![]()
第二章 激情の檻7![]()
![]()
王は美羽から視線を外すさず、メラに下がれと命じた。
「し、しかし・・・」
メラは美羽を、ちらりと見て言ったが、王の命令は絶対だ。仕方なく出ていった。
美羽は激しい怒りで二人の会話も耳に入らなかった。ただイエランを睨んでいた。
「死んでしまえ・・・か?私を本当は自分の手で殺したいんだろう?しかしそれは無理だな。私はお前の兄のように腑抜けでは無いからな」
「兄様の悪口は言わないで!」
イエランは喉の奥で嗤った。
「お前は本当にあの腰抜けの兄が好きだったんだな?約束か・・・しかしあの男から解放したのは兄では無く私だ。救ってやったのはこの私だろう?」
「救ったですって?あなたは石の塔からこの氷の檻の中へ私を移し替えただけだわ。そして義父よりもっと酷い事をするのによくそんな恥知らずな事を言うのね!」
イエランが酷薄に嗤った。そして美羽は彼の底光りする瞳を見てしまった。
いつも何を考えているのか分からない彼だが、その瞳は深い苦悩に満ちていた。何故?
「酷いこと?ああこれか?」
イエランは左腕で美羽をいきなり抱き寄せると唇を奪った。
「つぅ――っ」
しかしイエランは美羽から舌先を噛まれて直ぐに顔を上げた。唇の端から血が滴っている。
「今日は大人しくさせないという訳か・・・だが抵抗すればする程、男は征服欲が湧くのを知らんのか?あの男もそうだっただろう?お前が鳴けば鳴くだけ喜んだだろうが・・・」
「い、嫌・・・やめて・・嫌・・」
美羽は大きく瞳を見開きながら恐怖で怯え後ろへ下がったが、あっという間に捕まりベッドへと放り投げられた。大きく身体が上下に弾み、その上にイエランが覆いかぶさってきた。
「お前の唇は私のものだ!口づけを拒むのは許さんと言っただろう!」
「い、いや――っ、あぅ・・うんん」
噛み付くように唇が重ねられ美羽は抵抗して歯を食いしばっていた。
しかしイエランの左手が彼女の下着の上から、敏感な花芯を撫でたので思わず声を上げてしまった。
それと同時に彼の舌の侵入を許してしまったのだった。
そうなったら美羽はなす術も無くされるがままだ。
最初に舌を噛んだ勢いは頭から飛んでしまったのだ。
美羽が大人しくなると口づけも深さを増してきた。初めてしたあの時のように段々と情熱的で優しい愛撫のようになってくる口づけに、美羽は目眩がしそうだった。
「・・・・んっ・・んん」
飲み込みきれない唾液が顎を伝っているのを感じた。
血の味がしていた。さっき美羽が噛んだせいだろう。
そんな事までは思ったが今まで何の話をしていたのか思い出せなかった。
イエランの左手がドレスの胸留めを外そうと奮闘していたが、利き手では無いので上手くいかないようだった。結局右手を使い胸元をはだけさせると、胸のふくらみを下から上へと持ち上げては、その感触を楽しむかのように揉み始めていた。
その間も口づけは角度を変えては舌を絡め、唾液をすすっている。
「・・・・・・・うっ・・・い・・・まっ・・・んんっ」
(い、息が出来ない・・・まっ―――)
美羽は待って、と言いたかったが言葉はイエランに呑み込まれるだけだった。
そして息つく間もなく片手が下におりて、下着の中に差し込まれると花芯に直接触れてきた。
「あっ―――っ」
びくりと身体が震えた。敏感な部分を方々から攻められて身体が蕩 けそうだった。
そして美羽は自分の脚に擦り付けられた硬い塊のようなものを感じた。
( ?! ・・・い、嫌・・・)
イエランは着衣したままだがその布越しからも、はっきりとわかる欲望の昂ぶりに美羽は四肢を強張らせた。それを無理やり穿 たれた恐怖が甦ってきたのだ。
急にガタガタと大きく震えだし、嗚咽を上げながら泣き出した美羽にイエランは唇を解いた。
「ご、ごめんなさい・・ひぃっく・・・ごめんなさい。許して下さい・・・お願いします・・ごめんなさい・・・うぅ・・」
子供のように泣き出してしまった美羽にイエランは驚き戸惑った。
彼女は今からされようとする行為に怯えているのだ。それは当然だろう。
それだけの事を前回したのだから・・・今回もこれでまた無下に犯せば計画は完璧だ。
昨日は気弱になって機を逸してしまったが、今回は黒翔に行く前に自分という存在を刻み付けるはずだった。兄を侮辱し、無理矢理に犯し、悪役非道なる王として彼女の心に再び刻み付ける・・・それなのにまた気弱な心が顔を出してきた。
イエランは傷が痛むからだと思った。そう思うしか理由が付けられないのだ。
痛いから気弱になるんだと・・・右手を見た。
留め金を外すという細やかなことをしたせいか傷口が開いて血が滲んでいた。
イエランは舌打ちをした。脳裏に次々浮かぶのは昨晩の美羽だった。思わず儚い希望を持ってしまいそうだった彼女の優しい手を思い出す。温かかったその手を―――
(・・・美羽・・・・・・・)
再び嗚咽を上げる美羽の唇に口づけを落とした。
それは強引ではなく、舌先で優しく探りながら徐々にゆっくりと侵入していった。
そして軽く美羽の舌先に絡めて吸うと、唇を解放し涙を溜めた瞳に口づけをした。
「美羽・・怖がるな・・・酷いことはしない・・・さあ体の力を抜くんだ、美羽・・・」
「えっ?・・・・・」
あの時のように優しく瞼に口づけをしたイエランに美羽は目を疑った。
優しく囁くその声に驚き、いつも何故?と思う苦悩に満ちた顔に戸惑った。
再び優しい口づけが唇を塞ぎ、美羽は何も考えられなくなってしまった。
ざらっとしたものが肌に当たっていた。イエランの包帯をした手がドレスを脱がせているようだった。いつの間にか下着も足から抜き取られていく。
そして自分の服ももどかしげに脱ぎ捨てているようだった。
冷やりとするイエランの鋼のような肌が美羽の柔らかな肌と重なる。
それに何とも言えない疼きを覚えた美羽は夢うつつの状態となった。
そして彼の血が滲む右手を見た。
(―――傷、傷が開いてしまったの?)
包帯も解けかけて傷口が覗いていたがそこからかなり出血していた。
さっき腐ってしまえ!と言ったが本当にそうなってしまうかもしれないと思ってしまった。
(・・・大丈夫かしら・・・)
美羽の心配を他所にイエランの愛撫は続けられていた。
彼は快感を引き出すように胸元を彷徨っていた舌先はその胸の先端を掠 めた。ぬるりと触れるそれでその粒を転がしている。そしてそれを唇で挟み、更に舌先で突いたり吸ったりしていた。
それから唇は赤い跡を残しながら徐々に下へと這っていく―――
「あっ・・・い、やぁ・・・あっ」
美羽は傷の心配をしている余裕など無くなってきた。
その傷付いた右手は胸のふくらみを揉み、イエランの口から解放されて硬くツンと尖ってきた先端を今度は指で執拗にこね始めたのだ。
「あぁ・・・ぁんん・・・」
愛撫に合わせて声が自然と出てしまう。
舌とは違うぬるりとした感触が肌を伝ってきた。血が流れているのだろう。
それでもイエランはその手の愛撫を止めなかった。
敏感になった胸の先端を血まみれの指で摘まみあげられる度に、何もかも忘れてしまうような快感が背中に走っていた。
「んん・・・・はっぁあ・・・・ん」
恥ずかしいけれど声を抑えきれない―――後から後から声が勝手に零れ落ちるのだ。
血だらけのイエランの右手がまた目に入ってきた。快感に酔った美羽は無意識にその傷付いた手を捉えると自分の口元へ持っていった。そしてそっと傷口を舐め始めたのだった。
イエランは、びくりとして美羽の肌から顔を上げた。
美羽は怪我をした時、自分でいつもそうしていた。
異端の姫として無視されていたから怪我をしても誰も構ってくれなかったのだ。
舐めると自然に痛さも消えて血も止まった。美羽はまるで自分の傷のようにイエランの傷を舐めていた。それは官能の波に酔いながらの無意識の行為だった。
ぴちゃぴちゃと舐める舌が傷口に触れる度にイエランは下半身に強い疼きを感じた。
愛おし過ぎて気が変になりそうだった。
「・・・美羽・・・」
イエランの搾り出すような声に美羽がはっとした。
そしてぎょっとしたのだった。彼の右手を舐めていたのに驚いたのだ。
気がつけば二人とも裸だった。
まだ早朝で部屋もまだ十分暖まっていなく肌寒い筈なのに体は上気していた。
昨晩盗み見て触ったイエランの逞しい体躯 が目の前に広がり心臓が飛び出そうだった。
「わ、私・・・」
そしてまた四肢を強張らせ始めた美羽にイエランが囁いた。
「美羽・・・怖がるな・・・優しくするから・・・」
美羽はずるいと思った。いつもはお前≠ニかしか言わないのに、こういう時だけいつも美羽≠ニ呼び、何故かそう呼ばれると逆らえないのだ。
しかし言葉通りにイエランは優しかった。
口腔をかき混ぜられる官能的な甘い口づけに、頑なに閉じていた足は自然に開きだした。
だがその隙間に入ってきたのは手では無くいつの間にか下りてきたイエランの頭だった。
「やっ・・・・は、はずかしい・・・ま、待っ・・・」
腿の内側をくすぐる髪の感触に美羽は驚いて足を閉じかけた。
しかしそれを許すイエランでは無かった。彼の舌先が美羽の敏感な花芯に触れた。
「ひゃっ――あっ・・・・あぁ」
美羽の喉から甘く高い声が溢れ落ちた。閉じかけた膝が快感で小刻みに震えだす。
それからイエランはゆっくりと舌先で美羽の濡れた花に更に時間をかけてもっと蜜を満たさせた。
その愛撫に美羽の体は甘く痺れる。
「はっ、ん・・・あぁ・・・っ・・だ、だめ・・」
「何が駄目なんだ?気持ちがいいのだろう?美羽?」
イエランはそう言って彼女の感じる部分を確かめるように愛撫を加える。
「や、っ・・・ん・・あっあっん」
美羽はこんなのは初めてだった。彼女を散々慰みものにしたあの男も、同じ場所を攻めたが全く違うのだ。何が違うのだろうか?もうそんな事を考えている余裕など無い。
(し、しんぞうが・・心臓が壊れそう・・・)
本当にそう思った。息をするのも苦しいのだ。
「美羽・・・お前のこの唇もこの白い肌も私だけのものだ・・・美羽・・」
イエランが愛撫の合間に何度も吐息のように囁き、美羽はそれに呼応するように段々と息は浅く早くなっていった。そしてイエランも同じようだった。
口づけが深くなり彼の舌が美羽の口腔をかき回していた。
何時の間にか美羽も強制されること無く同じようにつたなく返し始めた。
「・・・んぁ・・んん」
「そうだ美羽・・もっと舌を出して絡めて強く吸うんだ・・」
「あふっ・・・んん・・ん」
美羽が教えられた通りに口づけを返せば、更にイエランから激しく返ってくる。
終りの無い口づけだった。イエランのその容赦のない口づけに息も継げず、ぼうとなった美羽は両足を抱え上げられても分からなかった。
そして彼の荒ぶるものが押し当てられると、その先端がぐっと美羽の中に入って来た。
「やぁ――あああっ、あ・・」
美羽は頭が真っ白になった。
しかし前とは違って圧倒的な質量感と圧迫感は感じても、十分蜜が溢れた場所で前回のような痛みは無かった。しかし自分の中にじわじわと入ってくる異物に対する恐怖は四肢を強張らせていた。
それを拒絶するように彼の脈打つ熱い塊を締め付けている。
「・・・っ・・くっ・・美羽・・美羽大丈夫だ・・力を抜くんだ」
イエランの耳元で甘く低く囁く聞きなれない声に、美羽は思わず呆然としてしまった。
強張らせていた四肢から力が抜けた。
「そう・・美羽そうだ・・・私に全て委 ねるがいい・・・」
イエランは彼女の反応を確かめるようにゆっくりと奥へ奥へと進めだした。
そして美羽の腰を掴み直すと強く引き寄せ最奥を突き上げた。
「あぁ――っ、んぅ・・・」
強烈な快感が体中を駆け抜ける―――
自分の中に最後まで収められた塊が、力強く熱く脈打っているのを感じた。
「動くぞ」
「ま、待って・・・」
美羽は小さく頭を振って、涙で潤んだ瞳でイエランを見上げると、懇願するように言った。
「もう待てない・・・そんなに煽 るな」
「あっ――っ」
美羽は自分の中に収まっている熱塊が、どくんとまた大きくなったのを感じた。
イエランはそれが馴染むのを待たなかった。しかし性急にするのではなく辛抱強く緩やかに動きだした。美羽が怖がらないように快感を引き出すようにと―――
「あっ・・んっ・・・ぁ、やっ、いやぁ」
「美羽、嫌じゃないだろう・・・感じるのだろう?」
「ち、ちがう・・・あっ・・あぁ・・」
美羽は違うと言いながら被りをふっていた。
しかし彼が律動を緩やかに始めた時にはもう意識はあっても夢の中にいるようだった。
「あっ、あっ・・・んぅ・・あっ、んん」
動きが段々と激しくなってきた。
熱いもので奥を深々と突き上げられる度に、強烈な快感の波が押し寄せてきて美羽は何がなんだか分からなくなってしまった。水の中で溺れそうな感覚だ。
息も苦しい―――助けを求めては腕を上げてイエランの首にしがみついていた。
「あぁ・・・っ、助けて・・助けて、ああっ・・・ん、はっ、はっ」
「大丈夫だ・・・美羽・・はっ、くっ――美羽・・・」
美羽の涙で滲む瞳に入ってきたのは熱い欲望を外に放ち、快感に顔を歪め呼吸を荒げているイエランだった。彼のそんな顔を美羽は初めて見た。そして自分がそれを与えたのだと思うと胸の鼓動は激しく打っているのにもっと大きく跳ねてしまった。
美羽≠ニ甘く優しく名を囁かれて口づけを受ける度に、胸が苦しくなるような気がした。
それから同じような事を何度か繰り返され、本当に夢に落ちてしまったようだった。
イエランは静かに丸まって寝ている美羽を見つめると毛布をかけた。
「全く何をやっているんだ・・私は・・・」
結局午前中潰してしまい、右手は傷口が開いて流血状態・・・出発は明日にしなくてはならないだろう。
ロエヌの阿呆と言う声が聞こえそうだった。溜息をついてまた美羽を見る。
愛おし過ぎて壊してしまいそうだった。憎む男が相手でも感情と情欲は別物なのだろうか?時間をかけて愛したら素直に従ってきてそれがまた愛おしくて堪らなかった。
「私は何をしたいのだろうな・・・憎まれたいのか愛されたいのか・・・愛されたい?くっくくっ馬鹿な想いだ。愛されることは無いのにそう願う愚か者か?愛されないなら同じだけ憎まれよう・・・そう誓ったじゃないか。愚かな天眼の王――お前が愛されることは無い。だが・・・美羽・・私はお前を愛している・・・愛している美羽・・・」
イエランは呟くように美羽を見つめながら繰り返し言った。
石の塔で彼女を初めて見た時、その美しさに心を奪われた。それは今まで見たどんなものよりも美しく儚いものだった。触れれば消える幻のような夢のようなものかと思った。そして彼女と関わるうちにその姿だけではない、清らかな心の美しさに恋をした。
この叶わぬ恋はどんどん深くなるばかりだ―――
「愛している・・・美羽・・何よりも・・・」
イエランは苦悶に顔を歪めてもう一度呟くと、美羽の涙に濡れた目元にそっと口づけを落とし部屋から出て行ったのだった。
|
ちょっと一言 第2章「激情の檻」はこの7話で終了です。イエランの秘めた愛は秘めるだけでは無く、やり放題でしたけど一応苦悶していますので温かい目で見てやって下さいませ。次回から第3章「罠」です。いよいよ不穏だった周りが動き出しますし、美羽も氷の檻から出て行きます。イエランの苦悩の日々はまだまだ続きますが、彼と美羽の不器用なふれあいが満載です!どうぞ、イエランの初恋成就を応援してあげて下さいませ(*^_^*) |