天人の囁き26



 流れ込むサシャの心・・・

「すまない・・・本当に申し訳ない・・・」
「サ・・・サシャ・・・」
カルムは驚き過ぎて言葉が出なかった。

(白昼夢?願望が強すぎてこんな夢を見ているとか?)
「お願いだ!カルム。私の記憶を消してくれ!そなたへの想いは苦しい・・・苦しくて、苦しくて耐えられなくなる前に消してくれ!い、嫌!駄目だ!忘れたくない!違う!消してくれ!ああ、違う!そうじゃないっ!」
サシャは自分がどうしたいのか分からなくなって支離滅裂に叫んだ。

「・・・黙って・・・サシャ・・・」
大きく息を吐いたカルムから漏れた言葉にサシャは、ビクリとした。

(溜息?呆れられた?)
「す、すまない!そなたに迷惑をかけるつもりは無い!ただ傍に置いてくれるだけで良いし、邪魔はしない!それに湯殿の係りでも!閨でどう扱われても構わない!そなたの言う事は何でもするか――」
「少し・・・黙って・・・」
「カルム!私は・・・うううっ・・・んん」
カルムは堪り兼ねたように顔を歪め、サシャを抱き寄せ唇を重ねた。
性急な口づけはサシャを黙らせるには有効だった。口づけも全く慣れないサシャは驚いて口を開いたままの状態で、カルムが一方的に口の中をかき混ぜるだけだ。
蠢く舌はサシャの舌を絡め取り、強く吸い上げる・・・

「はっ・・・う、んん・・・」
合わせる角度を何度も変えられて唾液をすするカルムの口づけは巧で濃厚だ。
サシャは背筋が、ゾクゾクし息さえ出来なくなって頭が朦朧として来た。
だからふいに口づけが解かれた事に気が付かなかった。

「・・・サシャ・・・その時は殺してやる。一緒に死のう・・・君を一人になんかさせない・・・」
(え??何?)
耳元で囁かれた言葉はサシャの恐怖を回避する答えだった。何故そんな事を言ってくれるのか分からなかった。親切心なのか?何時もの気まぐれなのか?サシャは考えがまとまらず、クラクラする目の焦点を合わせると眩いカルムの微笑みが見えた。

「それに私は思いのほか強いのだから早々死なない。・・・くっ、違う!こんな事が言いたいんじゃない!何と言って良いのか分からない自分が情けない!ああ・・・サシャ、サシャ、サシャ・・・私の心を視せることが出来たのなら・・・ああ・・・サシャ・・・」
「ど、どうしたのだ?苦しいのか?」
急に胸をかきむしるような仕草をして、苦しそうに顔を歪めたカルムにサシャは驚き、心配したのだが・・・

カルムその彼女を再び掻き抱き口づけした。
何処かが繋がれば心が伝わるような気がしたのだ。イエランのように口下手でもないのに・・・愛を囁く言葉は軽口と同じく幾らでも並べる事が出来るのに・・・その一言が言えなかった。

激しい口づけを受けたサシャはよろめくと、そのままさっきまで座っていたソファーに押し倒された。真上からの口づけは更に深くなり、サシャは息苦しさに喘ぎ声が漏れ始めた。

「んっ・・・ふ・・・ふぁっ・・・あ・・・あ、うう・・・ん」
自分に触れないと約束したカルムのこの口づけの意味は何なのか?サシャの心に秘めた告白を受け、宣言通りに勝利したと思ったものなのか?それでカルムが飽きるまでの慰み者となったとしても良いとサシャは思った。

(だから好きにしていい・・・)
サシャは口づけで言葉を奪われているから自分の気持ちをカルムの天眼に触れて伝えた。
その瞬間、サシャの舌に絡んでいたカルムの舌が、ピタリと止まった。
そしてサシャの顔を覗き込むように口づけが解かれた。

カルムは頬を朱に染め、息を切らしているサシャを天眼で視た。
早く誤解を解かなくてはと思うのにやはり言葉が出なかった。

「・・・違うよ・・・サシャ・・・私は・・・・・・」
カルムは自分を見上げるサシャの視線を避け細い首筋に顔をうずめた。
そこでサシャの息を呑む様子がカルムの唇に伝わった。そして彼女は大きく胸を上下させた。息を吸い込んで止めた様だった。

サシャは目の前に広がる銀色の髪と首筋の柔らかい場所に触れるカルムの唇と息に呼吸が止まってしまった。しかも身体が覆いかぶさっているから触れる場所からカルムの熱を
感じて眩暈がしそうだった。
無言のカルムの左手が衣越しに脇から撫で上がって来た。

「!・・・っ、あ・・・ん」
探り当てられた小さな胸の頂きを衣ごと、キュッと抓まれた。それだけでサシャは声を漏らし足の指先に、ギュッと力が入った。

「い、今からするのか?」
サシャはこの行為は苦手だがカルムへの想いが、ハッキリした今はそれが嫌では無かった。只、自分がはしたなくカルムを欲していたのかもしれないと思うと、恥ずかしくなり否定的な言葉を発してしまったのだ。

固く身体を強張らせたサシャの反応が拒絶と感じたカルムは直ぐに手を止めた。
言葉で伝えられない分、行為で示そうと思った矢先だった。優しく抱いて、深く繋ぎ合わせれば伝わりそうな気がしていたのだ。

(全く・・・何をしているんだ?思いっ切り鈍いサシャに行動で示そうなんて・・・)
カルムは顔を上げ、サシャを真上から見下ろした。色彩が鮮明では無くても彼女の表情は良く分かる。早く治療してハッキリと見たいものだった。

(知的そうな緑の瞳の色と微妙な肌の色合い、黒髪も墨を流したような色では無く艶めいているだろう・・・)
「何を、ジッ、と視ているんだ?」
サシャの頬に朱が差した。そして、こぼれそうな大きな瞳を少し伏せたかと思うと、挑戦的に開いた。
カルムはこんなに愛しい生き物を見たことが無かった。小さな仕草だけで胸がいっぱいになる・・・その想いを力にして言い慣れない本心をカルムは言葉にした。

「サシャ・・・私も君が好きだ・・・これは気まぐれでも嘘でもない・・・愛している」
サシャは息を呑み大きく瞳を見開くと涙が溢れて来た。悲しく無いのに涙が出る意味が分からなかった。只々、胸がいっぱいで涙が溢れて来るのだ。

「な・・・なぜ・・涙が出る・・・んだ?どう・・・して・・・ご、誤解するな!悲しいんじゃないからな!」
嫌々と、首を振るサシャが愛おしくて堪らない。

「サシャ、嬉しくても涙が出るんだよ」
「そう・・・なのか?」
「そうだよ」
流れる涙を拭おうとせずにカルムを見上げたサシャの声は震えていた。

「確かに・・・私は嬉しいみたいだ。取り敢えず・・・今の所・・・そなたは私を好きだと――」
「サシャ!取り敢えずも!今の所も!無い!嘘つきの私が嘘じゃない、本気だ!と言って信じて貰えないかもしれない!でも私は本気だ!君に私の心が視せられたら良いのに・・・」
見えない目を悔しそうに閉じ、苦しそうに顔を歪めるカルムにサシャは、そっと指先を延ばした。そしてカルムの頬に触れ微笑んだ。

「私と同じだったのだな・・・言葉で心を表すのは難しい。私はそなたが心眼者で良かったが・・・私は違うから・・・すまない。信じるから、そんな顔をしないでくれ・・・私も悲しくなってしまう・・・」
カルムは自分の心眼を疎ましく思う事はあっても、心眼者で良かったと本当に思えた。この感動にも似た想いをサシャに伝えたかった。頬に触れるサシャの指先をカルムは、そっと大事なものでも包むように掴んだ。

「サシャ・・・ありがとう」
礼を呟いたカルムの形の良い唇が、掴まれたサシャの指先に下りて、そっと口づけした。
そしてその唇は手の甲に移り、美麗な顔がサシャの腕に口づけしながら下りて来た。
指先は何時の間にか絡め取られ身動きが出来ない。明日になったら動くと言っていたカルムの指はもう支障なく動いている様だった。何時もなら乱暴に引き裂かれていた衣服は優しく
がかかり、一つ一つ留め具を外しては、ゆっくりと脱がされて行く。
いつかカルムが言っていたことをサシャは、ふと思い出した。
衣服を脱がせるのも
前戯と呼ばれる性的な興奮を高めるものだと言っていた。確かに肌に触れるか触れない口づけされながら衣服を脱がされるのは、ドキドキして息が荒くなってしまう。これが興奮すると言う状態なのだろう。そんな事を考えている間にすっかり裸にされていた。カルムが身体を起こし自分の衣服を脱ごうと手にかけたのをぼんやりと見るとサシャは自然に手が伸びた。

「サシャ?」
サシャはカルムの手に自分の小さな手を重ね、そっと押しやった。
カルムの真似をして留め具を外した衣の中に手を差し入れると、肌の上で滑らせるように衣を脱がし始めた。慣れない手つきで肌を探ってはそこに口づけする。

「は・・・ぁふっ・・・サ・・・シャ・・・」
カルムの甘い吐息にサシャは、ハッととして顔を上げた。

「止めないで・・・サシャ。気持ちが良いから・・・もっと・・・舌を這わせて」
小さく、コクリと頷いたサシャはそれこそ何時の間にかカルムと上下が入れ替わっていた。今、ソファーに半身横たわっているのがカルムでサシャはその上に乗っている感じだった。カルムの胸元は安全に肌蹴て上着は片腕にだけ引っかかっている。カルムは細身だがそれは着痩せしているせいで裸になればしっかりと筋肉が張った逞しい体躯だ。
上半身
の弾力ある肌を撫でるだけでもサシャは手が震えた。
そしてその肌に口づけして移動する時は言われたように舌を這わせた。その行為はまるで自分がされているみたいに身体が熱くなって来て、じんわりと下半身が熱を持ち始めたのを感じた。
弄っていた手が固いものに当たった。まだ脱がしていない下半身だが・・・カルムの昂ぶりは既に衣服を持ち上げ屹立していた。サシャは恐る恐るその窮屈そうな衣に手をかけそれを解放してやった。グン、と勢いよく飛び出て来たそれは大きく上を向き揺れた。

「サシャ、触って・・・」
カルムに言われるまま手を伸ばしたサシャはその硬く反り上がったものを触った。

「ふっ・・・ぅ、くっ・・・」
カルムがまた甘い声を漏らすと、サシャは次に言われるより早くそれに口づけした。
チロチロと先を舐め、竿を伝って下がってまた上がる。そしてそれを咥えようとしたが思うように出来なかった。

「サシャ、唾液を口に溜めるんだ」
「こうか?」
サシャは唾液を溜めた口を開いてカルムに見せた。教えてもいないのに男心をそそるその仕草にカルムは困ってしまった。今直ぐ押し倒したい気持ちを抑えるのが大変だ。

「そう、サシャ。それを私のものに垂らして」
唾液が糸を引くようにカルムの膨らんだ頂きに落ちた。それが切れる前にサシャは自然と後を追うようにカルムの猛ったそれを咥えた。唾液に助けられて喉の奥まで飲み込んだサシャは拙いなりに舌を動かし顔を上下させた。口の中でカルムのそれが脈打ち、更に大きくなった。サシャの慣れない動きがカルムを否応無しに高めたのだ。

「く・・・っ・・・サシャ・・・もう・・・いいよ。もう十分だから・・・」
ビチャビチャと音を立ててカルムの昂ぶりを舐めていたサシャは口を離し、顔を上げた。

「すまない・・・上手く出来なくて・・・」
「違うよ、サシャ。君の口の中も魅力的だけど・・・達するのなら君の中でイキたいからねそれに私はもう十分だから今度は私が君を天の国にイカせてあげる・・・」
そう言ったカルムはサシャを自分の膝に座らせるような体勢を取った。
サシャはカルムの膝に抱えられたような恰好で後ろから小さな胸を掴まれた。掴めるだけ柔らかな肉がある小さな胸だがその少ない乳房をカルムは円を描くように揉み上げた。左右に動かせる程の肉の無い乳房だがその刺激で乳首だけ固く尖り出した。

「サシャ、もうこんなにコリコリだ・・・もげそうだね・・・」
「そんな風に、い・・・言う・・・な・・・あっ、あ、あ、ん・・・」
サシャのツンと尖った先端をカルムが肩越しに舐め始めた。もう一つの乳首は休む事無く捏ねられている。その違った愛撫はサシャを震わせるには十分だった。快感に、カタカタと小刻みに震えるサシャはもう花芯から蜜が滴っていた。自然とそこに自分の手が伸び触れる。そしてカルムの愛撫に合わせて指が動いていた。蜜を絡めながら敏感な部分を指で擦る・・・今までなら絶対にしない行為だ。それが今、教えられた訳でもなく自然と手が動いているのだ。色々なものから解き放たれた本能がそうさせたのだろう。

「あっ・・・んん、ふっ・・・んん、あ、あ、あんん・・・」
激しさを増すサシャの指をカルムが掴んだ。

「サシャ、自分で気持ち良くなったら駄目だよ。私が気持ち良くしてあげるから・・・いい?」
カルムはもう一度確認するかのようにサシャの顔を覗き込んだ。
そして顎を掴み、グイッと首を曲げられ深い口づけが下りてきた。舌が口内に入り込み先ほどのように激しいくサシャの舌を絡め取る。

「んっ、んん・・・うっ、ううう・・・んんっ」
サシャは自分の身体が少し浮いたように感じた。実際、カルムがサシャの腰に両手をかけ浮かせたのだ。そして・・・

「うっ・・・うううっっ・・・あ、あ、あぁ・・・ン」
浮いた腰はカルムの屹立していた肉塊の上に落されたのだ。サシャの重みで、一気に根本まで飲み込んでしまった。急に入った異物にサシャの身体は硬直しカルムのそれを締め付けた。

「くっ・・・サシャ・・・力を抜いて・・・つっ・・・」
しかしサシャはどうして良いのか分からずもっと締め付けてしまった。諦めたカルムはサシャの腰に手をかけた。

「動かすからね」
カルムの指に力が入り再びサシャの身体が浮いた。しかし猛った楔が抜け切る前に再び腰は落され更にカルムが腰を動かし打ち付けた。それが繰り返される内にサシャの四肢は緩みその動きに合わせ始めた。その律動に合わせて引っ切り無しに喘ぐ声が漏れる。

「あっ、あンっ、あ、あっ・・・んっ、ん、んん」
グチャグチャと粘着音が響き、それさえも興奮する。後ろから抱きかかえるように貫いていたカルムは体勢を変えサシャの上に覆いかぶさった。彼女の華奢な身体は二つ折りにされ、カルムの熱い楔で貫かれ続けていた。サシャに侵入しているカルムのものは彼女の身体が裂けそうなくらい大きくなり、抜き挿しするだけで悲鳴が上がる。

「サシャ、大丈夫?」
「うっ・・・あ、あん・・・だ、大丈・・・夫・・・だ・・・あんっ」
大丈夫と言いながら痙攣するように震える胸の尖りにカルムは口づけした。

「や、んっ・・・そこ・・・だ・・・め・・・あっ、んん」
再び、ギュッとカルムを締め付ける。

「くっ・・・ふっ、ふふっ・・・サシャ・・・君に食い千切られそうだ」
「す、すまない・・・でも・・・あっ・・・んん、そなたが・・・悪・・・い」
深く埋め込まれたそれが引き抜かれる度に仰け反りかえり、そして力強く突き上げられると悲鳴を上げる。その動きの間隔が短くなり突き上げられるだけとなった。
激しい動きにサシャの身体は、ガクガクと揺れた。
そしてカルムのくぐもった声が響きサシャの中に熱いものが放たれた。
ドクドクと注ぎ込まれるものがサシャの奥まで広がるのを感じ、カルムの昂ぶりも、ビクビクと痙攣しているのも感じた。サシャは今までにない気持ちを感じていた。気だるいけれどとても幸せな気分・・・好きな人と繋がっている充実感。穢れだと思っていた行為に後ろめたさを感じない。それよりも禊に似た神聖ささえ感じるのだ。

サシャは、ギュッとカルムに抱きついた。

「サシャ?どうしたの?」
サシャは無言で首を振るだけで更に、ギュッと抱きつくだけだった。

「サシャ、君は私を煽る天才だね。そんなに可愛くイヤ、イヤ、されたら堪らない・・・」
抜かずに余韻を楽しんでいたカルムの楔は再び硬度を増した。
前以上に凶暴な生き物となり、サシャは息を呑むと四肢に力を入れた。耐え難い異物に対する生理的な反応だった。しかし既に箍が外れかかったカルムは容赦しなかった。
サシャはそのカルムに与えられる刺激に反応を合わせ始めた。
圧迫され擦られ揺さぶられる動きに悦びの声が漏れる。
そして何度も何度も口づけを交わしながらひたすら喘ぎ声を上げた。もう限界だと思っても、全身が痙攣のように震えてもカルムにしがみついている。
まるで欲しい欲しいと言っているようだった。大きな動きで突き上げられて何が何だか分からなくなってしまう。何度も何度もカルムは爆ぜてもサシャを離さなかった。
場所を寝室に移し気絶するまでサシャを抱き、揺り起こしては再び抱いた―――



「ん・・・」

サシャは眩しさと何とも言えない気持ち良さに目を覚ました。
(え?外??)
今外にいるのだろうと言うのは分かった。空が見えるからだ。

(え?空??何故・・・)
空が見えると言うことは自分が上を向いているからだ。ぼうっとしていた意識が鮮明に
なってくると自分がカルムの腕の中にいる事が分かった。しかも二人共、裸だ。そして石鹸の良い香りが漂い・・・
「目が覚めた?でももう少しだから目を瞑って」
瞑る?と言われてサシャはようやく状況が分かった。場所はこの地方名物の露天風呂らしい。しかもカルムがサシャを仰向けに抱えて髪を洗っている最中だったのだ。
気持ちが良い筈だった。カルムの長い指がサシャの髪の中に差し込まれ、丁寧に洗っていた。背中と後ろ首はカルムの少し片膝を立てた脚で支えられ、身体は密着しているから腕の中にいる感じだった。もちろん身体も綺麗に清められている。

「さあ、終わったよ」
「わ・・・」
サシャは声出ずに口を、パクパクさせた。喉が貼り付いたように痛く声が出ないのだ。喘ぎ過ぎたせいか喉が、カラカラだ。カルムは微笑んで口移しで水を飲ませた。
急に流し込まれた水に、ゲホゲホとむせたサシャの背中をカルムが擦って、再び口移ししようとした。それをサシャは手で制して咳を鎮めた。

「もういい。大丈夫だ。私は眠っていたのか?まさかもう次の日になったとか?」
「君は何度も眠ったよ。まぁ・・・気を失ったと言う方が正しいかな。そして今は次の日じゃ無い」
「でも陽の傾きは・・・まさか・・・」
カルムは愉快そうに、クスクス笑った。

「私も猛牙のあの男の事をあれこれ言えないよ。まさかこんなことするなんてね・・・あれから丸二日経っている」
「ふ、二日だって!そんな馬鹿な!」
「私も正直驚いたよ。まさに飲まず、食わずの丸二日・・・自分でも信じられなかったよ。君が昏睡しなかったらどこまでやっていたか・・・」
「信じられない・・・」
「そう?私はまだやろうと思えば幾らでも出来るよ。続きをしようか?」
サシャは冗談じゃないと首を振った。しかし、その自分の意思表示に、ハッとした。

「あっ・・・違うからな!そなたを嫌っているのでも無いし、あれは苦手でも嫌と言っているのでは無いからな!」
サシャの必死の言訳にカルムは吹き出した。

「サシャ、そんなこと思って無いよ。そんな可愛いこと言ったら本当に続きをしてしまうよ」
カルムはそう言って、サシャの敏感になっている乳首を爪で弾いた。

「あ、んっ・・・」
サシャは、ビクビク身体を震わせその刺激に耐えているようだった。

「はぁ〜罪な子だ。本当に可愛いんだから・・・」
カルムは、ぼそりと呟き、再び擡げそうな欲望の塊を見て平常心を唱えた。それこそ何日でも籠ってサシャと過ごしたい所だが・・・それよりも早く視力を取り戻したかった。こんなにも何かを見たいと思った事は無い。天山の力で治らないのなら世界中にある全ての治療法を試すつもりのカルムは時間が惜しかった。

「サシャ、天山行きの準備は出来ているからね。後は私達の支度だけだよ。天山中が・・・巫女達が羨むくらい着飾って行くよ」
カルムはそう言って、ニッコリと微笑むと指を鳴らした。
その合図と共に召使達が、ワラワラと現れた。カルムが離宮より呼び寄せた者達だ。
だから天眼国風の盛装は慣れた手付きで瞬く間に着付けられた。
生地はこの地方に合わせた物だが豪華絢爛さはそのままだった。天眼国の盛装に使われる生地はとにかく凝ったものが多い。殆どを屋内で活動する民族柄、刺繍や織物が盛んだからだ。
そしてそれを
更に引き立てる宝飾品を上から下まで飾られてサシャは鏡を覗き込むと目が、チカチカした。
「・・・こんな恰好、私には似合わない」
「そんな事無いだろう。似合いそうなのを持って来させたのだから」
召使達がいるのでカルムは天眼を閉じていた。サシャは鏡越しに見えるカルムを見て溜息をついた。

「何?その溜息」
「そなたは似合っているな・・・と思って」
サシャがそう言って姿見から離れると、召使達の小さな悲鳴が聞こえた。カルムが天眼を開いたのだ。

「確かに少し飾り過ぎか・・・もっと上質なもので、すっきりまとめた方が良いだろうね」
カルムは自分の天眼に恐怖して動かなくなった召使達に代わってサシャを飾り直した。

「ほら出来た。これなら君の魅力が出るだろう。可愛いよ、サシャ。早くその姿を鮮明に見たいものだね」
カルムはサシャの後ろに立って姿見でその姿を見せると、腰をかがめ彼女の頬に接吻した。サシャは耳元で囁かれた褒め言葉にもだがその不意打ちに顔を、カッと赤くするとカルムが、クスクス笑った。

「さあ、行くよ。開路を天山頂上、天殿の正門前に開かせてある。さっさと行って今日中に天眼に戻ろう。そして思い存分続きをしよう」
最後の言葉は耳元で囁かれてサシャは真っ赤になった。
「カルム!またそんな・・・」

段々と人らしい、娘らしい普通の反応をするようになったサシャにカルムは微笑んだ。もっと、もっと色々と教えてやりたいし、見せてやりたいと思った。
とにかく今は天山へ
―――
巫女に戻るよりカルムを選んだサシャを本来なら同行する必要は無か
った。しかし彼女の名誉の為、カルムは連れて行く事にした。天眼国の王族へ輿入れしたサシャが巫女姫と同等、それ以上の栄誉と幸せを手に入れているというのを印象付けたかった。
もちろん、サシャも恩師へきちんと挨拶したいとの希望もあったのだが・・・

 その天山には結局先に到着したユハと恩師ドルイドが・・・サシャを取り戻すべく待ち構えていた―――


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