
リネアは今回の計画を流してしまおうかと思ったが、明日になってあの二人と連絡がとれない事に気付かれたらもっと状況が悪くなると思い直した。元々、サガンに協力してもらおうと思っていた訳では無いのだからと自分に言い聞かせたリネアだったが・・・
(はぁ〜最悪。私も今回ばかりは貞操を守れそうにないわね。初めてがあんな男かと思うと残念だけど・・・男なら皆同じだから、まぁいいか・・・でもね・・・)
どうせならサガンが良かった・・・と心に過ぎったリネアは自分のその気持ちに思わず驚いてしまった。
(私・・・?どうしたの?)
思えばずっとサガンのことばかり考えている自分にリネアは更に驚いた。
今まで心を占めていた筈のカルムのことを今日は一度も思い出さなかったのだ。
リネアはまさか?と思った・・・
天眼国の白銀の大地を背景に立つ眩しい美貌のカルムと、目も鮮やかな植物群と真っ青な空を背景に立つ雄々しい褐色のサガン―――
リネアの瞼の裏に同時に浮んで霞んで消えたのはカルムの方だった。
(そんな馬鹿な・・・今は混乱しているだけよ・・・そうよ・・・たぶん)
リネアは認めたく無かった。長年の想いをこんなに直ぐ消し去れる訳無いと思った。
しかし思えば思うだけ鮮烈な色で白銀の世界を塗り潰されるような感覚が湧き上がってくるようだった―――
(違う!私はカルムが好き!絶対、あいつを好きなんて無い!)
「えっ?好き?」
「何が好きだって?お姫さん?」
リネアは、はっとした。自分の想いに囚われていて今の状況をすっかり忘れていた。しかしもう後には退けなかった。
「サガ〜ン、きょう踊ってみせてあげるって、やくそくしたわよねぇ〜ラララ〜」
リネアは自分で音を奏でながら、スルスルと上半身の衣を脱ぎ捨てた。すると豊満な乳房が束縛から解放されてブルンと大きく揺れた。
近くにいた男達はどよめきネストリはいやらしく口笛を吹いた。
「ヒュ―――っ、すげぇ〜やっぱ、イイ乳してるな!」
サガンは黄色い瞳を見開いて一層怒気を滲ませた。
そのサガンの目の前でリネアは腰をくねらせ大きな胸を自分で持ち上げながら卑猥に踊った。
娼婦のような踊り子達の官能的な踊りを真似たがその効果はネストリや周囲の男達には効いてもサガンには無駄のようだ。秘部に食い込む小さな下着を更に食い込ませるような大胆な仕草をしても周りが歓ぶだけでサガンは口をへの字に曲げているだけだった。
しかも宣言通りに彼の下半身は無反応―――
リネアはそれが悔しくて目的を忘れそうだった。しかしネストリの奥に潜む見えない心を感じたリネアはその悔しさを押し殺した。そして怒気を孕ませるサガンの両肩に抱き付くように腕を絡めて抱きつくと再び心話で話しかけた。
『ネストリを信用しているのなら貴方は何処かに行ってちょうだい!何もなければ疑いは晴れる・・・そうでしょう?』
『疑う余地なんか無い!それを確かめるだけ無駄だ!お前が・・・』
『私?私が何?』
聞き返したリネアだったがサガンの返答は貰えなかった。しかし用件は聞き入れてくれたようだった。
「離れろ!酔っ払いがっ!ネストリ、お前が適当に相手しろ!俺はもう寝る!」
サガンが絡みつくリネアを引き剥がし、ネストリへ向って突き飛ばした。
ふらついたその彼女をネストリが驚いた顔で抱きとめた。
「え?いいのか?」
「こんな酔っ払いを抱いてもつまらん!」
「勿体無いなぁ〜まぁ、お前は女の好みにはうるさいからな。じゃあ、遠慮なく楽しませてもらう。お姫さん、お許しも出たから静かな所へ行くぜ」
そう言ったネストリは嬉々としてリネアを抱き上げるとその場から立ち去った。
その後ろ姿を見送るサガンの心中は複雑なものだった。ネストリの事は信じている。しかしリネアはそれを証明するまで引き下がらないだろう。
(あんなに強情で言う事を聞かない女はいやしない!)
自分に屈しないものは排除するのが一番だがリネアの場合そうはいかない。納得するまで好きにさせるしかないと分かっていてもこのままだとリネアはネストリに先を越されてしまう。しかし先を越されることに腹が立つのでは無かった。今までもネストリはもちろん父親とでも共有した女はいたのだ。後先など特別に思ったことは一度もなかった・・・独占欲が沸かないという言い方が正しいかもしれない。
しかし、リネアに関してはその独占欲がフツフツと沸いて来るのだ。
それでも見送ってしまったのは彼女のネストリを信じているのなら〜と言う言葉だった。
サガンは誰よりも血族の結束を重んじていた。それが国家権力を握る要だと本能で分かっているのだ。力が全てのこの国で個々が覇権を争えば国は衰えるだけだ。しかし血族が結束すれば巨大な力となり国家が安定する。だからサガンは今でも父を立て続けているのだが・・・
サガンは落ち着かない気分で酒をあおった。まるで迷う心を落ち着かせるかのように浴びるように飲み始めた。殺される訳でも無いのだから犯られそうになったら逃げ出すだろうと自分に言い聞かせた。
「さ〜てと、ここでいいか。ここなら邪魔も入らないだろうからな」
「ここは?」
抱きかかえられていたリネアが下ろされた場所は意外にも屋外だった。周りは見通しの良い東屋だ。連れ込まれるのは当然人が寄り付かないような部屋か場所かとリネアは思っていた。しかし・・・
(成程ね・・・用心深い男だわ。誰か近づけば直ぐに分かるという訳ね)
納得したリネアは作戦を開始した。酔いにふらついたように東屋の柱に抱きついた。
「こ〜んなところに連れてきてなにをするつもりぃ〜」
「ははっ、することは決まっているだろう」
ネストリはニヤニヤと笑いながらそう言うと、柱に抱きついてもそこからはみ出すリネアの胸先をベロリと舐め口に含んだ。ゾッと悪寒がリネアの背中に走ったが顔には出さなかった。
「なにするのよっ!かってなことしないでっ!」
リネアは胸に吸い付くネストリを剥ぎ取るように髪の毛を引っ張った。
「イタタタ、はいはい、お姫さん。あんたの言う通りにするよ」
ネストリは引っ張られた箇所をさすりながらそう言ったが、リネアの足を払いそのまま彼女を地面に押し倒した。
「なっ!」
「あんたの言う通り?なぁ〜んてな。誰が酔っ払った女の言うことを聞くもんか!所詮、我が儘お姫さんなだけだ!サガンはああ見えて変なところ真面目だからあんたの言う事を鵜呑みにしているんだろう?馬鹿な奴!どんな女だろうと女はいつでも男から突っ込まれるのを待っているのにな。俺はサガンみたいに優しくないぜ。覚悟しなよ」
リネアは聞きなれない言葉に唖然としていた。
(サガンが真面目で優しいですって?)
そんな表現が一番似合わないのがサガンと言う男なのにとリネアは思った。しかし本当は何となく気が付いていた。気が付かないふりをしていると言うのが正しいだろう。認めると何かが崩れるような気がするからだ。
「ふっ・・・くっ・・・うううっ・・・」
ネストリが噛み付くように唇を重ねて来た。
油断させるには好きなようにさせるのが一番だろう。しかしリネアは思わず顔を左右に振って歯を食いしばりその口づけとは言い難いものから逃れようとした。両手は既にネストリの片手で頭の上で封じられているからそうするより手立てが無いのだ。
だがネストリは目で笑って空いた手でリネアの鼻をつまんだ。そうなれば当然息が出来ないから空気を求めて口を開いてしまった。それを待ち構えたようにネストリの舌が歯列を割って侵入してきた。
「ぐぅう・・・ううっ・・・んう・・・」
奥まで勢い良く突っ込まれた舌でリネアは吐き気を感じた。ネストリの舌は異様に長いのだ。喉の奥まで掻き回され吸われ気持ちが悪くて堪らなかった。
「ううう・・・んっ・・・くっっ・・・んん」
(まだ?まだ私を殺さないの?)
覚悟して望んだリネアだったが口づけ一つで決心が崩れそうだった。夢にまで見たカルムとの口づけは突然で驚きの方が先立って余韻を感じなかった。そしてサガンとの口づけ―――
同意無しのそれは鮮烈で・・・嫌じゃなかったとリネアは今ではそう思う。強引で荒々しく頭の中まで掻き回されているような口づけだった。
(何考えているの?今はそれどころじゃないのに!)
本当にそれどころでは無かった。リネアは初めて男と言う恐怖を味わっているのかもしれない。
天眼の力で逃げてしまいたいという気持ちを抑えるのに一生懸命だった。逃げるのは簡単だがそうすればこの作戦が失敗に終ってしまう。
(もう少し・・・もう少しの我慢よ。絶対に尻尾を出す筈だから・・・)
「ううっ・・・くっ・・・ん」
リネアは四肢の力を抜いた。
それを感じたネストリがようやく唇を解放すると、ニヤ気た顔で舌なめずりをした。
「ほ〜ら、その気になってきただろう?高慢ちきな天眼の女でも一緒さ。感じる場所は同じかい?」
「あ、っん・・・」
ツンと尖った胸の先を指先で弾かれたリネアが甘い声を洩らした。
「性感帯は一緒なんだなぁ〜じゃあ、急所は?」
「(やった!)どうしてそんなことを聞くの?どうでもいいじゃな〜い。も〜っと気持ちいいことしてよ」
リネアは焦りを抑えながら甘えるように言った。
ネストリはやはり用心深いのだ。天眼族が何故最強と言われるのかは天眼の力以外にもあった。彼らは個人個人で急所が違うのだ。だからその質問は確実に殺すには必要なものだろう。
「いいぜ。じゃあこの媚薬をやろう。天国にイキたくなる気分になる。もっともイキようが違うけどな」
リネアはそれが毒だと思った。ある程度の毒なら耐性があるから大丈夫だ。
(早々に尻尾を出したわね。これを飲んだら証拠になるわ)
小瓶に入った苦いような甘いような液体をリネアは一口飲んだ。
胸がカッと熱くなったが毒のような感じでは無かった。まさか?と思ったリネアの辛うじてまだ付けていた下着を引き千切ったネストリは余った液を手に取り、彼女のあらわになった秘部へ擦り込んだ。
「やっ・・・やめ・・・はぁ・・・んん」
演技では無い声が出た。胸先がジンジンし下半身がウズウズとし出したリネアは腰をくねらせた。
「(これは本当の媚薬!)はぁ・・・ああ、っん・・・」
声が勝手に出てしまう。そして意思に関係無く花芯の蜜がダラダラと溢れているのが自分でも分かるくらいだった。用心深いネストリが楽しんだ後に殺すようなことはしないだろうとリネアは思っていたのに予想外の出来事だ。
「気持ち良いだろう?ほらっ」
「いあっ、まっ・・・あ、あ・・・はっ、ん」
ネストリに、ピンと尖った乳首をまた弾かれたリネアは再び腰を揺らめかせて声を上げた。さらにネストリの手がそのまま爪でなぞるように下に滑り濡れた恥毛を掻き分けふくらんで尖った粒を撫で上げた。
「あ、ああっ・・・そ、そんな・・・ぁ」
リネアの四肢が感じ過ぎて、ビクビク震えた。
「ほぉ〜ら・・・堪らんだろう。ほら、ほら」
「やっ・・・やめ・・・いっ・・・あ、ああ」
更に奥へと進んだネストリの指が花芯の中心へと挿し込まれたのだ。ただ指が抜き挿しされるだけなのにリネアは背中を反らせて震えた。
「気持ち良いだろう?もっと太いものが欲しいだろう?」
リネアは思わず頷いていた。
「欲しかったら俺様の言うことを聞くんだ」
リネアはまた頷いた。もう何も考えられなかった。カルムを忘れたくて、忘れたくて・・・何も考えたく無く・・・てこんな風にサガンに滅茶苦茶にされたいと願った時のようだった。
「いい子だ。所詮、女だな・・・お前の急所はどこだ?教えろよ。お前達は服従する相手にそれを教えるんだろう?教えろ!そうしたら思い存分、俺の太いのをブチ込んでやるぜ」
リネアは服従と言う言葉を聞いてやっと正気に返った。天眼族の誇りが無理矢理与えられた快楽より勝ったのだ。
(私、何やっているの!馬鹿、馬鹿!)
段々と本性を出してきたネストリは指を抜いてリネアを睨んだ。
「言わないとしてやらないぜ」
「いやぁ〜もっと・・・」
リネアは狂ったような振りをしてネストリにしがみ付こうとした。しかしネストリはそれを避けリネアから起き上がって彼女に馬乗りになると再度問いかけた。そしてリネアの花芯に手を回し触れるか触れないかのような動きで焦らした。
「あん・・・ぁあ、・・・いうから焦らさないで・・・ひだり肩・・」
リネアは自分で言って驚いた。本当のことを言うつもりなど全くなかったのだ。嘘を言うつもりだったのに何かに操られたかのように本当のことしか言えなかった。
左肩・・・母親から刺された時はその急所をかすめて瀕死状態になったものだ。
ネストリがニヤリと嗤った。
リネアが飲まされ擦り込まれた媚薬は性感帯を異常に興奮させるのはもちろんだが量を増やせば服従を余儀なくさせ自白剤としても使われるものだ。猛牙国でしか採取出来ない特殊な植物から抽出する王家秘伝のものだった。完全に薬が回った今なら何を聞かれても正直に答えてしまうだろう。
しかし、ネストリの目的はリネアの予想通り彼女を殺すことだ。答えを聞いた今、ネストリの手には鋭い得物が握られていた。そしてリネアの左肩目指してそれが振り下ろされたがその前に彼女が消えてしまった。リネアの瞬間移動だ。だがその移動は東屋の外に出たくらいだった。移動したリネアはグラリと地面に膝をついてしまった。媚薬が効きすぎて思うように力を制御出来ないのだ。
再度襲って来るネストリから逃れるのは難しかった。
リネアは、ふと夜空を見上げた。
(この国に来てから夜空って初めて見るけれど・・・星が降って来るみたいね。光りに照らされた雪みたい・・・綺麗・・・)
ぼんやりと空を見つめるリネアの視界で振り下ろされる刃の光りをとらえた時、何かがいきなり視界を遮った・・・そして血の香りが鼻に衝いた。