バレンタインデー狂想曲 4
ルナマリアは鞄が入っていた箱ごと大きく振りかぶり、気色悪く目尻を下げ、うっとりとチョコレートを見ているアスランの頭めがけてぶん投げた。
だが、腐ってもアスラン・ザラだ。
反射神経が人より発達した彼は、難なくルナの攻撃をかわした。
「何をする?」
「それはあたしの台詞よ!!」
豹変したルナに、イザーク、ニコル、ディアッカも驚愕して固まるが、今の彼女に、茶々を入れる愚かなチャレンジャーはいない。
拳を握り締め、ぶん殴る気満々の怒りに震えつつ、ルナはアスランの襟首を引っつかんで手繰り寄せた。
「……ねえアスラン、あんた一昨日あたしの話ちゃんと聞いてた?……誰がこんなもん寄越せって言ったのよ?」
「だが、Aランチ1食なんて安すぎる。俺の十年分の想いだぞ、キラのチョコの価値は俺が決める」
「あんたが稼いだ金じゃあるまいし。大体心の問題を口にするなら、どうしてあたしの気持ちを蔑ろにするの?ふざけんじゃないわよ」
アスランはルナマリアが暴れた時の保険のつもりか、そっとチョコの箱を机の上に避難させた。
「悪いが、お前の憤りが理解できない。謝礼が気に入らないのなら、欲しいものを言ってくれ。直ぐに執事に届けさせる」
「だから要らないっていっているでしょ」
「ならお前は俺にどうしろと?」
「何もするな、あたし達友達でしょ? ありがとうってあんたが喜んでくれるだけで私は満足だったのに、お礼だ価値だなんて言い出すから話がややこしくなるんじゃないの。これじゃ報酬に釣られて、あたしがキラとの友情を売った事になっちゃうじゃない、それが気に入らないって言ってるの」
「だったらお前だって俺の気持ちを判ってない。お前が俺の為に動いてくれたのがありがたいから、お前に喜ばれる物をと思って、わざわざプレゼントを用意したんじゃないか。それの何処がいけない?」
「あんたの感謝は札束であたしの顔を叩くことなの? 酷い侮辱だって何で判らないの?」
「はぁ? 言いがかりも大概にしろ。今日のお前絶対おかしいぞ?」
ルナマリアの怒りを、デコは理解できないのだ。
アスランはアスランなりに、ルナへの気配りがあったのも判ったが、キラとの友情が汚されると、彼女が拒否する心も彼には判らない。
どうしてこんな当たり前の事が、彼に判らないのだろう?
「あたしはね、あんたの10年越しの想いを哀れに思ったから協力したの。あんたに幸せをあげたかったって思ったから行動した。こんなもの誰が欲しいって言ったの? 」
「キラのチョコが学食7ドルの価値な訳ないだろ? それこそ俺のキラに対する侮辱だ」
「人の想いに値段つける事事体が間違っているの、あんたはどうして素直にありがとうって言えないの?」
ルナの剣幕と激しい罵倒に眉を顰め、最高評議会議員の子息は本当に首を傾げている。
「ありがたいと思ったからプレゼントを渡したんだろう。メイリンちゃんが欲しがってたし、お前こそ、どうして俺の感謝にケチつけるんだ? ラスティのブランドなんて、見るのも嫌なのに、わざわざ俺自ら買ってきたんだぞ。その俺の苦労をお前は全然判ってない!!」
「ルナマリア、アスラン、二人とももう止めておけ。お前達は互いに価値観が違う、どこまで行っても平行線だぞ」
「副会長……、でも」
「ルナマリアの事情は大体判った。だが、ここは生徒会室で、俺達は仕事を片付ける為に集まっている。働く気がないのなら出て行け。勿論アスラン、貴様もだ」
彼はどちらにも味方をしないと態度で示す事で、醜い争いに終止符を打ったのだろう。
これ以上ここで騒いだら、本当にイザークに部屋からつまみ出されてしまう。
来月の卒業式の後、行われるダンスパーティは、生徒会が主催する大事なイベントだ。
会長がサボり魔なお蔭で仕事が山積し、準備も遅れているのに、昨日ルナはキラも巻き込み、無理矢理休みを貰ってしまった。
その分を今日取り戻すと約束したのに、果たせなくては女が廃る。
「ごめんなさい副会長、すぐに取り掛かります」
ルナマリアは己の頬を叩いて気を引き締めると、床に落ちた赤のトートバッグを拾い上げ、手付かずだったもう一つの袋に突っ込み、アスランへと突きつけた。
彼の顔は直ぐに青ざめ、慌ててキラのチョコレートを背に隠す。
「今更取りゃしないわよ。あんたに食べさせてあげたいって思って、昨日頑張ったんだし。残念だけど、あんたと相容れないのはよく判ったから、とにかくこれは持って帰って」
「俺だって要らない。不要ならそこのゴミ箱に捨てろ」
「これはラスティさんの作品なのよ? キラの大事なお兄さんが一生懸命作ったものをさ、いくら気に食わないからって酷くない? やりたかったらあんたがやれば。勿論私はキラに告げ口するけどね」
そんな事やったが最後、いくらアスランが大事な幼馴染でも、キラに絶交されるに決まっている。
アスランの翡翠色の目が冷たく眇められるが、もうルナマリアにはどうでも良い事だった。
胸くそ悪いバレンタインの事なんか、二度と思い出せないように記憶の底に封印し、やるべき目の前の仕事を片付けていく方が、よっぽど建設的だ。
だが、ルナマリアが己に支給されているノートパソコンの電源を入れた正にその時、突如廊下に黄色い叫び声が次々と響き渡った。
「え?」
しかも女子生徒だけではなく、何故か野郎どもの吼えるような悲鳴も多々混じっている。
その歓声は段々大きくなり、ルナの耳がおかしくなければ、あきらかにこの生徒会室へと向かっている。
「何だ、事故か?」
イザークがいぶかしみつつ立ち上がった瞬間、どこっと扉が蹴り開けられた。
流石のルナマリアも、息を飲み込んだ。
キラを小脇に抱えた金髪の青年は、紛れもなくここ数年、メディアに頻繁に現れている、スーパースターだった。
「ミゲル・アイマン……きゃああああ本物ぉぉぉ!!」
男女問わず、現在絶大な人気を誇るロック・シンガーの登場に、流石のルナマリアも歓声をあげる。
全身黒のレザーとポイントに金のアクセサリーを豪華にあしらい、テレビから抜け出したまんまの格好で現れた彼は、息を呑む程カッコイイ。
「ルナァ〜〜…!!」
捕らえられたウサギのようにくったりしたまま、キラは半べそかいて何故か拝んでいる。
自分を見つけたミゲルの琥珀色の目が、ギンッと強く輝いた気がした。
「君がルナちゃん? 初めまして。キラの2番目の兄貴、ミゲルです。早速お願いで悪いんだけどさぁ、昨日キラと作ったチョコ、まだパパが食ってないなら俺に譲ってくれない?」
「え?」
長い足でブーツの音を響かせ、猪突猛進に寄って来られれば、逃げる間はない。
「ぶっちゃけ言うと、疲れたハイネ兄貴が拗ねちまったんだ。せっかくのバレンタインデーなのに、たった一人月で仕事なんて寂しくなったんだろ。今日の18時までに超シャトル便にキラのチョコ積んで兄貴の手元に送らないとさ、キラを俺達から取り上げるって、意地悪言うんだぜ」
「はぁ……それはまた…大人気ないというか、……一体どういう風に……?」
「キラまで月に出張」
「「「「はぁぁぁぁぁ!!」」」」
「返却は未定、最短でも4月半ばまで」
「ちょっと、それホントなのキラ!!」
ミゲルに抱えられたキラは、ルナの剣幕にびっくり目で固まっていたが、やがて涙目でこくりと頷いた。
兄の嘘を承知の上で。
勿論ルナは初対面だったので、ミゲルのでまかせに気付けない。
「キラは学生だから、責任ある仕事はずっと免除だったけど、コンピューター関係は凄いだろ? 一つでも兄貴命令でOS構築の大きな仕事回されりゃ、もう学校どころじゃない。そうなったらさ、ルナちゃんだって嫌だろ? 遊べないし、キラだって学校通えなくなっちまう。俺だってキラの手料理食えなくなるのは嫌だし、可愛い妹をブルーコスモスが闊歩している月になんかにやりたくない。頼むから何とか譲ってくれ、この通り!!」
「ああああ、あの……」
「お礼は何でもする。キラに平穏な生活をくれ………」
ふかぶかとミゲルに頭を下げられている間、ルナマリアは彼の言葉を脳裏で反芻していた。
正直、彼のマシンガントークに面食らって、意味を殆ど理解できていなかったのだ。
けれどコーディネーターの一度見聞きした事は忘れない優秀な頭脳は、彼の言葉を難なく思い出し、何度もリフレインする。
つまり、今日中にキラの手作りチョコを、ハイネ送らないと、キラが長兄の命令で月に連れて行かれてしまうのだ。
「そんなの嫌ぁぁぁ〜〜〜!! あんたのお兄さん、どんなキラ馬鹿よ!!」
「俺の口から言うのも憚れるが、ラスティとアスランと俺が3人束になっても勝てない、最強の妹激ラブな変態だ」
「ミゲル兄さん、時間ないし、適当なチョコを買って送れば?」
確信犯なアスランが、いい人ぶって最もな提案する。
だが、ミゲルは即座にかぶりを振った。
「キラが毎日の報告メールで、写真を送っちまったんだよ。ルナちゃんとチョコを見せびらかしている楽しそうなツーショットをな。敵も今年キラが5個しか作らなかったって知ってるし、誤魔化せる訳ないだろ」
「……あたしが……、失敗しまくったせいだよね………」
「ううん、ルナは一生懸命お父さんの為に努力したんだもん、ワザとやった訳じゃないし、ちっとも悪くない」
(ワザと自分の持ち込んだ材料をパーにしたわよ)
自覚があるから、胸にずくずくとナイフが刺さる。
「ルナちゃん、こういう事情だから、何とか俺に譲って。お父さんの分は俺が責任持って買ってあげるから」
譲れるものなら勿論譲りたい。
だが、あれはもうルナマリアのものではない。
目が泳いだ彼女の視線は、自然と真横のアスランへと注がれた。
こんな多忙な時期に、本当にキラが月に連れて行かれれば、生徒会は大打撃だ。
危機感に青ざめたイザーク、ディアッカ、ニコルの目線もアスランへと向かう。
ミゲルもようやく皆が集中している男に気がつき、琥珀色の目が一気に凶悪な光を帯びた。
「……おい、それはなんだアスラン?……」
アスランが後ろ手に隠している白い箱は、ミゲルにしっかりばれた。
しかも彼の机の上には、真っ赤なラスティのバックが二つ分鎮座している。
自分に疚しさなんか一つもないが、アスランの馬鹿が押し付けた恥知らずな物品に、ルナマリアの顔から血の気が引く。
彼女の動揺に、ミゲルがますます冷ややかに目を眇める。
「アスラン、お前ルナちゃんを買収したな?」
「いえ、これは違います。俺のチョコなんで、人違いです」
アスランは後に隠したまま、ふるふると首を横に振る。
言葉までおかしくなっている。
自分で白状したも同然だった。
「アスラン、お兄さまたってのお願いだ。それを直ぐに寄越せ!!」
「嫌だ、これは俺のものだ」
「可愛がってやってるお兄様のいう事聞けないか? よ〜こ〜せぇぇぇ!!」
「嫌だ、これは俺が苦労して、やっと得た戦利品だ」
「…はぁ、苦労? お前が?……」
「どうしてもどうしても欲しかったんだ。何年もずっと機会を伺って、やっと今年手に入れたのに、例えミゲル兄さんにでも、絶対渡さない!! 俺のものだ!!」
「……機会を伺う……、ふぅ〜ん………そうか、そういう事か……」
腕を組み、考え込んだミゲルの顔は豹変していた。
さっきまで優しかったルナを見る琥珀の目が、汚い物を目にした時のように剣呑に歪む。
「俺さ、ラスティから、キラの初めての女友達って聞いてたけど、どうやらお前騙されていたみたいだな」
「は?」
「キラ、お前その女に利用されたぞ」
「ふえ?」
純真なキラは、兄の言葉にこくりと首を傾げた。
「お前、最初から自分の親父にチョコをやる気、全くなかっただろ。純粋なキラを騙して作るだけ作らせて、アスランにお高いバッグと交換させるなんてさ、大した女だよな。キラの信頼裏切って、良心痛まねーのかよ? 俺お前みたいな嘘吐き女、大っ嫌いだ」
「ふえええええええええ!! 待って兄さま、絶対誤解だって。ルナはそんな腹黒い事しないもん!!」
「ちょっと、人の事情も聞かず、勝手に自己完結しないでよ」
「るせえ、二度とうちのキラに近づくんじゃねー」
「違うって言ってるでしょ!! 物ごときであたしが友達売るなんて侮辱され、黙ってられると思う? いくらキラの兄だって、あんまり人を見縊ると許さないわよ!!」
ぶちぎれた彼女は、ミゲルに掴みかかった。
だが、襟首引っ掴もうにも紙一重でかわされ、殴りかかった拳も楽々受け止められて手首を捻られる。
ふわっと身体が浮いたかと思うと、いつの間にか天井が回っていた。
知らぬうちに投げられたと気がついた時には、もうルナは背中から床に転がっていて、唖然と見上げると、彼女の上に泣きじゃくったキラが覆いかぶさった。
「兄さま駄目、ルナは女の子なの、酷い事しないで!!」
「判ってる、手加減しただろ。……お前さ、なんか武術やってる?」
髪一筋乱さず、無表情に自分を見下ろすミゲルが、本当に怖いと思った。
「空手を……、護身代わりに少々……」
「じゃ、しっかり腕磨いとけ。相手が自分より強いかどうかぐらい、見極められるぐらい腕上げてから突っかかるんだな。感情任せに拳を振り上げりゃ、いつか怪我するぞ」
「ミゲ兄さまね、カレッジ進む前に士官学校行ってたの。歌手になったから卒業手前で辞めたけど、一応赤服候補生だったし……」
赤服はエリートの証で、毎年上位10人しか纏う事が許されない軍服だ。
ルナみたいに多少武術を齧った程度では、敵う訳がない。
「ミゲル先輩、彼女の言っていた事は本当です。アスランの熱意にチョコを譲りましたが、その鞄はアスランが勝手に押し付けたもの。酷い侮辱と激怒して、つっかえしたのはルナの方です。もっとも、このヘタレはどうしてルナが怒ったのか、全く理解してなかったがな」
イザークは真っ直ぐな男だ。
そんな彼の援護に、ミゲルは素直に非を改めたのだろう。
ルナに手を貸して立たせると、ふかぶかと頭を下げた。
「……ゴメン、俺、早とちりして悪かった……」
「判ればいいです。でも、キラを騙したのはホントだから謝ります。ゴメンねキラ、パパへのチョコなんて嘘だったの。私、最初からアスランに横流しするつもりだった」
キラはきょとんと目を剥いたが、やがてこっくりと小首を傾げた。
「じゃあ、なんで僕に嘘ついたの?」
「だってあいつ、あまりにも惨めなんだもん。あのプライドの高いアスランが、あたしの家に電話かけて、どうしてもキラのチョコが欲しいから、協力してくれって。居間にはお母さんもいたのにさ、何度も何十分も頭下げ続けて。ウザくて情けなくて可哀想で、それに十年越しの想いじゃない。ついほだされちゃって。でも誓って損得抜きだったの」
「うわ〜、アスラン、お前って実はそういうキャラ?」
「ふん、無様な」
「僕、アスランの弟分希望していましたけど、考え直しますね」
外野3人の侮蔑の目が、一斉にアスランに向く。
だが、アスランはもう開き直っているのだろう、それがどうしたと言わんばかりに堂々とふんぞり返っている。
本当に、一昨日の殊勝な態度が嘘みたいだ。
「ま、今はあんなんだけど、その時はあたしが一肌脱がなきゃ可哀想って思っちゃた訳。ゴメンねキラ、私を許してくれる?」
「勿論だよルナ、僕たち親友じゃない!!」
眉毛を八の字にして、両手をひしっと握る素直なキラが可愛い。
ミゲルも、最初に来た時と同じような、穏やかな雰囲気に戻っていた。
うんうん頷きながら、憐憫を滲ませた目でアスランを見つつ、励ますようにくしゃくしゃと彼の髪を掻き撫でている。
「お前さあ、面はいいんだから、あんまり人前でへたれた真似するなよな。女のファンが減るぞ」
「構うもんか、俺はキラだけいればいい。ミゲル兄さんだって、滅茶苦茶意地悪じゃないか。俺が毎年、どんなに羨ましがってるか知ってた癖に、一個も分けてくれないなんて」
「そういうけどさぁ、俺も板ばさみで辛いのよ。キラの保護者は兄貴で、許可出ないとどうもしてやれない」
「ならどうしてハイネ兄さんに、俺の事口添えしてくれなかったの? 俺、ミゲル兄さんにとって、可愛い弟分じゃなかったの?」
「お前のキラへののめり具合、正直洒落にならねーんだよ。兄貴は、キラ溺愛してるし、何と言っても父親代わりだぜ。キラに間違いが起こらないように警戒してもおかしくないだろ?」
「そうやって俺だけ仲間はずれにするから、ますますキラのチョコが欲しくなるんだよ。俺が意固地になったのは、兄さん達のせいだからな」
「うわっ、アスラン、お前開き直ったな」
「悪い?」
「……うわぁぁぁ、あのアスランが甘えてる……」
遠くから聞こえたニコルの呟きは、正しくルナの気持ちを代弁していた。
アスランが彼に懐いているという噂は聞いていたが、涙目で拗ねる姿は普段のアスランから想像できない。
「お前ほんと素直で可愛いなぁ。よしよし、そんなに寂しかったのか? お兄さまがディープなキスしてやるからさ♪」
「キラからならいいけど、兄さんのはいらない」
「おいおい」
「俺が可哀想だと思うなら、ハイネ兄さんに諦めて貰って」
「無理。ありゃ外面いいけど鉄の意志なキラ馬鹿だぞ」
「これは俺に譲って。毎年ミゲル兄さん達は好きなだけ食べられるんだから、俺にだって少しはお裾分けしてくれたっていいでしょ?」
だが、ミゲルの目が更に尖る。
「アスラン、お前ならヴェステンフルス家における家長の権限知ってるだろ? ハイネ兄貴が欲しいって言っているのなら、俺達はどんなことしても兄貴の願いを叶えるために動く。だからそれを寄越せ。でないとキラが困る」
「無茶苦茶だ。そんな事言って、俺からチョコを取り上げようとしている嘘じゃないって保証はない。これは俺のだ。絶対誰にも譲らない!!」
ルナマリアは頭を抱えた。
アスランに同情したいが、ミゲルの鬼気せまる剣幕も怖い。
ハイネがどんな人間かルナは知らないが、キラはハイネに命じられれば何でもいう事を聞いてきた。
突然学校を休むのも、早退も、何日もの長期休みもハイネの意志一つで左右されていたのを、この目で見てきたし、中等部の頃修学旅行ですら、ハイネの怒りを買って当日土壇場キャンセルになったとアスランから聞いた。
ここで変な意地を張って、本当にキラが月に連れて行かれるなんてゴメンだ。
「ゴメンアスラン、私やっぱりこれはキラに返すべきだと思うの」
「ルナ!!」
「だってこれはキラが作った彼女の作品なのよ。彼女が本当に食べて欲しいと願う人にあげるのが正しいじゃない。それに私、キラと別れるのなんて嫌だし、彼女が本当に学校に来られなくなったらどうするの?」
「嘘かもしれないじゃないか、俺は信じない!!」
「信じたくない……の間違いでしょ。兎に角、後はミゲルさんとキラと3人で話し合って。あんたは、ミゲルさんと仲いいんだから、根気良くお願いすれば、きっと一つぐらい口に入るわよ」
「ルナ!! 今更俺を裏切るのか!!」
「煩い、先にあたしの善意を踏みにじって侮辱したのはあんたなんだからね。じゃあ、イザーク先輩、今日はもう仕事になりそうにないので帰ります。キラ、またね!!」
「ルナぁぁぁぁ!!」
ルナマリアは彼の悲鳴を振り切り、脱兎で生徒会室から逃げだした。
08.02.26
アスラン(涙)
なぜこんなにヘタレになる〜(  ̄ ̄∇ ̄ ̄; )ナヌ?
そろそろ、悪巧みが得意な、ブラックアスランが恋しいです。
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