天人の囁き32



カルムは溜息をついて、サシャの頬に軽く口づけした。先ほどからもう何度、サシャにこんな口づけの雨を降らしているのか数えられない。
「助けられるよ、サシャ。それが君の願いならね」
サシャの瞳が輝くと、カルムも微笑んだ。

「本当に綺麗な瞳だね。そんなに喜んで輝かせるのなら何でもしてあげたくなるよ」
今度は、すっと唇をかすめるような口づけをしたカルムは困ったような顔をした。

「サシャ、口づけしたいのだけど・・・目を閉じてくれない?・・・綺麗な瞳でもこればかりは凝視されているとし難いんだよね」
「そうなのか?分かった」
思えばサシャは口づけの時でも、しっかり目を開けていた。カルムも今まで気にしていなかったが、視力が戻るとやはり感覚が違っているようだった。

しかし、サシャは逆にカルムを見ていたかった。溜息の出るような美しい顔が近付けば近付く程感動するのだ。特に怒っていた時のカルムは壮絶な美しさだった。
サシャは目を閉じたが、カルムが近付くのを感じると薄らと目を開けた。
それだけで終われば良かったのに・・・結局、しっかりと目を開けた。

「サ〜シャ」
カルムの非難染みた声に、サシャは慌てて目を閉じかけたがその前に唇が重ねられた。しかし周りにいる天人達に囃し立てられたサシャは、再び目を開けると顔を逸らし、カルムの口づけを拒んだ。

「サシャ?」
「だ、駄目だ!天人達が・・・彼らが、み、見ている!」
「はぁ?」
カルムの魅力に流されそうになっていたサシャは自分を取り戻したようだった。

(い、幾ら好きでもレーナも居て天人達が沢山いるこんな場所で・・・あ、あんな事、出来ない!)
サシャはカルムの濃厚な口づけを思い出すと顔を赤らめた。

何時ものカルムならそんな理由の拒絶は許さない所だが、今はサシャのする事なら何でも許してやれる感じだった。

「じゃあ後でね」
「う、うん・・・」
後も怖いような気がしたサシャだったが今はとにかく事態を収拾するのが先だと立ち上がった。しかし、カルムから色々と準備が必要だからそれを手配する間、身支度を整えようと言われた。

「そんな事を優雅にしている気分じゃない!」
「サシャ、私はこんな格好のままで居るのなんて我慢出来ないんだよ。苛々して助けられるのも助けられないかも知れないよ。良いの?」
何時も身綺麗にしているカルムが今は血みどろで着崩れしていた。普段はいい加減そうに見えるカルムだが、身だしなみは意外と表の顔の時の性格のように几帳面だった事をサシャは思い出した。この状況で我儘を言うカルムにも困ったものだが、今はそれに反発は出来ない。

「よ、良く無いに決まっている!」
「じゃあ、決まりだね」
「此処は・・・ふ、風呂なんか無いぞ!」
カルムが、クスリと笑った。

「サ〜シャ。何を想像したのかな?」
「な、何も!何も想像なんかしていない!変な言い掛かりを付けるなっ!」
「言い掛かりねぇ〜まぁ、期待して貰って悪いけれど、どうせ楽しむのなら帰ってから、ゆっくりと思い存分宮の湯殿でするよ。それまで少し待っていてね」
サシャは真っ赤に顔を染めた。

「だ、誰が・・・期待なんか・・・き、期待などしていない!それに湯殿ではしない!」
カルムは、ハイハイと返事しながらレーナを急かして移動し、自分達の身支度を整えさせたのだった。

サシャの言ったように風呂は無くても清水が湧き出る禊場で汚れを洗い流し真新しい衣服に着替えたカルムは水晶宮からの使者を待っていた。既に用件は心眼で飛ばしている。瞬時に路を繋げる弟ラーシュによって天眼国と天山は繋がる手筈だ。
その横には同じく着替えたサシャがカルムの様子を、チラチラと見ていた。
それに気が付いたカルムが顔を上げサシャを見た。

「どうしたの?サシャ、心配?でも大丈夫だよ」
「あ、すまない。今は見えるのだったな・・・いつもそなたに気が付かれないように見ていた癖が抜けないだけで・・・意味は無い」
「はぁ?私を?」
「そうだ。そなたは綺麗だから見るのが好きなんだ。一番好きなのはやっぱり天眼を開いている時だけど・・・その時は怒っている事が多かったから今度は笑顔で見たいな」
カルムは少し驚いてそして微笑んだ。

「本当に君は変わっているよ。私の天眼をそんなに愛でてくれる。確かに開眼する時は力を使う時だから楽しい状況では無いしね。無意識でする時は感情的に激昂する場合だし・・・笑顔は先ず無いな。それに私達のような金眼は殆ど開かないから・・・」
力の強い金眼の天眼はその開眼だけでも周りにかなり精神的な衝撃を与えると、サシャも後で知った。それまで何度もカルムの金眼を見ていたから特別なものと思っていなかった・・・
カルムが、クスリと笑った。

「でもね・・・私は君から目が離せなかったから、ついつい開いてしまって・・・天眼を開けば視えると言ってもそんな状況は水晶宮で頻繁に出来るものでも無いし・・・そしてとうとう治すつりなんか全く無かった視力を治療しようと思い立ってしまったしね」
「え?治療は気まぐれじゃ・・・」
「違うよ。最初、瞳を開いた時に言っただろう?一番見たかったものが見られて良かったって・・・サシャ、君を何時でも何処でもずっと見たいけれど天眼で視るのには限界があるから治そうと思った訳」
「そんな理由で・・・」
「そう、そんな理由」
「うむ・・・選択は間違っていない。確かに天眼を何時も開いていては周りよりもそなた自身が疲れるだろうからな。成程・・・」
カルムは呆れて笑い出した。

「選択に成程って?サシャ、私は君への熱烈な想いを告白したのだけど?私の為に?嬉しい!≠ニか、言って欲しかったなぁ〜」
「え?そ、そうなのか?す、すまない」
「まぁ・・・いいけどね。君らしいから」
カルムがまた、クスクス笑っていると空間が歪み出した。開路が繋がったようだった。
そしてその開路から現れたのは不機嫌な顔をしたイエランだった。

「おや?イエラン、君が来たの?」
「何だ!その言い草は!私が来るしか無いだろうが!」
イエランは苛々と怒鳴ると何かをカルムに向かって投げた。
それをカルムは笑って受け取り目の高さに掲げた。煌めくそれは天眼の神の遺産、天晶眼だった。

「ありがとう、イエラン。助かったよ」
カルムは天晶眼を届けて欲しいとイエランに依頼したようだった。天晶眼は天眼の王だけしか入れない場所にあり、王のみそれを持ち出す事が出来るものだ。天眼の力を増幅する事が出来るこの秘宝は滅多に使われる事は無かった。それを持って来いと連絡が来れば何事かと誰でも思うだろう。ましてそんな大事なものを誰かに預ける訳にも行かず、イエ
ランが持参したのだった。
「何故使う?」
「用途は伝えただろう?」
「だから何故、そんなことをするのだと聞いている!」
「もちろん、サシャの願いだからだよ」
イエランの登場に驚いていたサシャだったが天眼の王の視線を受けて顔を引き締めた。

「願い?益にもならない他の有事に関わる必要は無い」
「益ねぇ〜じゃあ、この天山を我が国が支配すれば問題無い?巫女達の力を試してみたけれど意外と良いし、信者は世界中にいるから何かと使える。今なら簡単に隷属出来ると思うけど?」
カルムのその言葉にサシャは驚きの声を上げた。

「カルム!そん――」
カルムはサシャに最後まで言わせなかった。彼女を優しく抱き寄せうなじに口付けた。

「しないよ、サシャ。そんな事、君が望まないって分かっているからね。例え、イエランが、そうしろって言ってもしないし、するって言うなら阻止してやるよ」
王の命令に従わないし反抗すると公言するカルムにサシャは、はっとしてイエランを見た。
天山の行く末をサシャが決める事では無いにしても、今までドルイドに支配されていた皆を解放してやりたかった。ドルイドから他へ支配権が移っただけの状態は避けたい・・・しかし今はカルムが言うように簡単に手に入れる事が出来る天山を天眼の王はどうしたいと思うのか?サシャは祈る思いでイエランを見た。

眉間に皺を寄せ、厳しい顔をしていたイエランが溜息をついた。

「勝手にすればいい。その娘の願いが、お前の益になるのなら天晶眼は幾らでもくれてやる」
「話が分かるじゃないか。大人になったね、イエラン」
「・・・瞳を治した祝いだ」
「おや?気が付いた?」
「当たり前だ」
ぶっきらぼうに答えたイエランだったが心の中では、カルムの目はもちろん全体の雰囲気の変化に驚いていた。長兄カルムはお調子者で愉快に過ごしているように見えて、本当の所は冷めていた。ところが今はそれを全く感じず、満ち足りた様子だった。それが側に居る少女がもたらしたのなら貴重な神の遺産だろうがやっても惜しくなかった。
そう思うと、イエランは珍しく顔を和らげサシャに微笑みかけた。

突然の天眼の王の笑みにサシャが目を見張ると、カルムがその目を塞いだ。

「何をするんだ!カルム!」
サシャはカルムの手を除けようともがいた。

「イエラン、もう帰って良いよ。お疲れ様、じゃね」
「・・・全く。勝手な奴だ」
呆れたイエランが姿を消すとカルムはサシャから手を離した。そして抗議しようとした彼女の唇を素早く塞ぎ何も言わせたかった。

「うううっ・・・んん・・・」
サシャの背中を這い上がるカルムの手の動きに、ゾクリとし、閉じないと文句を言われた瞼が落ちかかった。

クスクスと天人達の声が聞こえて・・・サシャはカルムの腕の中でもがき逃れた。

「こ、ここでは、い、嫌だって言った!」
サシャは頬を染めて唇に垂れた唾液を拭いながら言った。

今までならそんな抗議も空しくカルムの勝手にされていたがサシャの抗議が通ったようだった。残念そうな溜息をついたカルムは皆を助ける作業に取り掛かってくれた。

大勢のうえ、ドルイドの暗示を完全に消し去るには心眼力の強いカルムでも天晶眼を使わなくてはならない位、困難だった。
だから全てが終わった時、カルムはぐったりとしていた。

「大丈夫か?」
サシャは天人の力でカルムを癒しにかかった。目に見えない力がカルムの内側を満たしてくれるようだった。

「ふぅ〜天人の癒しは便利なものだね。普通なら何日か寝込むところなのに」
「寝込む?すまない・・・無理させて・・・ありがとう、カルム」
「サシャ、お礼なんか要らないよ。それに心配そうな顔をしないで。君は嬉しそうにしていてくれたら良いのだからね」
「うん・・・分かった」
サシャはこんな会話に慣れず、少し恥ずかしそうに微笑んだ。

「う〜ん。でも・・・そんな顔をされても困った。押し倒したくなるね」
駄目だ!と叫んだサシャは直ぐに飛び退くとカルムは笑った。

「はははっ・・・じゃあ、もう帰ろうか?」
頷いたサシャの目にユハとレーナが飛び込んで来た。

「サシャ様!」「サシャ様!行かないで下さい!此処に残って下さい!」
「レーナ、ユハ・・・」
正気に戻ったユハだったが自分がした記憶はあった。カルムは記憶も消し去ろうかと思ったが逆にまた想いを募らせても厄介だと考え放置した。案の定、犯した罪で自己嫌悪に陥ったユハはサシャに近寄りもしなかった。しかし、サシャが去るとなれば無視できなかったのだろう。

「レーナ、ユハ。私は此処に残らない。私はもう巫女姫では無い」
「いいえ!貴女様は巫女姫です!いいえ!天女様です!この天山をお見捨てになるのですか?」
「そうです!サシャ様はこの地に必要な方です!」
必死に引き留める兄妹にサシャは困ってしまった。どう言えば良いのか?

「・・・この天山の存在理由を知った今、私は必要だとは思わない。ユハ、レーナ・・・そなた達は巫女に救いを求めに来たのに門前払いされていた。そんな者達がどれ位いたのだろうな・・・天山は善意の場所では無く、全て権力と金で動くものであったと何故、私は気が付かなかったのか・・・情けなく思う。そして犠牲となった巫女・・・もう天山は悪しき思いの地であって必要の無いものだ・・・」
「でも!救いを求める者達はいるのです!だからこそ此処に留まって、新しい天山にして下さい!サシャ様!」
三人の会話を側で聞いていたカルムは苛ついた様子で嗤った。

「サシャ、どうする?君の熱心な信奉者は引き留めるのに必死だけど?残るの?それとも・・・私と行く?」
サシャは驚いてカルムを見た。まさかそんな事を言うとは思わなかったのだ。

「カルム・・・どうしてそんなこと言うんだ?私が此処に残っても良いと思っているのか?」
サシャの声は少し震えていた。二人の視線が絡み合った。目と目を見つめ合う・・・今まで無かった状態だ。

「・・・私は今・・・君をこの地へ留めようとする者達を・・・皆殺しにしたい気持ちを抑えているんだよ。それどころか未練を残さぬようにこの天山自体を地底に沈めたいと思っている。私の手にはまだ天晶眼が残っているのだから簡単な事だ・・・でも・・・それをしたら君に嫌われると思うから・・・」
サシャは、馬鹿と小さな声で呟いてカルムに抱きついた。サシャを大切に思うからこそ彼女の気持ちを優先していたのだ。
「レーナ、ユハ。私はこの人と行く。さようなら・・・今までありがとう」
二人は泣き崩れた。兄妹の夢が去って行く―――
自分達を救ってくれた小さな手はもう、一人の男のものになったのだ。


 レーナ達を振り切って去って行ったサシャ達は何故か初めて出会った宿屋に立ち寄っていた。開路で当然、天眼国に直帰すると思っていたのだか?
「こんな所で寄り道して良いのか?」
「いいだろう少しくらい」
「しかし・・・」
サシャはカルムの様子がおかしいので戸惑っていた。
カルムは到着して直ぐに温泉に入り、大きなベッドに寝転がったまま、ゴロゴロしているだけだった。その温泉は一緒に入ろうとも言わなかったので別々に入った。
何時もなら絶対に一緒に入ろうとするし、それだけでは終わらないだろう。しかもベッドで性的な接触を仕掛けて来ない・・・不思議で仕方が無かった。

食事をしてただ一緒に大人しく寝て、起きて、温泉に入って・・・の繰り返しで三日経った。
流石のサシャも腹が立って来た。

「どうしたんだ?身体でも悪いのか?」
「何?どうして?」
「ど、どうしてって・・・その・・・」
「何?聞こえないけど?」
「意地悪!分かっているだろう?」
「え〜分からないなぁ〜何のこと?」
「う・・・それは・・・」
「それは?」
「もういい!知らない!」
カルムは愉快そうに笑ってサシャを後ろから抱きすくめた。
二人共、寝巻き兼用のローブを簡単に着ているだけで胸元は直ぐに肌蹴るものだった。力づく引き寄せられたサシャは胸元が肌蹴、その隙間にカルムの手が伸びた。
その手が軽く胸元をかすめると、サシャは、ピクンと身体を反らした。

「この先をして貰いたいのだろう?」
カルムはサシャの耳元で低く囁きながら、胸の先端に触れるか触れないかの微妙な感じで指を動かした。

「どう?サシャ、期待していたんだろう?して欲しいだろう?」
「ち、違う!」
「素直じゃないね。して欲しいって言ってごらん」
「違う・・・あっ!」
カルムの指が乳首に当たりサシャは思わず声を出した。
カルムは、クスクス笑っている。

「サシャ・・・私が欲しく無い?」
カルムの甘い囁きに、サシャは弱々しく首を振った。しかし首を振りながらカルムにしがみ付いた。そしてその胸元に顔を埋め懇願しだした。

「・・・欲しい・・・そなたが・・・早く・・・」
カルムは嫣然と微笑むと、サシャを抱き上げ歩きだした。そして移動した先は・・・

「サシャ、顔を上げてごらん」
サシャは言われるまま顔を上げたがそこはもう宿屋では無かったが・・・見たことの無い部屋だった。

「違うよ、サシャ。上、上を見てごらん」
(上?)
促されるまま上を見たサシャは大きく瞳を見開いた。
真上に広がるのは虹色の帯だった。七色の光が帯となって幾重にも暗い空に輝いていたのだ。

「なんて・・・なんて綺麗・・・」
感動して魅入っていたサシャは裸同然の恰好をしているのに寒く無い事に気が付いた。しかもよく見れば天井は大きな硝子で囲われていた。

「離宮を増築したんだよ。そして常に雪や氷で覆われないような特殊設計にしているから、何時でもこの部屋から虹の帯が見られる。でも良かったよ。完成しても見せる時、虹が出なければ折角の贈物も喜びが半減するからね」
「贈物?私に?」
「そうだよ。でも寝室にするつもりだから一緒に使うけれどね。ここから見える虹の帯は君のものだよ。気に入ってくれた?」
こんな贅沢な寝室があるだろうか?サシャは何度も頷いた。そしてそのままカルムを押し倒してしまった。サシャは焦らされていた反動か拙いながらとても積極的だった。
その拙さがカルムの欲情を煽ると言うのに嬉しくて止まらなかった。
サシャは両手をカルムの脇で突っぱね真上から見下ろすように上体を固定した。
ローブの胸元は完全に肌蹴、揺れない小さな乳房は下を向いていた。
その先端をカルムが、ペロリと舐めた。

「あ、っん・・・」
サシャは仰け反り身体を震わせた。
その反応を楽しむようにカルムは再び舐め、もう片
方は指でつまんで捏ねた。
「あっ、あっ、あぁ・・・んん、あん」
ビクビク震えるサシャの花芯にカルムの膝が触れた。そのまま、グイグイと押し上げるように擦り付けられ上体を支えていた腕から力が抜けるようだった。

「あっ、そんな、だ、め、だ・・・あん、あん、あっ・・・」
不安定な状態で胸と花芯を責められると、主導権を握っていた筈のサシャはもう降参だった。
あっという間に上下は入れ替わり、サシャの目には虹の帯とそれを背景に背負っても遜色の無いカルムの輝くばかりの顔が飛び込んで来た。夢を見ているような組み合わせに、呆然としているとカルムの熱く誇張したものがサシャの花芯に触れた。
それが、グッと体内に入り込んで来た。

「んぅ、んん・・・っ、」
「いい?奥まで行くよ」
「あっ・・・あ、あ、ああぁぁ!っん」
圧倒的な存在感が体内の奥に入り込んで来るとサシャの喉から嬌声が漏れた。
その甘い声が恥ずかしくなって我慢すると、カルムが聞かせてと甘く命じて来る。
サシャの中で熱塊が、ドクドクと脈打ち爆ぜる場所を求めていた。

カルムは入れただけで達しそうな自分に舌打ちした。

「サシャ、君が悪い」
背中を反らしてカルムの硬く誇張したものに耐えていたサシャは、何が?と訊き返せなかった。結合部分は熱く、更にカルムを欲して収縮しているのを感じる。口を開けば、きっと、はしたなくもカルムを求める言葉が出そうで訊き返せなかった。

カルムはサシャの唇を塞ぎ、歯列を割り侵入させた舌は彼女の舌を絡めては唾液をすする。何時もの濃厚な口づけが始まった。そうなるとサシャは息も出来ない

「うっ・・・ううん・・・っん」
カルムは視力が戻って初めてサシャを抱く時は特別なものにしたかった。
だからこの部屋が完成するまで我慢した。その衝動を抑えていたせいか天眼で視ていた時とは違うサシャにカルムはすっかりのぼせてしまったようだった。
性急にしたくなかったが仕方が無い。

「サシャ・・・動くよ・・・」
唇を解くとサシャの耳元で囁いたカルムだったが、まだこれからだと言うのに既に息が上がっていた。そして押し開いていたサシャの両足を抱えると抽挿にかかった。
ずるりと抜きかけては勢いよく押し戻す。深く、浅く抉るように激しい抽挿を繰り返してはサシャを、ガクガクと揺さぶった。

「あっ、あっ、んっ・・・あ、あ、あん、あぁぁ・・・」
抉られるような突き上げにサシャは狂ったように頭を振っていた。サシャも今まで感じ無かったカルムの熱い視線に興奮が抑えられなかったのだ。カルムの激しい動きにサシャは嬌声を上げ続けた。

「サシャ、サシャ、ふっ、くっ・・・」
「んんっ・・・カ、カルム・・・も、や・・・」
「んっ・・・ふ、くっ・・・もう・・・いくよ、サシャ・・・一緒に・・・」
サシャがカルムにしがみ付いた。自分の心臓が激しく鳴っているのか、カルムの心臓がそうなのか分からない。心臓が破れそうなくらい鳴っているのだ。更に激しさを増したカルムの容赦の無い動きに思考は霧散した。それでも眼前に広がる虹の帯は記憶の中に刻み込まれながら絶頂を迎えた。そして何度も貫かれ頭の中まで痺れて来ると虹の帯の中で絡み合っているような感覚になって来た。

「はぁっ、あっ、あんっ、あ、あ、あぁん・・・」
「あ、あん・・・カ、カルム・・・き、金・・・眼・・・見せて・・・あっん」
サシャはカルムに開眼をねだった。

「んっ・・・ふっ・・・ほん・・・とうにそんな事・・・言うのは君・・・ぐらいだ・・・」
カルムの汗ばむ額に薄らと開き始めた金の天眼にサシャは口づけした。全てはこれを見た時から運命は決まってしまったのだ。

カルムは息を呑み、サシャの中にあった昂ぶりが、グンと大きさを増した。

「もう嫌だと言っても止められないから・・・」
カルムは掠れた声でそう言うと、サシャの腰を掴み直し激しく突き上げた。

「ああっあ!あっ、あぁ・・・」
再び絶頂を迎えながらサシャは幸せで胸が一杯になった。そう言えば今は天人達も遠慮しているのかとても静かだった・・・

彼らもまた神の遺産かも知れないとカルムは思った。
寂しがり屋の天人達・・・
サシャは、これからも彼らの囁きに耳を澄まして行くだろう。だから天眼国はサシャの輿入れでこの新たな神の遺産を手に入れたようなものだろう―――

それにしても見えない天人達がサシャを可愛がる様子を何故か敏感に察知するカルムが、度々嫉妬している姿が水晶宮ではよく見られる風景となった。その間抜けな姿が今までカルムの心眼の力を恐れ近寄り難いと思っていた者達に影響したのか?本当の愛に目覚めた影響なのか?周りのカルムに対する態度が違って来たようだった。
それでもサシャが嫌うカルムの表の顔は健在でコロコロ豹変する毎日だ。

「本当にそなたは天人のようだ」
「何?サシャ?」
「何でも無い」
「何でも無いわけ無いだろう?何か言ったじゃないか」
「言ったら怒るか拗ねるから言わない」
「そこまで言って言わない方が怒るよ!」
「そうか・・・でも、言わない」
「へぇ・・・そうか。じゃあ、言うまで縛ってベッドに括り付けるよ」
頬を引きつらせて怒りかけているカルムをサシャは見上げた。

「なら言っても良いが・・・言った方が良いか?それとも私を縛って遊びたいのか?」
「なっ・・・」
カルムは絶句したが、サシャは、クスクス笑っていた。
「全く、毎度、毎度、無意味に怒ってお仕置きと称したそんな遊びを言い出さなくても、したいなら何時でも言え。私は構わないし、そなたは自慢するだけあって上手だから気持ちが良い。今からするか?」
カルムは絶句したまま固まった。最近ではこんなサシャにカルムは翻弄されてばかりだ。頑なに巫女の禁令を順守していたサシャはいったい何処に?と思うこの頃。
しかしカルムにはそんな彼女に負けない必殺技があった。サシャが何時も溜息を漏らし、うっとりとする煌々しい美貌で微笑んだカルムが天眼を開く―――
額の金眼に微笑のカルムはサシャの生意気な言葉も動きも全て奪ってしまうのだ。
サシャは、ぽそりと呟いた。

「やっぱりカルムはずるいと思うだろう?」
サシャは天人達に同意を求めると見えない彼らの囁きが、サワサワと風に乗る。

「今、天人に話しかけただろう?」
カルムは天眼を開いたまま拗ねた顔をした。

「ん・・・カルムが朝方、書簡を届けに来た少年に可愛いと声をかけたって言っている」
「なっ・・・」
「天人の話しは嘘か?本当か?良く分からない事が多い。どっち?私にはもう嘘言わないと言っただろう?」
「う・・・余計な事を・・・天人の奴!か、可愛いと言ったのは言葉の綾で・・・他意は無いんだ!恋人達とも別れているし、今は君だけを愛している!本当だから!君を裏切るような事はしない!」
サシャは、微笑んでカルムの天眼に口付けた。

「うん、分かった。私もそなただけだから天人に嫉妬しなくていい」
「わ、私はべ、別に・・・嫉妬なんか・・・」
サシャは、ふ〜んと言って笑った。天人達も笑っていた。神代の名残のような彼らは、この先もずっとサシャを可愛がり愛情を注ぐ―――そして彼女に囁きながら幸せを見守り続けるのだ。

『サシャ、お話しようよ』『サシャ、良かったね』『ねぇ〜幸せ?』



あとがき

長かった「天人の囁き」終了でございます。本当に長かったです。本編より長い外伝って?と自分で突っ込み入れたくなります(笑)でも、このシリーズで一番のお気に入りだったカルムを思いっ切り書けて満足です!天然サシャのボケた会話も楽しめました。カルムは大迷惑だったでしょうが(笑)それにしてもカルムの相手に悩みましたがサシャにして良かったです。また好きなカップルが出来ました。二人のその後の話はまだ未定ですがまた書きたいと思います。このシリーズはラーシュや海翔のスピンオフは予定していないので残りの五大国に移るのか?イエランの新章かカルムの続編かでしょう。



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