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天人の
囁き
16![]()
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カルムはサシャの両膝を抱えるように開いた。
ここはサシャが自分から開いて欲しがらせると言っていたものだ。花芯はさっきまでの愛撫で十分濡れている。更に愛撫を続けてもっと緊張を解かせても良いが・・・カルムがもう限界だった。
硬く昂ぶって反り返ったものが脈打ち次ぎの刺激を求めていた。カルムはそれをサシャの花芯の中心へ押し付けた。硬く強張ったそれを感じたサシャは、ゾクリと全身に震えが走った。
普通なら嫌だと言ってカルムを退けただろう・・・しかし突き放す事が出来なかった。
「っ・・・くっ・・・」
サシャは息を呑んで唇を噛み締めた。
カルムの熱く硬いものが少しずつ埋め込まれてくる―――
(は、入ってくる!入って・・・)
反射的にサシャは弱くもがいた。しかしカルムはサシャに圧し掛かり強張りを更に深く侵入させた。
「あ、あ、あっ・・・ぁあっ、あ、んぁ・・・い、やだ」
ようやくサシャから嫌だと言う言葉がこぼれた。
そして頭を振り出した彼女の耳元にカルムは唇を寄せた。昂揚に掠れた声で囁く―――
「サシャ、望み通りに穢してやっているんだ。これは君が私に望んだもの・・・ふっ・・・くっ・・・きつい。サシャ、力を抜くんだ」
サシャは力を抜けと言われても無理だと答えたかった。しかし声は言葉にならない・・・
「うっ・・・うんっ・・・くぅ・・・あっ、あぁっ、あ、あ、」
「サシャ」
カルムの息遣いは荒く耳元でなじるようにサシャの名を呼んだ。荒い息と共にかすかに耳朶に当たるカルムの唇と、しっとりと濡れる舌先がサシャを更に強張らせていた。
「くっ・・・サシャ・・・」
カルムは手足を突っ張って自分の侵入を拒んでいるかのようなサシャに痺れを切らした。
サシャの両脚を抱えるように持っていたそれを更に、グッと押し開くと深く、深く犯すように一気に根元まで埋め込んだ。
「ぅ、あぁぁあぁ―――っ」
サシャは全身を串刺しにされたかのような衝撃に仰け反り、ガクガクと震えた。
これではまるで強姦しているようだとカルムは自傷気味に思った。
(まぁ・・・似たようなものか・・・それにしても・・・)
カルムはどこからこんなに溢れてくるのだろうかと思うくらい、ぽろぽろと流れるサシャの涙を凶暴な楔で激しく突き上げながらも優しく拭った。溢れてくる涙は、拭っても、拭ってもカルムの指を濡らすだけで止まらなかった。しかし唇からこぼれる声は嗚咽とは違うものが時々混じり出した。
カルムはそれを耳にするだけで自分が異常に興奮しているのを感じた。
サシャを責めている楔は正直で彼女の中で更に大きくなり凶暴さを増した。
サシャの細く折れそうな身体はカルムによって、ガクガクと激しく揺れ動いていた。
そのサシャは何故自分が泣き出してしまったのか分からなかった。
もう巫女では無いのだから涙したとしても誰かを不幸にすることは無いだろう。それでも長年守って来たものを簡単に破ることなど出来ないものだ。涙で視界はぼやけているがカルムの金眼が暗闇を照らす蝋燭の灯りのようだった。もしくは闇夜に咲く儚く美しい花のようだ。
堕ちる所まで堕ちてもこれだけは見失わないような気がした。
「あっ、あ、あ、はぁぁっ・・・」
深く埋め込まれたまま抉るように腰を動かされた。
ずるりと途中まで引き抜かれ、すぐに力強く押し戻される。そんな抜き差しの振動でサシャは大きなベッドの端へとずり上がり、とうとう、ガクリと背中がベッドから落ちた。しかし彼女の太腿を抱えていたカルムは構わず責め立てそのまま床へと滑り落ち激しい律動を繰り返した。
サシャはわけわからないまま、ひっきりなしに喘ぎながら霞む目でカルムが強い快感に歯を食いしばり低く呻く瞬間の顔を見た。
「くっ・・・ふっ・・・っ」
押し殺したような声でいて甘い吐息のような声がカルムの唇から漏れるのと同時に、サシャの身体の奥で熱が爆ぜて何かが放たれた。咥え込んだ肉がその感覚に震え、繋がった部分からカルムの身体が痙攣しているのを感じた。サシャの中で凶暴化していたものが萎えてきたがそれでもまだ十分に圧迫感を与えているそれは抜かれずカルムを感じさせた。
サシャも同じく頂点に達しそうな瞬間に唇が柔らかいもので塞がれた。無理やり捻じ込まれたカルムの舌はサシャの舌を捕らえ絡みつき、強く吸い上げる。
「んん・・・んっ、うっ・・・ん」
熱い口づけがいつの間にかサシャの涙を止めていた。
それと同時にサシャの中でカルムの昂ぶりが硬度を増し出した。再びせりあがる快感が思考も意識も呑み込んで行く。解かれた唇は赤く腫れ酸素を求めた喉はひくついた。
「い・・・やっ・・・」
「まだその口は嫌だと・・・か言うの・・・か?これはお前の・・・望み・・・くっ・・・ふっ、」
サシャはカルムが耳元で何を言っているのか分からなかった。
深い場所で繋がっているのに更に奥へと、ぐりっと捻じ込むように腰を突き入れられ息が止まる。
放たれた精液で滑りが良くなった内部は微妙な動きを助け掻き乱し始めた。
そしてサシャのその内部は抜け出て行こうとするカルムの昂ぶりに、ねっとりと絡みつきそれを止めようと収縮していた。しかしカルムは強引に腰を引き、ギリギリまで抜きかけ一気に突き上げた。
強烈な快感がサシャを襲い身体がビクンと跳ねた。
穿たれる度に奥から溢れ出る粘着音が鼓膜をも犯しているようだった。
「あっ、あ、ああ、あっ・・・だ、め・・・も、もう、ゆる・・・し」
「許す?何を?・・・くっ・・・何を?サシャ・・・っ、許されない・・・まだまだ穢してやる・・・」
終る事の無いカルムの執拗な責めでサシャは何度も気を失い、そして泣きじゃくるような声を上げ続けた。
最後には無意識に逃げ始めたサシャはベッドの柱に座り込んだ状態で縛り付けられた。
裂かれたシーツで出来た紐はサシャの両腕はもちろん小さな胸の肉に食い込んだ。
血の通いが少なくなった乳房は赤く充血し冷たくなっていた。カルムはその肌の冷たさを愉しむかのように、ツンと尖った粒を舌で転がし、ねっとりと舐めて吸い上げる。
その強烈な刺激にサシャは悲鳴をあげるしかなかった。
ぎりぎりと食い込む紐の際をカルムが舐め上げ、近くに歯を立ててはその後を再び優しく舐める。
その快感にサシャは自由な腰を思わず揺らめかせた。
そのまるで喜んでいるかのような恥ずかしい自分の行為にサシャはカルムの顔がまともに見られなかった。しかし四つん這いで胸に貪りついていたカルムが立ち上がった気配を感じたサシャが目を上げると、その目の前に肉塊があった。
グイっと髪ごと頭を引っ張られたサシャはカルムが何も言わなくてもこれを舐めろ、と言っているのだと思った。意識する間も無く、そろそろと口を開いたサシャの唇にそれが触れた。
放たれたばかりの肉塊は少し柔らかく、そっと舌を伸ばしそれに這わせた。
鼻腔に流れ込む男の匂いに、ゾクリとしたものがサシャの背中を走り、ブルっと身体を震わせた。
その瞬間、カルムはサシャの掴んでいた髪を引き上げた。
掴み上げられ驚いて大きく開けたその口に熱い肉塊が捻じ込まれた。
「うぐっ・・・うぅぅ・・・ん」
いきなり喉の奥まで捻じ込まれたサシャは咽そうになった。しかしそれに構わずカルムが鷲づかみにした髪を手掛かりにサシャの首を前後に揺すった。
「ふっ、うっっ・・・うっ、う、う、・・・」
喉奥を突かれる度に身をよじり拘束がきつくなる。
カルムの空いた手は執拗に尖った乳首を抓みあげては縛られて硬くなっている胸を弄んでいた。
花芯を犯され、口の中も犯され穢れの源を何度も放たれた。もうこれ以上無いくらい穢されたと思うのにカルムはまだまだだと言った。
「サシャ・・・逃がさない・・・次は・・・」
カルムの掠れた声は狂気が滲んでいた。
サシャは柱からは解かれても身体を縛る紐からは解放されなかった。
捕獲された獣のように自由を奪われベッドに投げ込まれたサシャは次に襲ってくる恐怖に震えた。
しかし、それがもう恐怖で震えているのかどうか自分では分からなかった。身体中に痺れるように駆け巡る甘い痛みに花芯はだらしなく蜜を垂らしていると感じていたからだ。
カルムの手が伸びた。サシャの背中から両腕ごと縛っている紐を引き上げると、尻を突き上げるような格好になった。その肉の薄い双丘をカルムは左右に開くように両手で掴んだ。
双丘の奥に隠れていた窄みが、ピンと伸ばされてその薄い皮膚に空気を感じた。
「!い、や!そこはっ!」
サシャが押さえ付けられた顔を必死に上げてカルムを見た。カルムの見えない瞳は細められ薄い唇は冷淡な笑みを浮かべていた。
(怒ってる?何故?)
カルムはサシャにもそして自分にも怒っていた。
あらゆる手を尽くしているのにサシャが無意識に逃れようとするのに腹が立ってしかたがなかった。
楽しみを失くすどころか何もかも全てを失い兼ねないこの行為を止められない自分にも・・・
「・・・サシャ・・・全部犯して穢してやる・・・」
サシャの無防備な搾りに熱い塊が押し付けられた。
「あぁあああ―――っ」
いきなり押し入って来た猛る塊に今までとは全く違う衝撃が走った。
一気に貫かれ、サシャの丸みの乏しい双丘は潰れてカルムの引き締まった下腹部を感じた。
そして今まで突き上げられていた花芯はもの欲しそうにひくつきわなないているようだった。
カルムがゆっくりと引き抜きかかり、すぐに力強く突き上げる。
細かい抜き差しを繰り返えされサシャは狂ったように頭を振った。
「やぁあぁ・・・あッ、あ、ぁ、あ・・・」
仰け反る喉にカルムが食らいつく。噛み付くような口づけに拘束された全身に震えが走る。
カルムが天の国に行かせてやると言った意味をサシャは理解出来なかった。死んだ魂が昇って行く先にあると言う楽園の国はこんな不浄な快楽に満ち溢れている筈が無いからだ。
清廉とした心安らかなる場所―――
天山のような場所が天の国だとサシャは思っている。だから天人もいるのだ。
それは違うよ、サシャ
(えっ?)
そうだよなぁ〜∞サシャはどうしてそう思うんだろうね
(天人?まさか・・・)
サシャの耳に聞きなれた天人達の声が聞こえたような気がした。
しかし、それに注意を払う余裕が無かった。カルムの動きが大胆になりサシャの喉からは喘ぎが搾り出されてくる。
「あ・・・あ・・・あああぁあっ・・・も、もう・・・」
「駄目だ・・・もっと乱れろ・・・もっと・・・」
カルムの押し殺したような声が天人の声を掻き消す。
「い、いや・・・あ、あ、あ、っんあ・・・い、や」
カルムに突き入れられる度に喘ぎ声が上がる。だらしなく蜜を垂らしていた花芯にはカルムの指が伸びて来た。長い指が蜜を掻き分け蠢き、一本、二本、三本と指を呑み込んでは刺激を求めて絡みついた。サシャはカルムと一緒に何度も頂点に達した。
溢れる蜜と放たれた精液は冷え始めた寝室で湯気を上げているようだった。
貪るように合わせられた唇から吐かれる荒い息は白かった―――
カルムは、ぶるっと震え目を覚ました。いつの間にか眠っていたのに自分で驚いた。
しかもサシャを自分の上に乗せ、未だに深く繋がったままだ。彼女も縛られたまま眠っていた。
「・・・・・・・・・」
カルムはサシャの縛めを解いた。眠りは深く起きる気配が無かった。すやすやと自分の胸で眠るサシャにカルムは再び強い欲情を感じた。結合している部分に熱が集まるようだった。
「全く・・・これじゃあ・・・イエランみたいじゃないか。えっ?何?イエランみたいだって?」
カルムは自分で言って驚いた。美羽が好きで、好きで、堪らないイエランの呆れるような執着ぶりを何時もからかっていたのはカルムだ。そのイエランと同じだと思うとしたら・・・
「そんな、馬鹿な・・・絶対に違う!これは何時もの遊びだ!遊び・・・そう、堪らないだろう?清い娘を心まで穢すのは今までに無い楽しさだ!新しい嗜好にピッタリだっただけ・・・そう・・・それだけ・・・」
そんな考えを巡らせているうちにまた再び睡魔が襲いカルムは寝入ってしまった。
それと入れ替わるかのようにサシャが目覚めた。サシャは此処が今何処なのか一瞬分からなかった。
温かく弾力のある寝床は規則正しく上下して・・・
(上下?)
サシャは、はっと我に返った。呼吸で上下するカルムの胸の上で目覚めたのだ。
しかも自由になっていた手はカルムのその胸に、ピッタリと置いていた。
慌てて起き上がろうとしたが下半身に違和感を覚え、はっとした。
カルムの猛ったものはサシャに突き刺さったままだったのだ。サシャは、ドクドクと血が逆流するように鼓動が跳ねた。おそるおそる腰を引き上げその熱い塊を抜き取ろうとした。
圧迫していた塊は簡単に、ずるりと抜け、ゆらゆらとカルムの腹の上で揺れた。
それと同時にサシャの花芯から白濁した液がドロリと溢れ出た。それは顔も身体にもベッタリ付いている。カルムの宣言通りに穢れは全身を侵したのだとサシャは感じた。
しかし穢れの原因のカルムは神々しく、その放たれた飛沫は聖なるもののようにも感じた。
清らかな水と全く違うのにその白濁した液でサシャは洗い清められたかのような錯覚だった。
そんな思考さえ生んでしまうこの気だるい充足感の意味が分からなかった。
「―――穢れ過ぎた私はどこが変ったのだろうか?」
サシャは自分の身体を見た。激しい行為を表しているかのように縛られた紐の痕に、カルムから受けた、噛み付くような口づけの痕・・・敏感に充血したままの胸や花芯の尖り・・・それらはあっても特別に変った所は見付からなかった。巫女達の間では救いようが無いくらい穢れたものは人に劣り獣のようになって尻尾や角が生えるとか囁かれていた。
サシャは頭を確認して角が無いことに安堵し、尻に手を伸ばした。もちろんそこに尻尾は無かった。
「馬鹿な、サシャ。そんな角や尻尾が生えるならこの人だって生えているじゃないか・・・」
堕落の象徴と思うカルムにそんなものは見当たらない。いつ見ても溜息が出るくらい綺麗だった。
カルムの額を見ればそこに天眼は無かったが余韻で、すっと割れた線があった。
金眼もまどろんでいるのだろうか・・・その天眼がいきなり、カッと開いた。
そしてカルムの見えない瞳が薄っすらと開く―――
「サシャ・・・」
夢現なカルムは天眼に映るサシャを現実と思っていなかった。
「泣きやんだのか・・・サシャ・・・良かった・・・」
カルムはそう呟いてまた眠りに落ちた。金眼も、すっと細くなって消えてしまった。
サシャは思い出したく無いのに思い出した。カルムの涙を拭う手が優しかったこと・・・優しい声で名前を呼ばれ泣くなと囁かれたことを・・・
今までずっと胸の奥に溜めていた涙が一気に流れた感じだった。泣きすぎて頭が痛い・・・
「頭だけじゃない!どこもかしこも痛い!痛い・・・痛い・・・い・・・たい・・・」
痛いけれどそれはどこもかしこも甘く痺れるような痛さだった。痛いけれどあれだけ嫌だと思ったものが気持ち悪くなかった。
「・・・気持ち悪く無いのなら・・・本当の結婚が出来るけど・・・でも・・・」
「その時は腹から出て来る前に私が殺してあげるよ」
冷やりとした風が頬を撫でるようなカルムの声が響いた。サシャの手は無意識にカルムの額をなでていたようだった。その手のひらの下には金眼が開いている。サシャの手のひらからは彼女の思考が読めるのだ。快楽に付き合うのは良し、と考え直したサシャだったが子供の件は譲れないもののようだった。
驚くサシャの手を払いのけてカルムは起き上がって微笑んだ。
「サシャ、約束するよ。子がもし・・・もしも出来たなら直ぐに殺してあげる」
「嘘・・・そなたは・・・そなたは嘘つきだから信用しない!」
「嘘じゃないよ。私は愛情を持って私の子供を殺すよ」
「愛情を持って殺す?」
「そう・・・母親に嫌われる子など見たくないからね・・・」
カルムの言っている事は本気のような気がした。
(母に嫌われる子?それは・・・もしかして自分のこと?)
カルムは心眼を他人から怖がられる事を異常に気にしていた。そして造られた人格はそれを見事に隠していたようだった。
「そなたは要らぬ子では無い。そなたの誕生を両親は喜んだ筈だ」
サシャは、ふと浮んだことを口にした。
しかしその慰めはカルムの触れてはならないものを暴いてしまったようだった。
「最初はね!金眼の子は多ければ多い程いい!より強い金眼の子を求めて王は子作りに励むんだよ!その影で捨てられた女達がどんなに嘆こうともね!子は強くなければ父親から声さえかけて貰えない。そして誰よりも強い心眼となって母親に嫌われた・・・この目も母に潰された!それに女は皆、同じだ!嫌だ、嫌だと言いながら自分に利があると思えば躊躇せずに男を咥え込む淫乱ばかり!利己的で傲慢な化物だ!自分の為に世界が回っていると勘違いしているものばかりだ!」
自分の思いを吐き出してしまったカルムは、はっと我に返った。誰にも言った事のない心の傷や母親を代表する女達への不信感を思わず洩らした事に気まずさを感じ、サシャから視線を外した。
「嫌だと言って・・・か・・・じゃあ、私も化物だろうか?」
サシャが、ポツリと言った。
「ち、違う・・・違う!君は・・・」
サシャが静かにカルムを真っ直ぐに見ているのを感じた。
しかしそれは瞳が訴えるものまで見えない。天眼で視ることに不便さを余り感じたことの無いカルムは鮮明ではないこの眼に苛立った。それはイエランが美しいと溜息を洩らす美羽の白い背翼を視ても同じように感動しなかった時に似ている。背翼を手で確かめた方が遥かにその美しさを感じたものだ。
サシャの瞳ばかりは手で確かめることは出来ない―――
今までこんなに盲目なことを悔やんだ事は無かった。
「サシャは違う!」
サシャは首を振った。
「違わないと思う・・・嫌だと拒絶しながらそなたに約束を破らせた・・・すまない・・・」
自分が悪いと謝るサシャにカルムは驚いた。どう考えてもカルムが悪い。泣き出した彼女を無理矢理犯したようなものだ。進んで約束を破ったのはカルムだ。
「サシャ・・・」
しゅんと沈むサシャにカルムは愛おしさを感じた。
それは赤子のように純粋なサシャを踏み躙りたい気持ちと、真綿で包み込みたいような気持ち・・・
カルムの何通りもある顔のように相反する二つの心がせめぎ合う不思議な感覚だった。
―――しかし守らなければならないものを見つけたような気持ちが溢れた。
「サシャ・・・約束を破ってしまったけれど私は後悔していないよ。君にも後悔させないと言っただろう?今度は気持ち悪く無かったって、本当?」
返事を躊躇するサシャにカルムは微笑んで、いきなり唇を塞いだ。
驚いて口を開けたサシャにカルムの舌が深く滑り込んで来た。
舌を絡め取られて優しく弄られる・・・何とも言えないこの感触は気持ち悪いと思わなかった。それよりも逆に気持ちが良いかもしれない・・・合わさったまま開かれた唇の隙間から、チュクチュクと音が漏れる。
口づけが解かれるとお互いの舌先は唾液の長い糸を引いた。
そしてサシャの唇に垂れる唾液をカルムが、チロリと舌で舐め取った。
「どう?気持ち良かった?」
戸惑うサシャにカルムは
「分からないなら、もう一度しようか?」
サシャは慌てて首を振った。
「分かった、分かったから、もう十分だ!そなたの言うことが正しい!」
「じゃあ、気持ち良かったって認めるんだ?」
そういう風に言われると認めるのを躊躇ったサシャだったが、小さく頷いた。
カルムは満足そうに微笑んだ。
「じゃあ、今度から妻の役目をしっかりしてくれるんだね?」
「そ、それは・・・」
「してくれますか?」
カルムが、急に表の顔で聞いてきた。サシャは嫌そうに眉を寄せた。
「そなたのその言い方は嫌いだ!気味が悪い!」
カルムは、ムッとして息を吸い込んだ。
「じゃあ、今度からつべこべ言わず私が望む時に足を開け!分かったか!」
一転したカルムの物言いにサシャは息を呑み思わず頷いた。妻に対する尊厳すらない酷い言われ方なのに、ドキドキと胸が高鳴るのは何故なのだろうかとサシャは思った。
しかしサシャが頷いて機嫌が良くなったカルムは夢のように綺麗な顔を輝かせて優しく微笑んだ。
それを見ると少し罪が軽くなったような気がした。
(??本当に変な感じだ・・・それに天人の声が聞こえたような??)
サシャは瞼が重くなりつつある目をこすりながら、うつらうつらと睡魔と闘ったが勝てずに再びカルムの胸の中に居場所を求めた。
「サシャ?」
すやすやと寝息を立て始めたサシャにカルムは大きな溜息をついた。
「やれやれ・・・困ったお嬢さんだ」
少々計画は狂ったが自分好みに開発する楽しみを見つけ上機嫌だった。サシャのことを好きかもしれないと言う気の迷いもすっかり消し飛んだ。それでもこの保護欲は消えていない。
「・・・まあ・・・小さなものは守るのが当たり前だし・・・と、言いながら一番酷いことをしているのが自分なんだから説得力無いか・・・」
カルムはまだ庇護を必要とする子供のようなサシャの身体に欲情を覚える自分に嗤うしかなかった。
そしていつの間にかカルムも心地よく寝入ったのだった。