天人の囁き24



「サシャ、同情はいらないよ。それに私はもう・・・君に触れたくないんだ・・・」
カルムの拒絶にサシャは胸の奥が、ズキリと痛んだ。

(何だ?また胸が苦しい・・・どうしたんだ?)
サシャは痛む胸を押さえてみた。
その動作で腕輪が、シャラリと鳴りカルムの見えない視線が動いた。

「サシャ?」
「・・・私に飽きたのか?」
サシャの顔は今にも泣きそうな表情だったが声は努めて単調だった。
飽きたら捨てると公言され、それはサシャにとって重荷にならない楽なものだと思っていた。それが本当なら気兼ねなく天山に戻りやすい・・・それなのにサシャの心は何故か曇ってしまった。
彼女の表情を見ることが出来ないカルムはそれに気づかない。
それよりもサシャから飽きたのか?と聞かれ動揺していた。
自分の執着や欲望を抑えるのに必死で、サシャがそう考えることを失念していたのだ。そんな事は無いと否定すれば執着している感じに思われるかもしれないし、否定しなければしないでこれ幸いと去って行かれるかも・・・と暗い思考にはまってしまった。
公的な場ではいつも計算高く、失敗をすることの無いカルムはこんなことぐらいで・・・と自分自身呆れた。

「サシャ、飽きたとかそういう話では無く・・・約束を守りたいだけですよ」
サシャの頬が、ぴくりと動いた。
カルムが心を許していない者達に向ける表の口調で言ったのに反応した。
カルムは心を隠すのに一番適した顔を出しただけだったのだが・・・

「・・・分かった」
サシャは短くそういうと寝室の扉に向かい歩きながら手首に着けていた腕輪を、そっと外して扉を開けた。一度外に出てその腕輪を帯に挟み込み扉を閉める隙間から、するりと身体を滑り込ませ部屋に戻った。
天眼を開いてないカルムは音が無くなったサシャを察知出来ない。
天人の声をより良く聞く巫女の修行の一環として動作はもちろん足音を立てない訓練をされているサシャは自然に気配を消していた。サシャは空気の流れのようにカルムの顔が見える所まで近づくとベッドの直ぐ脇の床に座り込んだ。そして頭と肩の半分をベッドの脇に預けた。そうしてしまうとカルムの顔は見えないが近くに居ると言う感覚は感じられてサシャは安心だった。どうしてこんなことをしているのか?

(この人が心配なだけだ・・・)
サシャはそんな理由をつけてみたが自分自身納得していなかった。
愛情の類は持たないと固く心を閉ざしていても心配ごとは良くしていた。
でもそれを表に出すことは滅多に無かった。そんな態度を取ればその相手が自分に好意を抱いてしまう・・・差し障りのない小さなものはどうでも良いが、それが重なると無視出来ない存在へとなってしまう恐れがあるのだ。レーナがその例だ。感情を無くして心安らかに過ごしたいのにレーナ相手ではそれが上手く行かなかった。彼女が居るのが当たり前の世界になりつつあって、天眼国への道行も一緒になり心強く思ってしまった自分が情けなかった。
そんな自分を叱咤し、同じ過ちを繰り返さないと心に誓ったのに・・・今、こんなにカルムが気になって仕方が無い事に驚いていた。この感情はレーナとはまた違うものだと何となく感じている・・・でも何が違うのか良く分からなかった。

 まさか直ぐ近くにサシャが居るとは思わないカルムだったが何故か瞼が重くなって来た。夜になれば否応無しに流れ込む思考は鮮明さを増してカルムを悩ませる。
それらを遮断出来ないが快楽という名の薬物と、より近くに居る人物の思考だけに集中すれば夜は過ごし易いものとなり睡眠出来た。腕の中で眠る恋人を快楽で酔わせていれば煩わしい思考は麻痺しているようなものでより快適な状態と言う訳だった。
しかし・・・思えば・・・サシャの心は視えないのに彼女と寝ている時はいつもより熟睡していた・・・何故だろう?とカルムは思いながら意識が遠くなって来た。

(流石に・・・この体調なら何も考えられず・・・に眠れるのだ・・・ろう・・・)
深い眠りに入ったカルムは規則正しい呼吸をし出した。

(眠った?・・・のか?)
サシャは音を立てずに立ち上がるとカルムの顔を覗き込んだ。
溜息の出る美麗な顔は流石に疲労の影を濃く浮かばせていた。それでも美しさは損なわずいつまでも眺めていたいようなものだった。サシャは静かに膝を付いて床に沈み込むと、ベッドの端に両手を置い
てその上に自分の顔を乗せた。背の届かない窓枠にしがみついて顎を乗せて外を眺めているような感じだ。この体勢ならカルムの顔を無理なく眺めるには丁度良い角度だった。
そのまましばらく眺めていたサシャは何時の間にか寝入ってしまった・・・

 夜明け前、朝を告げる鳥達の甲高い鳴き声にカルムは眠りから覚めた。
熟睡していた事に驚きつつ、起き上がる為にベッドの端に向かって寝返りを打った。
すると指先に絹糸のようなものが触れ・・・

(髪?まさか・・・)
カルムは天眼を開いた。
指先に触れているのはベッドの端に頭を預けて、すやすやと眠るサシャの髪の毛先だった。手首に腕輪は無く帯に挟んでいる様子が視えた。それでサシャの気配が分からなかったのだ、とカルムは思ったが何時から此処に居たのだろうか?と思った。

「こんな恰好で眠って・・・風邪はひかなくても身体が痛むだろうに・・・」
サシャのこの行動は愛情では無く、只の気遣いだと分かっていても嬉しかった。
昏睡したイエランの傍に、ずっと付き添っていた美羽の姿を、ふと思い出していた。
イエランを心配する美羽は眩しい位の愛情に溢れていたものだ。
カルムはそれが少しだけ羨ましく感じていた事を思い出した。

 カルムはサシャの頭をそっと撫でた。温かなぬくもりが手に伝わって来る・・・
愛しい想いが胸いっぱいに広がったがその手を、グッと握り込んだ。

「ははっ・・・危ない、危ない。もう失敗は出来ないのにね。この無自覚に煽るサシャも困ったものだけど慣れないと。冷たくし過ぎても駄目だし、適度な関係を保持しなくては・・・ふふっ・・・大変だ」
大変だと言うカルムは微笑んでいた。サシャを視ているだけでも幸せな気分だからだ。思うように触れられないのなら何時でもサシャを見ることが出来るようにしたい・・・
その為には視力の回復が必須だとカルムは改めて思った。


 サシャは心地良い身体の揺れを感じ・・・
続いて柔らかな感触に、はっと目を覚ました。
そして、あっと驚きの声をあげてしまった。金眼を開いたカルムの美麗な顔が間近にあったからだ。そのため息が出るような顔が微笑みサシャは息を呑んでしまった。
今、自分の置かれている状況が把握出来ずに思考が止まっていた。
驚いて固まっていたサシャは自分の背中と寝具の間にあった腕が抜かれ、カルムによって自分がベッドに移動させられた事に気がついた。

サシャはカルムが起きる前に出て行こうと思っていたのに、ついつい寝込んで・・・
思いがけない事態にどう言い訳をしようかと口ごもってしまった。
出来たら朝から嫌味も癇癪も
受けたく無かった。
(でも・・・さっき微笑んでいた?)
驚いて一度外した視線を戻してみるとやはりカルムは微笑んでいた。

「おはよう、サシャ。こんなことするぐらいなら添い寝して貰えばよかったね。手足が痺れただろう?肌のぬくもりを感じて無いと駄目かと思っていたけれど意外と大丈夫だったみたいだ。思考が読めない君だからかな?やはり便利だ。ありがとう、サシャ、おかげで良く眠れたよ。今度から恋人がいない時は素直にお願いするから」
カルムの上機嫌な言葉を予想していなかったサシャは驚いてしまった。

「私は・・・役に立ったのか?」
カルムは微笑みを深くして頷いた。

「言っただろう。君は貴重だって。思考が読めない人物が近くに居ると私の心眼が休まるからね。目が疲れたら瞼を閉じると癒されるだろう?それと同じようなものさ。それに見事な妻役だったしね。本当なら昨日、ちゃんと説明していれば良かったけど・・・疲れていて余裕が無くてね・・・此処はリネアが嫁いでいると言っても正式な同盟を結んだ訳でも無いのだから油断出来ない。そんな所で弱みなんか見せられなかったんだ。でも思っていたより痛手だったからね・・・それこそあのもてなしを受けたものの勃たなかったら悲惨だっただろうね。笑い者どころかこれ幸いと寝首を掻かれる。妻として女を追い払った感じで穏便に済ませて良かったよ」
「そうか・・・視力が回復したとしてもその問題があったな・・・」
そう呟いたサシャにカルムは気付かない振りをした。
自分の視力が回復すればサシャが必要だと言っていたものが当然減ってしまう・・・
そうなれば借りを作りたがらないサシャはカルムの傍に居ることを苦に思うだろう。
彼女の常識の中で何の役にも立たないと思わせてはならないのだ。

(傍に居てくれるだけで良いなんて理解出来ないだろうね・・・まぁ・・・人の事言えないけどね・・・私こそそんなこと馬鹿にしていた部類だったし・・・)
サシャはカルムの目が治ればもう自分の必要性が少なくなり去りやすいと思っていた。しかし自分の特異性と妻役は視力に関係が無いものだ。
(私が巫女だったから心眼が効かないのだったな・・・私が特別なのでは無く・・・巫女なら・・・)
巫女なら誰でもカルムに安息を与えられるのだと察したサシャは胸がまた、ツキンと痛んだ。結婚を禁じられた巫女は妙齢になると一般人に戻りたがる者が毎年数人は居た。その中には相手が居なくても天山を下りる者もいる。厳しい修行と規律に耐えられない巫女
としての力も弱い者が大半を占めているという具合だが・・・
(この人が望めば・・・喜んで付いて来るかもしれない・・・)
溜息の出るような美貌と見かけとは違うしなやかで逞しい体躯・・・神に最も近いと云われる天眼族。身分も地位も申し分無く・・・サシャには良く分からないがリネアの言うように若い娘なら好きになる要素ばかり?

(で、でも、性格は悪く、ふ、不道徳者だ・・・だけど・・・)
サシャの胸がもっと苦しくなった。天山に行った時は自分の代わりを見つけたら良いと提案したかったが言葉が出なかった。扱い難い自分よりもっと素直で男女の交わりも抵抗なく出来る者も居るだろう・・・

「天山に本当に行くのか?」
サシャは胸苦しさに耐えながら、起き上がって身支度を始めたカルムの背中に問いかけた。
着ていた衣を脱いだカルムは均整の取れた裸体をサシャの目の前にさらしていた。
天眼国とは違う眩しい朝日はその見事な体躯を更に輝かせているようだった。雲の合間から射す天上の光のようなカルムの髪がふわりと広がった・・・彼が振り向いたのだ。
額に輝く金眼は強烈な朝日よりも眩しく・・・サシャは思わず呆然と見つめてしまった。

「失せ物を見つけたら今日中に向かうつもりだよ。この瞳は医術や転移治療で治しても完全には治らないと言われていた・・・天山は奇跡を起こせるのだろう?力が一番強い天女に治癒して貰う」
「天女様は何か月先まで予定が入っているから無駄だ。順番を待た――」
カルムが急に笑い出し、サシャは言葉を呑み込んだ。

「順番など積んだ金の差だろう?」
「お金?何のことだ?」
「天山の奇跡の裏では金が対価として払われる。有名な話だ」
「そんな事は無い!」
「じゃあ、巫女姫は貧しそうな者達も治癒した?」
「貧しそう?」
「そう、絹の衣では無く、継ぎ当てだらけのボロを来たような感じかな?」
サシャは言葉が出なかった。記憶を遡ってみるとそんな風体の者達を治癒したのはレーナ達兄妹にしか居ないからだ。

「・・・そんな・・・天山が・・・そのようなこと・・・」
「仕方が無いことだろうね。巫女でも人だろうし衣食は必要でそれは魔法のように何も無い場所から出る訳じゃない。何でも対価は必要だからね。対価が不要なもの・・・見返りを要求しないものは愛情くらいかな」
今まで馬鹿にしていた愛情という感情をカルムは実感している所だ。サシャの為なら何でもしたい気分だった。でも彼女に悟られる訳にはいかない。思わず出してしまった想いを誤魔化す為に傲慢な態度で霞ませることにした。

「それに天眼の王族であるこの私がわざわざ出向いてやるのだからもし少しでも待たされるような事でもあれば容赦しない。天山のようなちっぽけな集団など瞬きする間に消し去ってやる」
「駄目だ!そんな事させない!」
「させない?どうやって?私を動かす事が出来る条件は私より天眼の能力が上か、後は・・・まぁ・・・いい。冗談だよ、サシャ。でも大人しく順番を待つつもりは無いからお布施はたっぷりと積もう。さてと・・・見ていないで着替えを手伝って貰えるかな?まだ右手が使え無いからね」
サシャはカルムがまだ裸のままで会話していた事に気が付いて、カッと頬を赤く染めた。最近覚えた恥ずかしいと思う感情だ。カルムの裸は見慣れているのに今日は何故か動機が治まらなかった。だからなるべく視線を外しながら機会的にカルムの着替えを手伝った。それでもカルムの素肌に指が触れれば胸の鼓動が一気に跳ねる。

「お、終わったぞ・・・」
「ありがとう、サシャ。助かったよ。君も着替えたら?そう言えば・・・レーナは?」
天眼を開いているカルムにはレーナが近くに居ないと直ぐに分かる事だ。誤魔化したとしても遠視で直ぐに見つけるだろう・・・

「レーナは兄のユハに預けた」
「彼女の兄?どうして此処に?」
「師の伝言を持って来たが・・・帰って貰った」
「伝言?どんな?」
「それは・・・」
サシャは此処で言ってしまおうか?と思ったがまだ何も解決していないのに言えないと思った。

(瞳が治って・・・私の代わりを見つけてから話すべきだろう・・・)
それはサシャが思う後に引きずらない関係の終わり方だ。しかしカルムの質問はサシャを追い詰めるものだった。嘘は言いたく無いが今はその時では無い・・・言いよどんでいるとリネアが瞬間移動で飛び込んで来た。

「おはよう!カルム、良い朝ね。準備は良いかしら?」
「リネア・・・相変わらずだね。寝所に無断で押し掛けるのは止めて欲しいな」
「前はもちろん恋敵への意地悪だったのよ。今日はサガンの送り込んだ女を追い出そうと思っただけよ。あの馬鹿から朝聞いて飛んで来たんだから!失せ物探しは後回しで珍しい猛牙の女を気に入って寝所に籠られたら困るもの」
リネアはそう言いながら辺りを見渡した。

「いない??」
カルムが、クスクス笑っている。

「来なかったの?」
「私が断った。失せ物探しに支障が出ては困るだろうと思って・・・」
サシャは目のやり場に困りながら答えた。
急に現れたリネアの姿は裸同然のような薄い夜着。そして透けて見えるのは、ツンと固く尖った胸の頂きだった。それは朝からか・・・それとも夜通しだったのかわからないが性交の余韻を示しているものだ。同性でもその姿は強烈過ぎた。そして、

「リネア――っ!許さん!」
今度は扉を蹴り破ってサガンが恐ろしい形相で飛び込んで来た。

「あら?何しに来たの?私は貴方の方針に従って此処に来たのよ。貴方の女の中で一番の私が客をもてなすの。邪魔しないでくれるかしら?それとも・・・あの女が貴方の一番なの?」
「あれは親父の女だ!」
「女は共有していたとか言っていたわよね?」
「それは昔の話しだろうが!」
息巻くサガンにリネアがいきなり口づけした。

「ふふふっ、分かっているわよ。ちょっと腹が立っただけ。だって今王が一番気に入っていると噂の彼女に貴方が話しかけた訳でしょう?しかも夜・・・あそこの女達の恰好は凄いもの。その気が無い男もその気にさせての騒動は良く耳にするから・・・そんな女に貴方が話かけただけでも嫌だったのよ」
リネアの小さな嫉妬は怒っていたサガンを唸らせた。

「ぐううぅぅ・・・俺をそんなに喜ばせて何を企んでいるんだ!」
「まぁ〜企むなんて酷いわ。ねぇ、カルム」
リネアが、クスクス笑いながらカルムの腕に絡んで来た。

「リネア!そいつの目が見えないから良いと思うな!そんな恰好を男の前にさらすなと言っただろう!」
サシャが、え?と思いカルムを見ると天眼は閉じられていた。そう言えばリネアも気に
する様子が無かった。彼女が来た時に天眼は閉じていたのだろう。
(本当だ・・・リネア殿が言ったように他人の前では開かないのだな・・・)
サシャはリネアから金眼は滅多に開かないと聞いた。力が強すぎるので周りへの精神的な圧迫が大きく影響があるからだとも言っていた。天眼の王イエランもだが特にカルムは親族の前でも開かないと・・・その話を聞きながらサシャは不思議に思っていた。
カルムの天眼は見慣れたものだったからだ。でも思えば・・・周りの恐怖に似た驚いた様子ばかりだったような気がした。そうなれば尚更、何故?と思った。

サシャの出そうで出ない答え・・・それを考えている余裕が無かった。
騒ぎ立てるサガンがカルムからリネアを剥ぎ取っていた。
涼しい顔をしたカルムと唸るサガンはリネアを挟み一触即発だった。
しかしカルムが困ったような溜息をついて口を開いた。

「サガン殿、誠に申し訳ございません。リネアは昔からこうでして・・・男ばかりに囲まれていたせいか女性の恥じらいが無いのです。私も度々注意したのですが・・・」
「見られて恥ずかしいものじゃないもの!」
「やれやれ、これですからね」
「そういうものじゃ無いだろうがっ!リネア!犯って下さいと言わんばかりの恰好をして見逃す男はこの猛牙には居ない!」
サガンが逆毛を立てて目を剥き吠えた。

「私の方が強いもの。簡単に犯されたりしないわ。普通の女と違うのよ」
「うるさい!」
そう怒鳴っただけだったがサガンの隠さない感情がリネアの心眼に届いた。
それは強烈な独占欲だ。カルムと話すのは勿論、他の男達と話すことさえ気分を害するような感情。リネアを見る男達の何気ない視線さえも許せない心境・・・多分その視線に色欲が少しでも浮かんでいたら即刻、目を
くり抜かれるだろう。

同時に心を視たカルムが、クスリと笑った。

「リネア、今までのようにいかないよ。君に不埒な行動に出る命知らずは昔も今も居ないけれど一番の違いは君に特定の相手は居なかった。でも今は違う。周りの迷惑も考えなさい」
周りへの迷惑とはもちろん嫉妬に狂ったサガンの血を見る行動だ。
彼の嫉妬を感じる度に愛されていると実感して心浮き立っていたが確かに最近・・・
その仕掛けを増大しつつあった。怒れば怒る程、ギラギラと輝くサガンの瞳が見たかったのだ。リネアは上目づかいでサガンを見上げた。

「ごめんなさい。貴方の嫉妬が嬉しくて最近少しはしゃぎ過ぎていたわ・・・今日からもうしない・・・約束するわ」
滅多に見ないしおらしいリネアの姿はサガンの情欲に一気に火を付けた。
唸り声を上げリネアが纏う薄い夜着を剥ぎ取る手間を惜しみ引き裂いてしまった。
サガンにはもうカルムやサシャが近くに居るということを忘れ、リネアだけしか見えていない感じだ。獣のように襲い掛かるサガンをリネアはうっとりとした瞳で見つめ受け入れていた。

「やれやれ・・・朝から元気が良いね。サシャ、出よう。見たく無いだろう?」
サシャは部屋から出ようと言ったカルムに驚いていた。また無理やり見せられるだろうと思っていたからだ。
だから二人で寝室から出て思わず閉まる扉を振り向いて見てしまった。

「どうしたの?サシャ?」
サシャの立ち止まった様子を感じたカルムが尋ねた。

「・・・また、見ろと言われると思っていたから・・・」
「他人の行為も不快な君にもう無理強いしないよ。見せていたのはあの行為を慣れさせる為だった訳だし・・・今はもうその必要性は無いからね」
閉めた扉の中からリネアのすすり泣くような喘ぎ声が切れ切れに聞こえている。その漏れ聞こえる甘い声を耳にするだけでサシャの花芯が疼き熱く感じた。汚らわしいものとして見たくないものなのに身体が勝手に反応している。サシャは戸惑うしかなかった。
「ところでサシャ、天山からの伝言は何?」
心の準備がまだ出来ていないサシャはカルムの顔を見られなかった。
それに視線を感じるから天眼が開いているだろう。金眼を見れば動揺してしまうから尚更顔を上げられなかった。しかし黙っていてもいずれは話さなければならないのだ・・・サシャは覚悟を決めて口を開いた。

「我が師ドルイドの伝言だった。穢れを清める術があるから天山に戻るようにと・・・」
カルムは自分がこんなにも冷静でいられることに嗤いがでそうだった。多分、口元は笑みを刻んでいるだろう。今まで眼中になかった天山がサシャを奪うと言うのだ。
肉体の交わりを無いものにするなど馬鹿げた話だが浮き世離れしたサシャは、きっと信じているのだろう。しかも巫女姫として復帰出来るのなら万々歳だ。

「・・・だからレーナが大人しく帰って行ったと言う訳か・・・成る程ね・・・それで、君は私に別れを告げる為に残った・・・かな?」
サシャが、そうだ、と答えたらカルムの平静な顔は一気に崩れ堅牢に立て直した理性は吹き飛び自我崩壊のような精神派は猛牙国を恐怖に陥れるだろう。
視線をそらしつつ重い口を開いたサシ
ャの答えは・・・


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