはなりません(笑)
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