季節外れの幽霊たち 1
※注意書き
このお話は、現在連載中の「アナザーで会いましょう」で、もしもハイネがキラをGETしてENDしていたらというIF設定で、綴ってます。
(現状、ロイVSハイネVSアスランは、ミカル的には今3竦みになってます。未来は確定ではありませんので、お気をつけてお読みくださいm(__)m)
「うふ♪ ハイネ、遅くなったけど、結婚おめでとう〜♪」
「お祝いにね、アンジェさんが僕達にケーキ焼いてきてくれたんだよ♪ ハイネの分はこれ。残りは早い者勝ちだから、恨みっこ無しね♪」
キラから緊急呼び出しを食らい、何事かと慌てて駆けつけてきたハイネは、フルーツムースケーキを突付き、ほのぼのとお茶会を楽しむ2人+1魔人の姿に眩暈がした。
飛ばしかけた意識を気力で引き戻すと、彼は広い額に冷や汗をかきつつも、戦艦ガモフの司令官……キラの執務室の扉を、後ろ手で厳重にロックをかける。
執務時間だというのに、のほほんとお茶を飲んでいるキラはともかく、何故ここにアンジェとセイランがいるのだろう?
ひまわり柄のワンピースを着た、17歳の金髪碧眼な美少女と、白シャツに青ジーンズで、至る所にミゲル顔負けの暗緑石のアクセサリーを身につけた、青紫色の髪を肩で切りそろえた19歳の青年は、一見見目麗しい只の学生に見える。
だが、彼らはこの宇宙の住人ではない。
アンジェは神鳥が守護している宇宙で、既に1000年も世界を統治している女王…いわば女神である。
セイランは彼女の恋人で、ただの人間だった癖に、自力で不老不死の魔導士となった、問題外の化け物だ。
ひょんな事からセイランにキラ共々フリーダムを浚われ、助けようとした自分とレイまで異世界に飛ばされたあの事件、その元凶を作ったこの2人とは、住む世界も流れる時間の早さも違う。
きっともう2度と会う筈がないと勝手に思い込んでいただけに、当たり前のようにここで寛いでいる姿はショックである。
「あ〜の〜なぁ。お前、仕事は?」
キラに目を眇めれば、気まずそうに視線を反らした。
執務机には性懲りもなく溜めた書類が、1メートル超えのタワーを形成している。
「今回俺は手伝わねーからな。ミゲルを巻き込むのも、レイを使うのも禁止」
「うううう、いいじゃん、ちょっと休憩」
「アンジェだってさ、てめえの世界ほっぽって勝手に異世界飛んだら、宇宙の均衡崩れねー? 美人の補佐官、今頃角出して蒼くなってんじゃねーの」
「うふふ♪ 少しの間なら大丈夫。杓杖に力蓄えて置いてきたし、それに今日は土の曜日で、私だってお休みなの♪ 週休二日っていいわよね〜♪」
「うん、うらやましいなぁ。軍隊って拘束時間やたらと長いし、エマージェンシーかかると最悪だもん。ぐっすり寝てても飛び起きて、働くお父さん並みにドーピング。僕、末はきっと薬中毒の患者だよ」
「うう、お肌に悪そう」
「でしょ、ストレス溜まるとご飯食べられなくなっちゃうし、早く戦争終わるといいな〜」
といいながらも、キラは早くも2切れ目のケーキを自分のお皿にひょいと乗っけて、ぱくりと食らいついた。
お前の何処に緊張感やストレスがあるかと、激しく問い詰めてみたい所だが、このほえほえさに惚れ込んだのはハイネである。
「アンジェさん。この土台のスポンジに浸してあるブランデー、甘くてまろやかだね♪」
「うふ、とっておきの年代物なの。チェリィや干し葡萄とかも浸してね、フルーツパウンドケーキに入れても美味しいの」
「バニラアイスクリームにも合いそう」
「熟れたマスクメロンを丸ごと半分に割って、直でかけてスプーンで掬って食べるのも美味なの。大人向けのデザートって感じ♪」
「うわー、凄い贅沢。僕そんなの食べた事無い」
お菓子作りが趣味なアンジェと、菓子限定で食い意地がはったキラである。手作り談義に花が咲けば、ハイネにもう出る幕はない。
しかも女の世間話はエンドレス。
和やかな雰囲気のほえほえどもは、何故このぴりぴりとした凍てつく空気が判らないのだろう?
ハイネはちらりと壁に目を向けた。
アンジェはキラと同属性の天然だから害は無いが、セイランは、何をしでかすか判らない。
そんな彼は、今少女2人から少し離れた壁にもたれ、立ったまま紅茶を啜っている。
むっすり唇を引き結んだ彼は明らかに不機嫌で、しかもハイネに抜き身のナイフのような、ギラギラとした視線を向けてくる始末。
正直、彼から八つ当たりを食らうのは嫌だが、ここで怪獣を呼ばれて大戦争をやらかされては、今日で浮沈艦ガモフの歴史は終わる。
罪無きクルーと、自分の可愛い愛妻を守る為、ハイネはホテル業務で培った営業スマイルを駆使し、憂鬱さを顔に出さず口角を上げた。
「よお久しぶり。元気だった?」
「ああ、あんたは相変わらず無駄に明るいね。今の僕に愛想笑いは止めてくれ。殺したくなる」
(げっ、マジギレカウントダウンかい!!)
セイランが他人を『あんた』呼ばわりする時は、根暗く怒っている証拠である。
そして、こいつ相手に美辞麗句やおだては逆効果。
「どうした? ぶっちゃけ聞くけど、えらく機嫌悪いじゃん」
直球勝負でこっそり耳打ちするが、天邪鬼な彼が素直に吐く筈もなく、セイランはむっつり口を引き結んで、ハイネを無視した。
「へいへい、そういう奴だよお前って。でもちょっと待てよな。何怒ってるかしらねーけどさ、言ってくれなきゃ、俺訳わかんないだろが。俺はお前と違って単なる人間なんだから、お前の頭の中読めないっつーの。もしうちのワイフが原因ならスマン。キラは鈍いから、気がつかないんだよ。後で空気読めってビシッと言い聞かせておくからさ」
先手必勝の殊勝な態度に心が動いたのか、セイランは重苦しい溜息を吐いた。
「……天然なのはお互い様だ……」
どうやら、キラは本当に彼の気に障る事をしでかしていたらしい。
「……アンジェが君達の結婚を祝いたい気持ちも判るけど、土の曜日は僕がもぎ取った、僕だけの権利なんでね。聖地で過ごす彼女にとっては一週間の中の単なる1日だけど、下界で過ごす僕には、1年ぶりの恋人との再会だ。1分1秒でも惜しいのに、これ以上2人きりで過ごせる時間を浪費したくない。適当に話を切り上げて、アンジェを追い返してくれたら助かる……」
待ちに待った土の休みなのに、最愛の恋人はキラと女同士の話に盛り上がり、セイランなんぞに目もくれない。かといって窘めて、折角の年に一度の恋人の時間を、喧嘩して過ごすのも嫌…という所か。
キラにまでヤキモチ焼くなんて、呆れる奴だ。
「……お前、ほんとアンジェにベタ惚れだよなぁ……」
「何なら、僕直々に敵の襲撃を演出するけど?」
「ヤメロ、今のお前じゃ洒落にならん。キラに怪我負わせたら恨むぞ」
嫉妬に狂ったセイランの攻撃なんて冗談ではない。
ハイネはとりあえず彼の腕を引っ張り、アンジェの隣の席に、無理やりセイランを押し込んだ。
「結婚祝いサンキュ♪ 俺が言うのはおこがましいが、いっそアンジェもさ、とっととこいつと結婚しちまったら? 付き合いそろそろ300年になるんだろ? いくら一途にお前を思っててくれてもさ、待たせすぎじゃない? なぁキラ?」
「ええええ、凄い。セイランさんって誠実な人なんだね。僕尊敬するよ!!」
初め、何を急に言い出すのかと怪訝下だったセイランだが、反射神経の良い男は、ハイネとキラの尻馬に即座に飛びついた。
「僕はいつでも君に、ウエディングドレスと指輪を贈る準備がある。世界だって君にあげるよ。君が僕だけのものになるのなら、この身を悪魔に捧げてもいい」
(……おいおい、お前本当にもう、魂売っちまっただろ?……)
「嫌」
既に人間で無くなった男のプロポーズは、にっこり笑ったアンジェにあっさり叩き落された。
「だってセイランってば、皆に嫌われてるし。せめてロザリアと守護聖全員の祝福が貰えないと、聖地に呼べないもん」
「……なら脅してでも、今日中に許可を……」
「だから、そういうことしちゃ駄目なのよ。強制された祝福なんて意味無いでしょ。私が大好きな人達に、心から『おめでとう、幸せになってね』って言って欲しいの。皆は私のパパとママ代わりなんだから」
「あ、その気持ち判る。やっぱりお嫁さんになるならさ、家族に心から祝って欲しいよね」
「でしょでしょ♪」
ハイネの心、妻知らず。
あっさりセイランを裏切った天然ボケに、男の双眸が瞬時に凶悪に歪む。
(俺を睨むな!!)
「折角生きているのに、仲良くできないのって寂しいわよね〜」
「そうだよね。ねぇハイネ。今度ガモフがプラントに戻ったらさ、君の御両親に挨拶に行こうよ」
「やなこった。あいつらとはもう縁が切れてる」
「もう、そんな事言わないの」
矛先が、いつの間にかこちらにやってきた。不味い話の流れに、ハイネは舌打ちする。
彼には父親と義理の母、それから腹違いの弟が健在だ。
キラと結婚して半年になるが、彼と父親の過去の怨恨は深く、実際今だ1度も顔を会わせていない。
キラは単身この世界にぶっ飛んできた人間だから、本当の肉親は何処にもいない。またアンジェやセイランに至っては、人間辞めてから随分時が流れた為、とうの昔に家族とは死別している筈だ。
「……僕にはね、カガリっていう双子の姉さんがいるんだ。たった一人の肉親だし、ほら、彼女は僕が生きているって事すら知らないしね。いつかハイネとの事を報告したいな……」
「あら、じゃ連れてってあげましょうか?」
「え、ホント?」
「ここと同じ時間軸だから、あんまり時間あげられないけど……いいって言うのなら」
「是非♪ すっごく嬉しい♪♪」
「じゃ、セイランお願いね♪」
(……バカヤロウ……)
冗談ではない!!
てめえのプロポーズを笑顔でばっさり断っておきながら、一分と経たないうちに他人の幸せな報告の手助けをお願いするなんざ、この美貌の魔人の怒りの捌け口は何処に来ると思ってやがる?
間違いなく、ハイネに八つ当たりが炸裂するに決まってる。
「嫌、言い出したのはお前だろ? なんでアンジェじゃ駄目なんだ?」
「んー、でも力をコントロールする杓杖を置いてきちゃったのよ。しかもここ、私が統治している宇宙じゃないし。だから、下手に女王の力を使うとね、惑星崩壊とか……太陽系全滅とか、銀河消滅とか……、責任持てないの。ほら、私ってドジだから」
俯いて言いにくそうにもじもじする姿は可愛いが、結局こいつも人外生物である。
「判った。お前は何もするな、頼むから」
「面倒臭いけど、僕の出番か」
「いいのか?」
「アンジェが勝手にした事でも、約束なら叶えないとね。彼女の尻拭いは僕の責任だ」
「苦労してるよな、お前も」
「うふふ、セイラン優しい♪ 大好き♪」
「勿論この貸しの分、今晩ベッドでたっぷり君を堪能するからね」
「きゃう!!」
逃げかけたアンジェの襟首をがっしり引っつかみ、セイランは、口の端を歪めてにっこりと笑った。
「時間が惜しい、じゃ、君は『カガリ』の元へ行っておいで♪」
ぱちりと指を鳴らすと、彼の指に嵌めていた暗緑色の石が一つ、粉々に砕けた。
その途端、ハイネの視界が、極彩色の渦に巻き込まれる。
「ちょ、ちょっと待て、キラ!!」
「ほぇ? きゃうっ!!」
慌てて手を伸ばしたが遅かった。
以前経験したのと同じ、異界へを移動する力の渦に飲み込まれ、二人の体は水面に漂う木の葉のように、成す術もなくバラバラの方向へと押し流されていく。
(ちきしょう、絶対確信犯だ、根性悪が!!)
ハイネの意識はブラックアウトした。
07.09.02
当サイトで、一番性格が歪んでいる男はセイランです。
セイランとリモージュ(アンジェ)のカップル、メッチャ好きなんです( ̄― ̄)θ☆( ++)
さあ、後編頑張るぞv
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