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魔法の呪文2
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婚礼の前夜。皇城を中心に栄える帝都は前夜祭で大変な賑わいだった。その騒ぎは翌日の本番まで続くだろう。年に何回かの祭りはあっても皇帝の婚礼はそう滅多にないものだ。もちろん過去には呆れるぐらい一人で何十回も婚礼を挙げた皇帝もいたが、財政が傾いたと云われる。それ程、盛大で大判振る舞いのものだから民は大いに喜んだ。
それに今回の花嫁が平民出身というのも盛り上がる原因のようだった。皇帝が愛人や何番目かの妃にするなら話は分かるが、皇后に迎えるというのだから驚いたのだ。だから民達は恐れ敬っていた皇帝に何だか近づいた気分で、自分の事のように嬉しがっていた。
その馬鹿騒ぎともいえる街中を数人の団体が歩いていた。それは隣のオラール王国からの祝いの使者達だった。婚礼には礼儀上、国王を招待するが王は自ら出向かず使者を送るのが通例なのだ。
その中の一人が辺りを物珍しそうに見渡していた。オラール王国では一般的な金髪で青紫の瞳をした青年だった。精悍で整った顔立ちをしたその男は、肩幅が広く、鋭い光を宿す双眸は猛々しく、独特の雰囲気を醸し出していた。
その青年の横に立つ初老の男は、多分軍人だろう。隙の無い身のこなしで辺りを窺っている様子だった。皇城に用意された宿舎に帰ろうとしない連れに、とうとう痺れを切らしたようだ。
「いい加減に帰りましょう。この馬鹿騒ぎでこちらの耳がおかしくなる。明日はそれこそ城に朝から夜まで缶詰ですぞ!」
周りの喧騒に負けないような声で言ったが、相手に聞こえたのか定かでは無い。しかし青年は聞こえたようだった。同じく大声で返答してきた。
「ヴァラン!お前の声の方が煩いぞ!年寄り共はさっさと帰ったらいい!俺はまだ遊ぶぞ!ここの女は美人ばかりだ。国の色素の薄い女達よりずっといい!よしっ!行くぞ、ロジェ!あはははは」
青年はその中でも自分とあまり変わらない年齢の供に呼びかけると、豪快に笑って人の波を縫って行ったのだった。
夜が明けた。明けたかどうかも分からない程、街中が明るかったが、やはり朝日が昇ると清清しい感じがするのは当然だろう。人々は空を見上げては、今日の婚礼に心を躍らせているようだった。
その頃、皇城の皇宮にある謁見の間にて、皇帝ナイジェルは婚礼の祝辞や祝いの品を受けていた。そこでは主だった国中の貴族や、この場に相応しい地位の者達が居並んでいる。そして玉座の近くには彼らから贈られた品々や目録も並べられていた。その中でもナイジェルが直々に声をかけ、直接受け取るのは極限られた人物だけだ。しかもその順番で各自の地位と力関係が分かるものだった。
これの最後は主賓であるオラール王国の使者と決まっていたが、その前に呼ばれる人物こそこの国で一番だと皇帝に認められた者なのだ。しかし、もう既に主だった者が呼ばれていた。だから次がオラール王国の使者だろうと思っている所に、ナイジェルがもう一人の名を呼んだのだった。
「イレーネ、最近忙しく会う暇が無かったが息災だったか?」
ひっそりと柱の影にいたイレーネに向って、ナイジェルは声をかけたのだった。イレーネもまさか自分が声をかけられるとは思っていなかったが、ざわめく周りを気にする事なく進み出た。
受け答える彼女を昨晩のオラールの使者は何者かと周りの者に聞いた。
「前皇后イレーネ様でございます」
そう答えた者はまるで悪い事でも告げ口したかの様に口元を袖で隠した。
(前皇后?ああ、今回わざわざ婚姻を解消した相手か・・・それにしても・・・)
皆が驚くのも分かる。離婚までに至るような関係になった二人とは思えない感じだった。和やかに話す二人は、今までの誰よりも皇帝が心を許している様子だからだ。端から見れば仲の良い夫婦と見えなくも無い。
酷い噂になると今度の花嫁は素晴らしい美人で、皇帝は長年ただ一人連れ添った彼女から心変わりをしたと聞いていた。皇后の座を新しい女に渡したいが、子がいない状態では身分的に不利だから追い出したとか?
まあ良くある話だ・・・それを肯定するかのように元皇后はとりわけ美人でも無い。だが何か心惹かれるものがあった。
青年は自分達が呼ばれているのにも気が付かずイレーネを見つめていた。ヴァランから突かれてようやく我に返った次第だ。
「オラールの方々は、我が国は初めてであろうか?」
ナイジェルの問いかけに彼らの言上が許される。
「私はかなり昔ですが訪れた事はございます。その時も思いましたが誠に素晴らしい所でございます。陛下の治世の賜物でしょう。またこの度はお慶びの日を迎えられ、心よりお祝い申し上げます。申し遅れましたが、私はオラール王国の首席宰相を拝命しておりますクロード・セゼールと申します。横に控えておりますのが、我が国の東の元帥ヴァラン・セゼールでございます。我が国王に代わり祝いに馳せ参じました」
「―――王国の重臣を遣わして下さるとは国王に礼を言わねばなるまいな。その耳朶にした金の飾りは王家の証。セゼール・・・確か王族の家系だったと記憶するが・・・双方親子では無いようだが?」
「はい。親族でございます」
「・・・そうか・・・それは結構なことだ。優秀な王族で王も頼りがいがあると言うものだな」
周りが急にシーンと静まり返った。
優秀な王族・・・この国にそう呼べる皇族は少ない。本来ならナイジェルを盛り立てて、共に繁栄を築く義務がある彼の親族は、ことごとく葬られていたからだ。愚かな皇族達の末路とは言っても、その為ナイジェルは皇族殺し≠フ異名で呼ばれるようになった。自分達を責めるようなその皮肉にもとれる皇帝の発言に、残った皇族はもとより臣下すべてが息を呑んだのだ。
その時、パラリと扇子を開く音がした。そんなささやかな音が聞こえる程、大広間は静まり返っていたのだ。その音をたてたのはイレーネだった。
そして広げた扇子をまたパチンと閉じるとにこやかに言った。
「陛下、皆がオラール王国からの贈物が何かと待ちきれない様子です。早くご披露下さいませんか?」
ナイジェルは頷くと、ふと微笑んだように見えた。口の端がかすかに上がったようだったのだ。
それを感じた者達は一気に緊張が溶けた。ほっと息を吐く者が大半だった。
絶妙な間合いで、助け舟を出したイレーネをクロードは見た。やはりぱっとしない容貌だが、元皇后だけあって堂々としたものだ。しかし偉ぶった感じが全くしないのが不思議な魅力だった。そして一日中、イレーネから目が離せず、彼女の一挙一動を見続けた。
イレーネも流石にその視線には気が付いた。あまりにも無遠慮で不躾だったからだ。まるで獲物を狙う獣の目のようだった。イレーネは段々落ち着かなくなってきた。こんな経験は今まで無かったからだ。だから油断すると頬を赤らめてしまいそうになるのを堪えるのが一生懸命だった。
(他国の方だから、わたくしが物珍しいのでしょうね。別れた妻が堂々と元夫の婚礼に出席しているのだから・・・それとも呆れているのが正解かしら?)
イレーネは無視をしていたが、自分も興味を覚えてチラッと彼を見てしまった。当然ながら視線がピタリと合った。そうなるとそれをさり気なく外すのは難しい。彼を良く見れば家柄だけで重要な職に就いているとは思えない感じだ。絶対的な力の己を信じ、他を寄せ付けない威圧的なまでの空気が見えるようだった。同じぐらいの年でそう感じる人物は彼の他にナイジェルぐらいだろう。
次第に緊張が高まって来た時に、会場内に大きな音楽が流れ始めその楽団へと視線を移す事が出来たのだった。そしてその場から立ち去ることが出来た。
今日は大神殿の婚礼だけで主役の二人の披露は明日となるが、招待客達へのもてなしは続いていた。そのほとんどが城で宿泊出来るように整えられている。イレーネは早々とそこへ引き上げようとしたのだ。大神殿の祭壇の前で、幸せそうに見つめあっていた二人を思い出すと自分も思わず口元が緩んでしまう。祝いのお酒を一口だけ飲んだだけだったが会場の熱気のせいでまるで酔った気分だった。密かに抜け出て庭先へと歩き出した。皇城は自分の庭のようなものだから近道は分かっている。
陽は沈んだが空はまだ茜色に染め上がっていた。
久し振りに踊り出したい気分を抑えて、帰りを急ぎ始めたら急に後から腕をつかまれた。驚いて悲鳴を上げようとしたところへ、今度は口を手で塞がれてしまったのだった。
「ちょっと待った!驚かせて悪かったが、悲鳴は勘弁してくれ!」
よく見れば先程の失礼なオラールの使者ではないか。
抗いを止めたイレーネから彼は手を離した。
イレーネは流石に笑って許す気分にはなれず、不快な顔をした。
「何か、わたくしに御用でしょうか?」
しかし相手は気にする様子は無く、それよりも自分がした失礼な行為を詫びる様子さえ無かった。
「おい!お前、俺の国へ来い!そして王子の面倒をみれ!」
イレーネは自分の聞き間違いかと思った。
「何をおっしゃっていますの?わたくしに何をしろと?」
「聞こえて無かったのか?もう一度言う。お前は――」
「これ――っ!お待ちなされ!」
言いかかったところにヴァランが止めに入った。
「ちっ、うるさいのが来た」
息せき入ってやって来たもう一人の使者は、悪態つく男を黙るように睨んだ。しかし、そんなのも彼はお構いなしだった。
「だからお前は、俺の国に来てだな――」
またヴァランは遮った。
「お待ち下さい!事は順序よく運びませんと、そのように唐突におっしゃってもご理解頂けませんでしょうが!」
どうも聞き違いでは無いらしい。
「これはどういう事でございますか?」
「大変失礼致しました。実はこの者が貴女に幼い王子の教育を担当して頂いたらどうかと考えました次第で・・・」
王の子供に限らず、身分の高いものは教養のある婦人に教育を任せるのが普通だった。もちろん乳母や彼女らに任せたままでは無く、あくまでも母親の補助的存在となる大事な役目だ。
ヴァランもいきなり他国の・・・しかもいわくつきの貴婦人にこんな申し出をする事自体、冷や汗ものだった。
「国の重職とはいっても貴方がお決めになられますの?こういうものは母親が決めるものと、わたくしは思っておりましたがオラールでは違いますのでしょうか?」
「母親はいない。産んですぐ死んだからな」
「まあ・・・それはお気の毒で・・・しかしご教育者ならオラールにも適任者は沢山いらっしゃいますでしょう?何も他国から召抱えなくても」
クロードと名乗った男は、ふんと鼻を鳴らした。
「ああ、うんざりするほど沢山いた。だが、王子の教育というよりも王の寝床に入りたがる者ばかりだったな」
それを聞いたイレーネはぱっと頬を染めた。生娘のような初々しい反応に男が驚いてしまった。それが男の心をくすぐったようだ。その様子を楽しみながら男は話しを続けた。
「王子っていっても太陽の刻印≠継いだ大事な王子だ。他の妃もいればもちろん年の近い子供は何人もいる。その子らと共に育てればといいと思うだろう?しかし我が子可愛さの女や、寵を争う女達に預ける事は出来ない。今までは赤ん坊だったから乳母でも良かったが今年で四つになる。もう分別が分かり出す年だ。分かりすぎて困る。女好きの父親に似て若い女の言うことしかきかない我が儘な子供だ!だから困っているんだ。跡継ぎの教育は国の未来を左右させるからな」
イレーネは納得した。自分には経験が無いけれど数多くの妃がいる後宮の想像はつく。しかしこんな突拍子のない話を受ける程お気楽な性格でもない。
「わたくしが適任というお話は良く分かりましたわ。わたくしなら美人がお好きな国王に目もとまらないでしょう。それよりも元皇后という称号は、殿方の食指を鈍らせるのには十分ですから、後宮での争いは無縁とのお考えでなのでしょうね?しかし、それはそちら様のご都合だけでございます。ですからお断り致しますわ」
「何故?此処にいても馬鹿にされるだけだろうが!居場所など何処にも無いだろう?だからお互いの利益のための取引だ。お前は居心地のいい居場所とオラール王国で尊敬される存在となる。今のお前にとって悪い条件では無いはずだ」
イレーネは胸の奥に隠していた本心を突かれてはっとした。
居場所が無い≠サう思っていた。ナイジェルの隣はもちろん、実家に戻っても肩身の狭い思いをするだけだと思っていたから帰らなかった。自分から皇后を降りたというのは家族にとって理解出来ないだろう。何処でも自分は気にしなくても相手が常に気にしている。だからといって会ったばかりの礼儀も知らないこの男に言われる謂われは無いのだ。
イレーネは無償に腹がたったので思ってもいない事を言った。
「では、わたくしの居場所をオラールで作って下さると言われるのですね?宜しいのですか?そんなに優しい事を言われると、わたくしも再び王妃の座を狙うかもしれませんよ。それこそ自分の居場所を確たるものとする為に・・・」
効果てきめんで男は怒った。それこそ獲物を鋭い牙で食い千切る獣のような形相だ。
「そうか!俺も良く分かった!だが、その悪い遊びをしないと誓うなら、何時でも俺を訪ねて来るがいい!その時は歓迎しよう!ヴァラン、行くぞ!」
自分の言いたい事を怒鳴るように言ったら、さっさと去って行ってしまった。
イレーネは呆れてしまったが、こんな衝撃的な事は初めてで何故か楽しかった。
「国の未来の為とは言っても、王子の教育を心配し、国王の女性関係まで心配する熱血宰相様という訳ね・・・でもいきなり初対面の者に頼むなんて・・・ふふふ」
言葉に出してみれば更におかしくなった。しかし彼の言った居場所≠ニいう言葉が何時までも、胸に詰まっている感じがするのだった。

はじまりの日
湯浴みを済ませ夜着に着替えて窓の外を眺めていたツェツィーリアは、ふぅーと息を吐いた。
今日は手を通すのが怖いような真っ白なドレスに身を包み、壮麗な大神殿で婚礼を挙げた。
大神官の声が遠くに聞こえるぐらい緊張してしまった。
時折心配そうにナイジェルが視線を送ってくるので、大丈夫だと、微笑みを返すのがやっとだった。
しかしその横に立つナイジェルの姿を見る度、ツェツィーリアは頬を赤らめてしまった。
何度見ても慣れないその姿は見るたびに胸が高鳴るのだ。
宵闇のような濃藍色の長い髪に、宝石のような紫の瞳。
夜に浮かぶ月のような人―――
ツェツィーリアは幸せで胸がいっぱいだった。
だから式の間中、まるで夢に見ているようで現実味が無かった。
そして一日はあっという間に終わって、外には月が昇っている。
まだ招待客は皇宮で宴を楽しんでいるようだったが、後宮までその喧騒は聞こえない・・・
本当に静かな夜だ・・・
カタリと音がして奥の扉が開く音がした。
ツェツィーリアの運命が変わった時と同じその音は、皇帝と皇后の寝室を繋ぐ扉だ。
あの時、ナイジェルは血濡れた剣を握り、ツェツィーリアを運命の渦中へと投げ込んだのだった―――
ツェツィーリアは懐かしく思いながら微笑んで振向くと、入室して来たナイジェルは一輪の白い薔薇を持っていた。
その花は開いたばかりのようで甘い芳香を放っている。
それは皇城の一番奥にある白い花だけを集めた庭園に咲くものだろう。
白い花はそこにしか植えられていないのだ。そしてそれは手折ったばかりのようで夜露を含んでいた。
ナイジェルは無言でその薔薇をツェツィーリアに差し出した。
受け取ったツェツィーリアは鼻にそれに寄せ香りを吸い込むと、それは夜の匂いがして甘くて夢を見るような香りだった。
ツェツィーリアの嬉しそうなその様子をナイジェルは見つめていたが、薔薇に嫉妬したくなった。
「ツェツィーリア、花にばかり口づけばかりしているが、私を忘れていないか?」
ツェツィーリアはぱっと頬を染めた。
「陛下・・・そんな・・私・・」
ナイジェルはその言い方が気に入らなかった。
「ツェツィーリア。二人だけの時は私を名前で呼びなさい」
「あの・・でも・・」
ツェツィーリアは呼び慣れないので恥ずかしかった。
「さあ呼んで・・・もう私の名を呼ぶ者は誰もいない。だからお前にはそう呼んで欲しい」
皇帝の名を呼べる両親はいない。心許せる親族もいなかったナイジェルには名を呼ぶ身内は居なかった。
孤独な皇帝ナイジェル―――
頬を更に赤らめるツェツィーリアをナイジェルは優しくすくい上げて囁いた。
「さあ呼んで・・・」
「ナ、ナイ、ジェルさま・・」
囁きよりも小さな声で言った。
「聞こえない。もう一度・・」
「意地悪しないで下さい・・恥ずかしくて・・・」
ツェツィーリアは抱き上げられていて伝わってくるナイジェルの温もりに、鼓動が乱れて止まらない。しかし言うまで許してくれそうにないその瞳を見れば更にどうにかなりそうだった。
「ナ、ナイジェル様」
真っ赤になって少し大きめの声で言うツェツィーリアに様≠烽「らないとまではナイジェルも言えなかった。だから満足そうに微笑むと彼女に口づけを落とした。
そして足は寝台へと進む。
腕の中で緊張するツェツィーリアを感じた。彼女を無理やりに自分のものにしたあの嵐のような数日以来、ツェツィーリアには触れていない。
運命を呪い後悔し、彼女を想い引き裂かれるような激情に翻弄された末に見つけた幸せ―――
柔らかな寝台にツェツィーリアをそっと沈めた。薔薇が彼女の手から落ち、身体は羽のような寝具が包み込んだ。そして金糸の髪がふわりと広がり少し震えていた。
(思い出したのだろうか?彼女にしたあの愚かな仕打ちを・・・)
時が戻せるのならそうしたい・・・・ナイジェルの心に鉛色の雲が広がった。
「ツェツィーリア、疲れただろう。今日はゆっくり休みなさい・・・」
ナイジェルはそう言うと立ち去ろうとした。踵を返すその歩みは止められてしまった。
ツェツィーリアが起き上がって袖を引っ張っていたからだ。
「あの・・・ナイジェル様。私・・・怖いのではなくて・・き、緊張してしまって・・・だから・・あの・・・・行かないで・・行かないで下さい。ナイジェル様・・」
ツェツィーリアはそう言いながら恥ずかしそうに真っ赤になって俯いていた。
ナイジェルは驚き瞳を見開いたが、すぐに微笑んだ。そして震えながら袖を掴むツェツィーリアの手に自分の手を重ねると、寝台に腰掛けたて囁いた。
「最初から始めよう。愛している、ツェツィーリア・・・」
夜の路で見つけた紫の瞳にはツェツィーリアが映っている。冷たく冴えたその色は彼女にだけ見せる柔らかな光りを宿していた。
「はい。私も・・ナイジェル様・・・愛しています」
そして枕元に落ちた白い薔薇の香りが二人を包み込んだのだった・・・・・