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天人の
囁き
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その恐怖を形にしたものがサシャの花芯に触れた。
それは熱くて硬いものだった。息を呑んだ時、それが中へと入りだした。
「やっ――!い、痛い!止めてっ――っ!」
「っ・・・駄目だ。止めない・・・くっ、力を抜くんだ」
「あ、あ、あ・・・やっ、・・・」
「ぐっ・・・」
カルムはサシャの腰を指が食い込むように強く掴むと根元まで一気に突き上げた。
熱く猛ったものがとうとうサシャの身体の真ん中に挿し込まれてしまった。
「っ・・・・・・・」
サシャは泣かなかった。巫女は涙を流してはいけないのだ。
巫女の涙は不吉とされ忌み嫌われるものだ。巫女の涙はその流した分だけ誰かを不幸にすると云われる・・・だからサシャは一度も涙を流したことはなかった。
カルムは彼女の頬に触れた。心が見えないから触れてみるしかない。
「へぇ〜泣かないとはね。初めてなのにね?意外と根性あるようだ。でも・・・これで終りじゃないよ」
サシャが驚いて目を見張った。
「くっ・・・締まった。ふふふっ、驚いたのかな?そう・・・これからが本番だよ。今から動くからね。行くよ・・・」
その宣言通りにカルムの腰が蠢き、力強い抽挿がサシャの身体を激しく揺らした。
肌と肌がぶつかり合う音。それだけ激しくカルムはサシャを突き上げた。
まるで盛る獣のようにカルムは熱く猛る己を彼女に何度も何度もぶつけたのだ。
本当にこんなに夢中になるのは久し振りだった。
しかし相手は初めてだからもうこの辺で・・・とも思わなくも無かったが今後の勉強の為だとカルムは自分に言い訳をしてみたが・・・止められないと言うのが本音だ。
それにこんなに責めているのに相手の反応が悪いのにも煽られた。苦悶する声ばかりで甘い喘ぎ声が聞こえないのだ。心が視えない以上、声で判断するしかないカルムはもどかしかった。
「まだまだ・・・これからだよ」
カルムは起き上がって座ると、自分を跨ぐようにサシャを後ろ向きに座らせ今度はその状態から深々と根元まで穿った。抱きかかえられるような体勢で激しく突き入れられる度にサシャはとうとう声にならない悲鳴を上げ続けた。
「どう?・・・ふっ、んん?気持ち良くなった?滑りも良くなったし・・・ねっ」
「ぶ、無礼・・・もの・・・気持ちなど・・・良くない・・・」
「嘘は良くないね、ほらっ・・・くっ・・・」
カルムは大きく腰を揺らした。
「あっ、くっ・・・ち、ちが・・・」
「ふふふっ、胸は小さいけれど君の肌・・・食べてしまいたいぐらい気持ちが良いね」
カルムはそう言ってベロリとサシャの首筋を舐めた。
「ひっ・・・」
「くくくっ・・・食べないよ。どちらかと言えば君に私が食べられているんだし・・・ほらっ、絡み付いて離れない感じだろう?」
サシャは現実に身体が震え出した。男の指差す場所に深々と挿し込まれたものがある。
そこには純潔の証である赤い血とは別にぬらぬらと光るものが混じって濡れていた。
「どうした?また怖くなった?大丈夫だよ。初めてでもいかせてあげるから・・・」
カルムは大丈夫だと言いながら嗜虐心が疼いて仕方が無かった。
本当にこんな気持ちになるのは初めてだ。恋人達を優しく抱く―――
これが今までカルムが崩したことのない態度だった。それなのに今日に限ってマミヤも酷く扱ったがこの幼年期を抜けたばかりのような娘を酷く扱いたくて仕方が無かった。
どんなに酷くしても泣かないのが気に入らないのかもしれないとカルムは思った。
「さあ、行くよ・・・」
カルムはサシャを押し潰すように上から覆いかぶさり激しく後ろから突き上げた。
それと同時に小さいと難癖をつけていた胸を両手で強く揉みあげた。
サシャはその刺激に大きく仰け反ったがそれは更にカルムの昂ぶりに快感を与えるような結果となった。サシャの中でその塊が大きくなり激しく蠢いた。
「ん・・・くッ・・・あッ・・・」
「苦しい?気持ちいい?泣いてごらん、そうしたら許してあげるよ」
サシャは首を振った。
(天の声はもう聞こえない・・・資格が無くなったとしてもそれだけは駄目・・・)
サシャは思った。この世はこんなに静かだったのだろうかと・・・うるさいまでに囁かれていた風の声に木々の声・・・それが今、見知らぬ男の声だけが聞こえるだけだった。
「どうした?急に大人しくなって・・・くっ・・・」
カルムはもう余裕が無くなっていた。自分の口調が変わっているのにも気が付かないぐらいだ。
サシャの胸から手を離したカルムは彼女の細い腰を掴むと勢い良く抜き挿しを始めた。それは段々と間隔が短くなり激しい突きへと変わった。
サシャはただ振り回される人形のようにガクガクと揺れていた。
その時、戸口で悲鳴があがった。
「キャ――!巫女姫様―――っ!」「何事です!まぁ――だ、誰か――っ!」
最初に悲鳴を上げた女はその場でガクガクと震え、後から来た中年の女は助けを呼びに行った。
直ぐに駆けつけたのは宿屋の女将だった。その女将が珍しく悲鳴を上げた。
「カルム様!何ということを・・・」
女将は全部言う必要は無かった。カルムが天眼を開いていたのだ。
女将以外の二人の女達は真っ青になって立ち尽くしてしまった。
サシャは初め二人が何に驚いているのか分からなかった。しかし彼女達の視線が自分では無く上に圧し掛かっている男に注がれているのに気が付いた。首を後ろに回してその視線を追うと・・・
整った美貌の額に金色の天眼が輝いているのを見付けた・・・
「・・・綺麗な眼・・・」
サシャは心からそう言うと思わずカルムの天眼に触れた。
(なっ・・・)
カルムは驚きに見えない瞳を見開いた。
心眼を持つ天眼を恐れられても綺麗だと言って触れる者は誰一人いなかった・・・
もちろん心眼だと分からなくても金眼を畏怖しない者などいないのだ。
それに天眼を開いた今なら今の今まで組み敷いていた娘の姿が見えた。見えると言っても視覚でとらえるほど鮮明ではない。それでも十分だった。どこをどう見ても身を持ち崩して身を売るような者には見えなかった。絹糸のような黒髪に縁取られた緑の瞳は知的で毅然として気高く、大人に成りきれていない身体は瑞々しい少年のような少女のような・・・どちらとも言えない不思議な清らかさがあった。
「―――天山の巫女姫・・・」
カルムはサシャの上から起き上がった。
爆ぜる寸前だったカルムの肉塊が彼女の中からずるりと抜けた・・・
それは吐き出す場所を求めて先端が大きく膨らんでヒクついている。それを恨めしく見たカルムは取り敢えず手元にあった室内着を軽く羽織った。そして自分が可笑しくて大声で嗤いそうだった。
天山の巫女なら心眼が通じないのも分かった。彼女達は特殊な能力を持ち独特な精神構造をしているからだ。特に巫女姫と呼ばれる天女候補なら尚更だろう。
しかも戒律の厳しい所だと聞いている・・・
だとしたら・・・カルムは面倒な事になったと思った。どちらかと言えば関わり合いたくない種類の者達だからだ。彼女達を信仰の対象として狂信的に敬う者も少なく無い。
「・・・すまない女将。部屋を間違えたようだ。しかも用意された女とばかり・・・」
カルムは本当にどうかしていた。いつもならこんな失敗をする事もないし、もっと慎重な筈だ。
カルムの言い訳を聞いた周りがようやく金眼の呪縛から解かれて我に返ったようだった。
金の天眼を持つものは天眼国の王族だと誰もが知っている。その貴人が用意された部屋を間違えて人違いで聖なる巫女を穢してしまったと言うのだ。これは大きな醜聞となるだろう。
「サシャ様・・・ご自分の立場はお分かりでございますよね?」
大げさに騒ぎ立てていた中年の女が口火を切った。
(この女・・・)
カルムはその女に暗く濁った邪な心を感じ、そしてその背景も鮮明に見えた。
「分かっている。穢された私に天人の声は聞こえない―――天山を降りる」
「サ、サシャ様!」
サシャに心酔している側仕えのレーナが叫んだ。
巫女姫ともなれば貴人並みに仕える者達が沢山いる。彼女はその中の一人だ。レーナはサシャに走り寄り床に落ちている夜着を拾うと何も身につけていない主に着せ付けた。彼女の手は怒りで震えていた。
(天眼の王族か何か知らないけれど私のサシャ様にこんな事をして!それも間違った、だなんて!)
レーナは大声を上げて泣きたかった。でも泣かない。巫女で無くても涙は不吉だという教えが身に染み付いているのだ。
(ははっ・・・怖いなぁ〜絞め殺されそうだ)
カルムはレーナの心を読むと嘆息した。彼女を取り巻く様々な思いをカルムの天眼がすり抜ける・・・
しかし肝心の巫女姫の心は霧に包まれたままだった。怒っているのか・・・それとも悲しんで絶望しているのか・・・全く分からなかった。
(天眼を開いていてこうも視えないと逆に嫌な気分だ・・・)
イエランも視え難いが肉親だから何と無く考えていることぐらい分かる。普通は心眼を持たなくても顔の表情だけでも心の動きは見えるものだ。しかしカルムにはその視力が無い。
天眼を開いた今ならそれを見るのも可能なのだが・・・彼女の思いは読み取れなかった。
「すまない、ウッラ。お前の母を癒せなくて・・・」
(心痛?)
カルムはサシャの言葉と僅かな声の抑揚を注意深く観察した。
逆にウッラと呼ばれる者の醜い心は手に取るように分かる―――
彼女は長年サシャに仕えているのにも関わらず、もう一人の天女候補ロヴィーサを密かに推している者のようだった。さしずめサシャ側にいる振りをして彼女を陥れる機会を狙っていたのだろう。
自分の母が大病を患っているから助けて欲しいと言って連れ出したようだった。
(長年仕えていると言ってもそんな個人的な用件を聞くなんて馬鹿か?)
カルムでも関係ない天山信仰は良く知っている。
聖地と呼ばれるその地は穏やかな気候だが高地で訪れるには大変な場所だった。それでも彼女達の救いを求める人々の列が切れることが無いと言われるくらいの盛況ぶりだ。
(他所のお家騒動に巻き込まれたと言う訳か・・・面倒だな・・・)
「はい、とても残念でございます。巫女の資格を無くされた貴女には仕方が無いことでございます。今度は次代の天女ロヴィーサ様にお願い致しますから」
「ウッラ!あなた、何て事を言うの!」
レーナは今まで仲間だと信じていた者の手のひらを返すような言葉に驚き憤った。
「レーナ、怒らなくていい。本当の事だ。ロヴィーサに頼むなら良かった。彼女ならきっとお前の母を治してくれるだろう」
サシャは本心から良かったと思って言葉にしたが、ウッラには嫌味に聞こえたようだった。だから怒って足音も高く部屋を出て行ったのだが・・・
去って行くその顔は笑っていた―――
サシャを襲うように用意した男達は怖気づいてしまい逃げ出してしまった。失敗したと思っていたところにこの事態・・・嬉しくて笑うしかないのだ。
(・・・醜悪だ・・・)
カルムは流れ込むウッラの心に吐き気がした。これはいつまで経っても慣れることのないものだ。天眼を開けば視たく無いものまで流れ込んでくる。
だからなるべく開かないようにしているのだが・・・
(・・・やっぱりこの娘の中は視えない・・・あの女の本心を知ったら動揺して何か視えるかな?)
カルムは、ふとそう思い口を開いた。
「今のウッラとか言う女・・・扉の向こうで小躍りしていますよ。嘘を言って連れ出した甲斐があったとか・・・痺れ薬を飲ませて男に襲わせる計画だったようですね。全てロヴィーサ?彼女の為だとか何とか・・・聖地と言われる天山も人の世と変わらないようですね」
カルムは極上の微笑みを浮かべながら心眼で視たものを語った。
「し、心眼!金の・・・」
レーナはウッラの卑劣な話に怒るよりもそれを語るカルムに驚き恐怖した。
言葉にしなければ分からない心の中が視えると言う心眼の話は誰もが知っている。天眼族ならば珍しくないもので気にしないが一般の者は恐怖にしか感じない。誰にも知られたく無い秘密は持っているのだから当然だろう・・・しかしサシャの反応は違っていた。
「ウッラの母は病気では無かったのか・・・それは良かった」
(何だって?)
サシャの言葉に驚いたカルムは見えない瞳を信じられないと言うように見開いた。
「良かったって?お前は自分が何されたのか分かっていてそう言うのか?馬鹿か?」
今度はサシャが大きく瞳を開いた。驚いたのでは無く怒ったようだ。
「馬鹿?誰に向かって馬鹿と言っている!私は十になる時には天殿の書全てを読破し教師陣にもう何も教える事は無いと言われたのだ!馬鹿では無い!」
「はぁあ〜知識の話をしているんじゃない!お前が裏切られた話をしているのに、のほほんとしているからだな――」
カルムが、ぎょっとして言葉を呑み込んでしまった。
サシャがまた金の天眼にそっと触れて来たからだ。それはもう怒っている素振りでは無かった。
「この眼が心の声を聞くのか?どんな風に聞こえる?天人達の声のようなのだろうか・・・」
サシャの声は羨ましそうだった。
(心眼を羨んでいる?)
「羨ましいのか?それもそうだろう。お前にこの力があればあんな女の謀なんかに乗せられなかっただろうし」
「どんな声?大きいのか?それとも囁くような感じか?」
「なっ!心眼の話をしているんじゃない!私はあの女の話をしているんだ!」
サシャとの会話が全然噛みあわないことにカルムは苛立ちを募らせた。
それを気にしないサシャだったが今度は全然違う話題を口にした。
「明日はいつ頃、発つ?」
「何時に此処を発とうが私がどこで何をしようとお前には関係ない」
「時間を聞いておかねば準備出来ない」
「準備?何を―――まさか・・・私に付いて来るとか・・・」
カルムは有り得ないと冗談だと笑い飛ばしたかったが・・・
「もちろん。契った者同士は夫婦にならなければならない」
「はっ・・・はは・・・契ったら夫婦だって?そんな事言っていたら私には何十人も妻がいるようになる。そんな馬鹿なこと今時しない。まあ・・・可哀想だとは思うけれどね・・・楽しませて貰った分の金をやるから好きな所に行ったらいい」
「お、お金ですって!サシャ様は商売女ではありません!」
心眼に恐れをなしていたレーナだったが崇拝するサシャを侮辱されて思わず叫んでしまった。
今にも手をあげそうな勢いの彼女にサシャが、そっと触れた。
「レーナ、もういい。よく分かった・・・迷惑をかけたな天眼のお方」
「・・・分かればいい」
突き放したような感じで後味が悪いカルムだったがこれで片付いたと思ったのだが・・・
「レーナ、お前は天山に帰るがいい。今までよく仕えてくれた、礼を言う・・・」
「サシャ様・・・私もご一緒に・・・」
レーナが涙を堪えて言ったがサシャは静かに駄目だと首を振った。
そのレーナの心がカルムに流れて来た。
「なっ!死ぬって!」
自ら命を絶つ?何故?