しんかろん
きょうもきょうとて彼らはゆく。
やさしい大地のもとで。
太陽に抱かれながら。
進化の道を辿ってゆく。
ズドドドドドドドド。
パタパタパタ。
バタンッッッ。
ゼフェルが(珍しく)ご機嫌で自作メカのメンテをしていたら、部室の横にある階段を駆け下りるものすごい音がした。
かと思うと、硝子つきのドアが反対側の壁に思いっきりぶち当たる音が続く。
「ぜふぇるぜふぇるぜふぇるーっっっ!!!」
「っせえなー。んだよ」
眉を顰め、まだキンキンと鳴っている耳を抑えながらゼフェルは振り返った。
いや、振り返ろうとした。
ふわふわでやわらかい塊に後ろから強烈タックルをかまされるまでは、息もつまらなかったし、心臓も口から飛び出てきそうにならなかったから。
振り返る、という単純な行動さえあっけなくアンジェリークに阻止され、冷静になろうとしても、ほのかに漂うせっけんの香りがゼフェルの思考能力をますます奪っていく。
アタマの中まっしろ。はんだごてを持った手が空中で固まってしまっている状態のゼフェルを置いて時間は無情にも過ぎていった(危ない)
「うぅぅぅ〜〜〜っ」
しばらく経ってから、背中に顔を押し付けているアンジェリークがやっと言葉を発したが、まったくゼフェルにとってイミフメイな言語であった。
ゼフェルはますます混乱した。
なんとかこの混乱状態を収集しようとアンジェリークの顔を掴み、無理やり上げさせようとするが、アンジェリークはいやいや、と首を振ってまったく彼に協力的ではない。
どうしたんだ?
さっぱりわかんねー。
俺に用があるんじゃねえのか???
もともとオンナゴコロなんていうものとは全く無縁なゼフェルである。
見かけの可愛さに騙されたヤロー共の手でも持て余すようなアンジェリークを上手く扱えるはずが無い。
ふわんふわんな金髪と、惹き込まれそうな新緑色の瞳。
すっと伸びた手足は細くて真っ白で、その鈴を転がしたような甘い声は、人の心を一瞬にしてとろかせる。
一見精巧に出来たビスクドールのようにかわいらしいのだが、その中身は誰よりもパワフルでワガママなアンジェリーク。
彼女の「もう好きじゃないんだもん」という言葉に泣いた元カレは数え切れない。
対してゼフェルはというと、
つんつんの銀髪と、鋭く突き刺さるような眼光を放つ深紅の双眸。
しなやかな筋肉のついた手足は浅黒く、少年らしさが僅かに残り、少しかすれたテノールは人の心を鋭く切りつける。
鋼のような硬質な輝きを放つ容貌は近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、その中身は誰よりも繊細でシャイなゼフェル。
彼の「好きでもねーやつと付き合えるかっ!」という言葉に散っていった乙女の数も未知数だ。
何もかもが反対で「女王様」と「俺様」同士な彼らだが、ひょんなことで付き合いだして以来、破局を迎えることなく、結構長々と続いているのは、ひとえに互いに対する深い深い深いアイジョウ。
(おそらく)ただコレあるのみ、である。
ぐぐぐぐぐっ。
ついに業を煮やしたゼフェルが実力行使に出た。
抵抗するアンジェリークの顔を掴み、無理やり上げさせる。
……そこで彼が見たものとは。
真っ赤に泣きはらしたアンジェリークの目。であった。
(コイツ…泣いた顔もけっこーカワイイでいやがる)
なんてのんきなことを考えている場合ではなかった。
ノー天気オンナの代名詞のようなアンジェリークが泣くなんて、絶対絶対に何かあったに決まっているのだ。
「っっっ!おめーどーしたんだ???何があった?誰にやられたんだ?」
噛み付くようなその言葉に、アンジェリークは張り詰めていた糸が切れたのか、火が付いたように泣き出した。
「ふえぇぇぇぇぇぇん」
「ばっ…泣くんじゃねーよ」
ゼフェルは慌てて不器用ながらも慰めにかかった。
よしよし、と金色の髪を撫でてみたり、
大きい目から流れてくる涙を拭ったり。
彼のキャラクターに合わないコトこの上無いという事を動揺のあまりにやってのけた。
……愛の力は偉大だ。
「泣いてちゃわかんねーだろ?言ってみろよ」
あまつさえ、ゼフェルはやさしい声色さえも使って見せた。
今まで、自分がこんな声を出せるとは思っても見なかったが。
後から自分の行動を思い出して、死にそうにハズカシイ思いをするのだが、今とにかくアンジェリークの涙を引っ込めさせようと必死だった。
くすん、と言ってアンジェリークはやっとゼフェルと視線を合わせた。
乱れた髪と潤んだ瞳が少し扇情的で、ゼフェルはフラチな考えに及びそうな自分をなんとか押さえつけてアンジェリークの言葉を待った。
「あのね…あのね…っ」
ここまでアンジェリークは搾り出すように言うと、またじわっと瞳から涙を溢れさせた。それでも必死にゼフェルに言おうとする。
悔しかったし、ショックだった。
頭が真っ白になって。
我に返ったときにはゼフェルのことしか考えられなかった。
ゼフェルっ…!
「わたし…知らない人にキスされちゃったの」
うわぁぁぁぁぁん。
そのときのことを思い出したのか、アンジェリークはまた盛大に泣き始めると、唇をごしごしと手のひらで擦った。
「ぜっゼフェル以外の人にキスされちゃうなんて…」
か、かわいい。
なんて思っている場合じゃなかった。
じわじわとアンジェの言葉がアタマに染み渡っていくにつれて、ゼフェルは怒りが頂点に達したのを感じた。
「んだとーーーーーーーーっっっ!!!」
半径一キロメートルに響き渡るような声でゼフェルは怒鳴った。
アタマに血が上る。という表現では足りなくらい彼は怒り狂っていた。
ハラワタが煮え繰り返る。でもまだ足りない。
「どこのどいつだっ?くっしょーーーーー」
ゼフェルは咆えた。
縄張りを荒らされた獣のように咆えた。
当然だ。
自分だってアンジェリークにキスするのにめちゃくちゃ時間が掛かったのに。
大切で大切で壊してしまいそうで。
でも触れたくて。
自分のものだと言う証拠が少しでも欲しくて。
そんな葛藤を乗り越えながらしたキスは照れくさくて、でも甘くて。
…んなこたーどーでもいい!!!
とにかくアンジェリークの唇が奪われたのだ。
カレシとして、オトコとして、もちろん黙って見過ごすワケにはいかない。
(ぜってー許さねー)
ゼフェルのアタマの中で、アンジェの唇を奪ったへのへのもへじがボコボコにされていた。
「わっわたし…ヒクッ…『キズモノ』になっちゃったのかな?もっ…もうっゼフェルのおヨメさんに…ヒクッ…なれないのかな」
「なにいってんだよっ!バカなこと言うんじゃねー!!!そんなんでおめーが傷物になるか!」
バカも休み休み言えっ!
そう言ってゼフェルは震えるアンジェリークをぎゅっと強く抱きしめた。
なんでそんな事態になったのかはまったく解らなかったが、今はアンジェリークを落ち着かせるのが先だ。
「ほ、ほんとに?わたし、まだゼフェルのおヨメさんになれる?」
ゼフェルのぬくもりに落ち着いてきたのか、アンジェリークはゼフェルの首筋に顔を埋めながらおそるおそる聞いてきた。
「ああ、もちろんだ。おめーを貰うのは俺しかいねーんだからな。ぜってー忘れんなよ。もう決めたんだかんな。」
プロポーズめいたことを口にしているということはもちろんゼフェルには自覚がない。
ひたすらアンジェリークを慰めようと、彼は真剣だった。
「ほんとにほんと?」
ぴょこんっと顔を上げて、アンジェリークはゼフェルをじっと見た。
「ああ。俺様以外におめーを貰うようなモノズキなやつがいるかってんだ。わかったな?」
「…ん。わかった」
少し微笑んだアンジェリークを見て、ゼフェルは彼の心をギュウギュウと締め付けていた何かに解放された気がした。
こつん、と額をあわせてどちらからともなく唇を合わせる。
キスはアンジェリークの涙の味がして少ししょっぱかったが、それでも彼らには十分に甘かった。
「んっ…ゼフェ…もっといっぱいして」
いとおしくていとおしくて。
「ゼフェル。…ダイスキ」
これ以上ないと思うくらいいとおしくて。
大切で。
これが多分、きっと、″アイ″
きょうもきょうとて彼らはゆく。
やさしい大地のもと。
太陽に抱かれ。
ときにはツライときもある。
ときには悩むこともある。
それでも彼らは前を向き。
進化の道を辿ってゆく。
ひたすらひたすらたどってゆく。
LLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL
さて、上の13とはなんぞや?っと思ったでしょう。多分。
それはこのアンジェ&ゼフェルの推奨年齢。
13才って中学1年生か2年生くらいですよね。
若ーい!いいねぇっ!青春!!!
ミカルさんの『永遠に〜』を読んでいて、密かにオスアンになりそうな気配を感じ取り、天邪鬼精神大爆発でゼフェアンを(笑)
あ、ちなみにアンジェにキスした人はもちろん(?)赤毛の兄ちゃんです(笑)
ほけほけ歩いてるアンジェを見かけて、「おっ可愛いお嬢ちゃんだな。守備範囲外だが…今のうちにツバつけとくか…」と思ったらしいですね(他人事)
おいおいおい非道いヤツだな。
もちろんその後アンジェに引っぱたかれますが。
ま、その辺のあらましはミカルさんが読みたいと言ったら考えさせていただきます(笑)サイドストーリー『アンジェのキスが奪われた!?〜そのパンチに惚れたぜお嬢ちゃん〜』はあなたの心の中で…(核爆)
■■おまけ■■
本日の被害:部室のドアの蝶番
部室の床(はんだごての焼き跡)
ゼフェルのカッターシャツ
ヘ(^ヘ^)(^ノ^)ノ ソレソレ♪
もうめちゃ可愛いの〜!! リモちゃん激ラブですよぉ!!
ミカルの背中にもタックルして♪ それにしてもおしゅかーさまは!!( ̄ー ̄)θ☆( ++)
あなたの心のなかでなんてそんな、是非是非続きを考えてくださいませ♪ ゼフェル様、逆襲編なんてのも面白そう♪(とかってに、どんどん話を進めるなっていうの!!)
めぐさまありがとうございました(⌒ ⌒)(_ _)ぺこ♪
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