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天人の
囁き
31![]()
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「サシャ、呼んでも無駄ですよ。急所を刺されたのだから生きている可能性はありません。もう死んでいます・・・さあ、ユハ、おやりなさい」
カルムの生存が絶望的だと聞かされたサシャは頭の中が真っ白になった。
もう呼吸さえ出来ない・・・最後の呼吸の後にサシャは呟いた。
「やっぱり・・・そなたは嘘つきだ・・・」
サシャが、もうどうでも良いと四肢の力を抜いた時だった。
「サシャ、私はもう君に嘘は付かないよ。君を一人になんかさせないと約束しただろう」
サシャは震えながら声がした方向に顔を動かした。
涙で霞んでいたが其処には何時も溜息のでる煌々しいカルムの姿があった。額に金眼が輝き、全身が紅い血色に彩られたその姿は更に妖しく美しかった。
「お、お前・・・生きて・・・」
流石のドルイドもまさかカルムが生きていると思わず、驚愕していた。
カルムは涼やかに笑った。
「ば、馬鹿な・・・確かに急所を・・・」
「確かに・・・狙い所は間違っていない。己の力を過信していたのは認めよう。まさか私の思考を読まれるとは思わなかったのだから・・・」
「だったら何故・・・」
カルムが凍り付くような微笑を浮かべた。
「いい加減に、その汚らしい手をサシャから離せ」
カルムの高圧的な態度にドルイドは怒気を上らせた。
「こ、この神となる私に命令するのかっ!サシャは私のものだ!ユハ!奴に止めをさせ!」
ユハはサシャの下肢を放して短剣を抜いた。
刃を向けられたカルムは平然としたままで、サシャに向かって歩を進め始めた。
今にでも飛びかかるだろうと思ったユハは硬直したまま動かなかった。
「ユハ!何をしているのです!あれを殺しなさい!」
ユハが、ビクッと身体を震わせたが・・・直ぐその後にカルムが囁いた。
「ユハ・・・サシャに害をなすその男を払え・・・」
ビュンと空気が鳴った。
ユハが短剣を投げた先はドルイドだった。その飛んで来た短剣を間一髪叩き落としたドルイドは唖然としていた。しかも更にユハは大剣を抜いて構えた。
「なっ・・・何故・・・」
向けられた剣の前でドルイドが呟き信じられないと言うように小さく首を振っていると、カルムがサシャの枷を外しながら答えた。
「私の心眼は心の中を覗き視るだけじゃない。お前がその男や巫女達に暗示をかけて動かすように私は相手の精神に干渉して操る。それは暗示のような子供騙しのようなものでは無く完全に心を支配するものだ」
「まさか・・・」
カルムは瀕死の状態だったがドルイドの関心がサシャに移り、巫女達への暗示を解除した後、彼女達を支配し自分を治癒させたのだ。今はユハを支配して味方に付けている。
「ユハ、もうお前に用は無い。去れ」
ユハがサシャにした事を思えばこの場で切り刻みたかったカルムだったが、今は冷静さを欠く訳にはいかない。だから腸が煮えくり返るのを抑える為に目の前から去らせた。そして険しかった顔を瞬きする間も無くほころばせた。
「サシャ・・・怖い思いをさせてごめんね。もう大丈夫だから・・・」
「ほ、本当にカルムなのか?本当に生きているのか?」
「生きているよ。約束しただろう?私が死ぬ時は君も殺してあげるって・・・一人にはしない」
「・・・そなたは嘘つきだから・・・私は・・・カルム・・・」
サシャは色々言いたかったが胸が一杯になって堪らず涙を落した。赤く腫れた頬に涙が流れた。しゃくり上げながら泣き出したサシャを優しく抱き寄せたカルムの顔は激怒していた。
「・・・サシャを殴ったな・・・」
カルムの視力の無い瞳が細りドルイドを鋭く射抜いていた。そして誰もが恐怖する額の金眼が光り出した。
「それは私のものだ。どう扱おうと私の勝手だ!怒っているのか?ほう?この私に?世界の王!神となるこの私に!」
ドルイドは傲慢にそう言い放つと高笑いをした。
しかし、カルムは、クスリと嗤った。
「無能なもの程、吠える」
「何!」
カルムの言葉にドルイドは激怒すると本来の力を漲らせた。サシャを繋いでいた鎖や天井から下がっていた鎖が生き物のように蠢きはじめたのだ。その鎖は天上から千切れ落ち、ガチャガチャと音をたてながらカルムに襲い掛かった。それはまるで生きた蛇のようにカルムに絡みつき締め上げ始めた。古代人・・・天人の能力は様々だ。
ドルイドは攻撃的な種族だったのだろう。彼は天眼族の心眼に似た暗示以外に、念動力者のような力を使ったのだ。
「カルム!」
サシャは悲鳴を上げ、それを解こうと手を伸ばしたが鎖は、ビクともしなかった。
「あはははっ、心の無いものにはどうしようも無いだろう?せめて念動力ぐらい使える天眼だったら良かっただろうに!心眼では手も足も出まい!」
ドルイドが高笑いしながらカルムを見た。すると苦しんでいるだろうと思っていたカルムが薄く微笑んでいた・・・それはカルム独特の薄氷のような冷たい微笑・・・
「な・・・何故・・・微笑んで・・・」
「私は天眼の王座をかけて兄妹と争った。二人は念動力の持ち主・・・妹は先に敗退し弟と決戦に及んだ。三日三晩決着がつかなかったものの、最後は私の敗北となった―――妹も弟も私が操るまでの心眼は効かない。心眼が効かないのにどうやって戦うと思う?」
どうやって?それは直ぐに答えが出た。締め上げていた鎖をカルムは指一本動かす事無く粉々に砕いたのだ。
「なっ!念動力も使えるのか!」
「天眼族は皆、全ての神力を使える要素がある。その中の一部分だけが表に出て他は深層意識に眠っているだけだ。そして心眼者は自分の精神に干渉してその沈黙の眠りを覚醒させる事が出来る。もちろん、それは極一部の者だけで皆が皆そうでは無い・・・そして私はその稀有な一人・・・万能の力を持ち神に最も近いと云われる」
ドルイドはカルムの優れた心眼や遠視があっても、自分には心眼は効かないし遠視など役立たずだと侮り過ぎていた。天眼国の重臣達はもちろん、現王イエランとの王位を争った戦いを見た者はカルムのその力を十分知っている。山をも砕くイエランの力に匹敵する力をカルムは解放出来るのだ。ただ持久戦となればその力を持続出来ずにイエランに敗れただけだった。
ドルイドの力はイエランと比べれば足元にも及ばない程度のものだった。もちろんこの時代でなければ世界の王も狙えただろう。イエランにしてもカルムにしても歴代の天眼王族でも稀な能力者だ。だからドルイドは自ら神を名乗ろうと、彼らに比べれば只の不老長寿なだけだった。しかも念動力は身体にかなり負担が来るのだろう。ドルイドは急激に老化していた。
カルムの逆鱗に触れたドルイドの身体は宙に浮き、天上高く上げられると次は勢いよく床へ叩き落された。ただ落されただけで無く、目に見えない圧力をかけられたようで、ゴボッと多量の血を吐いた。それからまるで手毬が弾むように勢い良く、何度も何度も床に叩きつけた。ドルイドは逃れる術も無く最後には顔からも数度落された。
その衝撃で鼻は潰れ、指一本動かせず床に這いつくばる状態のドルイドの背中をカルムは踏みつけた。
「グ、ゴボッ・・・お・・おのれ・・・」
「おや?まだ喋れたのか?では言うが良い。身の程もわきまえず天眼の王族である私を怒らせた事を詫びるがいい」
「よ、よくも!こ、この、わ、わ私に!」
血溜まりの床から僅かに顔を上げたドルイドは怒りで震えていた。
唯一肉体を持つ天人は自分こそが最も優れていると自負していたのだ。それが手も足も出せず足蹴にされるとは思ってもいなかったことだった。ドルイドこそ天眼の力を甘く見過ぎていた。しかし、ドルイドには奥の手があった。それこそ不老だからこそ時間をかけるのを厭わなかったもの・・・
「サシャ・・・その男を殺せ・・・」
その声は小さな、小さな呟きだった・・・
それにその声には聞きなれない妙な響きがあった。
サシャは何時の間にかユハが投げて叩き落されていた短剣を両手で握っていた―――
「やれ!」
ドルイドの声と同時にサシャは、ドン、とカルムの背中にぶつかっていた。カルムの腰の辺りに鋭い痛みが走った・・・サシャが体当たりで短剣を突き立てたのだ。
「この間抜け!もっと右だ!もっと右側を刺せ!」
ドルイドの指示にサシャは短剣を抜いたが・・・手は止まった。
カルムが振り向いたのだ。
「サシャ・・・」
カルムは優しくサシャの名を呼んだ。ユハの暗示はカルムの力が上回り無害だったが、サシャには心眼が効かない・・・だから幼い頃から時間をかけて下地を作っていたドルイドの暗示が勝ったのだろう。しかし、手が止まったのはサシャの強い意志だった。
「何をしている!殺せ!殺せ!」
「うううっ・・・う・・・くっ・・・」
サシャの手は震えて逆らおうとしているようだった。しかし逆らえば神経という神経に引き裂かれるような痛みが走っていた。術者に逆らえない・・・そんな呪縛が仕掛けられていた。意識のある状態で内臓を抉られているような感覚・・・経験した事の無い痛みに発狂しそうだった。
「・・・い、いや・・・だ・・めだ・・・くっ、うう」
「逆らえばお前が狂い死ぬだけだ!そいつを殺せ!」
カルムの怒りは頂点に達した。怒鳴るドルイドの首を一瞥もせずに鉄の鎖で巻き上げた。
「グゲ・・・ググッ・・・」
喉が潰れる音がした。続いて首の骨が折れる音がして・・・ドルイドの目が血色に染まり、カッと見開いた。そしてもう発声出来なかったが、カルムの心眼に呪いのような言葉を送って来た。
『・・私が・・・死んでも・・・この呪縛・・は消え・・・ない・・・サシャも道連れだ・・・』
カルムは見えない双眸を眇め、不気味な笑みを浮かべるドルイドを睥睨した。
「そんな事はさせない。お前は独りで去れ」
カルムは自分が声に出したのか?心眼で答えたのか?激怒し過ぎて分からなかった。
ドルイドは嗤ったようだったが、カルムの最後の放った一撃で息絶えた。神代から人々の影に隠れ、生き長らえていたドルイドの野望はついに終止符をうったのだ。
しかし・・・その呪いの言葉通りにドルイドの息が絶えてもサシャは苦しんでいた。
短剣を握りしめて震える手にカルムは優しく触れると両手で、そっと包み込んだ。
「サシャ・・・我慢しなくていい・・・早く私を刺して。ほら・・・ここだよ・・・」
カルムの手は自分の急所の場所まで誘導した。既にその短剣はカルムの血で染まっていた。もちろんそれを持つサシャの手も赤く染まっていたが指先は白く冷たかった。
サシャは小さく呻き声を上げながら嫌だと言うように小さく首を振っていた。
「サシャ、刺して」
「い、い・・・や・・・」
「サシャ・・・」
カルムは愛おしさに堪らず、血が滲むサシャのきつく結んだ唇に、そっと啄むような口づけを落し微笑んだ。
それと同時にサシャが悲鳴を上げた。そして彼女は縫い付けられたように離れなかった短剣を落して広げた両手を見た。それから、ゆっくりとカルムの身体が崩れるのが見えた・・・右脇腹から新たな血が溢れていた・・・カルムが自らサシャの刃を受けたのだ。
「カルム―――っ!どうして・・・こんな・・・」
「サシャ・・・もう・・苦し・・くない?」
「苦しくなんかない!どうしてこんな事をするんだ!」
サシャは自分の片袖を破ってカルムの傷口に当てたが、ドクドクと血が流れ彼女の手を真っ赤に染めていた。
「血・・・止まらない」
「・・・サシャ・・・大・・好きだよ・・・あ・・い、愛して・・・る」
カルムが喋ろうと息を吸い込むと血が溢れた。
「サシャ・・・す・・・」
「カルム!黙れ!血が止まらないんだ!」
「・・・サシャ・・・愛し・・・て・・・」
「カルム!だから黙って!・・・カルム?カルム?」
微笑んでいたカルムの唇が真っ青になっていた。
サシャはカルムの胸に耳を当てると鼓動が弱弱しく今にも止まりそうだった。
「カルム・・・駄目・・・約束が違う・・・カルム―――っ!駄目だ―――っ!」
サシャは助けを呼びに行こうと思ったが今にも死にそうなカルムを置いて行けなかった。
「そうだ・・・私が・・・私が・・・」
巫女の力は失ったのでは無く暗示で使えなくなっているとドルイドが言っていた。
その暗示をかけた張本人は死んだのに力は戻っていなかった。それも最後の呪縛と共に解けないものに変化しているようだった。しかし、サシャは叫んだ。
「天人!私の声を聞いて!私に声を聞かせて!私の!私の大事な人を助けて!お願い!天人!お願い・・・お願いだから・・・私のカルムを助けて・・・お願い・・・」
泣き崩れるサシャに初めは小さな囁きが聞こえた。そしてそれが次第に聞き取れる言葉となって聞こえ出した。
「天人?」
サシャは涙を拭いて耳を澄ませると、聞き慣れた天人達の声が口々に謝っていたのだ。
『サシャ、ごめんね』『ごめん、サシャ』『大丈夫?』
「あっ・・・聞こえる・・・私・・・あなた達の声が聞こえる!ああ・・・良かった・・・天人!お願い!カルムを助けて!」
サシャの両手が光った。誰にも見えない天人だが、もしも見える者が居たなら驚くだろう。サシャとカルムの周りには競い合うように力を与える天人達が幾重にも取り囲んでいたのだ。サシャの為に惜しみなく力を注ぐ天人達・・・彼らは現世から隔絶された存在。大いなる力を持っていてもそれを使えなければ意味の無いものだった。
天人にも色々な種族があった。ドルイドのような同族食いは忌み嫌われた者だったが彼らが逆らえなかったのは確かだった。天人達の現世に対する未練をドルイドから上手く利用され、利用されていると思っても忌み嫌った者でも現世への唯一の窓口に逆らえなかったのだ。
しかし今はどうすることも出来なかったドルイドが絶命し、やっと本当の自由を手に入れた天人達だったが肝心のサシャに声が届かなかった。声が届かなければ力を授ける事も出来ないのだ。多くの天人が集まりサシャを呼んでいた。そしてサシャのカルムを助けたいと思う強い心がドルイドの呪縛を破ってくれた。
ドルイドに目を付けられていたサシャに天人達は同情し可愛がっていた。そして誰よりも鮮明に自分達の声を聞き、会話出来るサシャを助けたいと何時も思っていたのだ。
サシャはカルムの傷がどんどん塞がって行くのを感じた。そして青ざめた頬に赤みが差し始めたのを見ると、閉じてしまった天眼はそのままだったが両目の瞼が、ピクリと動きうっすらと開いた。長い睫から覗く瞳の色は月夜の空の色・・・濃く深い青。
その瞳が微笑んだような光を浮かべた。
「サシャ、すっかり泣き虫になったね。でもしっとりと濡れた君の瞳は天眼の地では貴重な新緑の色だ。若葉のつややかなみどり・・・思っていたよりずっと綺麗な色だね・・・」
「カルム・・・」
サシャは驚いてカルムの顔を見た。天眼は開いていない・・・
「カ・・カルム・・・私が・・・私が見えるのか?」
カルムは極上の微笑みを浮かべた。
「久しぶりにこの瞳に映ったものが一番見たかったもので良かった。さあ、もっと良く顔を見せて、サシャ」
サシャは泣き虫だとまた言われても構わなかった。
半身起き上がり始めたカルムの首に抱きつき号泣した。しがみ付いたまま離れないサシャにカルムが手を伸ばしかけたところに・・・
「あ、あの・・・サシャ様・・・」
レーナが現れ・・・カルムは小さくため息をついて呟いた。
「本当にこの娘はいつも良いところで邪魔をする天才だね」
「あ、あの・・・」
ビクビクしながらレーナは近づき始めた。
彼女はサシャの部屋の準備を終えて待っていたが、その後の記憶が無かった。ふと正気に戻ると天殿の様子がおかしく・・・そして兄のユハに会ったのだった。ユハも周りの巫女達と同じく錯乱状態だったが何とかサシャの居場所を訊き出し駆けつけた所だ。
公開処刑場に居ると訊いただけで恐怖に足が震えた。しかしレーナはカルムが絶対に助けているという根拠の無い自信があった。そしてそれは的中したのだ。しかし今まで一度も見たことの無いサシャの泣きじゃくる姿に戸惑っていた。
「サ、サシャ様・・・あの・・・」
「サシャ、レーナが心配しているよ。さあ、もう泣きやんで」
カルムはサシャの耳元で囁くと、つむじに口づけを落とした。それから何度も優しく宥める言葉を囁いた。レーナはカルムの明らかに今までとは違うサシャへの態度に驚いてしまった。そして泣きやみ始めたサシャが、ようやくカルムから顔をあげた。
レーナはそのサシャの顔を見て愕然としてしまった。ほんの数日前に別れた時と雰囲気が違っていたからだ。泣いて腫れた目元の変化では無く、何時もの何処か掴みどころの無い飄々とした・・・悪く言えば無機質な感じが全くしないのだ。どう表現したら良いのか分からないが・・・とにかく匂い立つような色を感じた。それはまるで少女から大人の女性へと変化する兆しのようなものだった。
そのサシャが口を開きかけた時、レーナは慌てて自分が先に言葉を発した。
「サシャ様!巫女様達が大変です!錯乱状態の後、バタバタとお倒れになって天殿は大騒ぎです!」
「え?」
サシャが反応を示すとカルムがその答えを教えてくれた。
「術者が死ねばある程度の暗示は解ける。特に奴は精神干渉のようなものを施していたのだから当然だろうね。操り糸の切れた人形のようになる」
「操り人形・・・それで皆は大丈夫なのか?」
「人形と言っただろう?人形には意思が無い。そんな状態の者は一生人形のままだね。精神が脆くて干渉を重度に受けていた結果だろうからね。君は無事で良かったよ。無事じゃなくても助けるけどね」
カルムはそう言って軽やかに笑うとサシャの目元に口付けを落した。
そして顔を離しかけたカルムの頬にかかる髪をサシャが、グイッと引いた。再び接近するサシャの顔にカルムは珍しく、ドキリとした。天眼で視ても感じられなかった彼女の吸い込まれそうな澄んだ瞳に胸が高鳴ったのだ。
「カルム、今、私なら助けると言った。皆を助けられるのか?」
「・・・私達には関係無いことだろう?」
「助けられるのか、どうかと聞いているんだ!」
カルムはもうこれ以上、此処のいざこざに関わり合いたく無かった。自分に関係もなく、興味の無いどうでも良いことに労力を使いたく無いのだ。こんなカルムは本当に冷たいものだ。美羽がカルムは優しいと評しても、イエランが認めないのはこんな兄を良く知っているからだ。損得抜きで優しいのは兄妹だけで、それ以外の利用価値の無い者へは徹底した冷たさだった。
だからこの場にイエランが居たら驚いたかも知れない。カルムは・・・