綺麗な恋じゃなくても 11
「来い」
白く長い指がキラに向かい、ゆうるりと差し出される。
短い誘いの言葉は力強く、まるで命令だ。
一体これは、何の茶番だろう?
彼はキラがカガリでない事を知っている。
なのに、この態度はまるで、囚われの恋人を救いに来た男ではないか?
ギナの手が、戸惑い寝転んだままのキラの右手首を掴むと、有無を言わせず軽々と引っ張り起こした。
勢い良く傾いだ上半身が、そのままギナの二本の腕に絡め取られて抱きしめられる。
彼の逞しい体躯に比例し胸板は大きく、キラの細い肩はすっぽりと収まった。
息もできぬぐらいに強く腕が締まり、酸素を求めて喘ぎ、弓のように背を反り、顔を上げたキラの唇に、触れるぐらい微かに彼の唇が落ちた。
もう何がなんだか判らない。
こんな人前でキスなど、一体何をするのだこの男は?
「……離して……!! 離せ…!!」
「離さぬ、もう二度と」
身を捩り逃れようにもギナの腕は固く締まってビクともしない。
殴ってやろうと右手を丸めて彼の顔を見上げれば、噛み締めるように切なく呟いた彼の面持ちは今にも泣きそうで、キラ自信の胸が締まって痛くなった。
「……そのお姿を、2年前に拝見しとうございました……」
失われた昔を懐かしむように、マーナの言葉は穏やかだ。
細められた眼差しは、真っ直ぐにギナの腕に捕らえられたキラに注がれ、彼女が自分を通して別人を透かし見ているのは明白だ。
「………私も、お前の許しを同じ頃に欲しかった………」
「……ええ、後悔しております。私は徹底的に貴方様を妨害いたしましたから……」
「……ああ、何度お前を殺してやろうかと憎んだことか。だが、もう過ぎた事だ……。私は生涯カガリの為に生きると誓った。これからもずっと、カガリだけを愛し続ける……」
「……はい……、生きてください、お二人でずっと……」
切なそうに微笑んだマーナの目に、滲む涙を見つけた。
2人の意味深な言葉の意味を、悟れぬ程キラは子供でもない。
たった一度しか会った事が無い姉は、この男にとって至上の存在だったのだ。いつも黒衣を纏い、死しても彼の心はカガリにのみ捧げられ、離れない。
自分のアスランは、たった1年でキラを忘れ、他の女と婚約したというのに大違いだ。
こんなにもギナに愛されるカガリは、一体どんな少女だったのだろう?
2年も時間がありながら、我が身の不運に嘆くあまり、キラは何も聞こうとしなかった。確かにギナに『お前は何をしていた』と詰られて当然だ。
マーナは布で包んだ小さな塊を、キラの手に握らせた。
その固さと手に馴染んだ重みは、間違いなく電源を落としたトリィだ。
この2年間、自分の心を慰め続けてくれた唯一の友人、一番大切なものをしっかりと握り締め、キラは愛情深い世話役を、不安げに見つめた。
「マーナはこれからどうするの?……こんな事をしたら…、きっとただじゃ済まない……」
「辞して田舎に帰ります。マーナはカガリ様のためだけに生きてまいりました。姫様のいらっしゃらない宮殿には、なんの未練もございません。ギナさま、『この方』をお願いいたします」
「我が身に代えても、必ず幸せにする。さらばだマーナ」
「きゃああ!!」
ギナはネグリジェ姿のままのキラを両腕で抱き上げると、脇目もふらずにテラスに突進した。
「姫様!! お待ち下さい!!」
トダカの怒声にキラが振り返れば、彼はアマギと共に2人を追いかけようともがいているが、女官の人垣が男達を阻み、どうにもならない。しかも、マーナが丁度、巨躯で飛び掛った瞬間を見てしまった。
「ギナさまの邪魔はなりません!!」
鬼の形相で、彼女はトダカの銃を持つ右手にしがみついて噛み付く。つられて配下の女官達まで一斉に、腕に持つささやかな武器で、情け容赦なく袋叩きを開始した。
「姫様の幸せを奪うおつもりですか!!」
「駆け落ちよ、素敵っ♪♪」
感情的になった女性に理屈は通用しない。しかも目の前にいるのは、無粋な乙女の敵だ。
憐れなことに、真横にいたアマギ一尉も同罪らしい。
女官たちの明るい涙交じりの歓声と声援、そして撲滅の凶器がふり落ちる音に背を押され、野外に駆け出したギナの脱出を止める者は、もう誰もいなかった。
「ギナ、ちょっと、僕を何処へ連れて行く気?」
「ぼやっとする暇は無いぞ、無事アスランに会いたければ落ちるな」
小声で嗜めつつキラをお姫様抱きにし、庭を駆け抜けるギナの足は速かった。
先日のテロ騒ぎで、離宮は厳戒態勢にあった筈。
何処に軍人が潜んでいるか判らない今、これ以上ギナの足手まといになるのは嫌だ。
「降ろして。僕、自分で走れる」
「靴が無くてもか?」
「……うっ……」
断崖に立つ離宮の土台に使われるぐらいだ。ここらに散らばる石は硬くて鋭い。小石を一つ踏んだだけでも、キラの柔なかかとは切れる筈。
キラは必然的に振り落とされないように、ギナの首にしっかりとしがみつかなければならなかった。
「ねえギナ、アスランは大丈夫なの?」
「ああ、案ずる必要はない。直ぐに会わせてやる」
「……嬉しい……」
ホッとした途端、キラの涙腺は緩み、みるみる涙が滲んだ。
だが、緑の茂みを掻き分けて転がり出た先、離宮の外れでキラを待っていたのは、黒塗りの高級エレカが1台と、それを取り囲むワゴン車や大型車の群れだった。
(……ギナの護衛? でも、様子がおかしくない?……)
勿論、軍服姿の者も10人ぐらい立っているが、何故かビジネススーツ姿の女性や、重そうな機材やカメラを構えている者が、7〜8倍はいて圧倒的に多い。
連日ユウナの馬鹿が引き連れていた、TVでよく見かけたリポーターを見つけた瞬間、キラの背筋は凍りつく。
「あ、カガリさまとロンドさまです。カガリさまを腕に抱き、ロンドさまが無事戻って参りました!!」
(ぎゃああああ!?)
嫌な予感は的中し、キラとギナはあっという間にTV関係者に取り囲まれた。
嬉々として、手に持つマイクを差し出されても、質の悪い冗談としか思えない。
「姫様、今のお気持ちを一言!!」
「これからお二人はどちらに?」
マイクを手に持つリポーター達が、興奮した口調で何かしゃべっている。
そんな彼らを遮り、オーブの軍服を着たギナの護衛達が、彼ら2人の為に道を作ってくれる。
幼い頃アスラン達と遊んだ『おしくらまんじゅう』のように、揉みくちゃに押されつつ、やっとの思いで立派な黒塗りエレカに転がり出れば、たちまち後部座席が、勢い良く開いた。
「ロンドさま、今からどちらへ向かわれますか?」
「ユウナさまから略奪を決めたお気持ちを一言!!」
ギナは全て無表情のまま無視し、キラを車に放り込むと、慌しく己も乗り込み、扉を閉めた。
「出せ」
ギナに鋭く命じられ、運転席の軍人が、急発進でエレカをスタートさせた。
そのままアクセル全開で離宮の敷地から飛び出すが、敵もそれは予知していたようだ。取材陣の車も、立て続けにダッシュで彼らの後を追いかけてくる。
キラは虚ろな目で背後を見た後、更に剣呑な面持ちで、怒りに震える拳を握り締め、もう一度ハンドルを握る軍人に目を走らせた。
「……ねえ、それってさ、一体何の冗談?………」
趣味の悪いサングラスをかけ、帽子に納まりの悪い白髪をぎゅうぎゅうに詰め込み、むっすりと口を引き結んで、無言でエレカを操っている男は、どっからどう見てもキラの良く知るヘタレである。
「この馬鹿、居るならなんで君が迎えに来ないのさ!! 普通、お姫様を浚いに来るのは恋人の役目だろう!!」
「……仕方ないだろ、こっちにだって色々と都合があるんだ……」
「それに、このTV中継車はなんなのさ!!」
「気にするな、単なる有効な『理由付け』だ」
ギナが喉を鳴らして笑いながら、取り出したリモコンから何かのスイッチを入れた。
途端、エレカの後部座席に装備されている、モニターの画面が明るくなった。
≪スクープです!! 今まで沈黙を守ってきたロンド・ギナ・サハク氏、とうとう行動に出ました!!≫
音声のゲージが上がり、興奮したリポーターの弾む声が響いてくる。
キラは唖然とした。
エレカの後部に設えてある小型TVモニターに、生中継で自分の逃走が放映されている。
追いかけるエレカだけでは絵的に寂しいのだろう、何度も繰り返し所々に入るリプレイ映像は、ギナがキラをお姫様抱きにして宮殿から逃走した瞬間ばかりだった。
キラの顔は、斎姫の規定に従い映されないようにボカシが入っていたが、あられもない白いネグリジェ姿で、しかも風の強い海岸の離宮、とどめが眩い日の光の下と揃えば……カメラの角度しだいでは太ももや下着も丸見え、それどころか胸や体の線まで透けている。
面白がり、ギナはチャンネルを次々と変えてくれるが、そのテロップにはくっきりと。
【サハク家の御曹司、カガリ姫と駆け落ち!?】
【王室の秘められた愛、ここに再燃!?】
【略奪愛!? オーブが揺れる!?】
そんな大衆受けしそうな煽り文句と半裸な自分の姿、恐らくオーブ全土に放映されている現実に、キラの目にじわりと羞恥の涙が滲んだ。
「もう僕、外を歩けない!! なんでこんな大騒動になっているのさ?」
「当たり前だ。出掛けに私自ら『今からカガリを浚う』と、各社に予告を盛大にばら撒いた」
人の悪い笑みを浮かべ、悪びれもせず言い放つギナに、キラはくらっと眩暈がした。
「なんで君は穏便に済ませようとしないの?」
「愚か者、駆け落ちなど派手に演出をしなければ、国外に逃げても、速攻秘密裏に連れ戻されて終わりだ。ユウナのようにやりすぎれば飽きられるが、民衆を味方につけたくば、マスコミを使うのが一番だと覚えておけ」
ギナのいう事はいちいち尤もで、キラには反論の余地はない。
助けてもらった恩もあるが、せめて体に1枚上着を着せるぐらいの配慮が欲しいと、そう望むのは贅沢なことなのだろうか?
「……すまない、俺は一応止めたんだが……」
恐る恐るかつ、遠慮しいしい弁解するアスランに、キラはギンギンに睨みを利かせた目を向けた。
昨日彼女の目の前で、自殺しやがった暴挙に対する怒りもふつふつと湧いてくる。
八つ当たりの矛先は決定した。
「このヘタレ!! 全部君が意気地なしなのが悪いんだ!!」
「いてて、こら、今は止めろ!!」
後部座席から身を乗り出し、拳骨で容赦なく帽子越しにしばきたおせば、彼の手元がぶれ、車が大きく蛇行する。
「痴話喧嘩もいいが、後にしろ。そろそろ仕上げだ」
ギナは、キラをしっかり隣に座らせ直すと、シートベルトを体に巻きつけた。
「少し揺れるぞ」
ギナの注意の後、彼女の耳に数発の爆音が轟いた。
窓越しに上空を見れば、空を旋回していたのは武装した5台のヘリだ。
操縦席の下部に、しっかり黒いバルカン砲を搭載している。
「追っ手なの?」
「心配するな、私の雇った傭兵だ」
銃で追捕車を選んでなぎ払えば、マスコミの車は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
そして静かになった途端、キラ達ののるエレカにフックがかかり、ヘリ2台がかりでみるみる内に、空へと吊り上げられる。
3台の護衛ヘリの守りがあれば、確かに街中を走るより、空を飛んだ方が早い。
「ギナ、僕らは何処に行くの?」
「宇宙だ」
彼は優しく、くしゃりとキラの髪をかき撫でた。
☆☆
カグヤのマスドライバーには、ギナの専用艦ツクヨミが待機していた。
まさかこのまま本当に宇宙に出されるとは思わず、キラはただ驚くしかない。
「では、彼女達を頼む。カガリ、彼らは傭兵『サーペントール』のメンバーだ。お前達は宇宙に脱出後、サハク家のフローズンゲートへ寄港した後、彼らに護衛されて民間人扱いで月に降りる事になる。滞在先はコペルニクスのマリア・ブランシュホテルだ。世界中に手広く展開している庶民向けだから、子供二人で泊まっていても怪しまれまい」
名前からしてオーブのものではない。
ギナの息がかかっているかどうかは解らないが、彼が選んだ所なら安心だろう。
キラにオーブのIDカードが2枚手渡される。
『アレックス・ディノとキラ・ディノ』
「兄妹という設定で、2週間滞在しろ。その間に新居を用意してやる。何かやりたい事は無いか? 考慮するぞ」
「……僕、カレッジに行きたい。昔みたいに普通の子供のように、アスランと学生生活を送りたい……、それから不満が一つ」
キラはぷっくり膨れて、ギナにIDカードをつき出した。
「なんでアスランが兄なの? 僕の方が5ヶ月もお姉さんなんだよ? 大体こんなヘタレより、僕の方が全然しっかりしてるもん。書き換えて!!」
「……キラ〜……」
滅茶苦茶な言われように、背後のアスランが情けない声をあげるが、同情の余地はない。
だがギナは余裕しゃくしゃくで、鼻で笑っただけだった。
「お前の望みは判ったが、次に用意するIDは夫婦ものだが?」
「え?」
「当たり前だろう、兄妹では恋もできまい。世間からも白い眼で見られるだろうし。それでもいいならお前の望みは叶えるが?」
「困る!!」
「ヤダ!!」
キラとアスランは、お互いを見合わせた。彼も同じ気持ちなんだと一瞬喜んだキラだったが、先に視線を反らしたのはアスランだ。
床を見つめる彼の顔は、ほんのりと朱色がさしている。
「……俺、お前の婚約者だった『アスラン』じゃないよ……」
「うん。君は僕の知る幼馴染より、繊細で誠実みたい」
この期に及んで、まだ言うか?
二年前に別れた彼は、ここまでウジウジ男ではなかった筈だ。同じアスランなのに、今まで気がつかなかった違いが、くっきりと見えてくるから不思議なものだ。
キラにとって、昨日目の前で自殺された事が、余程堪えたらしい。
あんな風に、ぷっつん来て暴走されるぐらいなら、壊れ物を扱うぐらいに、彼の心は大切にしたい。
「でもね、君に居てくれなきゃ困るんだ。僕は君が好きだ。切っ掛けは褒められたものじゃないけど、僕は君に恋してる。もう、僕は君無しでは生きられないんだ」
俯く彼の顔が、ますます真っ赤になるから面白い。
彼にはもう、曖昧な言葉は使わない。
傷つきやすい彼に、ぐるぐる頭をハツカネズミにして心配させるぐらいなら、きついぐらいで丁度いい。
「お前、こんなヘタレでいいのか?」
「それが君の個性でしょ?」
「……否定してくれ……」
「しょうがないじゃん、今後に期待する。頑張って♪」
アスランはますます気まずそうに俯いた。さっきまで可愛く照れていたのに、今はもう尻尾を丸めた仔犬である。
流石に憐れに思えてきたので、キラは項垂れる彼の頭を、よしよしと撫でた。
「それに僕だって、嘘つきだよ。一杯君の事騙してたし」
「そうだった!!」
突然、彼は目を剥いてキラの両肩を引っつかむと、ガクガクに揺さぶりだす。
「これからは、二度と俺に隠し事はしないでくれ。お前が1人で苦しんでる姿を見るのも、訳わからないままほったらかしにされるのも、二度とゴメンだ。俺はお前の支えになりたい。だから約束してくれ!!」
「…う……」
目を怪しくギラギラさせながら、詰め寄る彼の迫力に、ついつい流されて頷きそうになる。
実は、まだ隠しているといったら、彼はまたまた怒るだろうか?
(そう言えば、アスランがクローンって誤解、どうしよう?)
だが、キラはアスランに「君は未来からやってきた」と、告げた筈。
本当の事を言ったのに、信じなかったのは彼の勝手だ。
ならば、もうキラには秘密はない。
無い事にしようと、彼女はほっこりと、チャシュネコのように含み笑う。
「判った、『これから』は、何でも君に話すから。絶対隠し事はしない」
アスランは、己の主張が通った嬉しさに、パッと顔を輝かせ、嬉しそうにキラの頭を撫でてくれた。もう幼児ではないと言うのに、この男はどうしてもキラを子供扱いしたいらしい。
「……お前と恋したい。初めからやり直したい。キラ……、愛している……」
彼から欲しかった言葉を貰えて、キラはじんわりと涙を浮かべた。
だが、その感動は、アスランが照れながら右手を差し出した瞬間、粉々に砕け散った。
胸にこみ上げたやるせない憤りに身を任せ、思いっきり床を蹴ってアスランに回し蹴りをかますが、反射神経の良い彼は、戸惑いながらも易々とキラの攻撃を避けやがる。
「何をする!?」
「煩いヘタレ、なんでこういう時に握手なのさ!?」
「だって、普通…物事の始まりのケジメは……」
「恋人スタートなら、こうだろ、馬鹿!!」
ごちゃごちゃ煩い彼の首を抱き寄せ、キラは彼の唇に己を押し当て、強引にキスを奪う。
目を白黒させて驚いていた彼だが、キラが必死でしがみついた力に観念したのか、下唇を甘噛みして、舌先で歯列を突付けば、彼はうっすらと唇を開いた。
舌を絡めて甘く吸い、唾液が滴る程熱く繰り返す。
キラが主導権を握るのは情けないが、これも今後、彼を躾なおせば済む事だ。
「大好きだよ、僕だけの……アスラン……、もう二度と離さない、離れたら…殺すよ……」
「……うん……。俺はもう…お前だけの…ものだ……」
言葉を噛み締めるように、熱く囁き、彼はキラを強く抱きしめ返してくれた。
欲しい言葉と暖かい温もりに、キラは一時幸せに酔いしれ、周囲を忘れた。
「…お前達、いちゃつくのは構わぬが、後にしろ……、もう時間が無いのだぞ……」
ギナはアスランからキラを奪うと、改めて自らの首から簡素な石を外し、愛しげに唇を落としてからキラの首にかけた。
それは不思議な光沢を持つ石だった。見た目より重く、血が滴るような真っ赤なのに、内部に走るクラックか、光の透かし加減では七色のプリズムを見ることができる。
「カガリの形見、ハウメアの守り石だ。一説ではオーブを守護する竜神が、傷つき流した血が凝固してできた宝石だとか。伝説では、持つものの命をどんな手段を用いても救ってくれる絶対の護符だ。加護を貰え」
「駄目だよ、こんな大切なもの!!」
慌てて外そうとするキラの手を片手封じ、ギナはくしゃっとキラの髪をかき撫でた。
「『そのアレックス』なら、家柄にも何も縛られる事なく、お前だけを愛してくれる。彼は一生お前の為だけに存在する、そうだな?」
ギナの唇が、キラの耳元に寄る。
≪人間の思い込みは最強だ。暗示は記憶のストッパーにもなる。もしいずれ破られたとしても、その頃には情の怖いあれの心はお前のもの…だろう?≫
キラの為にそこまで計算して、アスラン自身にクローンと信じ込ませたのか?
何もかも用意周到な彼に、キラはあきれ返った
「ギナって絶対損な性格だ。言葉が少なすぎるから、優しいのに誤解されるんだ」
「ほう、流石双子だ。カガリも私に同じ事を言ったぞ」
「頭いいんだし、もっと、人に受け入れられるよう、気遣って話せばいいのに」
「構わぬ、私の事は、カガリだけが解ってくれればいい。そろそろ行け」
ギナに背を押されるが、キラは慌てて彼の腕にしがみついた。
「ギナは、僕達と行かないの?」
「まだ色々とやらねばならない事があるのだ。」
「でも、ギナはこれからどうなるの?」
大々的にカガリと逃げ、オーブ全土にTV生中継までされてしまったのだ。彼だって今後は一生表舞台に出られないだろう。
今更ながら、ギナの払った犠牲の大きさにぞっとする。
「身を隠して後始末に励むさ。全ては私に任せておけ。ウズミは必ずサハク家で封じてやる」
「どうして、貴方は僕にそこまで?」
「そうか?『私のカガリ』がもし生きていたら、今頃不甲斐無い奴だと罵倒され、下手すれば絶縁されているだろう。恋人の妹なのに庇ってもやれず、今まで随分と苦労をさせた、すまないな、キラ」
いくら恋人の妹だからと言って、社会的地位も何もかも捨てる自己犠牲なんて、普通ならありえない。
堪らなくなった彼女は、ギナの胸に飛びつくように抱きついた。
「ゴメンなさい。僕、貴方をずっと誤解していた」
「慣れてる。私はサハク家の人間だぞ」
ギナは今にも泣いてしまいそうなキラの顔を見下ろすと、切なそうに手の平で頬を擦った。
「やはり双子だ。率直な所も実にカガリによく似ている。ふむ、愛せはしないが友人にはなれそうだな。ヘタレに愛想が尽きたらいつでも私の所に来い、嫁に貰ってやる」
「いくら貴方でも、あげません」
ぺりっとキラの体は剥がされ、ふて腐れてふぐになってるアスランの腕の中に抱きしめられる。
「嫉妬深い男だと苦労するぞ。困った事があったらいつでも私に言え」
「うん」
「こら、キラ!!」
アスランの邪魔な腕に収まったまま、キラはギナの顔を両手で引き寄せると、彼の頬にキスを落とした。
「今度会ったらカガリの話を聞かせて。どんなにのろけてもいいから、僕に姉さまの事を一杯教えて」
「ああ」
「約束だよ、ギナ『義兄』さま♪」
ギナは一瞬虚を突かれたように絶句し、キラに瞠目した。
彼女の媚も裏表もない、純真な信頼の眼差しを受け取ると、やがて喉をくつくつと鳴らし、再びキラが施す抱擁とキスを貰ってくれた。
「……ああ、また会おう。我が愛しい『義妹』殿……」
07.07.01
終わらない〜グスグス (><。)。。
白アスラン、完全にギナに食われました。姫キラのお尻に敷かれる事も決定?
彼は今後の成長に期待してください。
後、後日談が1本あります( ̄― ̄)θ☆( ++)
頑張れ私( ̄― ̄)θ☆( ++)
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