天人の囁き


 サシャが驚いた顔をしてカルムを見た。
「迷惑以外何者でも無いだろう?そなたの言うようにそれをしなければ離婚だという意味が良く分かったのだ。私は子を授かりたくないし、そなたの快楽に付き合うのは嫌だ。あれは気持ちが悪い。妻の責務を放棄する私の面倒をみる理由は無いのだから迷惑はかけられない」
気持ち悪いと再び言われたカルムはその件を蒸し返したい所だったが、それを、グッと我慢した。
「―――じゃあ、話変えるけど死ぬのは怖くないの?」
「怖く無い」
サシャは強がって見せている訳でも無かった。本当に怖いのはもっとあるからだ。
それを経験するよりも自分が死んだ方がずっと良いとさえ思う。

「ああ、もう!分かった!分かった!結婚するけどあれをしなければいいのだろう!」
「え?しかし・・・」
「しかしも、でもも、無い!それが申し訳無いと言うだろうから私の仕事を手伝ってくれたらいい」
「仕事?」
意外な言葉にサシャは戸惑いを見せた。
その彼女の表情に変化を感じたカルムはもう一息だと思った。七家の面々を説き伏せるより面倒な交渉相手だとカルムは心の中で嘆息し
た。
「そう仕事。私はこれでも王佐をしていてね、忙しいんだ。仕事が山積みだしそれを整理して管理してくれる者が必要なんだよ。四六時中私と一緒にいなければならないけれど、私が心眼の持ち主だから気を遣うみたいで皆、長続きしない」
「どうして?」
「どうしてって・・・自分の心を読まれるのは皆嫌だろう?だから視られないようにと気を張るんだよ。そんな事をしても私には無意味とも知らずにね!」
カルムは天眼を開けていなくても表層意識はある程度読み取れる。だから皆は意識的に心を防御しているようだった。それでも力の強いカルムにしたら意味の無い程度の力だが、皆は一様に力を使って気を張る。カルムは視えていない振りをしても彼らは止めない。それを四六時中しているのだから神経が疲労して続かないのだ。同じ理由で多くいる恋人達も長く付き合っている者はいない。

「そうか・・・考え方は人それぞれだからと言っても悪いのに当ってしまったな・・・気を落とすな。心眼など気にしない者もいるのだからな」
サシャは小さな子でもあやすように手を伸ばすと自分に馬乗りになっているカルムの頬を撫でた。
「!」
カルムは驚き過ぎて声も出なかった。
サシャの手はすっかり湯冷めして冷たかったがそれがとても温かく感じた。頬だけでは無くその手をもっと自分の肌に滑らせて欲しくなった。
カルムは無意識にサシャのその手を掴んだ。そして、グイっと引き寄せ上半身を起き上がらせると唇を寄せた。無性に口づけをしたくなったのだ。
しかしその口づけはサシャの手のひらに阻まれてしまった。

カルムは、はっと我に返った。微妙な交渉中に相手の嫌がる行為をしようとしたのだ。
カルムは自分が信じられなかった。

「(何をやっているんだ!)・・・えっと・・・そのサシャ。これもしないから・・・」
本当だろうか?と疑っているのが分かる。心が視え無くてもサシャの表情でそれが感じ取れた。

「約束するから、ねっ。それに私がふらふらと遊び過ぎているから結婚しろと煩い連中がいてねぇ〜でも、まだ結婚したく無いんだよ」
「どうして?したくないのに昨日は私との結婚を約束してくれたのか?」
「だから、あれは気まぐれ。と言うか私のせいで若い娘が二人も死ぬなんて気分悪いだろう」
「あっ・・・そうか。そうだな・・・すまない」
サシャが真っ青になって動揺した。
その異常な動揺にカルムは何か引っかかるものを感じたが今はその隙を狙ってたたみ掛けた。

「とにかく今はまだ遊びたい訳。結婚すると一応は妻に構わないといけないし妻も他の者との情事を良く思わないだろう?」
「しかし、一夫多妻ならそれは仕方ないだろう?」
「まぁね。だけどそれは男に良くても女達は不満な訳で諍いは絶えないよ。それが面倒なんだよ。だから君とは便宜上の結婚でどうかな?と言っているんだ。君はレーナと共に自分の衣食住を手に入れ、私は仕事を手伝って貰えて煩い連中を黙らせることが出来る。お互い良いことばかりだろう?」
サシャの澄んだ緑の瞳がじっとカルムを見つめた。考える事は色々あった―――
しかしカルムの金色の天眼を見ると考えがまとまらなかった。美しい貌に刻まれた金眼は本当に綺麗だった。それをもっと、もっと、見ていたい・・・そんな気持ちが湧いてくる。それはまるで闇夜に浮ぶ月をずっと眺めていたいような・・・そんな感じ・・・

「―――その仕事とやらは私に出来るのか?」
「多分大丈夫。君は真面目そうだし勉強家なんだろう?それに読み書きさえ出来れば問題ない。私は通常生活で天眼を開かないから視力が殆ど無いしね。字を音読して貰うだけでも大助かりさ」
サシャは、あっと思った。カルムに視力が無いと言う事をすっかり失念していたのだ。それなら仕事も沢山あるだろうと思った。
掟に準じて死ぬのは本当に怖く無かった。
本当に怖いのは自分の命より大切なもの・・・何よりも大切なものを失うのが怖かった。


 ずっと幼い頃―――
巫女達の力及ばず、慌てて呼ばれたサシャの目の前で女が死んだ。付き添っていた夫の嘆きは周囲の涙を誘っていた。サシャはその時、生まれて初めて心が痛いと感じた。
しかしそれでもその感情が何故なのか良く分からなかった。それから暫くして何処からか迷い込んだ子犬をサシャは飼って可愛がっていた。
何処に行くのも寝るのも一緒でサシャにとってとても大切な存在になりつつあった時、突然行方不明になってしまった。何日も探してやっと見付かった時はもう虫の息でサシャの力も及ばず手遅れだった。誰かの手によるものか事故なのか分からなかったが段々と手の中で冷たくなる小さな命を抱きしめることしかサシャには出来なかった。

悲しくて、悲しくて、胸が張り裂けそうだった。自分と過日、妻を亡くした夫の姿が重なった。
そして師が教えてくれた。大事なものになればなるだけ悲しみは大きいと言った。

幼年期の繊細な心に大きな傷を付けた一件からどうにか立ち直ったサシャはそれから大
事なものは作らなかったし、誰かと親しくなるのも避けた。だから自分の子供は絶対にいらない。レーナ兄妹でもそんな態度を崩さなかったが彼女達から見ればサシャは命の恩人で大切な存在になってしまった。

サシャは自分の大切な存在を作るのも嫌だが自分自身が他人のそういう存在になるのも怖かった。だから自分が死ぬのは平気だがそれによって残されたレーナが嘆くのは嫌だった。
レーナを今まで特別扱いしていないが結果は望まないものとなってしまった。
そしてカルムが若い娘二人死なれたら気分が悪いと言った言葉にも動揺した。
(死ぬことは簡単だ。しかし自分の死で他人に迷惑はかけられない・・・)
サシャは決心した。

「・・・天眼の御方。その申し出受けさせて頂く。不慣れなこともあるだろうがそなたの力になれるように努めさせて貰う」
カルムは、ほっとして微笑んだ。
サシャはその表情に驚き何だか胸の奥がモヤモヤとした気分になった。
これがどういう感情なのか?良く分からない。それにしても・・・

「どいてくれないか?」
「ん?」
「重いんだ」
カルムは、ああ、と言ってサシャの上から名残惜しそうにどくと彼女を助け起こした。掴んだ細い腕が冷たくすっかり身体は冷えているようだった。

「すっかり湯冷めしたね。私も君に付き合ったから服が濡れて身体まで冷えて来たよ。入り直そう」
カルムはそう言い終わらないうちに服を脱ぎ捨て湯の中に入ってしまった。
そしてその淵でしゃがみ込んでいたサシャに両手を差し伸べた。

「さあ、おいで。湯底は滑るから支えてあげよう。折れた手では滑った時、掴まれないだろう。さあ」
「―――私はいい。もう充分だ」
「優しく言っているうちに従って貰うよ。君は私の妻になるんだろう?約束した事はしないけれどその他は従ってくれないとね。天眼国の妻は夫に従うのが常識なんだから。私からの条件の一つは煩い結婚話の阻止もあるのだからそれなりに妻役をして貰わないと。分かった?」
サシャは、分かった、と頷いたが湯面から覗くカルムの勃ち上がった塊をチラリと見た。そしてそれを指さした。

「それはどうにかならないのか?」
カルムは約束してくれたがそれが目の前にあると気になって仕方が無いのだ。

「それって?何?私は見えないのだから口に出して言って貰わないと分からない」
カルムは天眼をいつの間にか閉じているようだった。それでもサシャが気にしているものは何となく分かっていた。だから単なる意地悪な質問だ。

「その・・・」
「その?何?」
「だから・・・その・・・」
「ん?」
「・・・すまぬ。勉強不足だ。それが何と言う名称なのか分からな・・・あっ!そうだ!生殖器だ!そうそう、そうだ!生殖器!」
カルムはその答えに堪らず吹き出した。

「ぷぷぷっ・・・傑作だ!そうくるとはね。はははっ」
「な、何が可笑しい!私は間違っていない!」
「はい、はい。お利口なサシャ様は間違っておりません」
「何だ!その馬鹿にしたような言い方は!」
「したような、じゃなくて馬鹿にしているんだよ」
カルムはサシャの反応が愉しくて仕方が無かった。見えなくてもその声でどんな顔をしているのか想像出来る。可愛らしく頬をふくらませているに違いないと思うと心が浮き立った。

「私は初めに勉強不足だと言った!違うのなら笑っていないで教えるがいい!」
「ぷぷぷっ・・・だから間違って無いって言っているだろう。君の言う通りこれはそうだよ。これがどうにかならないか?って言う質問だったよね。ぷっくくっ・・・性的な刺激を受けるとこんな風に硬くなって勃ち上がってしまうんだけどこれはねぇ・・・それこそ君の嫌いなことをしないと治まらないのさ」
サシャはギクリとして身体を揺らした。その気配をカルムは感じ、ニッと笑った。

「そう、昨日みたいに挿し込んで抜き差しすると気持ちが良くなって治まるのさ」
「じゃあ・・・そうしなかったら・・・腫れたままなのか?」
「さあ?どうだろう?そんな経験したこと無いからね。君みたいに嫌だと言って拒否する子なんていなかったし。困ったなぁ〜」
カルムはおどけた感じで首を傾げた。サシャがどういう反応をするのか愉しみだった。
「・・・他・・・他に治す方法は無いのか?その・・・あれ以外で・・・」
「他?そうだなぁ〜ある事はあるけれど・・・君には無理だろう」
無理と言われてサシャは、ムッとした。

「無理かどうか言わないで決めるな!」
「絶対無理さ。だって口、口でするんだよ。口づけでさえ嫌がるのに無理な話だろう?」
サシャが息を呑んだのをカルムは愉快に聞いた。

「ねぇ?無理だろう?口にこれを・・・喉の奥までしっかり咥えて舐めるんだよ・・・」
カルムはそれを想像するだけで肉塊が、ドクンと少し大きくなった。
サシャはそれを見つめた。

(え?大きくなった?これを口に入れる?そんなの・・・)
「無理だ・・・」
「だろう?無理だよね?」
「うん・・・すまない。こんなに大きなものは口の中に入らないし・・・入れても歯で傷付けてしまいそうだから・・・」
「へ?・・・・・・ちょっ、ちょっと待て!嫌だからじゃなくて口に入らないから無理だって言う理由?」
「??そうだが?」
「だって他人から侵入されてグチャグチャと掻き回されるのは嫌だって言っただろう?だったらこれも同じような事だよ」
「同じ?同じなのか?経験が無いから良く分からなかった・・・」
「―――じゃあ、やってみて決める?嫌だったらこれもしないと言う条件に加えたらいい」
カルムは冗談でそう言った。
同じと聞いたサシャがそれを承知する筈が無いと思っていた。
それでもそれを揶揄するのが面白いのだ。

サシャは同じと聞いて躊躇したが色々優遇してくれるカルムに申し訳なく思っていた。他人からされるのは嫌かもしれないが自分でするのはまだ少し良いかもしれないと少し思った。

(それに口なら子供も出来ないだろう・・・お腹から遠いし・・・でも?)
「口なら・・・子は出来ないか?」
「へ?子供?―――ぷっ、あははははっ!出来ない!出来ない!本当に何も知らないんだね?あはははっ、傑作だ!」
カルムは笑いながら湯から上がりその淵に腰掛けた。サシャの直ぐ隣だ。

「で?どうする?やるの?やらないの?」
カルムの天眼が再び開いていた。サシャの反応を見逃したくないらしい。
そしてカルムは自分の天眼を疑った。
サシャが顔にかかる髪を耳のかけると大きく反り返る肉塊に唇を近付けて来たのだ。そして小さな口を出来るだけ大きく開きそれに歯や舌が触れないよう
にと含みかけた。
「へぇ〜挑戦してくれるんだ。じゃあ、教えてあげるよ」
カルムの揶揄するような声が頭上から降って来たと同時にサシャはいきなり手で頭を押さえ付けられた。不意をつかれてぐっと喉の奥へと肉塊が潜り込んだ。

「うっ・・・・・・っ・・・」
「ほらっ、もっと口を開けて!もっと奥まで咥えて」
「ぐっ・・・・・・っ」
カルムは手の力を緩めずグイグイと押した。サシャは否応無しに深く咥え込まされ喉の奥までみっしりと塞がれてしまって咽そうになった。

「つっ・・・歯を立てるんじゃない!もっと口を開くんだ!」
サシャは顎が外れそうなくらい口を開いていた。だからもう無理だと訴えたかった。

「うううっ・・・ううっ・・・」
「何?何が言いたい?君が承知して始めたことだよ。私は一応無理だと言ってあげたのだからね。最後まで責任持ってやって貰うよ」
カルムはサシャの頭を掴んだまま外れないように咥え込ませたまま立ち上がった。
そして彼女の髪の中に長い指を潜らせると鷲掴みにした。グッと頭を引き寄せ更に喉の奥へと肉塊を押し込んでは引く。緩急をつけたその動きに閉じられない口の端から唾液が溢れグチャグチャと淫猥な音をたてていた。

「ふっ・・・ぐっ・・・っっ・・・」
自分でするから大丈夫だろうと思っていたサシャはそれが大きな間違いだったと後悔した。
結局良い様に掻き回されているのに変わりは無いからだ。

「サシャ、じっとしているだけなら誰でも出来る。私を満足させたいんだろう?これだけじゃ治らない。手を緩めてやるから舌を使ってみろ」
満足出来ないと言うカルムは充分に興奮していた。口調も変わり余裕が無くなりつつあった。恋人達とするこの行為より数倍興奮するのだ。
サシャの我慢している様子だとか嫌そうな顔がとてもそそられる。

舌を使えと言われたサシャはどうしたらいいのか分からなかった。
戸惑っていると薄く笑っていたカルムがまた命令して来た。

「咥えたまま唇は窄ませ舌で舐めろ」
「ふっ・・・んっ・・・ぅぅ」
サシャは息苦しいまま言われたように舌を動かした。

「っ・・・そう・・・だ。もっと・・・だ」
カルムの声に吐息が混じりだした。
それと同時にサシャの口の中の塊が熱く脈打ち体積を増して行った。

「んっ・・・んんっ、ふっ・・・」
「・・・分かっていないな・・・もっとだ」
カルムは再びサシャの頭を押さえ付けて激しく突きを繰り返した。サシャは首を振って逃れようとしたが力強い手で阻まれて動けなかった。

「ぐっ・・・んんっ・・・うっっ」
「くくくっ・・・本当に嫌なのか?感じているのだろう?胸の先が尖っている。男のものを咥え込んでいるだけなのに?」
カルムはサシャの身体の変化に気が付いて揶揄った。それに触れてしまえばこれだけでは終らないと分かっている。そうなれば約束違反だから触れない。それが一層カルムの興奮を煽るようだった。
サシャはカルムの言葉は聞こえなかった。目をぎゅっと閉じて、これが早く終われば言いとだけ何度も心の中で願って必死に舌を動かした。すると口の中のそれが更に大きく脈打ったと思ったのと同時に、ドロリとしたものが一気に溢れて来た。サシャは唇から咥えていた肉塊を吐き出した。
そして喉に流れ込んだそれに咽て激しく咳き込んだ。

「誰が、口から出して良いと言った?」
冷たく硬い声が響いた。カルムは咳き込みながら顔を上げたサシャの口元にまだ硬さを保つ塊の先端を押し付けた。

「もう・・・い、嫌・・・だ」
「そう・・・分かった」
カルムはあっさり引いた。無理強いしてもまた死ぬとか言い出して面倒な事になると思ったからだ。それに昨晩から中途半端だったからだろうが一度達しただけだが意外とスッキリとしたのだ。
そしてふと野心が芽生えて心の中でほくそ笑んだ。今回のようにお人好しなサシャが自ら望んでなら嫌がる事も出来ると言う発見に心が浮き立った。

(そう・・・ゆっくりと罠を仕掛けて狩ればいい・・・暫く退屈しないな・・・)
良い人を演じて彼女から自分を差し出すように仕向ける・・・カルムは今までに無いそんな遊びに心躍らせた。

「怒らないのか?」
「何故?嫌だったらしないと言う約束だっただろう?」
「・・・そうだな。ん・・・礼を言う。本当に役に立たなくてすまない・・・その・・・」
サシャは、チラリとカルムのまだ硬そうな肉塊を見た。前より萎んでいる感じだがまだ腫れているようだったからだ。

カルムは、しょんぼりと礼を言うサシャがとても可愛く見えた。
思わず嫌がると分かっていても抱きしめて口づけしたい気分に駆られた。しかし、そこは我慢のしどころだった。
(愉しみは後でゆっくりと味わうのが良い・・・そう後で・・・)

「気にしなくていい。さあ、本当に温まって上がろう。路が開くだろうからね」
カルムは極上の笑みを浮かべるとサシャを抱き上げて湯の中に入った。
普通なら触れられて抵抗するサシャだが邪気の無いカルムの微笑に大人しく腕を回して抱き付くと一緒に湯船に浸かった。カルムは湯の中では礼儀正しく何もしなかった。
サシャは湯の中の自分の身体を見た。赤く腫れた肌がピリピリとしていた。そしてカルムが尖っていると言った胸の先を見た。そこも何だかピリピリしているように感じた。サシャは、チラッとカルムを見ると今は天眼を閉じていた。それを確認して、そっと自分の胸の先を抓んだ。

「あっっ・・・」
ビリっと何かが身体の中を走ったような気がして小さな声が漏れた。

「何?どうしたの?」
「な、何でも無い!」
サシャは悪戯が見付かった子供のように、ビクっとして抓んでいた乳首から指を離した。ドキドキと鼓動が鳴った。そして口の中にあったカルムの感触を思い出し更に鼓動が大きくなるような気がした。何が何だかサシャには分からないがとにかく頭がぼうっとし出した。熱くて堪らないのだ。クラリとした時、カルムが抱き上げてくれた。

「全く、直ぐのぼせるんだな。宮殿の風呂の温度の調節を指示しておかないと大変だね」
ブツブツ文句を言うカルムの声を聞きながらサシャは気を失ってしまった。
そして目覚めると其処はもう天眼国だった―――



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