| 「天眼の王」と「天駆ける獣」の間の話になります。イエランと美羽のラブラブ休暇です。 ちょっと色々お悩み中のイエラン…でもすることはする(笑) はぁ〜やっぱりね^_^;と思いつつ、二人のベタベタ甘々をお楽しみ下さい。 |
雪の花

イエランが金の天晶眼のいざこざで瀕死の状態になって意識を取り戻したものの完治までの数日―――
美羽はイエランと会う事を禁じられてしまった。イエランが美羽を求めて無茶をするからだ。
美羽はその無茶を思い出して頬を染めた。
「ミウ様?どうかされました?」
「な、何も・・・何でもないわ」
「お顔が赤いようですけど・・・まさか!お熱があるのでは!」
「だ、大丈夫よ。ルルナ、何でもないから」
心配するルルナに美羽は慌てて首を振った。
無茶とはもちろんイエランから抱かれた事だ。しかも思い出すだけで恥ずかしい格好で抱かれた揚句に気を失ってしまった。それをカルムにも見られて・・・実際に見られてはいないが何をしていたのか知られてしまった。だから出入り禁止になったのだ。
恥ずかしくて暫くカルムの顔が見られなかったぐらいだ。
「本当ですか?一応、ロエヌ先生に診て貰いましょうか?」
「本当に何でもないから。そ、それよりもルルナ、さっきから何の準備をしているの?メラは朝から居ないし・・・」
美羽は何やら落ち着かなく動き回るルルナが気になって問いかけた。
するとその彼女が驚いたような顔をした。
「え?な、何でも無いです!本当です!」
ルルナの何かを隠すような言い方を聞いた美羽は不安になった。
顔を曇らせた彼女に気が付いたルルナは慌てて言った。
「ミウ様、悪い事じゃないです!カルム様から申し付かってミウ様のお出かけの準備をしていました。あっ!しまった・・・内緒だって言われていたのに・・・姉さんから叱られる」
ルルナが今、怒られたかのように首をすくめて、しゅんとした。
「出かける?私が?何処に?それに何故、内緒なの?」
「そ、それは・・・」
ルルナは答えに困ってしまって口をパクパクし始めた。
「おやおや、もう露見してしまったのですか?」
「ひっ!」
ルルナはいきなり部屋に入って来たカルムに驚いて飛び上がった。
白銀に輝くような麗しい顔は怒ってはいない。柔和に微笑んでいるだけだ。
しかしルルナは恐ろしくて深々と頭を下げた。彼女は昔からカルムが苦手なのだ。カルムが・・・と言うよりも心眼の持ち主が苦手らしい。
「も、申し訳ございません!」
「ここはもういいから下がりなさい」
カルムがやんわりとルルナを下がらせた。扉が閉まる音を聞いたカルムは大きな溜息をつくと、ガラリと纏う雰囲気に変わった。親しい者だけに見せる気楽で気さくな感じだ。
「せっかく驚かせようと思っていたのに女の子のお喋りを計算して無かったのが失敗だったよ。楽しみが減ったなぁ〜」
何が?と首を小さく傾けた美羽にカルムが微笑んだ。
「ミウちゃんを氷華の宮に連れて行ってあげようと思ってね」
「氷華の宮?ですか?」
「そう。とっても美しい離宮でね、きっと気に入ると思うよ。はははっ、それが?何?って思っている?イエランとした約束覚えているだろう?休暇だよ、休暇」
「休暇?あっ、休暇をそこで?」
「そうそう、此処だと変化も無くて面白く無いだろうからね。ミウちゃんもずっとこの中だけだから退屈だろうし、風景と言っても外は雪景色でそんなに変わらないけれど気分は変わるからと思って用意させていた訳。向こうにも召使い達は沢山いるけどメラに行かせて細かいところは指示させているから安心して行くといいよ」
「ありがとうございます」
カルムは見えない瞳を微笑ませた。
「いいねぇ〜ミウちゃん、ふわっと花が咲いたように喜んでくれているね。可愛いなぁ〜イエランも君くらい喜んでくれたらお兄ちゃんも嬉しいのにな」
拗ねた顔をしたカルムが可笑しくて美羽は思わず声を出して笑ってしまった。
「クスクス、カルム様には感謝していると思いますよ」
「そうかなぁ〜そんな風には見えないけどね」
カルムは本当にこの数日、奔走していたと美羽は知っている。ラーシュの処理にイエランの代行と目も回るような忙しさの中、毎日、美羽にはイエランの様子を報告に来てくれた。白皙の美貌に濃い疲労を滲ませながらも美羽を安心させるように微笑んでいたのだ。
「カルム様、本当にありがとうございました。お忙しいのに私まで気を遣って頂いて・・・」
「ミウちゃん、君は本当に良い子だね。イエランの首に鎖を付けているのにも限界だから解き放つけれど、その前に先に行って少し遊んでおいで。イエランが来たらそれどころじゃなくなるだろうからね。それこそ寝所から一歩も出せてもらえないよ」
「カ、カルム様!」
カルムの意味あり気な言葉に美羽は顔を真っ赤に染めてしまった。
「はははっ、じゃあ、後は宜しく」
カルムと入れ替わりにルルナが準備を整えて入って来た。
「行き先、聞かれました?」
「ええ、氷華の宮って」
「そうなんですよ!とっても素敵なんですよ!私も一度しか行ったこと無いのですが、びっくりするくらい綺麗なんです!」
「この水晶宮も綺麗だと思うのだけど此処よりも?」
「此処なんて殺風景じゃないですか!全然違いますよ!」
「そうなのね」
美羽はルルナの興奮ぶりに期待を膨らませて氷華の宮へと開路を渡った。もちろんカルムが選んだ護衛を伴った道行だ。そして美羽はその氷華の宮に到着すると自分の目を疑ってしまった―――
吐く息は真っ白で肌を撫でる空気は冷たい筈なのに常春の黒翔国を彷彿させるような美しい花々が咲き乱れていたのだ。
「綺麗・・・」
美羽が近付いてみるとそれらが全て壁や柱に埋め込まれていた。氷の中に花が咲いているような感じだか壁や柱はもちろん氷ではない。良く見れば床にも花々が咲き乱れていた。
「生花をこの特殊な石に閉じ込めているのですよ。いらっしゃいませ、ミウ様」
「メラ!」
出迎えたメラが説明をしてくれた。花々を閉じ込めている内側は外気に関係なく温度が低く花を凍らせて枯らさないらしい。その石材を贅沢に使って造られたのがこの離宮だった。
「ね、ミウ様、素敵でしょう?」
「本当ね。ルルナの言った通り、とても綺麗だわ」
「さあ、どうぞ。お部屋を整えておりますからごゆっくりお寛ぎ下さいませ」
美羽が到着して暫く経った頃、イエランは憤っていた。
「私に断りも無く美羽をあの離宮に行かせただと?」
「何で怒るのかなぁ〜約束した休暇を満喫して貰おうと心配りしたのに?」
カルムが肩をすくめて答えた。
「勝手なことだ!」
珍しく感情を表に出すイエランにカルムは意味あり気に微笑んだ。
「ミウちゃんが関わると怖いなぁ〜心を読まなくても分かるけれど彼女を自分だけの世界にしまって置きたい気持ちだろう?でも嫉妬は良く無いよ。ミウちゃんが喜ぶのが嫌な訳じゃないが・・・それが故郷を思い出して喜ぶのは嫌―――と、言うんだろう?氷華の宮はまるで黒翔国のように花々が咲き乱れているからね」
「・・・・・・・・・」
イエランは意地悪なカルムに言い当てられて、さらに顔を険しくした。
大人しく養生をしてやっと美羽と会えると喜んだ矢先にこの知らせだった。カルムの言う通りイエランは美羽の黒翔国への想いに嫉妬していた。彼女は故郷の為にイエランの無慈悲な責め苦に耐え忍んでいたのだ。それだけ国を愛していたのだと思うと何時かまた帰ってしまうのでは?とついつい考えてしまうのだった。黒翔国・・・すなわち海翔の腕の中へと・・・
「ミウちゃんの心を疑っているの?」
暗い想いに沈みかけたイエランはカルムの非難に満ちた声に、はっとして我に返った。
「彼女は君の為に入ったら死ぬと言った天晶眼の間に躊躇無く踏み込もうとしたんだよ。この私でさえも一瞬躊躇ったのにね。そしてあの条件も君を想って承知したんだ。その時の彼女の心に私は感動して何も言えなかったぐらいだ―――もし少しでも疑うようなら私が許さない」
カルムが、すっと見えない瞳を細めて言った。視力が無いのが嘘のように冷やかな目で睨まれている感じだった。
「・・・分かっている・・・しかし全てが手に入ったら、入ったで不安が込み上げて来る・・・」
「まぁ・・そんな感情、私には到底理解出来ないけど・・・でもその不安解消の為に無茶しないように!ミウちゃんは居なくならないんだから程々にね」
そんな事まで指図される言われは無いとカルムに答えたイエランは氷華の宮へと向ったのだった。
イエランの予定より随分早い到着にメラ達は驚いた。
「メラ、美羽は何処だ?一人にしているのか?」
「はい、読書をなさっていましたが、そのままうたた寝されましたので、私共は退室して・・・起こして参ります」
「いや、いい―――私が行く」
メラが指し示した部屋へイエランが入った。
暖かな部屋の中は常春のようで部屋には花が咲き乱れている感じだった。美羽は長椅子のクッションに気持ち良さそうに身体を預けて眠っていた。読みかけの本が胸元に伏せられ今にも落ちそうだった。
イエランはそれを、そっと取り上げテーブルの上に置いた。
そして、ふと思い出す―――
(そう・・・美羽を初めて抱いた時もこんな風に眠っていた・・・)
怒りに任せて美羽を無理矢理犯したあの日はイエランにとって、彼女が無垢だったと歓喜したものの最も後悔した日だった。そして美羽にとって本当の男と言うものを知った恐怖の日―――二人には最悪な思い出の日だ。
美羽はあれから長椅子に座らなかった。それに視線を向けるのさえも避けていた様子だったのをイエランは思い出した。場所が違うとは言っても美羽がこの場所でうたた寝をしている姿を見たイエランは嬉しかった。
「もう・・・許してくれているのか?美羽?」
訊きたくて訊けなかった言葉をイエランは呟いた。
そしてあの日のように、そっと唇に口づけした。するとあの日を再現するかのように彼女が口づけを返して来たのだ。寝ぼけたまま、たどたどしく舌を絡ませ始めた。
イエランは唸るように美羽の名前を呼んだ。
美羽は、ビクリと肩を震わせて瞳を大きく見開いた。目が覚めたようだ。その一瞬、瞳に過ぎった恐怖をイエランは見逃さなかった。
「美羽・・・私が怖いのか?」
美羽は驚いてしまって声が出なかった。
起き抜けで夢なのか?現実なのか?頭がぼう〜としてハッキリしていなかったのだ。
確かに夢を見ていた―――こんな場所で寝てしまったせいかあの恐怖の日の夢だった。
長椅子での出来事は恐怖しか感じなかった。イエランの心を知ってからも身体と心に刻まれた痛みは拭えず無意識に避けていた。
しかし今日は気分が良く、何時もなら気にする場所に腰を落ち着けてしまったのだ。イエランと会える事で胸がいっぱいだったせいもあるだろう。
美羽はイエランの悲しげな声を聞いて目の前の現実に気が付いた。
(何故そんな事を訊くのかしら?・・・あっ、私・・・)
美羽は無意識にイエランを怖がってしまった事に気が付いた。
「ごめんなさい・・・今、夢を見ていただけですから・・・」
「夢?何の?」
「そ、それは・・・その・・・」
「・・・私が、お前を無理矢理犯した日の?」
イエランはふとそう感じて言ったが美羽は答えなかった。そうだ、とも・・・違うとも・・・
「美羽・・・あの日のことは消したくても消せないのは分かっている。酷いことをしたと分かっているつもりだ・・・」
美羽は涙ぐんで首を振ると、いつも付けている雪の結晶のような花飾りが可愛らしい音を立てて鳴った。
「何故、お前が泣くんだ?」
「ひ、酷くても・・・怖くても・・・私は貴方を好きになったのだから・・・」
「美羽・・・」
イエランは堪らず美羽を抱きしめた。彼女の細い肩が泣くのを堪えて震えていた。
「美羽、あの日を思い出す前に今日を思い出してしまうようにしてやろう・・・」
美羽は耳元でイエランからそう呟かれそのまま長椅子に押し倒されてしまった。そして口づけられた。
「んっ・・・ふっ・・・っ・・・」
唇を舐め、丁寧に歯列をなぞりながら舌が蠢くと強く美羽の舌先を吸い上げた。
美羽も自分から舌を差し出しイエランの舌を受け入れ絡ませる。お互いの息を奪いあうかのような熱い口づけに美羽の頭は蕩けそうだった。その間にもイエランの手は美羽の素肌を弄っていた。
「ふっ・・・んんっ・・・」
喘ぎ声はイエランの口づけに奪われ呑み込まれてしまう。
「美羽・・・もう我慢出来ないようだな?腰が浮いている」
「そ、そんな・・・」
真っ赤になってしまった美羽の頬にイエランは口づけを落とし、そのまま首筋へと舌を這わせた。
その動きと共に止め具を外された服は下着と一緒に肩から下へ脱がされてしまった。
また美羽は恥ずかしさに全身を朱色に染め、身体を隠すように両手で自分を抱いた。しかしその両手をイエランに捕らえられてしまった。その両手は指と指を絡ませて握り込まれたまま、イエランの舌だけが自由に美羽の肌を舐めていた。
「やっ・・・あっ・・・んんっ、そ、そんな・・・」
生温かく、ぬるぬるとした感触が肌に触れると・・・美羽は背筋が・・・そして下腹部が、ぞわぞわとしだした。その刺激に背中を反らせて震えると、その反応は彼女の掴んだ両手からイエランに伝わった。
束縛されて反応する美羽に強い欲情を感じた。更にそれを煽るように美羽の敏感な胸の先端へと舌は移って行った。
「はっ・・・ん、ああ・・・て、手を放してくだ・・・さい」
「駄目だ・・・もっと感じるんだ」
「あっ・・・い、いや・・・んんっ・・・」
両手を握られて両脚は脱がされた服が絡まって束縛されているような感じで思うように四肢を動かせない美羽はもどかしくて身体中が疼いているようだった。
だから思わず腰を浮かせて揺らめかせてしまう。
そんな美羽に気が付いたイエランは唇の端を上げて微笑んだ。それは美羽が一番好きなイエランの顔だが今はそれどころでは無かった。掴まれた両手は頭の上でイエランの片手で掴み直され彼の空いた手は美羽のふくらみへと移っていたのだ。イエランの大きな手と長い指で掴まれた乳房はその先端をほんのり赤く染めて尖っていた。既に舌で責められた跡だ。
「あああぁあ!んっ・・・・」
乳房を強く揉まれながらまた充血した先端を吸われ、美羽は堪らず大きな声を上げた。
それだけで美羽の身体はビクビクと跳ね、嫌、嫌と首を振った。
「嫌じゃないだろう?気持ちいいのだろう?美羽?」
「だ、駄目・・・そこは・・・あんっ・・・」
イエランが、クスリと笑って再び口にツンと尖った粒を含んだ。美羽は堪らず両膝を立てるように擦り合わせて震えると、今度はそのピタリと合わせた両脚の間に手を滑らせてきた。
美羽はビクリとして両脚に力を入れたがイエランの指は目的地に到達していた。そこは既に蜜が溢れイエランの指を滑らせた。
「あっ・・・ま、待って・・・あっ!」
吊り上げられたような状態で身体の半分の自由を奪われたままでそこを責められた美羽は背中を反らせるしかなかった。
「て、手を・・・放して下さい・・・お、お願いしま・・・す」
「駄目だ・・・まだ足りない。もっと感じるんだ。もっともっと感じて私を欲しがれ・・・」
美羽はもういっぱいだと言いたかったがイエランの指が蜜の溢れる花芯へと挿し込まれたので、再び声をあげて仰け反った。
「やっ、ああぁ!うっ・・・んん・・・」
その声はイエランの口づけで再び呑み込まれてしまった。
甘く激しい口づけはイエランの心を表しているようだった。気が遠くなりそうな愛撫が激しくなるにつれてようやく美羽の両手も解放された。しかしそれも束の間、今度は椅子の背もたれにしがみ付いていなければならない状態になってしまった。
感じ過ぎた美羽のぼやけた視界にイエランの重たそうに揺れる昂ぶりを見た。
美羽は狭い長椅子の上で両脚を持ち上げられると胸元に押しやられた。身体を二つ折りのように曲げられ蜜の溢れる場所が丸見えになった美羽は恥ずかしくて身体をよじらせようとした。
「美羽、そう恥ずかしがるな。それとも私を煽っているのか?」
美羽はそんな・・・と言いたかったがイエランの重そうに擡げていた塊がその恥ずかしい場所に一気に突き入れられて言葉にならなかった。
「ひぅっ・・・ああぁっ・・・イ、イエラ・・・ン・・・」
一気に穿たれたイエランの熱く硬く滾ったものが脈打つのを美羽は感じた。
彼女の中へ深々と楔を埋め込んだイエランは美羽の身体にのしかかり、頬をすり合わせるように顔を寄せてきた。
「美羽・・・これが欲しかったのだろう?」
美羽は恥ずかしくて小さく首を振った。
イエランが意地悪く微笑むと身を乗り出し、グイッと腰を揺らした。
「ああぁっ・・・」
「本当にいらないのか?違うな・・・こんなに絡まって締め付けているんだから・・・そうだろう?美羽?」
「イ、イエラン・・・もう・・・ゆ、許して・・・」
美羽の哀願する掠れた声はイエランの欲情を更に刺激したようだった。
彼女の中でイエランの滾った塊が更に大きくなり圧迫感を増したのだ。美羽はそれを感じ、息を呑むのと同時に悲鳴にも似た声を上げた。イエランが激しい抽挿を開始したのだ。
「ああああっ―――あっ、あっ、あっああ・・・」
長椅子があの日と同じく、ギシギシと大きな音を立てて軋み出した―――
あの時は恐怖の伴奏だったが・・・今日は歓喜の旋律のように聞こえた。
「あっ!ああ・・・んっ・・・っ、イ、エラン・・・」
美羽が我を忘れ快感に喘ぐと、イエランは更に大きくこれでもかと突き上げて来る。奥まで深く穿たれては引き抜かれる動きの連続に美羽は悲鳴と共に仰け反ってしまう。
「そ、そんな、に・・・う、動か・・・ないで・・・」
「そんな事をまだ言えるなら、まだまだ余裕だな?美羽?」
「ち、ちが・・・ああっ!だ、だめぇ・・・」
グリッと捻じ込むようにイエランは腰を突き入れた。そしてそのまま美羽をグルリとひっくり返した。美羽はもう自分が上を向いているのか下を向いているのか分からなかった。
「ひぁっ・・・まっ・・・あっ、い、いや・・・あ・・・」
完全に背後から突き入れられた美羽はその動きにつられて浮き上がり膝を椅子についた。イエランが美羽を貫いたまま立ち上がっていたからだ。美羽はイエランと背もたれに挟まれてしまいその背の端にしがみ付くしかなかった。
そして息つく暇も無く再び激しい抽挿が始まった。ぬちゃぬちゃと粘着質の音が響く。
美羽は激しく揺さ振られる度に、しがみついていた背もたれの硬い重厚な彫刻で胸の先端が擦られ、その刺激で気が変になりそうだった。
「も、もう・・・だめ・・・ひぁ・・・ああっ・・・」
美羽は激しく熱く何度も何度も力強く貫かれた後、ようやくイエランの動きが止まった。
美羽は繋がった部分からイエランの身体が痙攣したように震えているのを感じた。そしてイエランの肉塊が萎えていくのを感じたが、それでもまだ充分な圧迫感と質量で美羽を感じさせていた。
いつもならそれを収めたまま再び脈打ち硬くなるのだが・・・今回はそのまま引き抜かれた。
「あっ・・・」
急な喪失感に美羽は瞳を潤ませて振り向いた。まだ物欲しげに花芯がヒクついているのが自分でも感じられた。もっと・・・と言っているようだ。勇気を出して、もっと・・・と言ってみようかと美羽は口を開きかけたが、イエランが注いでいる視線に気が付いた。
「すまない・・・気を付けていたつもりだったが・・・」
イエランが美羽の背もたれにしがみ付いていた左手を優しく取り上げて言った。
良く見ればその手の甲が擦れて酷くうっ血していた。多分、無意識に椅子にぶつけたのだろう。
「痛いだろう。直ぐに移してやる」
イエランの天眼が開きかけた。傷を自分に移すつもりだ。美羽は慌てて、その手を引っ込めた。
「だ、大丈夫です・・・そ、それに・・・今日のこれは怖くないものだから・・・」
イエランの顔が険しくなった。怖いと言う言葉に反応したのだろう。
美羽は上手に言えない自分が恨めしかった。確かにあの日の美羽は悲惨なものだった。
イエランから受けた激しい行為の代償は頑丈な長椅子に散々ぶつけられた結果、擦り傷と打撲が身体中に刻まれていた。だから今回はそうならないようにとイエランが心配りしていたようだった。
美羽にもそれが良く分かっていた。無理に押さえ付けられず腕に抱かれ、快感を引き出す縛めは優しかった・・・まるで羽毛に抱かれているような感じだった。
「あ、あの・・・これは・・・愛して・・・愛して頂いた印だから消さないで下さい」
美羽は耳まで赤く染めて言った。言い慣れない事を言うのはまだとても勇気がいるし恥ずかしいのだ。彼女のその気持ちが届いたようだった。イエランが美羽の大好きな微笑みを返してくれた。
そして、ちょっと意地悪く目を細めると・・・
「美羽・・・身体中に愛した口づけの跡を残してやっているのにそれまで欲しがるとは欲張りだな」
美羽は予想していなかった返答を受けて更に真っ赤になってしまった。
「よ、欲張りだなんて・・・」
「どんどん欲張りになれ。どんどん欲張って私を困らせるくらいにな・・・」
またそんな・・・と答えようとした美羽の唇は塞がれてしまった。それから暫く熱っぽい口づけを交わしあった後、美羽はイエランの予想外の言葉に驚いてしまった。
カルムの予想通りに寝室に篭もってしまうかと思ったのにイエランが外に出かけると言うのだ。
「行きたく無いのか?」
美羽は大きく首を振った。嬉しくて跳ねたい気分だった。多分、ルルナが居たら一緒にピョンピョン跳ねただろう。
「この土地は国の中でも一番雪が少ない。こんな時期でも町は賑やかだから楽しめる筈だ。まあ・・・黒翔国ほどではないがな」
イエランは少しだけ悔しげに言った。
過日見た黒翔国の城下町は占領されていても賑やかで活気に満ちていたからだ。常春の国はその気候風土で気分から明るく華やいだ感じになるのかもしれない。
美羽ががっかりしたら?と思わなくもなかった。
しかし町に到着した美羽は嬉しくて瞳を輝かせた。何よりもイエランと一緒だと言うのが一番嬉しかったのだ。雪が固められた道は滑り止めを付けた靴でも慣れない美羽には歩き難かったがイエランの腕にしがみ付いて歩いた。時々、滑りそうになっても直ぐに支えてくれた。それだけで幸せだった。
何を買う訳でも何かを見る訳でも無かったが賑やかな通りを抜けて戻ると今度は離宮に隣接してある温室へと誘われた。
美羽はそこへ一歩踏み込んだ途端、驚きに声を上げた。そこはまるで常春の楽園―――黒翔国のようだったのだ。花々が咲き乱れ蝶や小鳥達が戯れていた。外は雪景色だと言うのにこの中は別世界だった。
「―――あの離宮もこの温室もリネアの母・・・黒翔族だったその女の為に造られたものだ」
「リネア様の?」
「そうだ。先王・・・父がリネアの母を振り向かせようと造った代物だ。こんな大層なものを一人の女の為に造っても微笑み一つ貰えなかったらしい・・・だいたい好きな男を殺されて無理矢理に奪われた女にしたら父を憎んでも愛せるものでは無いだろう。考えなくても分かる・・・心まで欲しがった父の愚かさの証明のようなものだ」
イエランはそう言いながら自分に置き換えていた。美羽の大事な兄を殺して無理矢理犯した・・・実際に殺していなかったとしても美羽を悲しませた・・・
(当然愛される筈など無い行為・・・父と全く同じだ・・・)
「どちらもお可哀想・・・」
美羽の声にイエランは自分の想いから引き戻された。美羽は愚かだと言わなかった。
先王も可哀想だと・・・イエランは心が少し軽くなったような気がした。美羽を苦しめた自分の行動が許されているような気がしたのだ。しかしまだ心に圧し掛かるものが拭えない・・・
「そうだな・・・リネアの母はこれを贈られても無視したようだが、美羽・・・お前が故郷を懐かしむのなら水晶宮に同じようなものを造ってやる。氷華の部屋でも温室でも・・・」
だから帰りたいと思わないで欲しい・・・懐かしいと思わないで欲しい・・・
美羽が少しでもそう思えば嫉妬に狂いそうになるだろうとイエランは思っていた。だからそれを阻止する為にはどんなことでもするだろう。最後には黒翔国さえも滅ぼしかねない程に・・・
カルムから美羽の心を疑っているのか?と問われて否≠ニ直ぐに答えられなかった。
疑っていると言うよりもどうして自分を愛してくれたのか?という疑問を拭えないのだ。彼女の口から何度も愛していると告げられても心の底では憎まれるようなことしかしていないのに・・・何故?と・・・
美羽は微笑んで首を振った。それに合わせて可愛らしい鈴の音が鳴る。
「いいえ、私はもうこれを頂いていますからいいです。雪の結晶みたいな花・・・私はこの花が一番好きだから他は何もいりません。故郷のどんな花よりも・・・」
美羽に触れられてチリンと花の髪飾りが鳴った。
「美羽・・・」
イエランは可愛らしい事を言う美羽の名を呼んで抱き寄せた。そして耳元で囁いた。
「他に何が好きか?私はお前の全部が知りたい・・・身体を深く繋いでいても分からないことばかりだ。美羽・・・もっと色々話をしよう」
それは美羽の一番苦手なことだ。自分の気持ちを上手く伝えられないのだ。
心が通じ合ってからの日々は今までの渇きを癒すかのように身体を貪り繋ぎ合わせるだけだった。
寝ても覚めてもお互いを求めたのだ。嫌、イエランの方がより強く彼女を求めた。
抱いても、抱いても・・・どんなに激しく熱く抱いても不安が拭えなかった。
それが今、ようやく目が覚めたのだ。美羽の思いを全く分かっていなかった自分に気が付いた。
今までの自分は己の肉欲を満たす為だけに美羽を抱いていたのかと思ってしまった。
それでは彼女を陵辱し続けた黒翔の王と同じだとイエランは思った。
けなげに言われた通りに身体を開く美羽にのぼせていた自分が恥ずかしかった。
「イエラン?」
眉をひそめて黙ってしまったイエランを美羽は心配そうに呼んだ。
何を考えているのだろうか?こんな時、自分にカルムのような力があったらいいのにと美羽は思ってしまう。口下手な美羽は上手く訊きだせないからだ。
だからちょっと躊躇ってから自分からイエランに口づけした。この気持ちを伝えたい―――
イエランは驚いて目を見開いた。呆然としている彼の動かない舌に舌を絡める。イエランがいつもしてくれるように舌先を吸い上げ、口腔を舐め回し始めた。ようやく我に返ったイエランの舌も動き出した。そのねっとりとした舌に美羽は夢中で自分の舌を擦りつけた。
「っ・・・美・・・っう・・・」
「はぁ・・ふっ・・・んん・・・」
お互いに深く口づけ、舌を絡めあった。始めたのは美羽だったがそれを解いたのも珍しく彼女だ。
「お休みは何日でしょうか?沢山お話出来ると良いですね」
美羽は恥ずかしそうに微笑んで言った。
するとイエランが静かに唇の端を少しだけ上げて微笑んだ。美羽はそれを見るだけで鼓動が跳ねる。
本当に心臓に悪い。ドキドキする胸を押さえながら答えを待った。
「そうだな。時間はたっぷりある。足りなければ追加させるだけだ」
「それだとカルム様が可哀想です。とてもお疲れのようでしたから・・・」
それを聞いたイエランの瞳が細められた。
「そう言えば・・・私がお前に会えなかった間、カルムが毎日会っていたらしいな?先ずはその話から訊こうか?」
「あ、あの・・・」
イエランが怒っている―――そう感じた美羽が答えに窮していると不機嫌そうだったイエランが珍しく声を上げて笑い出した。
「怒ってはいない。冗談だ」
「良かった・・・」
「しかし・・・そんなに、ほっとした顔をすると疑いたくなってしまう」
「そ、そんな!」
嘘だと、言ってイエランがまた笑った。
それからの数日、ほんの少しだけ愛し合うだけで、殆どの時間、二人はお互いのことを沢山話した。子供の頃の事、好きなもの、嫌いなもの・・・などなど・・・
そして楽しかった休暇は終った―――と言うよりも期日に帰って来ないイエランに痺れを切らしたカルムが迎えに来てしまったのだ。
「美羽、帰るぞ」
イエランは溜息をつくと美羽の肩を抱き寄せてそう言った。
頷いた美羽はイエランから抱き寄せられながら後ろを振り向いた。
「どうした?」
ぱっと顔を戻した美羽は頬を染めて首を振った。納得しなかったイエランは何だ?と再度訊ねたが美羽は答えなかった。すると彼女の心を読むカルムがニヤニヤしているのに気が付いた。
「カルム、何が言いたい?」
「まぁ〜楽しい休暇だったんだなぁ〜と思っただけだよ。その長椅子持って帰ったら?ミウちゃん、気に入っているみたいだし。あ〜でも同じようなのイエランの部屋にもあったか」
「カ、カルム様!」
美羽は真っ赤になって声を上げた。帰ると聞いてつい振り向いてしまったのはその椅子を見納めしておきたかったからだ。辛い思い出だったものがイエランの思惑で甘美な思い出に塗り替えられていた。
何度も何度もその場所で優しく抱かれたからだ。
美羽の真っ赤になって慌てる様子にイエランは納得した。
「確かに色々な使い方が出来て気持ち良さそうだったな、美羽?しかし私の部屋にも同じようなのがあるからそれで出来るだろう。だからこれは持って帰らなくていいか?美羽?」
「い、いいです!」
美羽は大きく首を振ると耳まで赤く染めると、イエランは声を出して笑ったのだった。
それから水晶宮に戻ったの美羽はとても困ってしまった。
イエランに好きだと話した色々なものが次から次へと山のように贈られてくるのだ。
今も天眼の地には絶対に咲かない可憐な白い花が部屋中に咲いている。
美羽が好きだと言った髪飾りの花だ。黒翔国から毎日のように取り寄せているらしい。
「言葉って難しいわね・・・」
美羽は溜息と共に呟いた。
好きだと言ったのはイエランから買って貰った髪飾りであって花そのものでは無かった。
それでも暖かな部屋の中に降り積る雪のような花に美羽は幸せそうに微笑んだのだった―――
〜終〜
ネット小説ランキングに参加しています。投票して頂くと励みになります。
(投票はバナーをクリックして下さい)
感想はこちらまで
ゲストブックへ (URLは必須ではありません。お気軽にコメントください)