天人の囁き17



 今度こそ本当に目覚めたサシャは小さく欠伸をすると、ベッドの中で大きく背伸びをした。
そして潜っていた毛布の中から這い出そうと、モゾモゾ上に進んだ。纏わり付いていた毛布が邪魔だったが何とか外に顔を出したサシャは冷たい空気に首を竦めた。それでも顔だけ出して周りを見た。
防寒の為に窓には内側に扉が有り陽の光が入っていない。寝所は火力が弱まった暖炉と、所々に置かれた灯りだけで薄暗く今何時くらいなのか分からなかった。

カルムは?と思った時に、サシャの足首が急に引っ張られた。

「きゃっ!」
サシャは折角這い出たのに再び毛布の中へと引き摺り込まれてしまった。
そして、クスクス笑う声が下からした。
サシャはもがいて毛布から何とか顔だけ出して下を見るとカル
ムが愉快そうに笑っていた。
「おはよう、サシャ」
「きゃっ!」
サシャが受け答える前にカルムは持っていた彼女の足首を更に引き上げてしまった。半身起き上がっているカルムの頭上に引き上げられたサシャはまるで罠に掛かった小動物のようだった。

「は、放せ!」
「何故?」
「なっ!な、何故って?嫌だからだろう!」
「嫌?そう・・・じゃあ、放さない」
「なっ!何でそうなるんだ!」
カルムが愉快そうにまた、クスクス笑った。
そんな顔を見ていると許してしまいそうになるくらい薄明かりの中でも綺麗なものだ。
駄目だ、駄目だ、とサシャは自分の心に言い聞かせたのだが・・・

「放せっ!」
「どうしようかなぁ〜」
カルムは意地悪く微笑みながら片足を引き上げて、丸見えになっているサシャの花芯に息を吹きかけた。

「ひぃゃっ!ん・・・っ・・・」
サシャが、ビクッと身体を震わせ反応すると、昨日の名残で赤く腫れているその場所をカルムは指の腹でなぞり、ツプリと第二関節まで中へ沈めて出した。

「あぁっ・・・や、止め・・・ろ・・・っ」
「ふふふっ・・・まだ濡れているね。感触だけでは分からないけれど・・・ヒクついているかな?さっきまでこんな小さな場所に私のものが挿し込まれていたのだから当たり前か」
「そんなこと言うな!」
「どうしてそんなに怒るわけ?こんな目にあっても変わらずお堅いなんて、男心がくすぐられるな。堪らないねぇ〜ねだってごらん。私が欲しいって・・・気持ち良かったって言っただろう?」
何で話しがそうなる!とサシャは言いたかったがその代わりに強く首を振った。

「言わない!」
「そう・・・じゃあ、このまま、ずっとこうしていようか。あっ・・・でも手が疲れるから天蓋から吊っていようかな?」
カルムは意地悪くそういうとサシャを縛っていた紐を探して枕元を探った。手に触れたそれをサシャに見えるように掲げると再び微笑んだ。
サシャは、ぞっとして掴まれた足をビクリと揺らした。その紐を見ただけで縛られた痕が、ズキズキと甘く疼くようだった。

「ふふふ、嘘だよ。もっと遊びたいところだけど今日は忙しいからね。湯浴みをして出仕の準備をしよう」
カルムはサシャの掴んでいた足首を、ぱっと放して言った。
解放されたサシャは、ほっと胸を撫で下ろしたが、はっとした。

「ゆ、湯浴み?湯は嫌だ!」
サシャの未だ禁令を守ろうとする態度にカルムは腹が立った。

「いい加減にしてくれ!いつまで巫女姫ぶるんだ?この地では水は汲んだ端から凍るんだ!水風呂どころでは無く氷風呂になる!天眼では天眼の暮らし方があるんだから一々反抗するな!」
カルムの刺々しい言い方にサシャは、ムッとしたが反論は出来なかった。カルムの言っていることは正しいと思うからだ。

「巫女のつもりじゃない・・・もの心ついた時からの習慣だから嫌だっただけだ・・・慣れるように努力する・・・」
「そう・・・努力ね・・・まあ、いいさ。妻の役目もこれからは、どんどん努力してもらうかからね。期待しているよ、サシャ」
含んだ言い方をしたカルムが意地悪く微笑んだ。
その笑みにサシャは、ドキリと胸が跳ねた。頬も何故だか熱くなってくるようだった。
カルムが天眼を開いて無くて良かった・・・とサシャは思った。何故かと問われたら自分でも分からないのに答えられないからだ。

カルムは大人しくなったサシャを毛布に包み抱きかかえた。自分は器用に毛皮のガウンを肩に掛けると寝室から出て湯殿へと向かった。

 湯殿では専用の女召使い達が準備を整え待っていた。
しかし彼女達の姿にサシャは、ぎょっとしてしまった。若い娘達が下半身のみ薄い衣を巻いたような半裸状態で傅いていたのだ。

「こ、この者達は?」
「ああ、この子達?湯浴みの係りですよ。身体を洗ってくれたり、着替えを手伝ってくれたりします」
「あ、あんな格好でか?」
「あんな格好?裸の事ですか?湯殿では皆、裸です。貴女も、私も」
「そ、それはそうだが・・・女子が夫や親族でもない男の前であのような姿は良くない」
サシャが口ごもりながらそう言うとカルムが、ニッと笑った。

「はて・・・私は見えないから気になりませんが・・・服を着たままだと濡れるし、それに脱がす手間が省けるでしょう?」
「脱がす?あっ、まさか・・・この者達は・・・そ、そなたの!」
サシャは口にするのもおぞましく、ワナワナと震えた。

「勘が良くなったねぇ〜そう、想像通り!湯殿専用のお遊び相手だよ」
カルムが、そっとサシャに耳打ちした。

「周りがそなたに早く身を固めよ、と言うのが良く分かった!夜は一人寝はしない!しかも相手が一人だけとは限らない!風呂には裸体の女達を侍らせて!何を考えているんだ!色欲に溺れすぎだろう!今に酷い目に合うぞ!」
サシャがカルムの腕の中でもがきながら叫んだ。

「酷い目ねぇ〜どんな酷い目に合うのかなぁ〜分からないなぁ〜教えてくれない?ねぇ、サシャ?」
カルムは表用の言葉遣いを器用に使い分ける。だからサシャには周りに聞こえないように耳元で囁く。

「師から教わった。我欲が強い者は自己中心的で周りを省みない。それが摩擦を生み負を呼び込んで己に災いをもたらす結果となる。特に色欲は一番最悪だ」
「精神論?それとも変な呪?何れにしても嗤える話だね」
カルムは軽く笑い嫌味たっぷりに言った。

「それに誰にも迷惑かけてないよ。女の子達は喜んでこの仕事をしている。自分も気持ち良くって短時間で高給料が貰える。希望者は列を作っているんだよ。恋人達だって閨に呼ばれるのを待っているし、私が構ってあげている間は何でもねだり放題。皆、いい事尽くめさ。君だって天山を追われて死なずにそして路頭に迷わずに何不自由なく過ごせるのはどうしてなのかな?私が興味を示さなかったらそんな美味しい話なんか無いだろう」
(興味を示す?)
自分の何処にカルムが興味をそそる部分があるのだろうか・・・とサシャは思った。恋人のサンドラも今、ずらりと並ぶ女達も胸や尻は丸く大きく同性から見ても実に女らしく成熟していた。
自分はと言えば痩せっぽちで子供のような身体だ。色恋に疎いサシャでもそれが異性の目で比べられるとどう映るのか何と無く分かる。

(なら何故?)
サシャは分からなかった―――

「そなたの考えは分からない。でも私は気分良くない」
「ふ〜ん。まぁ・・・私が好きだとか言う訳では無いだろうから・・・道徳的にかな?」
好き≠ニいう言葉にサシャは、ドキリとした。

「も、もちろん、そうだ!不道徳だ!」
カルムは愉快そうに、クスクス笑っていた。

「じゃあ、不道徳なことをしよう」
「ば、馬ぁ・・・んっ・・・んん」
サシャは唇を塞がれてしまった。カルムの舌は直ぐにサシャの歯列を割り侵入して来た。
蠢く舌は甘く丁寧に唇の裏を舐めて歯列をなぞる。いつの間にかサシャを包んでいた毛布はカルムの足元に落ちていた。サシャはカルムの密着する肌を否応なしに意識してしまい離れたくて仕方がなかったが深い口づけはそれを阻んでしまった。

「どこから洗ってもらおうか?」
強烈で甘い口づけに酔いかけた時、カルムが耳元で囁いた。

「じ、自分で出来る!」
「レーナを呼んであげようか?彼女も似合いそうだろう?ここの仕事着はね・・・」
「なっ・・・」
サシャは絶句し、信じられないと言う顔をしてカルムを見た。

「レーナは喜ばない!」
「ふふっ、だろうね。君と同じくらい頭が固そうだ・・・でもここの主は誰かな?」
言われなくてもそれはカルムだ。カルムは愉快そうに小さく笑った。

「主の言うことを聞くのが召使いだよね?それは天眼国だけで無く何処でもそうだと思うけど?」
サシャは、はっとした。カルムの言う通りだからだ。しかもこの主はサシャが嫌がれば嫌がる程それをしたがる性癖の持ち主だ。レーナを拒絶すればする程、本当に彼女を呼ぶかもしれない・・・サシャはカルムの心を量れなかったが・・・

(多分・・・どう答えても嫌な事しかされない)
それならと気持ちを決めた。
「レ、レーナは必要ない!ここの女達で十分だ!」
「レーナは良いの?」
「いい。だからそなたの好きなようにしろ」
「そう?レーナを呼んだ方がもっと愉しめそうだけど・・・」
サシャは固唾を呑んでカルムの続きの答えを待った。レーナを承諾してもじゃあ、と言って呼ぶかもしれないし、何でも無い態度を取れば面白く無いから呼ばないかもしれない。どちらに転ぶのか分からなければ自分の気持ちをハッキリ言った方が良いとサシャは思っ
た。
「・・・まぁ〜いいか」
カルムは少し残念そう言うと群がる女達にサシャを預け、自分は優雅に湯船に浸かった。
そしてあれこれと指示をした。女達は能力が弱くしかも湯煙でカルムが天眼を開いていることに気が付いていなかった。カルムはいつも視力が無いとは思えないような態度だから気にする者はいないのだ。
その指示はサシャの身体を泡だらけにするまでは良いとしてその後は、洗って貰うと言う感覚では無かった。女達は手を使う事無く自分の乳房をサシャに擦り付けて洗うのだ。

「や、やめ・・・ろ」
女達はサシャを取り囲み前後から交互に抱き付くように身体を上下しながら擦り付けていた。
そして硬く尖った彼女達の胸の先端はサシャの小さな胸を執拗に責め始めた。彼女の胸は小さくてもその先端の引っかかるものを狙って、クルクルと同じ頂きで円を描く。女達のもう既にコリコリと硬く尖ったものがカルムの愛撫で敏感になっているサシャのそれを刺激して見る間に、ツンと尖らせた。
しかも女達は段々と興に乗ったようで自分達のその淫らな行為に小さく喘ぎ出していた。
そしてそれでも刺激が足りない者は自分の乳房を揉みながら秘部をサシャの足に擦り付けたり、自ら花芯を弄くったりなど・・・自慰行為に及んでいた。

「どう?サシャ、気持ち良い?」
「よ、良くない!やっ・・・ん、あっ・・・」
蠢く女達が同性なのに別の生き物のようだった。気味が悪くて仕方が無かった。しかし眠りに落ちるまでカルムから散々弄くられた敏感な場所は触れられると、身体はビクッと反応し仰け反った。

「ふふふっ・・・可愛いですよ、サシャ。中々、良い眺めですね。でも、もう蜜を垂らしたら駄目ですよ。折角、綺麗に洗って貰っているのだからね」
カルムのまるで見ているような言動にふと、不審を抱いた女の一人が動きを止め、愉快そうな主を注視すると小さく短い悲鳴を上げた。カルムの天眼が開いているのを見つけてしまったのだ。
その瞬間、恐怖に凍りつくその様子にカルムは溜息をついた。

(やれやれ・・・全く不便なものだな・・・いっそ、ずっと開眼していようか?)
馬鹿な考えだとカルムは心の中で嗤って天眼を閉じた。
そんな事をしていたら水晶宮は皆が息を潜め物音一つしない恐怖の宮となるだろう。金眼の心眼はそれだけ影響力があるものだ。

カルムは湯船から立ち上がった。
「もう少し遊びたかったのですが時間がありません。私は先に出ます。彼女も早く出させてください」
女達はその指示に直ぐに散って、カルムの湯上りの世話とサシャの世話にと分散した。
カルムはさっさと上がって行ったが、サシャは泡だらけだったので洗い流され、暖を取るため湯船に浸けられた。熱いと思って覚悟して入ったサシャだったが意外にぬるい事に気が付いた。

「??熱くない・・・」
首まで浸かってないと肩を出しただけで、ヒヤリとするぐらいぬるま湯だった。

「カルム様のご指示で温度を下げております」
サシャの言い方が不服そうに聞こえたのか直ぐ近くに居た女が怒ったように言った。

「貴女様が熱い湯が苦手だと仰っておりましたが違うのですか?この国でこんなぬるい湯に入るなんてありえません!カルム様・・・早々に上がられてお風邪を召さなければ良いのですが・・・私達が温める時間は無さそうですし」
妻になったと聞いている筈のサシャに遠慮する事無く、遠まわしで自分達はカルムと肌を温め合うそういう仲だと言ったようなものだ。彼女達からすればサシャと言う存在自体信じられないものだった。
特定の者を今まで一度も作らなかったカルムがとうとう妻を持ったとしても驚きはしない。
しかし選んだ人物が余りにも期待外れで驚いてしまった。どう見てもカルムと釣り合わず、遥かに自分より劣る者を認めるような天眼の女はいない。当然だがカルムの手が付いた宮殿の女達は誰一人としてサシャを認めていなかった。
カルムの宮殿・・・水晶宮の離宮はイエランが女達を囲う後宮を作らないせいか、カルムが住まうこの離宮を裏後宮と揶揄されることがある。それくらいカルムと性的に関係した女や男が沢山身近にいると言うことだ。特に湯殿の係りは全員関係しているから風当たりは強い。
カルムが居なくなった途端、女達の態度が違っていた―――

しかし、サシャは気にしていなかった。

(私が直ぐにのぼせるから?)
「聞いているのですか?私達は――」
サシャが、ニコリと微笑んだ。

「湯に浸かる習慣が無かったからすまなかった。そなた達にも迷惑かけたな。寒かっただろう?申し訳なかった。カルム殿にも気を遣わせたことを謝っておく」
嫌味も意地悪も通じず、自分達の心配をして謝るサシャに女達は唖然とした。怒ったり泣いたりすればもっと虐めてやろうと思っていたが拍子抜けしてしまった。だからそれ以上何も言わず身支度を整え送り出したのだった。


 それからカルムと一緒に向かった先の彼の執務室に一歩入ったサシャは驚いた。
窓一つ無く床も壁もそして天井も鏡のようなものでびっしりと覆われていたのだ。その異様な部屋はまるで万華鏡のようだった。驚いて見上げる自分の顔が何個も映し出されている。

「なんだ?この部屋は?まさか此処がそなたの仕事場か?」
思わず訊いたサシャの声はそんなに大きく無かったが部屋中に響いた。
その音にびっくりしたサシャは口に手をあて周囲を見渡し、答えを求めるようにカルムを見上げた。
しかし機嫌がなおっていないカルムは答えずに中へと歩きだした。

その足音も異様に響く。慌てて付いて行くサシャの足音はもちろん両手についた、シャラシャラと鳴る腕輪の音も同様に響いた。足音は仕方がないとしても腕輪は外して懐にしまえば音が消えると思ったサシャがそれを外しにかかった。
その音を聞きつけたカルムは、クルリと振り向いた。

「外すな!」
その一喝は更に、ビリビリと振動となってこだました。

「わ、分かったから大きな声を出すな。耳が痛いし気味が悪い・・・」
サシャは落ち着かなく周りを見ながらなるべく小さな声でそっと言った。

「そんなに気味が悪い?この部屋は心眼を跳ね返す素材を張り巡らせているんだよ」
「心眼を?」
「そう・・・此処は水晶宮の中でも政の中枢部分にあたるからね。会議室も沢山ある。その中で重臣達は王へ裁可を仰ぐ前に皆それぞれ色々な意見を出し合って話し合う。賛同もあれば衝突することもあるけど・・・それらを口に出す前に王が全部知っていたらどう思う?」
「どんなって・・・口に出さなくても全部知られているのなら言うのは馬鹿らしいかも・・・」
「その通りだよ。全てを見透かされているなんて気分的にも嫌だろうけれど意欲を削いでしまうからね。討論することによって新たな意見が生まれるのだから不要には出来ない。私はイエランの兄であり王の腹心だからね。私が知るものは王に筒抜けだと皆は思うのが当たり前。だから私が一人の時、此処に居れば皆、安心するだろう。心眼で視られていないってね」
「・・・効果はあるのか?」
「普通の心眼はこれで防げる・・・ここだけの話だよ。私の場合、天眼を開けば全く無意味」
「そうなのか?」
「まぁ〜ったく効果無し!」
機嫌が良くなったのか愉快そうに答えるカルムにサシャは思わず吹き出してしまった。

「ぷっ、くくく・・・回りくどい言い訳をするんだな。これは他人への気配りでは無く自分用だろう?」
「何?」
「そなたは天眼を開いてなくても無意識のうちに他人の思考が流れ込んで来るのだろう?一人になりたい時でも関係なく・・・私の場合も天人達の声が聞こえていた時は何かと賑やかで正直困っていた。彼らは何処にでもいるし、私に関係ない会話でも耳に入っていたからな。その力は便利なものだろうがそれが難点なのだろうな。天眼を開いて無かったら少しはこれで防御出来るのではないか?だったら静かに仕事にも専念出来る。違うのか?」
サシャの言う通りだったがカルムはそれを認めたく無かった。周りへの気配りと配慮を怠らない王兄と言う評価が自分の為だけにしているとなれば聞こえが悪い。心眼を持つ者は精神的に図太いものが普通だ。だからそれを気にするとなればまるで小心者のような感じだ。
上手に真意を隠しているつもりがサシャにはいつも見抜かれてしまうことにカルムは苛立ちを感じた。

サシャがカルムの綺麗に整った顔が、すっと冷たく凍ったように感じた時は既に遅かった。
あっ、と声を出す間も無く喉元を掴まれ大きな執務机に押し倒されていた。

「お前は本当に私の神経を逆撫でするのが得意のようだ。そんな戯言よりこの部屋のもう一つの使い方を今から教えてあげよう」
カルムの声は大きく無かったが低く不気味に部屋中に響いた。そして机に仰け反っていたサシャを簡単にひっくり返すと下半身の衣服に手をかけた。

「な、何をする!まっ、待て!い、嫌だ!止めろ!」
サシャの制止を聞かないカルムは彼女の二部式になっていた服の下の部分を下着ごと引き摺り下してしまった。膝で止まったその衣服はサシャの足を拘束したようなもので自由が利かない。
もがいてもあらわになった尻を突き出し振っている状態だ。
しかも閉じられている花芯にカルムの燻っていた昂ぶりが捻じ込まれた。

「くっ・・・んっあ・・・っ・・・やめっ・・・」
「っ・・・流石に濡れて無いからきつい・・・サシャ、力を抜け。私が全部入ってから締め付けろ」
「か、勝手なこと・・・言う・・・なっ・・・ああっ――あああぁっ!」
 一気に力任せに貫かれたサシャは悲鳴を上げた。声が大響音で返って来た。そして断続的に漏れる喘ぎがこだまし、自分の声なのに違うように聞こえ耳を塞いだ。
「あっ、あ、あ、うっあ、・・・んんっ」
耳を塞いでも聞こえる声に堪らずサシャは口を塞いだ。

「ふっ・・・く・・・サシャ・・・声を抑えたらこの部屋でする意味が無いだろう。それに・・・」
カルムはサシャの髪を鷲づかみして顔を上げさせた。

「見えるだろう?自分の悦んでいる顔・・・」
「よ、悦んでなんか・・・な・・い・・・んっあ、あ・・・」
「じゃあ、私が出たり入ったりしているのが見えるだろう?どんな感じ?」
サシャは見たく無いのにカルムから頭を固定されて鏡に映る姿を強制的に見せられた。鏡はあらゆる角度からその様子を映し出していた。ぎゅっと目を瞑ったらカルムの手が伸びてサシャの目を覆った。

「目を瞑ったのか?駄目だ。そんなことするなら目をくり貫く」
サシャはまさかと思ったが瞼の上でカルムが爪を立てたので、ギクリとして目を開けた。
慌てて瞼を開いた様子が手のひらに伝わったカルムは、ニッと嗤った。

「そうそう、しっかり見て愉しんだらいい・・・と言いたいところだが・・・もう時間切れのようだね―――お入りなさい」
サシャは何?と思った時、執務室の扉が開いた音がした。

「サウル急ぎですか?」
入って来たのはリネアの元副官であり婚約者だったサウルだ。
彼はカルムを盲目的に崇拝する一人で、今はリネアの代わりに天眼軍をまとめさせている有能な部下の一人だ。盲目的な崇拝・・・カルムの部下達はほとんどそんな感じだろう。カルムは慕われるにしても自分が創った偽りの姿だけを見つめる彼らに気持ちを開く事は無かった。

サウルは驚いて入り口で立ち止まった。カルムの情事現場を見るのは珍しく無かったがこの執務室では初めての事だったのだ。
「サウル?」
「は、はい。急ぎではございませんが・・・」
言いよどむサウルにカルムは小さく溜息をついた。

「直ぐに終らせます。少し後を向いてお待ちなさい」
サウルはカルムから後を向けと言われたのは初めてだった。いつもは構わず続けながら用件を聞いていた。

(お相手は噂の元巫女姫か・・・)
サウルは、チラリと鏡に映るサシャを見ると彼女と鏡越しに目が合ってしまった。
サシャは信じられないと首を振った。
こんな事をしている最中に入室を許可するカルムが信じられなかった。戯れにも限度があるだろう。
カルムに抗議しようと思ったが激しい抽挿で声を噛み殺すのがやっとだった。
ガタガタと机が大きく揺れ動き、カルムがようやく達してサシャの中に熱いものが注がれた。
ぐったりとしたサシャから昂ぶりを抜き取ったカルムは彼女のずり下げていた衣服を引き上げ、自分の衣服も正して振り向いた。

「お待たせ致しました。それで用件は?」
はっとして振り向いたサウルには机にぶら下がるサシャの足だけしか見えなかった。カルムの背中が完全にサシャを隠していたのだ。しかし呆然としているサシャの紅潮した顔が鏡の方々に映し出されていた。それについつい目を走らせているサウルの心の動きにカルムは心眼で気が付いた。
サシャへの嫌がらせで入室させたカルムだったがサウルの反応に気分が悪くなってしまった。

「サシャ、何を呆けているのですか?早く机から降りなさい」
自分から引き倒して机に乗せたのに勝手な言い方だとサシャは腹が立ったが言われる通りにした。
そして乱れた衣服を急いで直しているとカルムから横抱きされた。そのカルムは執務机の横を通り椅子に座るとサシャを自分の膝の上に乗せたのだ。サシャも驚いたがサウルも驚いて目を見張っていた。

「それで、サウル?」
促すカルムはサシャの頭を撫でては髪をすくい弄び始めた。

「は、はい・・・その・・・」
「ああ、この子は気にしなくて良いですよ。続けて」
「はい。実はリネア様から急使が参りまして」
「リネアから?」
カルムのサシャを撫で回していた手が止まった。
猛牙国に嫁いだ妹リネアの急使―――その内容はいったい?



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